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『人形遣い』 『政令指定都市』 『ソロモンの指輪』

人形遣い (事件分析官アーベル&クリスト) (創元推理文庫)

ライナー・レフラー / 東京創元社

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ライナー・レフラー著『人形遣い』
ドイツ発ミステリー。
ケルンで起こる血なまぐさい連続殺人を解決するため、
事件分析官(アメリカで言うところのプロファイラー)の主人公アーベルが呼ばれ、
その助手として若くて気の強い美人刑事ハンナが付けられたところから
物語はスタート。
最初はいがみ合ってた二人が事件を追うにつれ、徐々に互いに信頼を育てていくのが
王道とはいえ読み応えがありました。
殺人事件の方は、いかにもドイツらしく、臓物が派手に飛び散る系のアレでソレ
なので、グロいのが苦手な人は気をつけて。
なんで大陸の最近のミステリーはスプラッタっぽいのが多いのか…。
シリアルキラーで、幼少時の性的虐待ネタはもうええねん!!
と叫びたくなるような、どっかで見たような道具立てではあったのですが、
話のテンポがいいのと、主人公たちがなかなか魅力的だったのとで
最後まで飽きずにハラハラしながら読みすすめることが出来ました。
アイディアはふつうだけど、小説の構成とかバランスとか
人物設計はすごい堅実なイメージ。
後、登場人物同士の軽口が、イギリス小説ほどひねってはいず、
アメリカ小説ほど軽くも明るくもなく、
微妙にすべってるというか、妙に真面目っぽいのが
日本人と相通ずるな、などと変なところで感心してしまいました。


政令指定都市 - 100万都市から都構想へ (中公新書)

北村 亘 / 中央公論新社

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北村亘著『政令指定都市』
そのタイトル通り、地方都市行政の内、政令指定都市に絞って書いてある著書。
その成り立ちから、行政形態、市長の一日、この制度は今後どういう変化を考え得るか、
などをひと通りさらえてある感触です。
まずは大まかに都市政策というものの意義について。
そもそも、牽引役を期待して、国は大都市に権限を付与するらしいですね。
その地域の経済の活性化の起爆剤的な。
けど薄く広くやりすぎると、財政が続かんし効果も薄い。
なので、これ、という大都市にのみ、集中投資するのが良いとされているようです。
もともと、もっと権限を付与した「特別市」、というものに、
首都として東京都に組み込まれた東京市を抜いた、5大都市を当てはめようとしてたのが
周辺自治体の反発とか政治的駆け引きとか与党の都合とかあって、
玉虫色の「政令指定都市」制度というのに落ち着いたそう。
それが制定されたのが戦後まもなくだったから、
ひどい爆撃を受けた神戸市の人口が激減してて、
それで本来なら100万以上にするところだった人口要件が
50万以上になっちゃったらしい。
これが後々、尾を引くんです。
その後、経済成長と共に、政令指定都市になることが大きな都市のステータスみたいに思われて
なんだかんだで他の市が目指すようになって、現在その数20市。
もともとの狙いからだいぶはずれてます。
これだけ増えると、それぞれの都市間の特徴や実力の差がバラバラで、
全部を同じ政令指定都市という制度に当てはめちゃうのがいいのか悪いのか。
ちなみに、各都市の状況などをいろいろな視点から眺めて考えると、
今のところもっとも大きな政令指定都市、第一人者を自認してる横浜市って、
実のところ単なる大きな衛星都市にすぎないらしいですよ。
大都市制度を適用して効果が期待される市としては、
福岡、名古屋、大阪がその要件に当てはまるらしく、
特に大阪は大都市の中の大都市なのだそう。まだまだ自信持ってください大阪さん。
なので、横浜には、大都市としての制度ではなく、
大きな衛星都市としての別の補助を掛けた方がいいみたい。

いきなり市長の話になりますが、市長ってお忙しいんですね。
作中に、比較的情報が公開されてる広島市と大阪市の市長の一月の仕事回数、
みたいな円グラフがあったんだけど、どっちもひたすら大変そう。
でも当時の大阪市長(あの人でした)は鬼のように仕事こなしてちゃんと休暇も確保してて
すごいな、と思いました。

都市の財源の話。
一般平均としては政令指定市は固定資産税がもっとも大きい割合を占めてるんだけど、
特に京都と大阪は特殊らしい。
京都は神社仏閣と教育機関(大学)が多すぎて、固定資産税がそんなにとれない。気の毒です。
大阪も、昼間人口と夜間人口の差が、東京23区を抜いて日本一らしく、これまた固定資産税がとれない。
要するに、周辺と市から大阪に通勤とか通学してる人の割合がものすごい多いって事ですよ。
確かに。実感としてそれは分かる。
それで潤ってんだからいいだろ、と一概にも言えず、昼間の人々のニーズに合わせて
莫大な金掛けてインフラ整備しても、その人たちは大阪市に税金は納めてくれない、という悲劇。
結構気の毒な立ち位置です。
他にもいろいろ他の都市に比べて、大阪市は大都市故の不都合を
一手にひっかぶっちゃってる部分があって、
考える以上に大阪市は窮地に立ってますよ。
今思えば橋○さんはようガンバっとった。
それもこれも、そもそも政令指定都市制度が中途半端な妥協の産物だから、という
遠因があって、
前に「大阪都構想」を読んだときにも書いてあったけど、
大阪市では、大分前から(もう70年くらいも)市の構造を変えるべきじゃないか、
という案は何度も出てきてるようです。
府県側を主体にしてまとめちゃう方向に振り切ったのが都構想で
逆方向に振り切ると、大阪市独立、大阪特別市成立へ進みます。

個人的には、現代に自治都市があっても良いと思うんだけどなあ。
(自分が住んでないからって無責任なことを言ってみました)

いや、なかなか。日本の地方行政について、特に大都市の行政について勉強になる本でした。
もっと眠くなるかと思ってたけど、思いの外面白かった。


鍋奉行犯科帳 お奉行様の土俵入り 鍋奉行犯科帳シリーズ (集英社文庫)

田中啓文 / 集英社

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田中啓文著『お奉行様の土俵入り』
いつもの鍋奉行シリーズの第5弾。
今回も、面白かった。
肩肘張らず、ほどほどに時代劇で、最後は大団円なので安心しながら読めます。
お奉行様が出てきたときの安定感といったら!
しかしまあ、食べ物ネタでよくここまで続くなあ。


カラスの補習授業

松原始 / 雷鳥社

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松原始『カラスの補習授業』
こないだ読んだ『カラスの教科書』があまりに面白かったのでつい買ってしまった第二弾。
今回は、前回以上にジョジョネタ満載です。
時々挿入されるラノベネタは、詳しくないので分かりませんが、ジョジョなら分かる。よし。
内容としては、前回入らなかったネタの他、更に専門的な内容なども盛り込んであり、
より一層ディープにカラスフェチになれること必至!
今回も、大変、大変!楽しかったです!!
最近は道でカラスを見かけたら立ち止まって見とれてしまうくらい好きになりました。
こないだ、初めて威嚇されたよ!(嬉しげ)


ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)

コンラート ローレンツ / 早川書房

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コンラート・ローレンツ著『ソロモンの指輪』
「カラスの補習授業」で何回か言及してあったので読んでみた。
ご本人曰く、当時、周囲には、どう考えても納得できないエセ動物本が溢れてて、
それに我慢できずに書き上げたのが本書らしい。
どうも、動物行動学の草分け的な大御所らしいですね、この方。
まだ方法も確立されていないような頃に、動物を飼うというよりほとんど共同生活しながら
人間が陥りがちな擬人化じゃなく、その動物の行動を客観的に真摯に観察しています。
おまけに、ご本人の動物たちへの愛が随所にあふれてて、読んでてじんわり胸が温まりました。
犬、ネズミはもちろん、コクマルガラスをはじめ各種鳥、魚に至るまで、色んなものを
家の中に放し飼いにしたり庭の小屋で飼ったり。
いくら偉い教授やいうても、よう奥さん我慢したな。と一読者にまで同情せしめる変わり者っぷりですよ。
でも、逆に言えば、本当に動物のことを考えて飼うってそこまでの覚悟がいるものなのかもなあ。
もともとカラス目当てでこの本を買ったので、ワタリガラスやコクマルガラスの章は
もちろん面白かったのですが、他にもハイイロガンの章とか、アクアリウムの章、
飼いやすい動物についての章とか、バラエティに富んでて、どれも楽しく読めました。
犬についての章は、ジャッカル由来の犬とオオカミ由来の犬の違いについて書かれてて、
へー、なるほどなあ。と思ってしまった。
ジャッカル由来の犬の方が人なつっこいんですって。
オオカミの血が濃いほど、主に忠実に。日本犬はこのタイプですよね。
確かこの人、犬についての本も書いてたはずだから、
そっちも読みたくなってしまいました。
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by mi-narai | 2016-06-26 10:31 | 2016年上半期の読書