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『アステカ文明の謎』 『食べるギリシア人』 『わたしの名は赤』

アステカ文明の謎―いけにえの祭り (1979年) (講談社現代新書)

高山 智博 / 講談社

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高山智博著『アステカ文明の謎』読了。
ちょっと、現代思想とか古代ギリシアローマとは離れた本が読みたくなって
部屋の積読本の中からチョイスしました。
古本屋で100円で買ったもの。
大分昔の本(ピラミッドが王の墓と断定されてる類の昔)なんですが、面白いよ!

アステカ族の歴史、テノチティトランでの日々の生活、神話などが
惜しげもなく語られてて、アステカにどっぷり浸れること請け合い。
ところどころ、語の意味なんかもさらっと説明されてて、
(首都のテノチティトランって、テ、というのと、ノチというのが
意味のある語幹で、ティ+トランは接尾語らしい)
それもまた楽しい。
そもそも、テスカトリポカとか、コヨルシャウキとか、音の感じが好きです。

とはいえ、やはりというか、思いのほかというか。
血生臭いっス!
月ごとの生贄の模様とかも載ってるんだけど、
(この儀式の詳細を書いた17世紀の原本の数々、
一度読みたいと思ってたんですよね。読む手間省けた)
毎月大量の生贄が!食人が!!もちろん、それにきちんと意味があるのも分かってるし、
王族だって生贄にされるのはある種公平だな、と思うんだけど

…これまで、アステカやインカを滅ぼしたスペインに対しては
なにしてけつかんどるんじゃおどれいてこましたろか、的な
苛立ちを感じていた私ですが、
今回初めて、ちょっと同情した。
インカはともかくアステカに関しては、
いきなり何の知識も心構えもなく生贄儀式見ちゃったら

「ぎゃーー!!!」

てなるわな、そら。
生きた人間の心臓抉り出すもんな。
その後階段下に転げ落として、首切り落としたり、ばらばらにして
食べるために配ったりするもんな。
もちろん、だからといって、スペイン人がその後やらかした
大虐殺とか圧制とかそういうのの言い訳にはならんけども。


食べるギリシア人――古典文学グルメ紀行 (岩波新書)

丹下 和彦 / 岩波書店

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丹下和彦著『食べるギリシア人』読了。
ホメロスの叙事詩のあたりについての記述はは、まあ、そんなもんやろな。と思いながら読みました。
叙事詩の様式美としての肉食。
ちょっと規範から外れてるオデュッセウス。
(→その表れとしての食へのたびたびの言及、とあるけど、
単に、オデュッセウスが場を和ませようとしたり上手に演技してる、
という話なんじゃねえの?とも思う)
丹下先生はどうやら酒好きらしく、何度か飲酒について言及してあるのですが
なんとなくそのあたりは共感。
ホメロスは好きな分野なので若干点が辛くなりますが、その他の項目は面白かったです!
悲劇の登場人物は物を食べない(食べるシーンがない)とか
(喜劇にはたくさんある)
ギリシア人はどの程度魚を食ったのか、とか
グルメとか、食客とか、トイレ事情について、
ギリシア文学全体を通して、食という観点から語った
軽いエッセイ風の読み物です。
読みやすかった。二日で読み終わったもん!
あとがきを読んだら、それもそのはず、大学の授業で使ったネタ集らしい。
それにしても、行間から紛々と西日本臭が漂ってくるなと思ってたら
やはり案の定岡山の方でした。勤務地は関西。
あとがきに出てくる地名も土地の人間しか知らんような
マイナーな地名やしな。ちょっと好感度がアップしました。


わたしの名は赤〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)

オルハン パムク / 早川書房

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オルハン・パムク著『わたしの名は赤』読み始めました。
前から読もうと思ってたんですが、新訳で文庫化してたので思い切って購入してみました。
一人称で語られていく本作ですが、のっけが殺された男の語りだった。
まずもってびっくり。
でも、オスマン帝政時代の話なんでそれだけで楽しみです。

登場人物たちは、それぞれほんのちょっぴり自分勝手で自己中心的で
その辺りがものすごいリアリティです。
こゆいゼ、トルコ人…。
でも、そのリアリティのせいで、全く歴史小説って感じがしない。
普通の現代のその辺の人の話みたいに、すんなり背景に入ってゆけます。
宗教も生活習慣も違う国の話なのにすごい!

で、最初に殺された細密画家の犯人探しと並行して、
細密画について、ひいては絵画について、絵画というものの
個性と技法と永続性について、語られてゆくのですが、
そういう絵画についての文章がまた、読んでるだけで楽しいのです。
そもそもわたし、いまいち西欧絵画の良し悪しが分からんので
(タイル職人や建築家の職人技の方に感動してしまうのです)
こうと決まった鑑賞法も無く、なので文中で登場人物の語る
絵画の鑑賞法など読むと、素直にそうか、そういうもんなのか、と
感心してしまいます。同じ絵画でも視点が違えば評価は大違いだしなあ。


もちろん、そんなお堅い話ばかりじゃなくて、
主人公の恋も絡んでて、エンタメとしても面白いし、哲学書みたいな趣もあるし、
16世紀イスタンブル(ひいてはイスラム世界)の雰囲気にも浸れるという
一度で何粒もおいしい稀有な作品です。
わたしは好きだ。
とりあえず、今上巻の最後の辺りなので
続けて下巻も読んでしまおうと思います。


それにしても、旅人(男)が追いはぎに当たり前みたいに
ケツ掘られてるのに吹いた。
そういうもんなの!?


北前船始末―緒方洪庵浪華の事件帳 (双葉文庫)

築山 桂 / 双葉社

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築山『北前船始末―緒方洪庵浪華の事件帳』
上記のノーベル賞小説が思いのほか面白く、なんだか霞んでしまうこの作品ですが、
単独で読んだら別に悪くないんですよね、
かつてNH/Kで『浪速の華』としてドラマ化されてた本作、
ドラマを先に見ちゃったからか、ドラマの方が面白かったかもなあ。
せっかく大阪が舞台なのにそんなに大阪色がない気がするし、
(言葉で大阪はああだこうだと言うだけで、実感がともなってないというか、
読んでその成り行きや情景から地元の特色がにじみ出る、みたいな
そういうのがないのよ!!わたしは更なる地元色を求めていたのに!)
あと、妙に『闇の~』とか使うのが厨っぽくて恥ずかしい。
それを除けば、普通に時代小説としては面白いです。


多読
ケイ・ヘザリの『American Pie』(レベル4)
途中までで返却期限がきて返したので、また借り直してみた。
幼いころの思い出とか、アメリカ人というよりはテキサス人としての
アイデンティティの方が強そうな作者ですよ。
そのあたりには共感するなあ。
後、アメリカの日常って、もちろん日本の日常と同じところもあるけど
だからよけいに違うところが際立ってて、
その差異が、なんかファンタジー読んでるみたいで面白い。
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by mi-narai | 2012-04-30 15:06 | 2012年4月の読書

『はたらけ、ケンタウロス』  古代ギリシャ展、他

はたらけ、ケンタウロス! (ゼロコミックス)

えすとえむ / リブレ出版

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えすとえむ著『はたらけ、ケンタウロス』
発売前からタイトルが気になってたんですが、
発売後、現物を手にとってビックリ。


ほんとにケンタウロスが働いている…!!


法律が施行され、ケンタウロスの雇用も順調に進んでいる現代日本で、働くケンタウロスたちの話。
(一部外国で働くケンタウロスの話もアリ)。
ギャクだけでもなく、時にしっとり読ませもする実に好みの一冊でした。
いや、面白かった。
この方の漫画、シリアスすぎるものは肌に合わん、と思ってたけど、
このくらいの明るさのやつは好きだな~(他のはBLですけども)。

他に、漫画といえば
『月光条例』と
『昴』&『Moon』
をそれぞれ途中まで読みました。
『月光』の方は、イデヤがあんまり片思いが激しすぎて段々可哀想になってきました。
『昴』の方は、これまた天才を主人公に据えた漫画なんですが、

マヤちゃん(C・ガラスの仮面)っていい人だったんだな…

としみじみ思いました。そう思わせる主人公のアレっぷり。いやでも漫画は面白いです。

『テルマエ・ロマエ』3も読みましたよ。
個人的には好きな漫画ですが、あんまり世間で騒がれすぎると
「…ええっと、そこまで言うほどな、の…?」と却って疑念が湧いてきたりも…
大体、映画化ってどういうことだ!!



古代ギリシャ展×3
何が×3なのかというと、

既に3回行ったという意味で(誇らしげ)。

いやでもまだ後2回は行くつもりですから!
円盤投げの兄ちゃんは、幾度もの鑑賞に堪える尻を持っておる…!!
(T様、その節はお世話になりました。
ワタクシ、マントの前をはだけて前面を露出させるクセにしっかり靴を履く
やつらのハイセンスっぷりが大好きでございます。
それにしても、まさかT様ものっぺら女神がダブルで出現する呪いを蒙るとは…)
各時代のものがまぜこぜになってるのはどうかと思うのですが
(テーマ別だから仕方ないか)、
ギリシアってだけで楽しいし、思いのほか満喫しております。

しかも、「イタリア・ヴルチ出土」の壺が超多いんだ…!!!この古代ギリシャ展!!!
(さすがギリシャ大好きエトルリア人!)

その上、あまつさえ、エトルリア製作の遺物が少なくとも3つはありましたよ…!!!

おおおお、生きてるうちにこの目でエトルリアの遺物を見ることが出来ようとは…!!!
見習い、感無量です。

以下、心に残った事を箇条書きに。

・2回目に行ったのは、青柳先生の講演を聞きに、なんですが、
古代ギリシャの男性・女性の彫刻と、オリンピックについてのお話が聞けて、超楽しかったです。

・ヘルメスの髭率の高さに震撼した。そして、
「髭のヘルメス、…案外かっこイイんじゃね?」などと思っている自分にも震撼した。

・部屋の片隅にそっと置かれているソクラテス大先生の小像にはときめきました。
いいなあああ、プラトンは大先生の肉声が聞けてよう…!!

・しかし、あれやこれやの素晴らしい彫刻たち、数千年も昔の人がアナログで作ったってのに
いちいち感動します。手の甲とか、血管浮いてるし!!

・彫像の足が綺麗なんです。男性像が特に綺麗。これから見に行く人は是非注目してください。

・噂の粒金細工をこの目で見れたのも嬉しかったです。想像よりも細かかった。

・酒盃でかすぎだろ!!

・でもって、酒を飲み干したら、エロ画が現れる仕様なのも、どうかと思いました。
 そんなんなってたら、何杯でも飲んでまうやないかーーー!!!

・酒盃を使っての美青年への愛の告白もイイと思います。
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by mi-narai | 2011-04-26 22:05 | 2011年4月の読書

『大阪不案内』 『トロイア戦争物語』

大阪不案内 (ちくま文庫)

森 まゆみ / 筑摩書房

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森まゆみ『大阪不案内』読了。
図書館で目があっちゃったので、とりあえず借りてみました。
エッセイ集なので、さらっと読了。
著者の森さんは東京人なので、色々「へー、こんな風に見えるんだなあ」と
目新しい視点で書いてあって面白かったですヨ!
とはいえ、ワタクシだって大阪にはものすごく不案内なわけですが。
しかし、東京の人が書いたにしては随分贔屓目に大阪を見てるなあと思ったら、
大阪で発売されてた雑誌か何かの連載だったようで。そりゃ悪くは書かんわな。納得。


トロイア戦争物語 (現代教養文庫)

バーナード エヴスリン / 社会思想社

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バーナード・エヴスリン著『トロイア戦争物語』読了。
貸してくださってありがとうございましたー!
読む前に、色々噂は聞いていたので、一体どのくらいはっちゃけた本なのかと
半ば期待、半ば不安に思いながらページを進めていったのですが、

…あれ?意外と普通に面白い、な……

もちろん、ギリシア神話として読むと、いろいろ捏造もあり、あまり神話の成り立ちとか、
そういった諸々の経緯に敬意をはらってない作者なのではと、疑問に思わせられる部分もあるのですが、
純粋に読み物として見ると、なかなかいい出来なんじゃないかと。
話の流れもスムーズで、古典作品を読む、といった緊張感もなく
肩肘張らずにファンタジー小説読むみたいな気軽さで読めました。

うん、本当にそんな感じ。ギリシア神話を元に、エブスリンさんが書き下ろした小説、といった態。

これをそのままホメロスの『イーリアス』だと思われることには抵抗がありますが、
結局どの時代のどの作者も同じような手順を踏んでギリシア神話を自分の時代に即した話に
うまく作り変えているんだからして、アメリカ人が語りなおしたギリシア神話だと思えば
これはこれで良いのではないでしょうか。
何より読みやすかったし。
一応、叙事詩の環のその他のエピソードも上手に攫ってまとめてあるので、
一冊読めば大体の挿話は網羅できますし。
(成立時期とか無視して一緒くたにごっちゃにしてあるので、却って害だといわれれば
そうなんだけども。トロイロスとクレシダは、ギリシア古典というより、騎士物語の範疇で
いいじゃない!かと思えば、『イリアス』に忠実な部分もあったりして。)

後、良かった事といえばオデュッセウスとディオメデスが男前でした!
(オデュッセウスは一貫して策士でなかなか良かった。アメリカ人には好かれてるよね!
ディオメデスは、特にクレシダを跳ね除けるところが素敵でした。良い若者でしたよ~)
ヘクトールも良かったし!ヘクトールを助けてくれる時点でアポロンの株もうなぎのぼりだし!
血に飢えたアキレウスについては、評価が分かれるところでしょうが、私は有りかなあ。
この作者はこういう解釈なのだなあと。
女性陣の扱いについては、皆さん結構奔放で、読んでるこっちがハラハラしましたが、
これも逆に考えると、処女性に重きをおかない、女性その人に価値を置く、という意味で
まあ、アメリカらしいといえばそうだなと。
複数の相手と契ろうとその女性の価値が下がるわけじゃないといわれればそのとおりです。
…なんて言っておきながら、ペネロペイアが他の男と関係するのは嫌なんですが。
(そんじょそこらの男にはペネロペイアは渡さーん(父親気分))
うわー、この人の『オデュッセイア物語』は先に読んだ人の話を聞いて、
その辺りを確認してからでないと読めない…

結論としては、全くギリシア神話を知らないけれど、ファンタジー小説なら読みなれてる人などに、
ざっとトロイア戦争知ってもらいたい時に貸すのに最適な本だと思いました。
確実に、ディオメデス、ヘクトール、オデュッセウスには好感を持つはずです(地道に啓蒙運動)。
でも、アキレウスの魅力をプッシュしたい場合なら、相手の好みを考えてからだなあ、
野性的で若干鬼畜入ったタイプ(遥時3でいうなら智盛タイプ)が好きならこの本、
もっと王道タイプが好きなら(遥時3でいうなら九郎ちゃんタイプ)
ピカードの方を勧めるなあ。
後、一般ファンタジーやラノベよりも児童文学のほうが読みなれている、という人にも
ピカードの方がいいかもしれん(←いや、まんま児童文学ですから)。
ヘクトール好きの人にはなんと言っても映画の『トロイ』をオススメしますが。
なんのはなしや。

追記:蛇足ですが、クレシダって、もともとのクリュセスの娘(クリュセイス)が
→中世にクリュセイデ(Criseyde)標記に
→シェイクスピアがクレシダ(Cressida)と標記
でクレシダ読みになったっぽいですね。
誰やねんクレシダって、って思ってたけど、クリュセイスのことだったのか…
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by mi-narai | 2010-10-25 21:38 | 2010年10月の読書

『ギリシア案内記』コリントス部分のみ

ギリシア案内記〈下〉 (岩波文庫)

パウサニアス / 岩波書店

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パウサニアス『ギリシア案内記』コリントス部分のみ

ええ、シシュポスさんのためだけに読みました(断言)

大体知ってた事ばかりではあったのですが、
逆に


「えー!!このエピソードってパウサニアスかー!」


という驚きの連続でもありました。
メーデイアの子供を殺したのはコリント人たちであった、という本来の古伝が載ってるのもこの本ですヨ!

後、ローマ人の征服で元のコリント人が全て滅亡した…てマジか!
なんてことしやがる、ローマ人め…。エトルリア人の時にも感じたこの憤りのデジャヴっぷりよ…)

それにしても、武装のアプロディーテに1000人の神殿付き娼婦を抱えるコリントスは
すごいと思いました。
ああ、こうして憧れの地が増えていくのですね…。
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by mi-narai | 2010-03-17 00:45 | 2010年3月の読書

『ギリシア悲劇全集6』 『ギリシア悲劇ノート』,他

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これまた近所の店で見つけた酒。
これ、ビンの色じゃなくて、マジで酒の色がピンクなんですよ!?
一見イチゴミルクみたいなのに、飲んでみたら、普通ににごり酒でした。


後、岩波さんから『ギリシア奇談集』が再販されてて嬉しかった^^!!
さすが岩波さん!!愛してるーー!
この調子で、『食卓歓談集』と『新編・木馬と石牛』もお願いしまっす!!



あんまり読んだ本が溜まってきたので、全部感想かけてなくても、ちょっとずつでいいから
アップしていく事にします。


エウリーピデース II ギリシア悲劇全集(6)

岩波書店

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『ギリシア悲劇全集6』

※これまたえっらい昔に読み終わりすぎて記憶が定かではございません。
当時の携帯に打ち込んだメモを見つつ、さらっと流すにとどめておきます。


解説を読みつつまたも不安がぶり返す。
今回は「アンドロマケー」「ヘカベー」「ヒケティデス」「ヘラクレス」の4篇。
解説には、毎回、当然のことながらその悲劇がどの伝承に基づいているのかが、
分かりうる限りで詳しく書いてあり(勉強になります)、
それに照らしつつ、どの部分が作者の改変か、そう考える理由、なども書いてあるのですが、

…エウリピデス先生、革新的過ぎる……

現在出回ってるギリシア神話本って、悲劇の筋をそのまま採用して書いてたりするじゃないですか。
でも、解説を見て
「違うんや、これは悲劇作家の創作した文学的展開であって元ネタはまた違うんやで~~~!!!」
と叫びたくなりました。

そうは言っても、ホメロスからして元ネタになった神話のエピソードに作者の改変が加えられてる
(と推測される)んだし、「神話」というのは理系の学問と違って、
人間自身が作ったものであるし(神話だって一番最初は、その時代の人なりの、
世界を理解する方法=科学だったのかも知れんが)、
創作の上塗りが続けられてると考えれば、悲劇作品が文学だから神話ではないと
断ずるのは早計か…?
悲劇が世に広まって(特に3大悲劇詩人ほどの有名な作家の作品は元の伝承より人々に知られている)
それが前にあった伝承よりもスタンダードになれば、悲劇の筋のほうが本筋ってことになるのでは…

などと考え始めると、どこに線引きして良いのか分からなくなってきました。
まあ、普通にギリシア神話に接する場合はどの原本もどの創作も平等に楽しめば良いけど、

このサイトはホメロス寄りのサイトだからな!
同じ対象に対して、ホメロスと他の原本で競合した場合は、
ホメロスの言ってることのほうに重点をおきますけどね☆
(ホメロスファンを宣言するというのはそういうことだ!)





…と、解説を読んで不安を書き立てられはしたものの
本編を読むと、別に、そこまで言うほどややこしくも難しくも矛盾があったりもしない気がします。
多分、エウリピデス好きの学者の先生はエウリピデスに夢を見てるんですヨね!
そんな先生方が大好きです☆


「アンドロマケー」
以前読んだほどのショックはありませんでした(良かった)。

前回は、アンドロマケ―があまりにふてぶてしく感じてショックだったのですが、
今回読み返して、そうでもないと思った。
子供の父がいくらネオプトレモスとはいえ、不在のネオプトレモスでなくて
一貫して一心に亡きヘクトールに呼び掛けるアンドロマケーがいじらしいです。

…しかし、一作一作ごとに、作者の思惑を表現するコマとして登場人物が配置されるから、
連作でない限り作品間の統合性(登場人物の性格上の統一性も)はほぼありません。
でもってやっぱりスパルタバッシング激しい。(ペロポネソス戦争中だからってさ)

ピロクテーテースのネオプトレモスは確かに良かったけど
オレステスとどちらの肩を持つかと問われればオレステス!


「ヘカベー」
解説に書かれていたヘカベーにおける矛盾や何やかや、その説は面白かったけど、
本編を読むと、単に「ヘカベー、不幸が続きすぎて、2つめの不幸で切れたんと違うか?」
と思いました。
そこまで違和感無かったけどなぁ


「ヒケティデス」
雷に撃たれて死んだ者は神に捧げられた者として撃たれた場所に埋葬されて信仰された



…てことは栃木県は聖なる地なのか!?




「ヘラクレス」
それにしてもテセウス男前やなぁ(惚れ惚れ)
なんだ?テセウス男前伝説を打ち立て中か、エウリピデス?

エウリピデスのおかげで
わたしの中でのテセウスイメージが急上昇中ですヨ!
くっ、アテナイ市民の政治的意図に乗せられてしまった!!



…ふー。読書中に携帯に打ち込んだメモを拾ってみましたが、
ほんと、ろくなこと考えてないですね。
もうちょっと文学に親しんで深く読み込もうぜ、自分…


ところで、勝手に一方的に見習いに親しみを感じられてしまっている明子先生、
実は定年されてたんですね!!
ものすごい好みが合いそうな感じから、もっと若いかただと勝手に想像してました。
そうか、そんな重鎮なのにソポクレスのオレステスプッシュでイタケ人に好意的でいらっしゃるなんて
(勝手に決め付けんなっての)。
ますます明子先生のファンになりそうです。



ギリシア悲劇ノート

丹下 和彦 / 白水社

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丹下和彦著『ギリシア悲劇ノート』読了。

まえがきで、

「文学的に読むことは時に独善的な読み方に陥り、作者が意図していないことまでもそれらしくいい募る例がなきにしもあらず。それはそれで意味がないわけでもないが。」


という反省ともとれる言葉が綴られていて、つねづね文学評など読むとき
「うはははは、作者はそこまで考えてねえって!ま、この研究者がこう見てるって意見自体は
ものっそい面白いし読むの大好きだけどな!!」
などと思っていたワタクシ、やはり学者の方もそう感じていたのだなあ、などと
感慨深く思ったりいたしました。ええ。

中公新書の方から出ている同作者の本が真面目な悲劇解説であるのに対し
こちらはどうもそれに入らない瑣末な覚書を集めたような本らしく、
そんなに肩肘張らずに読めて楽しかったです。

しかし、最後の最後、エウリピデスは女嫌いかどうか、という一章があって、
そこではエウリピデス先生、えらい書かれっぷりでした。
エウリピデスは同時代のアリストパネスからも揶揄されたほどの女嫌いで、
2度の結婚、2度とも嫁の浮気で失敗した根暗い男で、
作品中の登場人物の女性批判には、その自分の辛い経験からの
苦い思いが滲み出てんじゃないかとかなんとか。
一般的にそう見る意見も強いんだそうな。
(まあ最終的にはリアリストとして冷静な観察眼を持って作品を書けば、
どうしても男性作家は女性ぎらいっぽく、女性作家は男性嫌いのようになってしまうもので、
エウリピデスが他人の目にはそう見られてしまうのも、実際のところは
彼が現実をそのまま冷静に受け止める力量のある作家だってことなんじゃないかな?
…という無難なところに着地してましたが)

その段では、ヘシオドスもホメロスも、皆揃って「女嫌い」のくくりに入れられてたんですが、

ヘシオドスからは明確な悪意を感じますが、
別にホメロスからは特別女嫌いっぽい臭いは感じないけどなあ。
確かに、というか、ホメロスの描く女性は強い気はしますが…(特に女神は)

そう感じてしまう丹下先生自身が女嫌いなんじゃねえのか?などとと思わず勘ぐってしまいました。

内容とは関係ないですが、一番最後のあとがきの更に最後、
筆をおいた地名を見て、吹きました。
なんだよ和彦、お前ライナー乗って通ってんのかよ!(だから馴れ馴れしいって)


トルコ語のしくみ

吉村 大樹 / 白水社

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『トルコ語のしくみ』途中。
白水社の語学シリーズのうちの一冊。
『古典ギリシア語のしくみ』と二冊ならんでたのにこちらを買ってしまうあたり
西洋古典好きとしてはまだまだです。スミマセン。

や、発端はごくごく些細な事だったんですよ。
前にも言いましたが、ワタクシ、トルコポップス、結構好きなんですが、
そのうちの一曲の曲名を、図書館で辞書引いて調べようとして


トルコ語の辞書の引き方が分からない…!!!


という衝撃の事実に打ちのめされたのでございます。
そりゃむかーし、大学時代週一でトルコ語かじったけどさ、
そんな化石みたいな知識、すでにして記憶の彼方ですヨ。
それに、トルコ語って膠着語だから単語の後ろにどんどんいろんな要素がくっついていってさ、
そのくっつき方が分からないと元の単語が分からないという…
(日本語でも、そうですね、仮に「たとえあなたが来なくても」という文の意味を知りたかったとしたら、
どうでしょう。「たとえ」はそのまま引いて大丈夫。「あなた」、も大丈夫。
でもその後の「来なくても」が難問じゃない?まず、「ても」が逆説の接続詞だと気付いてそれを
取らないといけない。次に「なく」が否定形「ない」の変形だと気付いて、これも取らないと
いけない。さらに「来(こ)」が、「なくても」にくっつく時に変化したと気付いて
「来る」の形に直して辞書を引かないといけないんですヨ。
トルコ語でもおそらくこのようなややこしい手続きが必要かと思われます。
なら変化のない孤立語である中国語なら辞書引くのは簡単だろ、と思うかもしれませんが
あれは読み方で並べてあるから、まずそれを調べないといけないんで、
こっちはこっちで面倒なことこの上ないですヨ。
まあ例えば「手紙」という単語を調べたいとしましょうよ。
日本語だと「てがみ」だから「て」の項を調べりゃいいけど、中国語でこれはなんて読むんだ!?
仕方がないから巻末の、部首索引や総画数索引でまず「手」の読み方を調べて、「shou」であることを
突き止めた上で、次に「S」の第3声の項目を引かなきゃならない。ああああ、面倒!
(ちなみに正解は、「shou zhi」で、トイレットペーパーの意)
そう思えば、英語は辞書引くのが簡単でいいよな…。動詞の変化も単純だしさ。)



そんなわけで軽く読めそうなこの本を手にとって見ました。
読んでるうちに、昔習った事をぼんやり思い出してきましたが、所有の形については忘れてた。
やっぱり語学は奥深いなあ…(奥深すぎて絶望しますヨ)
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by mi-narai | 2010-03-04 23:31 | 2010年2月の読書

『ギリシア悲劇全集5』


『ギリシア悲劇全集5』

つづき


『ヒッポリュトス』

ヒッポリュトスの下敷きになったエピソードって、アレですよね。
人妻が継子なり夫以外の男に恋慕して、アプローチかけて、
潔癖な相手の男に手ひどく断られ、逆恨みして、
嘘の情報を流して相手の男に害を与える、というアレ。
(アキレウスのお父さんペレウスさんも、たしか似たような被害に遭ってたはず。)



今回読みながら、
おそらくこのヒッポリュトスを前提として語られたであろう
『王書』のスィヤーウシュ王子のアレを思い出してしまいました。

(いきなりあらすじ)
~カイ・カーウースの息子スィヤーウシュ王子と王の後妻スーダーベ姫の話~

カーウース王の後妻スーダーベは若く美しい王子スィヤーウシュに恋し、
彼を何とかものにしようと目論みます。
ここまでは、他の神話と同じです。
しかしここからが一味違う。
相違点の一つ目は、きっぱりと撥ね付けた挙句陥れられた
他の神話の王子達の運命を彼が知っていたという事。
「(ここで下手に動けばわたしは破滅だ。屈辱を我慢して彼女に従う振りをするしかあるまい)」
と考えます。
結局、のらりくらりと彼女のアプローチをかわすうち、真意を気付かれ、スーダーベに怨まれて
お決まりの強姦の振りをされるのですが、
次に違うのが、それを訴えられた父親のカーウース王!

彼は謀略と、慎重で名高い王。石橋を叩いて渡る性格だったのです。

妻の言い分を聞き、息子を疑いながらも、息子の言い分も公平に聞き入れ、
二人の言い分に間違いはないか、息子の身体検査までさせて検証します。
その結果、爪に繊維も入ってないし、残り香も全くない。
心の中で息子は無実、と結論づけ、証拠を固めるため、占星術師やらに占わせて証言も取ります。
結局、スィヤーウシュが罪判じの火渡りをする事になり
見事それをやり遂げたために潔白が明らかになり、事無きを得ます。
(この後、スィヤーウシュはスーダーベを許しますが、
継母に遠慮して自ら国を出、結局そのせいで不幸な運命を辿ります。
ちょっと気の毒です)


このペルシャの話って、絶対このヒッポリュトス型の話を聞いたペルシャ人が、
「王子の不幸をなんとかしたい!」「女の嘘になんか騙されたくない!」
と思った結果の所産ですヨ!(決め付け)




閑話休題、
『ヒッポリュトス』の場合は、キャスティングは、
渦中の年上キラーの主人公がトロイゼンの王子ヒッポリュトス、
彼に恋するのが、アテナイ王テセウスの後妻、クレタの王女パイドラーです。

このヒッポリュトスこそ、おそらく、上のスィヤーウシュ王子が
「あの轍は踏みたくない…」と思ったまさにその人。
ヒッポリュトスに激しく拒絶されたし返しに「彼に乱暴されました」と遺書を残して
自殺したパイドラーの言葉と行動に騙されたテセウスは、
呪いをかける言葉を口にして、そのせいでヒッポリュトスは死に到ってしまいます。



もっと昔、一番最初にこのエピソードを知った時は、わたしも普通に

「ああ、継母に言い寄られて、人道に則って断ったからって逆恨みされて、
殺されちゃうなんて、なんて気の毒な!!
父親も父親ですよ!なんで奥さんのほう信じちゃうのさ。
息子の性格くらいどうして把握してないの!女の色香に負けおってからに!」。

ほどに思ってたんですが、今回は、読み返してて、


なんかヒッポリュトスに腹が立って腹が立って…


なので、注釈に書いてあった
『エウリピデスはヒッポリュトスの狭量を批難している』、の文句に
エウリピデスが一気に好きになりました。

わたしはこれまで知らなかったんですが、エウリピデスって最初に別の『ヒッポリュトス』を
書いてたんですってね。
これに出てくるパイドラーはメーデイアに負けず劣らず押しの強い激しい女性で、
あまりの激しさに世間の評判はすこぶる悪かったらしい。
で、その後におそらくソポクレス作の、同じネタに取材した『パイドラー』が、発表され、
それをはさんで、最後に、エウリピデスは最初のものを改作して現存している『ヒッポリュトス』を物したと。

2作目の『ヒッポリュトス』は1作目とどう違うかというと、
主にパイドラーの人物造詣らしいのです。
1作目のパイドラーが自分から率先して恥も外聞もなくヒッポリュトスに言い寄り、
ヒッポリュトスが拒むや一転恨みを募らせて彼を陥れるという猛女ぶりだったのに比べ
(この1作目の『ヒッポリュトス』を読めば、わたしも素直にヒッポリュトスに同情すると思う)
2作目のパイドラーは、一貫して恥を知る、慎ましい女性なんです。
継子ヒッポリュトスに対する愛が間違っていると知っており、
最後まで秘していよう、ばれてしまうくらいなら死を選ぼう、
と思い詰めてしまうくらい善良な女性なんです。
(→彼女がこう変わった代償に、プロロゴスが、アプロディーテが現れて、すべては自分を顧みない
ヒッポリュトスへの懲らしめであると語るものに変更になったとか。
パイドラーは被害者なのです。
アレっスよね。トロイア戦争の責めをヘレネーに負わせないために、アプロディーテの介入が
裏にあったと語らせるロジックと同じというか。つまり、1作目の『ヒッポリュトス』でパイドラー本人が
持っていた事件への積極性とか、女の怖さとかを、2作目ではアプロディーテが肩代わりしてるんです。
なんか、こう考えるとことあるごとに引っ張り出されて、アプロディーテもいい迷惑だなあ…)
対するヒッポリュトスは、正義感が強く、潔癖で、アルテミス信者で
一生恋も肉欲も経験しなくていい、と考えている若干極端な若者。



言っちゃっていいスか。
…こういう自分だけが正しいって信じ込んでる人、苦手なんですよ…




色々考え、吟味した上でこれが最善かと判断して、それを選ぶ、というなら分かります。
そうありたいものです。
でも、まったく他を顧みない、自分以外の者の気持ちなんて最初から眼中にない人って、
…そういう人ってどうなのよ!!プライドが高いのは別に悪い事じゃないけど、
だからって勝手に自分基準で人に高低差つけて、自分より低いと判断した人は軽蔑って、ひどいよ!!
(↑※大体こういう場合軽蔑される自信が大有りなため、少々感情的になっております)

大体この若造、アルテミス信者なんだけど、
アルテミスには多産の女神としての側面があることなんて丸無視して
自分に都合のいいところだけしか見てないんですよ!
それに、愛やら恋やらを軽蔑する割に、自分のアルテミスに対する執着も
十分粘着やっちゅうねん!
こいつの潔癖さは世間を知らん、未経験さもその一因なんですよ!
要するに青い!

…などと、ふつふつと湧き上がる怒りを感じつつ読み進んでいたら、
注釈に、ワタシの心を読んだようなタイミングで(上でも書いたとおり)

『エウリピデスはヒッポリュトスの狭量を批判している』

という意味の事が書いてあって、思わず膝を打ってしまったという。

まあ、第1『ヒッポリュトス』では激烈だったパイドラーが今回大人しくなったってことは、裏返せば、
ヒッポリュトスに同情できる要素が減ったってことですもんね。

とりあえず、エウリピデスは最後に救済を用意してて、最後にデア・エクス・マキナで
アルテミスが現れ、テセウスは自分の過ちを知り、ヒッポリュトスに後悔を伝え、
そんなテセウスをヒッポリュトスは許し、こうしてトロイゼンではヒッポリュトスが祀られましたー!
…で終わるんですが、
結局、ヒッポリュトスは最後の最後までなんの反省もせず、自分は正しいと思ったまま死ぬんですよ。
(※作品としてのその展開に不満があるわけではないんですが)
なんだかそれが個人的に悔しくて、脳内妄想で補完してみた。


~あらすじ~
※これはテセウスが不在の時の話。

潔癖なヒッポリュトスにパイドラーが秘めた恋をし、
日に日にやつれていく彼女を心配した乳母がお節介をして彼女の思いをヒッポリュトスに打ち明け、
それを聞いたヒッポリュトスは継母からの邪恋に当然の如く激怒、
パイドラーが廊下の影で立ち聞きしているのを承知の上で
彼女を拒絶する激しい言葉を濁流のように吐き出します。
愛する人からのあまりの拒絶に、パイドラーは絶望、
さすがに王女としての誇りもあり、最後の最後にヒッポリュトスに一矢報いる心で、
ヒッポリュトスを陥れる遺言をしたためて自殺。

ここまではいっしょ。

ここから捏造です。

パイドラーの死の直後というタイミングで帰って来たテセウスが、
もしも、パイドラーの手紙を見て、全てを悟ったとしたら、


と妄想してみました。

なんとなく、この人、パイドラーの様子がおかしいことには前から気付いてたんじゃないでしょうか?
自分も昔色々恋をした経験があるだけに、薄々パイドラーの気持ちには感づいていたに違いない。
でも自分が口出しすれば大事になるし、パイドラー自身が踏み出す気がなさそうなのを見て、
静観の構えだったと。
もともとパイドラーとは、以前ゴタゴタしたクレタとの関係修復のために政略で結婚したんだろうから、
それほどの執着を彼女に持っていたわけでもないだろうし。
お互い割り切ってたんですよ。
なので、別に彼女がヒッポリュトスに恋慕していたからといってそこまで腹を立てないだろう。
むしろ、今回パイドラーの死を知ったテセウスは、
「ああ、とうとう踏み出してしまったんだな」と
確認するように事態を理解し、彼女を憐れに思ったのでは。
息子のアマゾンの母親似の気性の激しさも、潔癖性も、アルテミス崇拝も全部知っていたテセウスは、
パイドラーの恋心を知ったヒッポリュトスがさぞかし手ひどく拒絶したろうと、容易に想像がついたはず。



息子の行動は倫理的に正しい。
しかし、正しい行動が、それゆえに人を傷つける事もある。
自分の意に反してまで受け入れろとは勿論言わぬ、だが
どうしてもう少し彼女の気持ちを汲んでやれなかったのか。
自分の息子は人の痛みが分からないのだろうか。
ここまで独り善がりで気取った男なのか。
アルテミスと一緒に狩などして、すっかり自分も神になった積もりか。
この顔を見ろ。
パイドラーの死を驚きはすれども、
パイドラーにした自分の仕打ちに対しては微塵の後悔も感じてはおらぬ。
むしろ、パイドラーからの反撃に憤ってすらいるではないか。
高潔で無垢で気高いその姿!
確かにパイドラーは心弱い女かも知れぬ、だが人間というものは
時に弱く、よろけ、まろびつつ歩くものだ、
それゆえに愛しいのだと何故分からぬ!許す事は出来なかったのか!
分からぬほど若く純粋なお前には、恋にうつつを抜かす人間は全て汚れて見えるのかも知れぬ。

だが、それを断罪する権利など、お前にはない!




壮年のテセウスはそういう風に事件を見、
結局パイドラーを殺したのはヒッポリュトスではないかと腹を立て、
つい怒りにかられて、ポセイドンに授かった必ず成就する呪いを
ヒッポリュトスに対して発動してしまうのですヨ。
しかもテセウス、ポセイドンの息子のクセに、まさかこの呪いが
実現するとはあまり思ってなかったっぽい。
現実的で、神託なんかより実際の政治手腕なんかに重きをおく中年テセウス、
なんか、アルテミスに心酔しているヒッポリュトスと対照的だなあと思いました。

この流れでいくと、
さすがに後で冷静に返ったテセウスが、いくらなんでも大人気なくむきになりすぎた
息子への仕打ちはやり過ぎだったかな、と反省した時に、ヒッポリュトス、事故で重症の
ニュースがもたらされるんですヨ。

ヒッポリュトスがまさかの呪いの成就で瀕死の重傷で運ばれてきた時、
ヒッポリュトスに許されるテセウスの、その情景の裏で、
テセウスに許されているのはヒッポリュトスの方、…だったりして。


………と、通勤電車のなかでこんな妄想をしたのが、もう2週間ほど前!
(思う存分妄想したのでスッキリした気分で図書館に本を返せました!)

やっと書けたー!





・・・・・・・・・・・・・・・・・

それにしても阿呆な感想じゃのう。
でも、まったく反省せずにこれからも阿呆な感想ばっかり書くよー!
GO,見習い、GO!

(多分、悲劇の解説なり、関連本読むのが好きなのは、
自分で考えるのが無理だから、他人の意見を読むと
「ほほう、なるほどねえ」などと感心して面白いのだと思います…)
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by mi-narai | 2010-02-11 16:39 | 2010年2月の読書

『天空の世界神話』 『「ニッポン社会」入門』 『ギリシア悲劇全集3』

天空の世界神話

八坂書房

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『天空の世界神話』篠田先生編。
ギリシア悲劇の2巻と一緒に借りてて、2巻に手間取ったせいで
2日ほどで読み通さなくてはならなくなり、結局最後のあたりは読めなかった残念な一冊。
リベンジを心に誓う。
とりあえず、読んで心に残った事をメモっておきます。

冒頭の、世界神話樹立への理念、的なものには大変興味を持ちました。
タイトルが『天空の世界神話』なので、てっきり世界の神話の中から
天空関連のものを集めてきたものかと思ってたんですが、
明けてみるとその予想を裏切る内容で。

ここ最近、人類学やら科学やらの進歩で、人類がアフリカからどのように世界中に
分布していったのかがおおまかに分かるようになったらしいのですが
その新たに分かった仮説を元に、人類がもともとなんらかの神話を持っていたとして
分岐する前の形はどのようなものだったのか考察しよう、というもの。
比較言語学でいうなら祖語の構築っスよ!!!
一体もともとどういう形で、どういう過程を経てこうなったのか、という
「間の流れ」がものっすごい気になる性分のワタクシ、非常に燃えました!!
(ちなみに妹にそのことを興奮気味に話すと
「わたし、途中のソノヘンは別に興味ないからそこまで燃えへん」
とバッサリ切られてしまいました。お姉ちゃん、寂しい…)

いやまあ、理念はそうでも、本の内容はそれぞれの著者の専門分野における
論文集なんですけども。

途中、興味の薄い分野の論文などは、正直時間も無かったし読み飛ばしたせいで
あまり覚えてません。
ぼんやり覚えているのは、

・北東アジアのあたりのオオワタリガラス、クイキニャークの神話。
ブログの方でもチラッと書いたので二度は書きませんが、
たいへんにときめいた事を告白します。
一家で天空に移り住む際に、息子が移動中振り返ったからそりから落ちてしまい、
落ちる息子のお供にしようとトナカイも切り離した話とか。好きです。
(助けはしないんだ…)

興味が出てググってみたら、オオワタリガラス、写真家の星野さんの本で有名なんですね。
火が人間に与えられた話で、自分で運ばずに他の鳥に運ばせて、挙句その鳥が
丸焦げになったエピソードとか(ひでえ)、しかも人間に恩恵を与えてやろうと意図は
まったくなく、たんにおもしろそうだったからそうした、という経緯とか、
非常にトリックスターっぽくて、見習いのハートを鷲掴みでした。


・ワークワーク
確かアラビアンナイト関連の論文だったと思うんですが、
ワークワークという理想郷が実は日本の事なのではないか?と書いてあったんです。
「ワークワーク」といえば藤リューのマンガでしか知らなかったのですが
①原典はアラビアンナイトだったのか
②しかも、そのモデルは日本かもしれないのか
の2点にびっくりしました。


「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)

コリン ジョイス / 日本放送出版協会

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『「ニッポン社会」入門』コリン・ジョイス著、読了。
固い本の合間の息抜きに。
14年日本に住んでいた英国人記者の目から見た日本。
とにかく欧米人には批判されがちなイメージしかなかったのですが、この本は概ね好意的でした。
曰く、日本人は親切で、がまん強く、礼儀正しい。
それで、最初は単純に喜んでたんですが
後から、「いや、これは何かの間違いに違いない。きっと心の底では馬鹿にしているのだ」
などと勘ぐってしまうのは日本人の、というよりワタクシ個人のいけないクセです。
とりあえず、何故に著者がこんなに好意的に書いているのかその理由を考えてみた。(暇だな)
一番大きな理由としては、これが日本で出版される本であり、当然否定的なことばかり
書いていては売れない、というものだろうけども、その他

・作中で日本人に親切にしてもらった話がたくさん出てくるが、
それは作者がイギリス人だから、日本人もそこそこ親切に接したんじゃなかろうか。
→中東やアジアの人なら?日本人は同じくらい親切なのだろうか??
このあたり色々事情が複雑でなんか考えているとモヤモヤします。
若干西洋に夢を見がちな自分も含め、反省させられた…
(西洋に限らず他の国々にも色々夢は見てますが)

・作中で日本人に親切にしてもらった話がたくさん出てくるが
その程度の事でそこまで感激する、という事は、裏返せば
イギリス人のマナーが日本人よりもっと悪いということ…なのでは…??
(イギリスの人、ごめんなさい!)
などと思ってしまいました。
→もっと親切で人懐こい国の人が日本に来たら、冷たくて不親切な人々と映るのかも。

いや、勿論作者は大部謙遜というか、ブラックユーモアで
自国を悪く書いてるとこもあるんでしょうが。
それでも、確かに自分の事に限っていえば、イギリス人にはだいぶ夢見てる自覚があるので
実像はもっと等身大なのかも、と思ったのですヨ。

ちなみに、イギリス人が欧米ではものすごい迷惑がられてる話も載ってました。
(方々観光に行った先で酔っ払っては迷惑をかけるから)
…某国擬人化サイトを思い出して笑ってしまいました。


ソポクレース I ギリシア悲劇全集(3)

ソポクレース / 岩波書店

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『ギリシア悲劇全集3』読了。
この巻からソポクレスに突入です。うわーい!嬉しいな!
この一冊には、テーバイ話がまとまって載ってます。
「オイディプス王」と「コロノスのオイディプス」と「アンティゴネー」の3本立て。
しかし、これまた昔に読み終わりすぎて記憶が若干朧っス…。
読書メモはほんと溜めるもんじゃないですね~…

とりあえず、あとがきかどこかで
「往時の三島由紀夫が呉先生の授業にこっそり紛れ込んで聴講してた」てな記述を見て

おのれみしま~~~~うらやまじい~

…と思った事は強烈に覚えてます。


『オイディプス王』
話の筋知ってても、やっぱり読んでてはらはらするしものすごい面白かった!!
いや寧ろこれは話の筋を知ってるからこそハラハラするのでは!!
読者(当時は聴衆)はオイディプスが全ての元凶だと知ってるからこそ
オイディプスの突き進む先には破滅しかないと予測できてドキドキするんすヨ!

オイディプスを突き動かしたのは知への情熱だとか、いろんな解説には
よくそんな風に書かれてますが
なんか、オイディプスを事件の解明へと突き動かした要因の内訳には不安も
あったんじゃないかと、今回読みながら思ってしまいました。
オイディプスは自分が犯人じゃないと確認したかったんスよ。
その裏にはひょっとしたら全ての元凶は自分かもしれないという予感が当然あって
だからこそ、きっぱり自分じゃないと納得して安心したかったのに
そうしようとする努力がことごとく裏目に出てどんどん自分の容疑が濃くなっていくという皮肉…。
(挙句、一足先に真相を察したイオカステは首をつってしまう)
解説好きのわたくし、色々解説読んでソポクレスの悲劇は、
状況は悲劇的で、不可避であり、人間の力ではどうしても避けきれないものなのだけど
最後にその状況下でどう行動するかは人間が選べる唯一のものだという
ところに作者の意図がある、というふうに勝手に解釈してたんですが、
今回もう一度本文の方読んで、悲劇的状況は避けられないものなんだけど、
その状況を作っているのは登場人物たちの性格的なものも多分にあって、
状況と一体化して悲劇を推し進める要因になっている。
しかし、その悲劇的状況を作ってしまう人物造詣もまた悲劇の輝きの要素というか
料理でいうところの旨み成分の一部というか、
ああ、うまく表現できません。
『イーリアス』はアキレウスの怒りが主題で、
アキレウスがあそこまで激烈でなけりゃ悲劇は起きなかったんだけど、
あの個性だからこそ『イーリアス』は面白くて美しい、
あの個性が無ければ成り立たない。
…というのと、似たような何かを感じました。
ソポクレスのオイディプスはアレでなきゃならんのだッ!


…ところで、アキレウスを引き合いにだしといてアレですが
オイディプスもだいぶ激烈ですよね~!
でもって、アンティゴネーはものすごい父親似(笑)。
多分ラーイオスから代々気短な家系だったんだな…(勝手に妄想)



「オイディプス王」で随分行をさいちゃったので、残りは簡潔に。

「コロノスのオイディプス」

アテナイ万歳!

…という感じの話の流れっスね。


「アンティゴネー」
最初は普通に話の筋を追いつつ読んでたんですが、
やっぱり、段々クレオンが気の毒になってきました……
今回読み直すまですっかり忘れてたけど、クレオンてば、最後に心を変えて、
アンティゴネーを閉じ込めた場所から出してやるよう命じるじゃない、
なのに、時既に遅し!
畳み掛けるように知らされる悲報の数々!!
…という展開がもう居たたまれない…
(悲劇としては正しいんですが)
しかしこれまたどちらが正しいとも判じづらい主張のぶつかり合いで、
その上でソポクレスはどう考えてたんだろうとか、
残ってる他の悲劇と比べてどうなんだろうとか、
考えてるとよくわかんなくなってしまいました。


真面目な本を読んでる裏でロマンス小説も何冊か読んだんですが、
そのうちの一冊で「ミネソタ・ナイス」について書いてあってふーんと思いました。
ミネソタ州って、北欧からの移民が多くて、北欧っぽい習俗が強い土地なんですってね。
で、親切で人当たりのいい州民性から「ミネソタ・ナイス」などと呼ばわれるらしい。


リチャード・ボンドの「リア王」見に行きました。誘われたので。
話の筋は「トロイ戦争は起こらないだろう」の方が好きですが
絶対演出とか演じ方とかはこっちの「リア王」の方が良かった!
ものっそい暗くて、メッセージ性の強さが鼻につく感じでしたが
その分見ごたえはもりもりあった劇でした(あまり2度見ようとは思わないけど)


今年の読書分は今年中にアップ出来て良かった…(おせちの合間をぬって更新してますぜ!)
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by mi-narai | 2009-12-31 17:53 | 2009年12月の読書

『スフィンクス』

スフィンクス (flowers comicsシリーズここではない・どこか 2)

萩尾 望都 / 小学館

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萩尾望都の『スフィンクス』
本屋に行ったら発売しててさ。
ちょうどソポクレスの『オイディプス』を読み終えたところだったので、なんとタイムリーな!と
嬉しくなって買い求めた一冊。
最初の2編が、オイディプスの話です。

わたし、もともと萩尾望都好きなので、点が甘いのかもしれないけれど、

これは良かった…。

なにか、ソポクレスの『オイディプス』を原作に、新たな劇を見ているような気持ちで読み終わりました。
しかし、これは他の誰でもない、ソポクレスのオイディプスですね!
(いや、他の人のオイディプスを読んだ事ないから知らんが)
ちょうど解説を読んだところだったので、証人の羊飼いに対する解釈とか、
オイディプスが父を殺したいきさつとか、

おおおお!!的を得ている…!!

とときめいてしまいました。
(ひょっとして萩尾先生も同じ解説を読んだのか!?)
ワタシ、最初、原作をざっと読んだ時は、

道で行き違った時に無礼な態度とられたくらいでいたいけな老人を殺すなよ、
おまえどんだけ短気やねん、オイディプス…

…と思ってたんですが、解説に、
「オイディプスはちょうどデルポイに詣で終わったところで、
衝撃の予言をされて動揺していた、
一方ラーイオスのほうは、月一の予言の日になんとかすべりこもうと
猛烈に道を急いでた」
てな内容が書いてあって
(⇒だから、
急いでいたラーイオスは気が回らずに道を防いでる若者を無造作にどかそうとし、
オイディプスはオイディプスでそのちょっとした無礼がものすごく癇に障った)

ああ、そうか!
それなら分かる!!

とものすごく納得したのですが、まさにそんなような回答が
萩尾先生のマンガで描いてあったのですヨ…。
で、オイディプスの短気の理由が理解できただけに、
その後のオイディプスの清廉さが心に残ったというか…

ところで、作中に、オイディプスに影のようにつきまとって、彼に助言したり
彼が激情にかられるのを押しとどめたりする壮年の男性が出てくるのだけれど、
(作中では、彼の正体は結局明らかにされないのですが)
最初、ぼんやり、テイレシアスなのかなあ、と思ってたんです。
目が見えてるようだったけど、それはまあ、本当に物事が見えているのは
テイレシアスだけだという比喩かと…

でも、読み終えて後から、アレはソポクレスその人なのかしら、という気がしてきました。
あえて、正体を読者に委ねる辺りも、ニクイ演出だなあ…(さすが大御所です)
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by mi-narai | 2009-12-17 00:15 | 2007年12月の読書

「あ」のつく発売物

ぐうたらして読書メモを怠っているうちにとうとう12月に…。
(よう前はあんなに書けてたな…。)

とりあえず、

岩波さん!ありがとう!!!

…と叫ばせてください。
だって!だってですよ!
プルタルコスの「愛をめぐる対話」が重版されてたんだもん!!
うわーい!やったー!この調子でアリアノスのギリシア奇談集とプルタルコスの食卓歓談集も頼むよ!


後、出版物と言えば
ル=グィンの『ラウィーニア』と
市東亮子の『エリュシオン』も気になります…。
どっちも本屋で眺めてはいつも小一時間買うか買うまいか悩む。
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by mi-narai | 2009-12-01 06:32 | その他

『セクシィ古文!』 『遊女の対話』

高橋哲雄著『アイルランド歴史紀行』読了。
作中に出てくる、昔の日本人が描いたアイルランドへ行こう、という詩が
可愛かった。


セクシィ古文! (ナレッジエンタ読本 8)

田中貴子×田中圭一 / メディアファクトリー


田中貴子、田中圭一共著『セクシィ古文!』読了。
これまた職場の同僚に貸してもらった本。
面白かったよー!

電車の中では読めない感じでしたが。

古文の中のものすっごいくだらない下ネタなんかがからっと明るく紹介してあって、
個人的には健康的でいいなあと思いながら楽しく読んだのですが、
別の同僚(井坂好きでむらかみはるきファンの人)に面白かったというと
「…あの本、どうかと思う。わたしは読まない。好きではない」と全否定されてしまいました。
ああなるほど、こういう反応する人もいるんだなあ
(※どっちかというとこういう反応の方が一般女性のテンプレートな気も)
と、目から鱗が落ちる気持ちでした。
その子の反応が興味深くて内心ニマニマしてしまったのですが(悪趣味)、
BLがダメな人とかもこんな感じで嫌悪感を示すのだろうなあと思うと、
自分が平気だからとあまりおおっぴらにするのも良くないのかなと
(や、もちろん実生活でわざわざ吹聴して回ったりはしませんが)若干反省もした一件でした。
若干だけだけどな。


遊女の対話 他三篇 (岩波文庫 赤 111-2)

ルーキアーノス / 岩波書店

スコア:


ルキアノス『遊女の対話』途中。
神々の対話も買ってるはずなんだけど、昔に買いすぎて積読本の山に埋もれちゃってます。
というわけで、比較的上のほうに積んであるこちらから読み始めました。
対話編だから読みやすいな~。
庶民の生活が仄見えてちょっと楽しい。

後、嘘吐きを非難する対話のところで、オデュッセウスの嘘は肯定されてて
「それはええんや」とちょっと吃驚しました。
(ルキアノスは、神話や迷信が我慢ならない人だったのね。
だから『神々の対話』がああなっとるのか、と妙に納得。風刺や批判なのか)
ぺらい本なのでひと息に読み終わる予定です。
巻末の解説が今から楽しみで楽しみで!
(楽しみなので先に読んだりせずに最後にとっておきます)


土曜にいきなりヅカ好きの友達に宝塚に誘われて、
行って来ました『ラストプレイ』。
ポスターとか話のあらすじを読んでものすごいシリアスな話を
そうぞうしてたら、意外にコミカルな筋立てで、面白かった!
いい意味で裏切られました。


『相棒』
新シリーズ、…なんか、みっちーも意外といいんじゃない…?
亀山君の時は、亀山君の方が右京さんを嫌ってる風でしたが、
今回は、積極的な神戸君に、右京さんがどん引きしてる風なのが
なんか面白い(笑)。
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by mi-narai | 2009-11-03 20:57 | 2009年11月の読書