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『植物のあっぱれな生き方』『緑の瞳のアマリリス』『王のしるし』『宇宙はこう考えられている』

植物のあっぱれな生き方 生を全うする驚異のしくみ

田中修 / 幻冬舎

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田中修著『植物のあっぱれな生き方』
読了。
またもや職場の京都弁の上司にただでもらったので。
ああんもう、癒されるわぁ!ほんまかいらしなああああ!!

それはともかく本の内容。
なんだかんだいって結構田中先生の本、読んでますよね、わたし。
先生は一般の方にも分かるようそもそもものすごーく噛み砕いて分かりやすく
書いていらっしゃるのですが、それでも若干詳細に踏み込んだ本と、
一般向けに徹底していらっしゃる本があり、
これは一般向けの方の本でした。
他の御本で既に読んだことのおさらいといった感じで、ときたま新情報が入る感じ。
植物全般のふしぎとか、小ネタが満載なので、先生の本を未読の方にこそ読んでいただきたい。
(わたしはもうちょっと踏み込んだ内容の方が好きだ…)
でも踏み込んだ内容もさらっと当たり前みたいにおっしゃるから、ひょっとして
語り口に騙されてるだけかも…


緑の瞳のアマリリス (ハヤカワ文庫SF ク 12-1)

ジェイン・アン・クレンツ / 早川書房

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ジェイン・アン・クレンツ著『緑の瞳のアマリリス』読了。

どうしちゃったのハヤカワさん!?第2段。
本書は、ハヤカワSF文庫から出ているフィクションです。
『グリムスペース』は毛色の変わったロマンス小説でしたが、
これは普通にロマンス小説です。舞台がちょっと地球じゃないだけ!
でも地球に酷似した植民星だし、ものすごい日常が描かれてるし、
ロマンスSFというよりは、パラノーマルロマンスだろ、分類は。
このジェイン・アン・クレンツという方、ロマンス小説のシリーズではしょっちゅうお名前を
拝見する大御所さんで、いやもう、この名前をハヤカワでみつけてわたしゃびっくりしたよ!!
(この小説の中でも3か所ほどはベッドシーンがあるからね!これから読む人は心するように。)


あらすじとしては、頭はいいけどお固くて道を踏み外したりなんか絶対しそうにない主人公
アマリリスが、アウトローな新鋭実業家と仕事することになり、その際発見した不正と、
先日亡くなった恩師の死が関わっているのではないかという疑問が浮かび上がり、
殺人事件に巻き込まれる、というもの。
SFとミステリーとロマンス小説が2:2:6くらいの割合で混ざってるという、
考えたらお得な一冊。
一見ただのコンテンポラリー(現代が舞台のロマンス小説)みたいなので、
SF部分の説明をすると、
舞台が地球の植民星だということと、
植民星の過酷な自然環境に適応するよう人類の超能力が具現化している世界だということ。
ヒーロー役の新鋭実業家は、相手の能力を察知する能力と、幻影投射能力があって、
主人公には第三者の超能力を強化する能力があります。
こんな中二設定なくても良かったんとちゃうかなあと思わんでもないですが、
ロマンスのスパイスにはなっているので、割り切って読みましょう。ツッコんだら負けです。
途中、ヒーローの昔の知り合いでいわくありげな男性が二人出てくるのでもしやと思っていたら、
案の定本国ではその二人をヒーローに据えたスピンオフが出ているらしい。
ハヤカワさん…。グリムスペースといい、1巻目だけ訳して放り出さないで、
続きも訳して下さいよ…。
(でも、SF文庫から出すと本来のSFファンが間違って買っちゃうから、
イソラ文庫くらいにしといてください。)
イソラ文庫といえば、アシュリンとドラゴンシリーズの1巻も読みました。
あれはあからさまにロマンス小説のくくりなので、感想は省きます。
ヒーロー役のワイバーンが悪者っぽくて良かったですよ。


王のしるし(上) (岩波少年文庫)

ローズマリ・サトクリフ / 岩波書店

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ローズマリ・サトクリフ著『王のしるし』(上)
高校生の時分に一度読んだ本。
面白かったことと、傭兵稼業っぽいことをやってる主人公が
王様の代役に立つ話だっていうぼんやりしたあらすじは覚えてたけど、
さすがに細部はきれいさっぱり忘れていた一冊。
とりあえず、上巻読んでみました。
読んだ当初は自分が若かったこともあって、主人公が大人なイメージ(悪く言えばおじさん)が
あったのですが、年を経て改めて読むと、

…若いな、主人公…!!


で、この主人公、父親はローマに征服されたギリシャの商人で、
母親はその奴隷のケルト人。
父親はいずれ認知する予定だったけど、その前に急死してしまい、
主人公は数回売られ、最終的にサーカスの剣闘士に。
で、立派に務めあげて木剣もらった(つまり、自由になった)はいいけど、
羽目はずして飲み過ぎて捕まって、助けてくれたケルト人から、
自分たちの王の替え玉になってくれんかと持ちかけられるという…

いや、面白いです。
正体を偽っているというスリルと、良く分からんケルト氏族の生活に放り込まれた
主人公の目を通してみた異文化生活が、目新しくてワクワクします。

主人公が連れて行かれたのは、アイルランドからスコットランドに戻ってきたケルトの部族
(本の中ではダルリアッド族と呼ばれてます)で、太陽神ルーフを信仰してます。
要するに主神は天空神で男神です。
一方それといざこざを起こしてるスコットランドのカレドニア族は大地母神を信仰してて、
新旧の信仰形態のせめぎ合いという意味でも面白い。
更に、この地にはケルト族に被支配民の地位に追いやられた黒い人々(先住民ブリトン人)
も住んでて、話を更にややこしくさせてます。彼らも大地母神信仰者。
きっとこんなことがギリシャでもあったんだろうけど、
最終的にあそこはうまいことハイブリッドさせたよなあ!

主人公の(厳密には主人公が演じているマイダー王の)従弟である
コノリーという青年がまたいい味出してます。
これぞ脇役のあるべき姿!
主人公はどうしても無色になりがちだから、勢い、
よりクセのある脇役の方が魅力的に見えちゃうんだよなあ!
今回のワタシの一押し。
いや、でも主人公のフィドルスもいいやつですよ!

上巻の時点で、
ダルリアッドの王マイダーになり変わった主人公が
ばれそうな局面を間一髪かわしつつ、
徐々に馬族(ダルリアッド族)に馴染んでいく過程を楽しんでおります。
敵の女王リアサンの娘、マーナも出てきて、面白くなってきました!

次ィ!!


王のしるし(下) (岩波少年文庫)

ローズマリ・サトクリフ / 岩波書店

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(下)

読了。


ああ、読み終わってしまった…。

多分そうなるだろうとあらかじめ予測はしていたけれど、
やっぱり読み終わってずっしりくるこのただ事でない読後感…。
安心の良クオリティです。
やっぱりサトクリフは再話ものよりオリジナルの方がよほど良いです!
しかし、一度読んだはずなのに、わたくし、最後の場面も、間違って覚えてました。
傭兵主人公が戦いに赴くところで終わるような、戦車関連のような、
なんかそんな記憶があったのに、全く違う場面だったわたしの記憶力あてにならん!!
主人公は誇り高く生き抜き、
最後のあたりなど、惹きこまれてぐいぐい読んでしまった。
以下、この本で気に入ったところ。

・コノリーが最後までナイスガイだった。

・サトクリフの話には珍しく主人公が女の子と相思相愛になった。
(いや、大体の話でも報われるけど、これだけはたから見て分かるくらいなアレなのは
珍しいなと)

・辺境のオオカミ(地方軍団)がちらちら出てきた。
最終的に砦の司令官にまで上り詰めた
隊長の名前がヒラリオンだったりして、『辺境のオオカミ』の方の副官の血縁者かなと
想像させ、ちょっと楽しかった。

・ブリガンテス氏族の女王の反乱についても少し言及があって、
(これも有名な事件のはずだけど、不勉強でまだ詳細を知らない)
確か、『第九軍団のワシ』の主人公の相棒エスカの氏族がブリガンテスだったなとか
過去作とのつながりがほの見えて嬉しかった。


幸せなことに、未読のサトクリフ本がまだ数冊のこっているので、
楽しみに読もうと思います。
未読本に入る前に、これまた高校生の時に読んだきりの『運命の騎士』を再読する予定ですが。
岩波さん、少年文庫にしてくれて、ありがとう!


宇宙はこう考えられている: ビッグバンからヒッグス粒子まで (ちくまプリマー新書)

青野 由利 / 筑摩書房

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青野由利著『宇宙はこう考えられている』読了。

新聞の書評読んで面白そうだったので。


マジで面白かったよ!!!!


散々言いましたが、わたし、ほんとに文系人間で理系の素養が全くないのですが、
その私でもわかるくらい噛み砕いて物理の話が書いてありました流石科学記者!
今流行りのヒッグス粒子のことから、物理学の中の宇宙論の歴史とか、
興味深い辺りが数珠つなぎに書いてあった。もう、読んでる間わくわくしっぱなしで
全てのページがきらきらしてるみたいに感じてましたよ!
宇宙の話って、なんだかファンタジーだよねえ!
今この一瞬も自分がまだまだ分かってない不確定な世界で生きてると思うと、
なんだか不思議な気持ちですよ。
なんたって、世界の7割はよく分かってない暗黒エネルギーで占められてて、3割は暗黒物質(ダークマター)で、解明されてるのは3~4%にすぎなくって、生き物や地球やその他もろもろ日常生活で目にしている全てはこの数%でしかないなんて、あらかじめそのくらいの知識はあったけど、改めて言われると
なんか、すごいなあ。
素粒子も、よく分かってなかったけど、この本のおかげで輪郭だけぼんやり分かったような気になりました。
原子を形作るもっと小さな何かなんですね!物質のもととなる素粒子があるのは当然として、
力のもととなる素粒子や、質量のもととなる素粒子があると考えられていることにはビックリした。
確かに、理科の時間に地球には重力があって、とか習ったけど、
その重力ってそもそもどこから来てんのとか、
いろいろ謎なままだったので。まさか素粒子がくっついてそんなことになってたとは!
一番初めビッグバン前後のあたりは、まだ質量を付加する素粒子がくっついてなかったから
すべては光速で飛び回ってたんだってね!なんか、これもすごい。イメージだけで幻惑されます。
当時は物質と反物質が同量あって、これはぶつかるとプラマイゼロになって
そのままじゃ結局何もなくなるところを、なんかしらんが対称性が崩れて反物質の方が少なくなって、
今みたいないろんな物質が出来たとか、神話聞いてるみたいですよねえ。
その時代の説明出来る限りの方法で世界の成り立ちを語るのが神話なら、
物理学は立派に創生神話だよねえ。
そうすると、理論物理学者は現代の予言者ですよね!!


後、このワクワクする感じが、本来の哲学だと思うんですよねえ…。
(わたしの哲学定義はソクラテスで止まってるんで、おかしなこと言ってる自覚はあります。
でも、要するに、世界に対する知的好奇心みたいなもんじゃないの、ピロソピアって。)
他にも、アインシュタインの相対性理論とか、ひも理論とか、多重宇宙とか、面白そうな話が
いっぱい詰まってて、もう、語りだすと長くなって仕方がないので(理数音痴のわたしではうまく語れないし)
気になる人は本読んでください。
似たようなの、いっぱい出てますし。めっちゃ面白いから!
しかし、こういう話、身近な悩みがちっぽけに思えて割と吹っ切れるのは助かりますが、
考え込みすぎると、自分の存在のおぼつかなさに発狂しそうになりますね。ほどほどにしましょう。
by mi-narai | 2013-08-03 17:22 | 2013年下半期の読書
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