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『こんにちは、昔話です』『ルポ 貧困大国アメリカ』『時が新しかったころ』

こんにちは、昔話です (小澤俊夫の昔話講座―入門編)

小澤 俊夫 / 小澤昔ばなし研究所

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小澤俊夫著『こんにちは、昔話です』読了。
久々に地域の図書館に行ったのでつい借りちゃいました。
昔話入門編です。
この著者、1930年生まれなので、もうおじいちゃんで、
グリム童話あたりから民間伝承の研究世界に踏み入り、
アアルネ・トンプソンの分類とか、日本昔話の収集とか
長年この道で研究を重ねてきた重鎮なんだけど、
その方が敢えて一般の方向けに、昔話の魅力の普及のために、
子供に読んで聞かせる時にきちんと分かっていてほしいことなどを
分かりやすく説いて回っていらっしゃるんです。
そういった講演内容を書面に起こした感じの本作です。

えーっと。
先生、昨今のなんでもかんでも「残酷だから」、とおとぎ話を改編する風潮に
たいへん怒っていらっしゃいますよ。
ポコポコしてるおじいちゃんを想像すると大変にかわいらしい。
しかし、本読んでると、先生のご意見はもっともだなと。
流石に、きちんと昔話を研究対象として熟知しておられる先生です。
その理由を読んで、変に改変したらあかんなという気になりました。
残酷なシーンは残酷なままでいいんです。
(どうせ子供はそこは気にとめない)
しかし、「昔話は残酷なシーンも淡々と描くのであまりそう感じない」って、
わたし、イーリアスでも同じように思ったなあ…。
やはり語り物の特徴なのかな。
あんまり詳細に語りすぎると聞き手の想像の余地を奪うというか。
書かれた書物(それも娯楽もの)の場合詳細な方が良いと思うんだけど
耳から入る物語の場合は、相手が想像しやすいように、また聞き取れる程度の長さに
そこそこざっくり語る、というのも重要なのだなあ、と。
大変示唆に富んだご指摘でございました。

ちなみに、昔話と伝説の差異は、
登場人物の素性、場所、時間が特定してあるかどうからしいのですが
(ほら話であることを語り手も聞き手も知っているのが昔話、
一応本当にあった話ですよ、歴史ですよ、という体で語られるのが伝説)
この何も特定しない昔話の世界に、オデュッセウスという個性を放り込んだのが
『オデュッセイア』における航海譚だとわたくしだいたい思ってるので
その辺に絡めても、楽しく読めました。


「伝説」はなぜ生まれたか

小松 和彦 / 角川学芸出版

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小松和彦著『「伝説」はなぜ生まれたか』
これまた図書館本。
小松先生はいろいろ書いていらっしゃるなあ。
各所で書いた論文を寄せ集めた一冊です。

どの論文も楽しく読みましたが、
一番心に残ったのは

レヴィ=ストロース先生がいかに偉大か

だったという…。
各地に残る雑多な伝承の全てを渉猟し、分類するのってそらまあ気が遠くなる作業だよなあ。


ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

堤 未果 / 岩波書店

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『ルポ 貧困大国アメリカ』
妹が、どうしても読め、恐怖で涼しくなるから、と強く推すので
図書館で借りてみました。

アメリカ、怖すぎる…!!(ガクブル)

市場の自由を優先し、企業優遇策をまい進しすぎたせいで、
医療や福祉の現場まで効率主義に陥り、格差が広がり、
貧乏人はどう頑張っても一生貧乏で這い上がる手段さえなく、
一握りの金持ちだけがその他大勢の食うや食わずで必死で生きている人々の上に君臨し
甘い汁を吸ってる、しかもその枠組みがどうやっても壊せない、という
悪夢のような世界が広がっとります。
ブッシュ政権が財政悪化を理由にかじを切り過ぎたせいらしい。
その時のブッシュの政策が、いまのABっちの政策に瓜二つで
心底わたしを震撼たらしめた。
怖い…!!こんな理不尽な世の中に日本までなっちゃったらどうしよう!!!
一握りの金持ちしか幸せになれない国なんて、国としてどうなのよ!!
革命前のフランスか!?そんな国に国としての意味なんかあるのか!??
そもそもその方が人として暮らしやすいから国を形作るんじゃないの!?
一晩盲腸の手術で入院しただけで120万請求され、
大学に行ったら奨学金の返済をこれまた1000万ほど要求され、
貧困から逃れようと思ったら唯一の手段が軍への入隊で、
かといって入隊前に約束した金は支払われず、
すぐに前線に送られて、怪我して帰って来ても見捨てられ挙句ホームレスとか…

ひどすぎる。

なんやろう。行政範囲が広すぎると色々目が行きとどかんとか、そういうのもあるんやろうか。
(国土が広い国って、なんか、そんなんが多そうじゃない。)
これを打開するにはどうしたらいいの??
民主主義国の場合、名目上貧乏人だって参政権を持っているはずだから、
そこで見極めてマシなとこに投票するしかないのか?
しかし、どれも期待できなさそうな候補しかいなかったらどうすれば。
候補者を立てて選挙運動をするところからスタートなの?
気が遠くなりそう…(結局その局面でも金がものを言うんだろうし)
とりあえず、仕組みを知るということが大事だと思うので、
適当にうわべだけ見とったらいかんのだなあと、しみじみ思いました。


まず、ママが幸せに―産んで育てて、ニッポン・イギリス・フランス

薗部 容子 / 日本機関紙出版センター

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薗部 容子著『まず、ママが幸せに』
妹が強硬に読めと進めてくるので読みました。
日本、イギリス、フランスでそれぞれ一人ずつ出産したお母さんの
体験記、みたいな本。世の頑張り過ぎなお母さんに
「そんなに気真面目に思いつめなくても大丈夫だよ」と
諭すのが目的で書かれたものだと思うんだけど、
出産における各国の文化比較、みたいな感じになってて面白い。
並べると、日本人は真面目だよなあ。
とりあえず、少しでも赤ちゃんにとって危険ならやめておこう、とか、
こうあるべき、という規範が強いんですよね。
わたしはそういう細かいところに目が届くきっちりした日本人が大好きですが、
まあ、確かに、そうするように毎日強制されたら母親はノイローゼ気味にもなるわな。
西洋文化の大雑把さを見て、妹も、適当でも大丈夫、と勇気をもらったらしい
何が幸いするか分かりません。
なにより著者はどこが悪いとか良いとかは言わずに、単に違いを楽しんでる感じなので
そういった部分は大変好感が持てます。
後、パリでの色々がおかしくって、電車の中でニヤニヤしてしまいました。
パリの出産事情、オモロすぎる…。
後、みんながバカンスに情熱をかけ過ぎる(笑)。


獅子真鍮の虫 (永見緋太郎の事件簿) (創元クライム・クラブ)

田中 啓文 / 東京創元社

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田中啓文著『真鍮の虫』読了。
ミステリー、ジャズサックス奏者永見緋太朗シリーズ。
この作者にしては、ダジャレもエロもグロも出てこない、非常に爽やかなシリーズです。
でもって、ミステリーなのに、ジャズ話の方が熱いというこれまたいつもの仕様です。
いや、でも、日常でそうそう人生を揺るがすような謎なんてないしな、
このシリーズの、日常のちょっとしたひっかかりを
「ああ、あれ、ああいうこととちゃうの」ってさらっと説明して
「あー、なるほどなー」って納得して、生活を続ける感じが好き。
今回は、唐島さん(語り手)と永見がアメリカにジャズ旅行に行ったり
なかなか楽しいシチュエーションがあり、
途中永見のサックスが認められたり、唐島さんがトランペットのことで悩んだり、
盛りだくさんでした。
ミステリーでなく、ジャズの話にどんどん詳しくなっていくという…
いや、普通に面白かったですよ。


植物は人類最強の相棒である (PHP新書)

田中 修 / PHP研究所

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田中修著『植物は人類最強の相棒である』
またも職場の上司にただでもらったので。
ありがとうございますありがとうございます!!
本を下さる時、わたしともう一人同室の同僚の分2冊渡されたのですが、
にこにこしながら
「Mさん(同僚の名前)に、この本な、買うてでも欲しいか、て聞いてみて。
でな、欲しい、て言わはったら、ほな買うて、て伝えといて」
などというお茶目をかまされました。

あああああもおおおおおうう!!!
かわゆらし過ぎるじゃろ!!!


口から何か出るか思たわ畜生め。
毎回普段通りのおだやか~な口調で冗談を仰るので
一瞬キョトンとしてしまうのですよね、
最近徐々に慣れてきたぞ!

で、本の内容ですが、田中先生の御本もこれで何冊目でしょうか、
本によっては花、雑草、果物に特化して、その紹介をしてあるようなのも
あるんですが、これは割と研究寄りで(もちろんものすごく噛み砕いてありますよ)
面白いです。難しい箇所に差し掛かると寝そうになりますが。
毎回、葉っぱが緑に見える理由を聞かされて狐につままれたような気に…。
海の底の方にある海藻が赤いのは、緑色の光を吸収するためなんですよ!!
海の上の方の緑色の回想は赤色や青色の光を吸収してんですって。
ていうか、光をエネルギーに変換できる、というのが、よくよく考えるとすごいよね。
後、植物の生態意外に、最古の栽培植物は何かとか、
現在の農業の色々な工夫とか
そんな色々が分かりやすく書いてあって楽しいですよ。
分かりやすいのは、田中先生は農学博士なので、生化学的なミクロの話はあまりなさらないから
てのもあるかも知らんなあ。
ところで、作中に、江戸時代から伝えられる花や果物の名所で
「梅は岡本、桜は吉野、蜜柑紀の国、栗丹波」
ってのが出てくるんです。
岡本以外は今も健在ですね!
これからも名所の伝統を引き継いで後世に残していきたいものだと思いました。


時が新しかったころ (創元SF文庫)

ロバート・F・ヤング / 東京創元社

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ロバート・F・ヤング著『時が新しかったころ』読了。
本屋で売ってるの見て、恐竜、タイムトラベル、ロマンティックSFの3つのキーワードだけを頼りに
レジへ持ってった一冊。
早速読んでみました。
これが、思いの外、面白かったのよ…!!
真ん中辺はちょっとだれて、数回寝そうになりましたが、半分過ぎたあたりで
また面白くなってきて、その後はあっという間に読み切りました。
いや、なんか複雑な筋も、残酷なシーンも、どんでん返しも、目を引くような展開は一つもないのに、
それでも読んでてすごく楽しかったです。
ものすごい健全な話というか。
古き良きアメリカの良心、みたいな感じの話というか(分かりにくい)。
お人好しな大人が、困ってる二人の賢い子供を何の打算もなく助ける話なんですよね。
強くなければ生きていけないけど、優しくなければそもそも生きていく資格がないって、至極名言だわ。
レイモンド・チャンドラー、ええこと言うた!
最後は、展開読めた瞬間、またしたも、頼むから読んだとおりに展開してくれと、
ものすごい祈りましたもの。
ああ、幸せな読書時間じゃった。
読み終わってほのぼのしました。


神話の系譜―日本神話の源流をさぐる (講談社学術文庫)

大林 太良 / 講談社

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大林太良著『神話の系譜』
読了。
古本屋で「あれ?これって買ったっけ?」と訝りつつ、
「いや、読んだのは吉田本だったはず」と心に唱えながら購入した一冊。
既読本だったらどうしようとドキドキしながら読み始めました。

大丈夫!読んでない本でした(良かったー!)

当にタイトル通りの本。
短い論文がたくさん載ってる感じの一冊で、あらゆる方向・部分から
日本神話と周辺の神話を比較し、機能を分析しようと試みられています。
面白かった!
だいぶ昔の本ですし、王権神話は北方系、その下の国生み神話とかベース部分は南方系ってのも、
大体他の本で読んでましたが、分かって読むと二度美味しいので文句は全くありません。
大林先生は晩年のスケールのでかい試みの方が印象深いけど、この頃は日本神話にものすごい
興味がおありだったのだなあ、と感慨深いです。
あまりに沢山の項目があり過ぎていちいちについて書くと長くなるので割愛しますが、
東南アジアの神話の神々の名前とかがいっぱい出てくるのがすごい楽しかった。
印欧語族とも日本語とも違う音の感じがいいよね!
後、デュメジルの三機能構造について。
デュメジルさんは「とりあえず印欧語族の神話に置いて神々の機能が三つのタイプに分かれるよなあ」、と
仰ってるわけですが、
吉田先生は、「日本神話もその三タイプに適応できるっスよ!」と手を上げてて、
この大林本では、「イラン辺りのその三機能に分化した神々の神話が北方騎馬民族を通じて
日本にも入って来たんじゃね?」みたいに書いてあったんだけど、
それもあるかもしれんが、
ちょっと思ったんですよ。
もともと人のいたところに後から好戦的な一派が侵入してきた時って、
ちょうどこの三機能分類みたいな状態に落ち着きやすいんじゃないかって。
権力と武力はもちろん侵入者の神々が担うとして、残りの富をつかさどる神とかは、
被支配民のものを残しといてもいいかな、みたいな。
被支配民にも勢力範囲の大きい神々はいたはずだし、それを消しさることは出来んが
権力(とか神界での主の座)・武力関係は担わせられんから、第三の富の部分しか残ってないっちゅうか。
日本神話じゃ、まさに北方系のアマテラス、タケミカズチ、なんかが第一第二の支配者側の機能保持神で
出雲系オオクニヌシとかが第三の豊穣・富を司る神じゃない。
ギリシャ・ローマ神話や日本神話にはそれが顕著だけど、
侵略を受けてない土地とか(そんなところあるのか?)受けたけど昔過ぎてもう曖昧になっちゃってるとか、
そういうところはさほど三機能の分化が明確じゃなかったりしそう。
知らんけど。

とりあえず、最後まで読み終えて、解説がこれまた好きな田中克己先生で、
もう最初から最後まで美味しい一冊でした。ごち。
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by mi-narai | 2014-05-06 21:30 | 2014年上半期の読書