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『大阪不案内』 『トロイア戦争物語』

大阪不案内 (ちくま文庫)

森 まゆみ / 筑摩書房

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森まゆみ『大阪不案内』読了。
図書館で目があっちゃったので、とりあえず借りてみました。
エッセイ集なので、さらっと読了。
著者の森さんは東京人なので、色々「へー、こんな風に見えるんだなあ」と
目新しい視点で書いてあって面白かったですヨ!
とはいえ、ワタクシだって大阪にはものすごく不案内なわけですが。
しかし、東京の人が書いたにしては随分贔屓目に大阪を見てるなあと思ったら、
大阪で発売されてた雑誌か何かの連載だったようで。そりゃ悪くは書かんわな。納得。


トロイア戦争物語 (現代教養文庫)

バーナード エヴスリン / 社会思想社

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バーナード・エヴスリン著『トロイア戦争物語』読了。
貸してくださってありがとうございましたー!
読む前に、色々噂は聞いていたので、一体どのくらいはっちゃけた本なのかと
半ば期待、半ば不安に思いながらページを進めていったのですが、

…あれ?意外と普通に面白い、な……

もちろん、ギリシア神話として読むと、いろいろ捏造もあり、あまり神話の成り立ちとか、
そういった諸々の経緯に敬意をはらってない作者なのではと、疑問に思わせられる部分もあるのですが、
純粋に読み物として見ると、なかなかいい出来なんじゃないかと。
話の流れもスムーズで、古典作品を読む、といった緊張感もなく
肩肘張らずにファンタジー小説読むみたいな気軽さで読めました。

うん、本当にそんな感じ。ギリシア神話を元に、エブスリンさんが書き下ろした小説、といった態。

これをそのままホメロスの『イーリアス』だと思われることには抵抗がありますが、
結局どの時代のどの作者も同じような手順を踏んでギリシア神話を自分の時代に即した話に
うまく作り変えているんだからして、アメリカ人が語りなおしたギリシア神話だと思えば
これはこれで良いのではないでしょうか。
何より読みやすかったし。
一応、叙事詩の環のその他のエピソードも上手に攫ってまとめてあるので、
一冊読めば大体の挿話は網羅できますし。
(成立時期とか無視して一緒くたにごっちゃにしてあるので、却って害だといわれれば
そうなんだけども。トロイロスとクレシダは、ギリシア古典というより、騎士物語の範疇で
いいじゃない!かと思えば、『イリアス』に忠実な部分もあったりして。)

後、良かった事といえばオデュッセウスとディオメデスが男前でした!
(オデュッセウスは一貫して策士でなかなか良かった。アメリカ人には好かれてるよね!
ディオメデスは、特にクレシダを跳ね除けるところが素敵でした。良い若者でしたよ~)
ヘクトールも良かったし!ヘクトールを助けてくれる時点でアポロンの株もうなぎのぼりだし!
血に飢えたアキレウスについては、評価が分かれるところでしょうが、私は有りかなあ。
この作者はこういう解釈なのだなあと。
女性陣の扱いについては、皆さん結構奔放で、読んでるこっちがハラハラしましたが、
これも逆に考えると、処女性に重きをおかない、女性その人に価値を置く、という意味で
まあ、アメリカらしいといえばそうだなと。
複数の相手と契ろうとその女性の価値が下がるわけじゃないといわれればそのとおりです。
…なんて言っておきながら、ペネロペイアが他の男と関係するのは嫌なんですが。
(そんじょそこらの男にはペネロペイアは渡さーん(父親気分))
うわー、この人の『オデュッセイア物語』は先に読んだ人の話を聞いて、
その辺りを確認してからでないと読めない…

結論としては、全くギリシア神話を知らないけれど、ファンタジー小説なら読みなれてる人などに、
ざっとトロイア戦争知ってもらいたい時に貸すのに最適な本だと思いました。
確実に、ディオメデス、ヘクトール、オデュッセウスには好感を持つはずです(地道に啓蒙運動)。
でも、アキレウスの魅力をプッシュしたい場合なら、相手の好みを考えてからだなあ、
野性的で若干鬼畜入ったタイプ(遥時3でいうなら智盛タイプ)が好きならこの本、
もっと王道タイプが好きなら(遥時3でいうなら九郎ちゃんタイプ)
ピカードの方を勧めるなあ。
後、一般ファンタジーやラノベよりも児童文学のほうが読みなれている、という人にも
ピカードの方がいいかもしれん(←いや、まんま児童文学ですから)。
ヘクトール好きの人にはなんと言っても映画の『トロイ』をオススメしますが。
なんのはなしや。

追記:蛇足ですが、クレシダって、もともとのクリュセスの娘(クリュセイス)が
→中世にクリュセイデ(Criseyde)標記に
→シェイクスピアがクレシダ(Cressida)と標記
でクレシダ読みになったっぽいですね。
誰やねんクレシダって、って思ってたけど、クリュセイスのことだったのか…
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by mi-narai | 2010-10-25 21:38 | 2010年10月の読書
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