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『テセウス伝説の謎』

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(画像が横向きなのは気にするな!)
近所の店で見つけたアレなチューハイたち。

相変わらずの勇者っぷり!やってくれるぜ3ガリア―!


テセウス伝説の謎―ポリス国家の形成をめぐって (1982年)

太田 秀通 / 岩波書店

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フレイザーの『金枝篇』は時間が掛かりそうなので、その前に図書館で借りた本を読破!
…ということで、次、太田英通著『テセウス伝説の謎』を読み始める。
タイトルだけ見ると、なんだか一般向けのギリシア神話布教本みたいですが、
これ、岩波から出てる、真面目な本なんよ(笑)。

テセウス伝説と銘打ってありますが、神話・伝承のみを論じた本ではなく、
テセウス伝説を中心にアテナイの国家形成を問い直そう、というコンセプトの元
歴史・国家形成史寄りの考察がなされた本です。

今、大まかな古代地中海史、テセウス伝説に対するこれまでの学会意見の変遷、
などをざっと見渡した後、ようやく太田先生のテセウス論検証に入ったところ。

大まかな雑感は全部読み終わってから述べるとして、今日は一つだけ。

ホメロスによるテセウスの記述(3箇所しかない)を検証する段での話。
書いてあったのを見ても、うすぼんやりとしか思い出せないんですが、
ホメロスによれば、アリアドネって、テセウスと一緒にクレタを出奔した後、
ディオニュソスの証言によってアルテミスに射殺されたことになってるそうな。

ええ~~~~!!!??殺されてんの!?
ディオニュソスの証言によってってどういうことさ!?
一体ホメロスはどんな伝承に依拠してたの!?

不勉強がたたってさっぱり分かりませんorz


数日後、読了。
テセウス伝説というのは、太田先生によれば3部に分かれてて
1部は、生まれ故郷からアテナイに来るまでの冒険の数々。
おそらくこれはアテナイがそれなりに発展し始めてから、ご当地の英雄テセウスを
ヘラクレスと並ぶくらいビッグな男にしたてあげよう、という機運の元付け足された
郷土愛と誇りに満ち溢れたエピソードの数々らしい。当然、成立は割と遅い。
2部は、クレタ関連のアレコレ。これが一番古く、その根っこはミュケーナイ時代に遡るんじゃないかと。
3部は、テセウスがアテナイの国政を整えたという、概ね政治に属するエピソードアレコレ。

一番ワタシが気になるのはもちろん第2部のクレタとミノタウロスとアリアドネ周辺なんですが、
先にも書いたとおりこの本はアテナイの国政の変遷を中心に考察する本なので
当然ながら大きく取り上げられているのは3部の国政関連の伝承の数々でした。
や、歴史も好きだし、当時の国政ってどうなってんの?と気にもなってたので
これはこれで楽しかったです。
神話が全て歴史の反映だと考えるのはナンセンスだと思いますが
確かにテセウス伝説って他のギリシア神話のエピソードとは異質な感じがしますよね。
おそらく、反映具合が大きいからだと思う。
(アテナイ人の郷土愛には脱帽です。)
伝承によればテセウスは民主制の創始者だと言われてたりするらしく、
伝承の書き手による差異や考古学から判明したミュケーナイ時代の国のあり方などを手がかりに、
全てのテセウス伝説のどの部分がどのように実際のアテナイ国政の変化を反映しており、
ソコから類推して、アテナイの国政の変遷とはいかなる道筋を辿ったものか、
というところを明らかにするのがこの本の最終目標。

付随してイーリアスの世界、実際のミュケーナイ世界、暗黒時代の状況などについて
書いてあったのも嬉しかったです。

しかし、アテナイか。ドーリア人進入で各地の自治体が解体する中
唯一独立を堅守した町、アテナイ人の誇りも分かる気がするなあ。
アテナイ人、自分たちがトロイア戦争に参戦したってことがものすごく自慢だったらしいですよ。
当時はトロイア戦争が史実だと思われてたから、アテナイ人、本気で『イーリアス』を根拠に
小アジアの町の所有権を主張したりしてたらしい。面白いなあ。
by mi-narai | 2009-09-05 20:22 | 2009年9月の読書
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