マリア=ジュリア・アマダジ=グッゾ著『カルタゴの歴史』読了。 京都の文化博物館でやってる古代カルタゴ・ローマ展を見に行ったのですが、 その予習として見に行く前に滑り込みで読んだ一冊。 新書なのでざっと知りたい人向け。 (ところどころ厳しい日本語訳もあったような気が…ごにょごにょ。 行為の主体が分かりづらい部分が時々あって、それはちょっと辛かった) で、読み終わって一番分かった事はといえば カルタゴに関してはほとんど資料がなく、分からない事ばかりである ということだったという…。 ローマは第3次ポエニ戦争に勝利した後、カルタゴ市を徹底的に破壊したらしく、 カルタゴ人自身が書いた史書も、図書館もみーんな消滅してしまったんだって。 なので、資料といえば、考古学資料と、ローマを含む周辺諸国の記録に頼るしかなく… おのれローマ…!!! (アタシ、今月に入って何回ローマに腹立ててるんだろう…) こんな腹立たしさはインカ、アステカとエトルリアだけかと思っていたのにやれやれですよ。 以下、読んでいて「おっ!」と思っていた事。 ・カルタゴがセム系の商人の町だというのは元々知っていたのですが、 宗教や固有名詞の語感がやはり聖書(ヘブライ人)と似てるなと改めて思いました。 ・その流れで。 カルタゴの聖所には、幼児の骨がたくさん埋葬されていたことから、 カルタゴ人は幼児を生贄に捧げてたんじゃないかという疑惑があって、 それに関しては、それを史実と認定する意見やら、それに対する反論やら色々あるようですが、 聖書でも息子を神に捧げる話が出てくるので、案外ホントかなという気がしました。 といっても、生贄儀式がそんな頻繁にあったわけではないだろうし、 もちろん捧げる方だってものすごい覚悟でやってたろうから カルタゴ人が特に子供を粗雑に扱ってたとか、無慈悲だなどとは思いませんが。 でも、同じくらいこの人身御供疑惑が純然たるカルタゴの敵対勢力のでっち上げだという気もちょっとするなあ… ・カルタゴの語源 セム語で クアルト(町) ハダシュト(新しい) で縮まって カルタゴ! なるほど! ・メルカルトの語源 フェニキア語でMlkは王を意味する語を形作る ⇒このミルクと、先に出た町を意味するクアルトでミルククアルト⇒ミルカルト! ・エトルリア人の話がちょっと出てきました。嬉しい。 そうそう、そういえばエトルリアの本を読んでいたときにも、 地中海を西へ西へと進出するギリシア勢に対抗するために カルタゴと同盟を結んだ、という段がありました。 ・ヘロドトスに依拠するペルシア戦争初期の頃のポカイア人の海賊行為の話もちゃんと載ってました。 ・カエレの外港で発見されたエトルリア語とフェニキア語の黄金板についての言及もあったよー。 エトルリア語を語る上では避けて通れないこの文字板が、フェニキア本で出てくるとなんか不思議な感じです。 ・後、カルタゴの建設神話の段で、ディードーやエリッサの話が出てきて、 これはアエネイス関連の本で読んだエピソードなので、 …この時代、色々リンクしてるなあと感慨も一入でした。 ・フェニキア諸都市では男女一対の神を祀るのがスタンダードだったらしい。 なら、やっぱりイスラエルでも男女一対の神を祀ってたと考える方が自然ですよね。 (『ダ・ヴィンチ・コード』のネタってそんな大騒ぎするほどのアレか?) それとは関係ないけど、エシュムーンっていう神の名前の語感が好きです。 ・この本のあとがきにもコリントスの滅亡について書かれてました。 「同じようにローマに徹底的に破壊された町でも、コリントスの方はさほど話題に上がらないのに カルタゴの方は日本人の興味をそそるのは、判官びいきのせいか?」という趣旨で 書かれてる一文に出てくるんですが、 わたしはコリントスにも興味がありますよ(※皆知ってる)。 で、この本を読んだのち、 先日、古代カルタゴ・ローマ展を見に京都に行ってきました。 芸術は不勉強なので、絵などを見ても真価をなかなか見極められないのですが、博物は普通に面白いな~。 前述のとおり、カルタゴは一度ローマに滅ぼされてのち、 ローマの属州の都として再び同じ場所に新たに町が建築されるのですが、 ローマ以前と以後ではカラーががらっと変わってしまうのね… (さすがにローマ以後の文物にはいろいろ馴染み深かった。 見覚えのあるあれやこれやがいっぱいですよ) 一番印象に残ったのは、さすが海洋帝国の異名を欲しいままにしたカルタゴ、 その港の立派さでした! 復元予想図や復元予想ミニチュアが飾ってあったんだけどさ! 港の入り口には長方形の商船用船着場があって、その奥にドッグを備えた軍船用の円形の港が隣接してるんですよ! 船とか港とか、ああもう、素敵ワードがおてんこ盛り! (それだけでこんなにハアハアできる自分もたいがいキモいですが) 商人と最強海軍と青い海と空だなんて、どうしてわたしはこれほど自分の好みに合致した民族をスルーしていたのか! これまでの自分を猛省しました。 そんなこんなで、港、船、商人、海軍、など、ときめくキーワードを満喫した後、 そのへんで飯食って、市場好きの同行の友人の希望で錦市場などうろうろして帰ってきました。 あー、楽しかった!
by mi-narai
| 2010-03-31 23:56
| 2010年3月の読書
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