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『アキレウスの歌』

アキレウスの歌

マデリン ミラー / 早川書房

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マデリン・ミラー著『アキレウスの歌』読み始めました。
いや、本屋に行って他の本の検索かけてて偶然タイトルが目にとまって、
棚に言って現物見て、帯見て、中パラパラ見て、アキレウスとかパトロクロスとか
馴染のある名前が目に飛び込んできて、おまけにオデュッセウスとかディオメデスとか書いてあって

即買いしました。

で、途中なんですけど、書いちゃいます。
どうしちゃったのハヤカワさん、第4段。
しかし、これは責めてるんじゃないですよ。

出版してくれて、ありがとう…!!!

いや、今半分くらいまで読んだけど、面白いよ、これ!
結末まで読んだらまた評価も変わるかもしれないけど、今のところ、100点満点で120点くらい。
大筋は、『パトロクロスの目から見たアキレウス』、です。
幼少時代のパトロクロスから始まって、アキレウスとの出会い、二人ですごした少年時代、
育まれる友情、ケイロンのもとでの穏やかな生活、戦が起こって、
スキュロスにアキレウスが隠されて、オデュッセウスとディオメデスが見破りに来て、
テティスの口から運命が明かされ、従軍を決意して(中略)、今トロイアの浜で野営中。
和平交渉に行ったメネラオスとオデュッセウスが帰ってきたとこ。

なんというか、眉をひそめる感じでこれ、違う、と感じる箇所がほとんどありません。
奇跡!
ネット風に言うなら

「違和感、仕事しろ!」

普段自分が頭の中で思い描いてる感じ、ほぼそのままのアキレウスとパトロクロスで
なんか、すんなり話に入れちゃったというか。
ああ、知ってる知ってる、そうやんな、と思いながら読み進んじゃったというか。
既に知っている地元のあるあるを本で読んでる感じですよ。
雨が降ったら山から水蒸気がものすごい立ってるとか(あれ、なんでなんでしょう)
自転車乗ったら死ねるレベルの坂が続くので、地元民は電動派が多いらしいとか、
駅周辺にやたらパン屋とケーキ屋が多くて一体この辺りの店はやっていけてんのか訝しいとか
レオニダス、ロールケーキ始めよったとか、
そんな「あー、あれね」と頷いちゃうようなローカルネタを読んでるような親近感です。
大体、わたしのトロイア戦争に登場する英雄たちに対するイメージって、
めちゃくちゃホメロス準拠なんですけど(あんまりひねらずに、素直に受けたイメージそのまんま
なんですけど)、てことは、この作者も同じようなイメージだったちゅうことかしら

でっすよねー!!

ホメロス読んだらあんな感じですよね!!
などと一人悦ってしまいました。
後、本のはじめの辺りの幼いアキレウスとパトロクロスのくだりは、
サトクリフの男の子同士の友情の描き方をほうふつとさせ、それで読み慣れてる感じもあったのかもしれん。

以下、各登場人物について雑感
・アキレウスとパトロクロス
アキレウスは、わたし、筋肉もりもりじゃなくて、すらっとしてんのに、きれいな顔なのに
ものっそい強い、みたいな、戦国無双的な強さを想像してるんですが、
まさに、そんなアキレウス像。
半神だから、強くて、奇麗で、純粋で、だから汚い人間世界のひょんなことで壊されてしまいそうな
危うさがあって。そんな、わしが言葉で書いてもいまいちピンとこないアキレウス象を
ものっすごい魅力的に描き切ってあるから!説明する手間省けた!
パトロクロスは内省的で真面目な若者で、自分が人間でアキレウスが半神であることを自覚していて
アキレウスに憧れて、崇拝して、唯一無二の大事な人だと思っていて、
全身全霊で愛してるんです。心配もしている。
まあホメロスは二人は友人同士のつもりで叙事詩を歌ってると思うけど
この作品では若干友情の枠を踏み越えちゃってますけどね。
(腐女子の私には美味しい展開ですが、苦手な人は気をつけて。
でもまあ、濃い友情をこじらせた感万歳の触れあいなので、さほどえぐくはないですよ。
…うーん、しかし、自分がホモ慣れしちゃっててそう感じるのかもしらんし、よう分からん)
パトロクロス視点のこの物語をずっと読んでると、いつのまにか自分も
アキレウスのことを憧れの人で、焦がれる対象で、愛情たっぷりの目線で見てしまいます。
恐ろしい…
(いや、でもほんと、この本のアキレウスは清清しいよ!
九郎ちゃん(C・はるとき3)みたいですよ)


・オデュッセウスとディオメデスについて
オデュッセウスもまるきり違和感ない。
全国の少数精鋭の同志たち、
このオデュッセウスはいいオデュッセウスですよー!!

いやもう、ホメロスのオデュッセウス、って感じでニヤニヤしてしまいました。満悦。
多分、作者もこのイタケ人のこと好きだよね!分かってるよ!と勝手に
同志認定したくなっちゃうくらい。
でもって、たいていディオメデスとセットで出てきます。
ディオメデスの方は、ぶっきらぼうなアレスというか、
普段口数少ないくせにオデュッセウスには痛烈な皮肉を吐き、
オデュッセウスの方も分かってて丁丁発止のやり取りをしちゃうというか
二人だけで分かってるやり取りやっちゃってる感じがなんかもうたまらん。好きだ。
アキレウスとパトロクロスが付き合い始めたばかりの燃え上がってるカップルだとすれば
こっちは小学校の時からの腐れ縁でそれ以来30年組んでる漫才コンビ、みたいな。
で、また、オデュッセウスがぺネロぺイアにべた惚れで。すぐに惚気ようとするんですよ。
途中、初聴きのアキレウスたちに嬉しそうに馴初めを話そうとする場面が好き。
ディオメデスが、聞いてられるかあほらしい、みたいに立ち去っちゃうんです。
いわく、「これ以上聞かせたら、海に投げ落とす」
で、その去る背中に
「あほやなぁ、聞き損ねたら大損やでー」みたいなことを陽気に投げかけるイタケ人もイタケ人。
もう、この二人…。


・アガメムノン、アイアース
この二人は、一般イメージそのまんま、ちゅうか、あんまりどこでも揺らがないよね。
いつもの安定のおっさんたちです。


・メネラオス
今回、欧米作家にしては珍しくメネラオスが良い感じですよ!!
いや、でも、ホメロスではメネラオスっていいやつだもんな!!
割と男前で、陽気そうな。

・テティス
めっちゃ怖い。海のニンフというより、オレステスを追い回す復讐の女神たちみたい。
ニギ御霊というよりは、荒御霊、国津神みたいな存在です。
でも、テティスには別段思い入れないので割とどうでもいい。
確かに、神々って、不公平で恐ろしいものだよな、とは気付かされますし。



なんか、よんでて、この作者と萌ポイントが割とかぶってるんかもしらんな。
などと思い始めました。ちょう楽しいです。
このままの楽しい感じが最後まで続くことを祈りつつ、もうすぐ出てくるであろうヘクトール兄さんの
人物造形に期待します。
さー、続き読もう!



その後4分の3くらいまで読みました。
ブリセイス出てきたよ!ものすごいええ子やった。
今のところ、ヘクトール兄さんは伝聞で聞くくらいの遠い人です。
一貫してパトロクロス視点で語られるので、
彼にとって遠い人だったら、作中では出てこないんですよね。
でもって、パトロクロスはアキレウスが第一の人なんで
アガメムノンが例によって大変鼻につくおっさんにしあがっとります。
これはちょっと可哀相…(悪いやつじゃないんですよ)
後、ネストールが可愛くない。
その他はまったく不満はありません。
ただ、このまま物語が進むと後は悲劇へ一直線なので、結末を知ってるこっちとしては
色々物悲しくなってきました。
あんなに澄み切ってたアキレウスが、下界の毒に犯されてきた感が…
殺しすぎてもたんや…。
しかし、そうせねばならん理由が彼にはあって、もう色々切ない。
ヘクトール兄さんが登場する(予想)終盤に向けて
心構えして読み進もうと思います。

とりあえず、4分の3まで来ても
オデュッセウスとディオメデスはセット扱いで良い感じです。
二人で意外と野心満々なとこがイカす☆
by mi-narai | 2014-04-11 23:17 | 2014年上半期の読書
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