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『植物学「超」入門』『世界の名前』『カラスの教科書』

今年も最寄りの博物館で古代ギリシャ展があると聞いて、うはうはしております。
K市の博物館、パイプがあるのはエジプト関連だけかと思ってたら
意外とその他の古代文明も網羅してるのね。
有難いことですよ。



逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

渡辺 京二 / 平凡社

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『逝きし日の面影』

正直に言います。アマゾンレビューが良かったから買いました。

著者の著作目的を簡単に言うと、
今の日本は江戸時代からつながっているように見えるが
文明としての江戸とは断絶してしまっているのだ、
その滅びた江戸文明を、当時の外国人の残した記述からたどってみよう、というもの。
自文化というのは、中にいる成員にはどこが特異でどこが普遍か分かりにくいようで、
こういう時外からの視点は文化人類学的アプローチとして有効なのだそうですよ。
著作の中で、若干他の日本人学者の記述に反発するような言及が多いのですが、
…一昔前は、日本なんてダメだ、という見方が大勢を占めてたもんな、
それでなくても、あんまり自国文化を「俺スゲェ」すると下品な感じがするし。
たぶん、この方がこの本を書かれた当時は日本を見直すような言動は受け入れられなかったのだろうな。
(今は日本アゲ情報に溢れてますが)
そんな風潮の中、あえて「もっとフラットに自国文化を見て見ようよ!」
と頑張ってみたのがこの本です。
著者も再三しつこいくらい「いや、自国文化を自慢したり、やっすい愛国心に
まみれたいわけじゃないねん」と書いてて、そこは誤解してほしくないようです。
確かに褒める記述は幾分多目ですが、
大抵その頃の外国人て鼻持ちならん西洋史上主義に毒されてるから
貶す記述は今見たら鼻で笑っちゃいそうな理由だろうし、
そちらを必要以上に取り上げる必要もない気がしますもの。良いのではないでしょうか。

構成は、テーマ毎に外国人の著述が集められ、それを元に当時の文化を考察するという
形になっています。割合真面目な内容です。
面白かったよ。
繰り返しが冗長でしたが、へー、昔はそんなんだったんだな、という驚きと
昔からこんな感じだったのか、という安心感のどちらをも感じました。
特に江戸から明治に掛けての記述に「日本人は子供にメロメロだった」、という
のがあって、心があたたまりました。


植物学「超」入門 キーワードから学ぶ不思議なパワーと魅力 (サイエンス・アイ新書)

田中 修 / SBクリエイティブ

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田中修著『植物学「超」入門』
またも職場の超絶かわゆらしい上司にただでもらったので!
いつもありがとうございます!
今回は、植物についての基礎知識、そこそこ踏み込んだ内容を、
大変にわかりやすく簡単な言葉で丁寧に説明してある本でした。
ひとつのトピックに付き大体2ページほどなので、途中でなんのはなしか分からなくなる心配も皆無。
読者に優しく、植物学知識も増え、少し難しい内容やこぼれ話ににやりとし、
ひいては人々の植物に対するさらなる興味をかき立てることにも成功したいい感じの本だと思います。
流石に田中先生のご本はこれまで何冊も読んだので、これ、知ってるで、という
箇所もあるのですが、そうして少しずつパターンを変えながら繰り返して読ませ
植物の情報を人々の長期記憶に刷り込もうという、遠大なる計画な訳ですね、
分かります。理系の学生増えろ!
先生は教育者の鑑でございますよ。
知ってる知識ばかりだと思ってたらちらちら知らないネタもあったりして、
これは、好きな方の本だった!


世界の名前 (岩波新書)

岩波書店

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『世界の名前』
岩波書店辞典編集部が編纂してます。
その言語の専門家が専門言語の人名に特化して2ページほどにまとめて書いた物を
集めた新書。これが面白くないはずがない!!
世界中の地域が網羅してあって、アジアも東、東北、東南、南、西、
ヨーロッパもスラブから北ゲルマンにロマンス諸語、
南北アメリカ、洋上の島々、オーストラリア、
いろんな場所の、思いがけない名前の付け方とか知れて、
すんごい楽しかった!!
もともと名前の付け方とかにものすごく興味があるので!
例によって、ちらちら思ったことを箇条書きに。

・文字を持たない民族ほど名前が赤ん坊が生まれたときの状況説明っぽくなるのは面白い。

・カメハメハって、亀はめ波では勿論無く、カ+メハ(×2)だったよ!衝撃!!
しかも、長い王名の真ん中変の一部だった!(これは良くあること)
カが名詞に付く定冠詞っぽいなにかで、メハが一単語で、繰り返して「寂しい」って意味なんだって!

・現在の名前の混交具合から、過去の歴史をひもとけるのは面白いなあ。
系統の違う名前が一定の割合で混じってたりするの。

・宗教力も半端ねぇ。特に一神教。聖書の名前が世界には溢れすぎ!

・スラブの辺りの、名字の語尾で国が分かるってやつ、面白い。
~ヴィリだとグルジアとか。スケート選手でゲデバニシヴィリっていたなあ。

・父称を使うのは、スラブとアラブとアイスランドくらい?

・時々文学上の名付けの話も載ってて、これまた興味深く読みました。

・最後の辺り、母校の先生の寄稿があって吃驚した。おおっと。

・日本でも昔は7歳くらいまでは神の子、みたいに考えてたっぽいけど、世界各地で
この風習はあったのね。乳幼児の死亡率の高さの問題でしょうか。

・スーザンって名前がエジプト起源て、マジか!

とりあえず、いろんな先生のネタ話をつまみ食い出来るおもしろさがあって。
お勧めです。


外国語を学ぶための 言語学の考え方 (中公新書)

黒田 龍之助 / 中央公論新社

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黒田龍之介著『外国語を学ぶための 言語学の考え方』
「世界の名前」が2ページにぎゅっとエッセンスを詰め込んだ本だったので、
それに比べたら内容が薄いと感じてしまいましたが、
著者に失礼ですよね。わかりやすく、読みやすく、とっつきやすい語学本です。
これまではもっと具体的な言語について書かれてた印象なのですが、
今回は一瞬それとは分からないものの最後まで読み終わると、言語学の大枠や
重要な用語についてざっと分かるようになってるんだなあ、と思いました。
読まされてる感はないのに読み終わるとちゃんと言語学の用語やその用法が
ざっくり頭に入ってるのはすごい。


カラスの教科書 (講談社文庫)

松原 始 / 講談社

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『カラスの教科書』
動物行動学カラス専門の著者による、
まるまる一冊カラスについて書かれた本。
あー。楽しかった!!
狼好きであると共に、カラス好きでもある私、
大変に楽しんで読んだことを告白します。
全てのページをドキドキしながら目で追いましたよ。
ワタリガラスの神話を知って以来カラスファンなので!
朝道で見かけたら、今日一日良いことありそうだな~と思うくらい好きです。
で、この本、カラスの種類から一生、習性、縄張り、対処法など
項目別に書いてあるのですが、例によって思ったことを箇条書きに。

・ハシブトガラスとハシボソガラスが日本に多い種類なのは知ってましたが、
ようやくきちんとした違いが分かりました。
鳴き声がクリアなのはハシブトらしいから、家の近所、職場の近所にいるのはハシブトだな。

・都市にこれだけカラスがいるのは日本くらいで、海外ではもっと小さいカラスがいる程度らしいよ。
特にハシブトはもともと熱帯の森に住んでたらしく、東南アジアの人にとっては
今でも森にいる鳥なんだとか。

・生ゴミを漁るカラスですが、中南米ではその役割をコンドルが負ってると聞いてふるえました。
パネェ…

・カラスの名前の根拠が「カー(鳴き声)」+「ス(鳥につける語尾)」というのも書いてあったよ。

・ワタリガラスって、全体が大きいのもあるけど、羽も細長くって、他のカラスと違って
滑空するように飛ぶんですってね。カッケェ…!!!!!

・カラスと猛禽の関係の項では、猛禽の能力値の高さに震撼しました。

・カラスの子供愛に頭が下がります。攻撃してくるのは大体子供を守るときだけで
それも足で蹴るくらいらしい。

・昔、友達から「小さい頃カラスに口にくちばし突っ込まれてから怖い」という話を聞きましたが、
今思えば、子ガラスに餌やる感覚だったんじゃないかなあ。
赤い色とか見ると、鳥的には餌をやりたくて溜まらん気持ちになるらしいので。

・鳥には紫外線が見えてるらしい。鳥の目には世界はどんな風に見えているのかなあ。

・反対に嗅覚はほとんど効かないらしいですよ。

他にも、ページをめくる度にいちいち「へー」と思いにやにやしたものですが、
にやにや回数が多すぎて全てを書き切れません。
自分の子供間違えた話とか、著者がカラスの親にめっかって肝冷やした話とか
面白かったです。カラス万歳!


もう年はとれない (創元推理文庫)

ダニエル・フリードマン / 東京創元社

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『もう年はとれない』
異色の後期高齢者ハードボイルド
主人公はなんと87歳です。
でもハードボイルド。
人物設定としては、ユダヤ系のアメリカ人で、第二次世界大戦にも従軍し、
その際捕虜収容所ではドイツ人看守のせいで酷い目に遭い、
その後は殺人課で刑事一筋うん十年勤め上げた叩き上げのマッチョなんですが、
寄る年波には勝てず、今ではただのよいよいのおじいちゃんです。
たいてい、年寄りが主役の場合、二流の物語だと、年寄りのくせに強いとか、
スーパーじいちゃんになってて、加齢によるデメリットをファンタジーで打ち消すのですが、
この物語では、じじいはじじいです。
銃に撃たれることと、転倒して骨折って死ぬことが同列だからね!
めちゃめちゃ無力だからね!!
武器は刑事次代のノウハウと修羅場をくぐり抜けて培われた胆力のみ。
そんなじいちゃんが、知り合いの臨終の際、
捕虜収容所で自分をいたぶってくれた憎いドイツ人が実は生きてて
しかも金塊を隠し持ってるという隠し情報を聞いちゃったところから物語はスタート。
今時の若者である孫と二人、ドイツ人の追跡に乗り出します。

あんまりハードボイルドは得意じゃないけど、意外に面白かった。
次々と起こる殺人とそれに関する推理がテンポよく進み、飽きずに最後まで読みました。
アメリカにおけるユダヤ教徒の視点も興味深かった。
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by mi-narai | 2016-05-14 17:09 | 2016年上半期の読書