藤縄謙三著『ギリシア文化の創造者たち 社会的考察』読了。
とりあえず、覚えていることから記憶をさかのぼりたいと思います。 第4章(最終章)の『自然の荒廃の問題』での、 ギリシアの自然が失われたから多神教→一神教(キリスト教)への移行がスムーズに行われちゃったんじゃないの? という指摘には、ちょっとなるほどね、と思いました。これまでそんな観点から見たこと無かった。 昔から、文明が起こると建築物や造船で木材を使いすぎて周辺の自然が破壊される、 戦争でも大幅に自然が破壊される、とはよく言われてきましたが、改めてしみじみ感じ入りました。 また、デルポイの神官だったプルタルコスが『神託の衰退について』というタイトルの著書を残してる と知って、ああほんとにこの時期古くからの神々への信仰が失われていったのだなと なんだか悲しくなってしまいました。デルポイって名門じゃないの! プルタルコスの時代にはあい続く戦乱などでギリシアの人口が激減していたというのも そんなこと考えたこと無かったので目から鱗でした。 第3章『知識人の経済生活』も面白かったです。 ソフィストや哲学者の生計の立て方を大別した結びも興味深かったけど (①友愛関係に頼る ②知識を売って金を稼ぐ ③異国の権力者の援助 ④全部否定) 単純にそれぞれの個々人の暮らし向きなんかを興味本位で眺めるのが面白かった。 ソクラテスは貧乏暮らしで周りの友人に助けてもらってたとか、 プラトンは実は名門の出身だったので体裁を取り繕う必要があって困ってたとか アリストテレスは意外と派手好きだとか。 それに加えて、各人の学園(ソクラテスの場合は市井で問答してただけだけど)の 運営方式なども説明してあって、なるほどなあと思いました。 アカデメイアは貧乏人でも通える公立校、 リュケイオンは有名進学私立校、ってイメージです。 今のところ、なんとなく、わたしのなかでソクラテス大先生、プラトン先生に比べ アリストテレスはいまいち残念なイメージしかないのですが、 とりあえず、判断はせめて一冊くらいは著書を読んでから下そうと思います。 なんとなく、アリストテレスはプラトンと喧嘩別れしたのかと思ってたけど 必ずしもそうではなく、プラトンの死後自分の道を行った可能性もあるみたいだし。 後、裏で哲学者を支援する各国の王の話もチラッと出てきてて、 シュラクサエのヒエロンやマケドニアのピリッポスの名前なんか見るたびに にやにやしてしまいました。ポリュドロスで読んだアレコレが思い浮かんだですよ。 ポリュドロスといえば、後期のアカデメイアの学長の本名がハスドルバル、と聞いて 「あれ?カルタゴ人?」 と思ったら、ホントにそうだったので嬉しかった。(いつの間にかカルタゴ名が 馴染み深くなってる…!すごいですよ、ポリュドロス先生!) コニー・ブロックウェイ著『純白の似合う季節に』 ロマンス小説はBLと同じく消耗品扱いなので普段感想はとりたてて残さないのですが これは面白かったのでちょっとメモっておきます。 あらすじは面倒なので「BOOK」データベースより抜粋 ヴィクトリア朝末期のロンドン。劇場歌手のレッティは訳あって追われていた。一文無しとなってたどり着いた駅で、偶然にも切符を拾う。それを手に、見知らぬ田舎町に降り立った彼女は、貴族らしい人々から大歓迎を受ける。彼らが招いたウエディング・プランナーと勘違いされているらしい。レッティは隙あらば姿を消すつもりが、依頼人からも厚く信頼され、花嫁に悩みを相談されたりしているうちに、心と体に傷を持つ治安判事のエリオットに恋をしてしまう。レッティは「偽わりのウエディング・プランナー」として最後までやり通せるのか?エリオットとのあいだに通う熱い想いは?ヒストリカルの気鋭作家が軽やかな筆致で描く、RITA賞受賞の傑作ロマンス。 これまでは面白いと思う理由が設定か、ヒーローが気に入るか、それかその両者か、 だったのですが、この本では珍しく主人公のヒロインに惚れました。 とにかく、世慣れてるかと思えば純情なところもある、頭がきれて、姉御肌の、 明るくて前向きで気持ちのいい女の子だったの! DVD 『かもめ食堂』 妹が同僚に借りていたのを又借り。 「フィンランドのヘルシンキでおむすび屋を開く話」ほどの前知識しか無い状態で見始めましたが、 ホントにそんな話だった。 別に大事件が起こるわけではなく、旅行中の日本人がバイトに来るようになったり、 アニオタの男の子が常連になったり、店の前通りがかるたびに中を見ておしゃべりしてた 近所のおばさん3人組がシナモンロールにつられて常連化したり、 ダンディなコーヒー叔父さんがやってきたり、 旦那に出て行かれて悩んでるおばさん(フィンランド人)が、トランクが紛失して 困ってる旅行者のおばさん(日本人)に悩みを相談したり(なぜか話が通じてる!) と、淡々と小さい事件が積み重なるうち、いつの間にかかもめ食堂が 土地に根付いていきました、とただそれだけの話。 内容については特に失望も揺さぶられるような感動もしませんでしたが(=ほんのり面白かった)、 途中で、本当にフィンランド人が 「モイモイ」 と挨拶してるのには感動した!ほんとにモイモイなんだー!
by mi-narai
| 2008-12-05 21:18
| 2008年12月の読書
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