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『歴史家の羅針盤』 『日露戦争を世界はどう報じたか』 『それでも日本は戦争を選んだ』、他

歴史家の羅針盤

山内 昌之 / みすず書房

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山内 昌之著『歴史家の羅針盤』読了。
これまた図書館の新刊の棚に並んでいたので手にとったもの。
実は前作があるらしいのですが、そっちは未読です。
歴史に興味のある方が読むと楽しい、もしくはためになる歴史本の、著者によるレビュー集。
歴史小説から堅めの本まで取り揃えてあって、なかなか手広いです。
もともと人のレビュー好きのワタクシ(アマゾンさんのレビュー読むの、大好き!)
ウハウハしながら読みました!
これまでワタクシ、どっちかというと、自分と関係なくて気軽に眺めてられる古代史の方が
好きだったんだけど(そういう理由!?)
この方のレビューを読んで、なんか近現代史の本も読んでみたくなりましたヨ!
単純ですね。はい。

以下、読みながらつれつれと思ったことメモ。

・外交に関する本のくだりで「アメリカは相手に良い印象を持ってもらうのが苦手」
というか、ぶっちゃけ、下手、と書いてある部分があったのですが、
最近のアメリカ外交などをぼんやり思い出し「あー、まあ、そうだなあ」などと思うと同時に、
この間読んだ『町場のアメリカ論』の「一生けんめい人のために働いて戦って傷ついても理解してもらえず、
孤独なアメコミのヒーロー像はアメリカ人の考えるアメリカ像に他ならない」てな記述をも、思い出しました。
なんか、ちょっと、カワイイな。アメリカ。

・日独関係は後発資本主義国同士
ドイツと共通点などない、と思っていたので、そう言われて目から鱗。

・英国女王とベルギー王室の国王の葬儀の時のいざこざ(以降のアレコレ)を知って、
「英国王室大人げねえ!!!」と思いました。
いやしかし、アレはベルギーの方に分がある(事情があるから仕方ない)だろうと思うんだけども…
まあ、英国王室も、面子があるだろうからなあ…

・エマニュエルトッドの『イスラムvs西洋』でトッドはトルコに対する評価を随分低く見積もってるんですが、
その低さが不当である事を著者がきちんと批難している点は好感度大でした。
分かってらっしゃる…!

・ずーっと前に買ったまま読んでない『トルコ狂乱』面白そうです。よっしゃ!


日露戦争を世界はどう報じたか

平間 洋一 / 芙蓉書房出版

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平間 洋一著『日露戦争を世界はどう報じたか』読了。
単純に上記の『歴史家の羅針盤』を読んで、近現代史の本が読みたくなったのと、
後、最近幕末関連のドラマやゲームを見てたおかげで(後『坂の上●雲』な)

「…今ならあの辺りの雰囲気が分かる…!ていうか、ぶっちゃけ今以外わたしの人生のうちで
近現代を読みたくなる機会なんて二度と来ない」


と強烈に思い立ち、借りてみました。
日露戦争時の周辺諸国での報道のされ方を追っていった本(まんまやんけ)。

最初に断っておきますが、私、近現代史、特に日本史は、もうほんと素人以下なんです。
ほとんど何も知らない状態なんです。そんなところからスタートです。
日露戦争時、アメリカとイギリスはに日本に同情的、
仏独は親露路線だったって、今初めて知ったほど(大丈夫か、こいつ…!)。

当時の新聞報道を読んで、各国の反応をざっくり分析したらば

イギリス…ロシア嫌いと、パターナリズム(=保護者的立場から来る親近感。
日本に西洋文明を教えてやったのは英国だぞ、的な)
ロシアと敵対していたイギリス、政府の方針として、なるべくロシアと敵対する日本を
応援するような世論を形成すべく、親近感を作り出す方向にメディア戦略を推進していた模様。

アメリカ…アメリカも、戦争前は判官ビイキで日本に同情的だったようです。
戦争終結辺りには、日比谷公会堂事件なんかのせいで、一気に反日気分になるんだけども。

フランス…日英同盟を結んでいたイギリスと対照的に、フランスは露仏同盟を結んでいたので、
当然親露路線。
…ていうか、本当に、フランスっていつもイギリスを叩く側に回ってますよね…

ドイツ…ドイツ皇帝がロシア皇帝の親戚だったし、ロシアに西に来てほしくなかったので、
しきりに日本を攻撃するよう発破をかける。黄禍論を唱えたのもドイツ。
でも、国策としてはロシアを後押しするけど一般庶民はロシア嫌いでもあったそうで、
いろいろ複雑だったらしい。

ちょっと話は逸れますが、
これまでなんとも思ってなかったけど、なんか、ここ数冊本やらニュースやら見て、
ドイツに対する見方が変わりましたヨ。
ドイツのメディア、日本になにげに厳しいっスよ!
日本に対する報道しか読んでないから、どこにでも厳しいのか日本限定なのかまでは分からないのですが、
どうも日本限定な気がするんですヨ。ていうか、黄色人種に厳しい、の、か?
所詮アジア人は欧米人にはなれないんだから、みたいな蔑視の目線をものすごく感じるんです。
(そもそもアジア人なんだから欧米人になる必要などないんだけど、その視点は全く無い。西欧が至上なの)
う~ん……。

中国&韓国…当時あまりまだ新聞社が無く、どの資本が出資したかによってカラーが随分違ったようです。
親日的なものから、抗日的なものまで。

欧米の反応を読んだ後でアジア(&イスラム)の反応を読むとチョッピリ肩の力を抜いてほのぼのできます。
(その後日本は慢心して傲慢な振る舞いに出るので、あんまり日本の勝利を賞賛しているのを読むと
複雑ですが)

最後に各国の現代の教科書で日露戦争がどう叙述されているかの一覧も乗ってて、なかなか興味深かったです。
中国&韓国 想像どおりだった。
イギリスはわりと客観的。
アメリカは自国の歴史が第一で、外国の戦争はさらっと流す。
ロシアは、ソ連時代とそれ以降で叙述が180度違う。
ドイツは日本にひややか。
フランスも露仏同盟の流れで当時の日本にはひややかですが、日本の事を書く時も必ず自国との関連を
絡めてあります。ここまで徹底してるとむしろ天晴れです。

いやしかし、こうして見ると、確かに日本の教科書の日露戦争の叙述は偏りがち、なのかもなあ…



それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤 陽子 / 朝日出版社

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加藤陽子著『それでも日本は戦争を選んだ』読了。
近現代史の流れで、チョイスしてみた。
この本、前々から気にはなっていたのですが、これまではさほど食指を動かされなかったので
スルーしていたのです。

だが!今なら!読める……!!

などという無駄な自信を持って今回挑んでみました。

面白かった……!!!!

著者の加藤先生が、冬休みを利用して中高生に特別授業として教えた5日間の講義が元になってて、
本の構成も、生徒と先生のやりとりから成っているので、
わたしのような近現代史の素人にも大変読みやすいつくりになっております。
ありがたい…。

でもって、
これまで出版されていた数多の先の大戦に関する本って
どうしても著者の主観的な感情が滲み出てしまってるような気がして
なんとなく敬遠してしまってたのですが、
(立場によって意見が全く違うし。
死んだ祖父やまだ死んでない祖母からいろいろ戦時中の話など聞くと、ものすごく生々しいのです。
じいちゃんズはあの時はアメリカが悪かったからだと戦後も思ってたし、
かつての中国語の先生からは日本人を責められたし、
色んなとこで日本人の残虐非道な行いなんかも読んじゃうし、
かと思えば、一般庶民の皆さんの苦労なんかも聞くし、
一体どう位置付ければいいのよと。
まだ記憶に新しいからそれはどうしようもないことなのでしょうが、
誰かの主観から見た戦争のことを読むより先に、もうちょっと客観的に流れを掴んでおきたいなと
思うじゃないですか!)
この本は、そりゃまあやはりもちろん少しくらいは主観が入ってますが
最新の研究結果を惜しげも無く披露しながら、なるべく客観視して、大局から日本が
戦争へと至った道筋を説明していて、そこのところが大変にワタクシに優しかった…。
(そこのところが、素人にも分かりやすい所以なのだと思います。)

この本は文句無く面白いのでそのオモシロさはそれぞれ手にとって読んでいただくとして、
例によって読みながら心に残った事メモ。


・朝鮮半島
なんか、日清、日露の両戦争って、こうして外から眺めてみると、朝鮮半島を巡る戦いなのだなあ…と
しみじみ思いました。
西欧列強の植民地政策と日本のソレが違う部分といえば、日本の場合は植民地主義と国土の防衛が
表裏一体になっていることなのだそうで、
そう考えると妙に納得します。

日本はよっぽどロシアが怖かったのだなと…!

もし朝鮮半島までロシアに占領されたら次は日本だと、その恐怖は実に真に迫ったものだったのだなあと。
なんとか半東は日本が確保してロシアを防ぎたかったんだなあ…。
(だからといって日本がええ気になって余所様の土地を蹂躙していいって事にはならんけども。)
なんか、そんな見方をコレまでしてなかったのでちょっと目から鱗でした。


しかし、これまで身近すぎて生々しくて敬遠してたけど、やっぱり近代史面白いなあ…!!
各国の思惑が交錯してていろんなパワーバランスが複雑に絡み合ってるのとか見ると
ものすごい興奮します。
でも反面戦時中の人的被害やひどい出来事を読むとものすごい落ち込むんですが。

結論:近現代史は面白いけどしんどい…。

後、ドイツはほんまに日本に厳しいな!
反面、意外とイギリス政府が外交的には日本に親身(というか、冷静)で、ちょっとビックリしました。
戦争後半のアメリカと日本の潜在力の差にも今更愕然としました。こりゃかなわんて。当たり前ですが。


千畝―一万人の命を救った外交官 杉原千畝の謎

ヒレル レビン / 清水書院

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ヒレル・レビン著『千畝』読了。
ユダヤ人の方の描いた杉原千畝。
6000人の命のビザの人なんですが、これまた近現代史つながりで読んでみた。
幕末から始まって、とうとう第2次世界大戦まできてしまいました。
なんか、日本人が書いた本だとどうしても人道視点で情緒的になりがちな主題じゃないですか。
それを、外からの目で書くとこうなるのだなあ、と新鮮な感じ。
(『我々には理解しがたいかもしれないが、日本人の価値観からてらすとこうなのである。』みたいに
書かれてるのを見るのがなんとも不思議な感じなのです)
全部著者の調査を元に書いてあるのですが、
千畝の生い立ちから始まって、当時の世界情勢、ユダヤ人を取り巻く状況、ポーランドとリトアニアと
ソ連の関係など、近現代史的に面白かったです。
ユダヤ人に迫る悲惨な運命のくだりは心臓に悪かったですが…
(危機が迫った時の人間の心理などが克明で。いきなりの状況の悪化から人は目を逸らすものなのですね…
パニックになるのも怖いけど、都合の悪い事に蓋をして結局むざむざ命を失うのも怖い)
千畝さんのあのヴィザ発行のおおもとには、人道的なものがあったとしても、
ただそれだけでもなくて、日本とソ連、日本とドイツの関係や、諜報活動や、
上層部の思惑や、千畝の行動をスルーしてくれた色々な人たちの善意や、
まあ、色々な状況ときっかけが重なってたんだなと。
衝動的に善行を行ったというよりは、用意周到に根回しして、深慮遠謀を駆使した様子も伺え
なんか、杉原千畝観が大分変わりました(良い方にな!深慮遠謀、いい言葉ですヨ!)
しかし、生き延びた人々のその後の証言が食い違ってる事や、分からない事が多すぎます。
わたしも著者の方と一緒に
「くそーー!!千畝が生きてる時に会っとけば良かった!(真相を知りたかった!!!)」
…という気になりました。

しかし、千畝がスパイ活動をしてて、ユダヤ人を助けたのも、気の毒に思ったからでは全く無くて
事務的な、任務上のことだった、とする説もあるんだけど、
それだけではないと思いたいなあ。それもあったろうけどさ。
大体当時の外交官なんて、そりゃ任務として諜報活動もしてましたよ。

後、千畝さんの最初の奥さんがロシア人だったのがビックリした。
著者が千畝の奥さんの書いた本を疑ってる(→奥さんは自分を良く書きすぎ)のも
面白かった。
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by mi-narai | 2011-06-06 23:39 | 2011年6月の読書
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