<   2013年 12月 ( 2 )   > この月の画像一覧

『ポケットに外国語を』 『運命の騎士』 『人は何故集団になると怠けるのか』

目白台サイドキック 女神の手は白い (角川文庫)

太田 忠司 / KADOKAWA / 角川書店

スコア:


太田忠司著『目白台サイドキック』さらっと読了。
THE日本のミステリーって感じの、あんまりアクの強くないあっさり風味です。
コテコテの洋ものに疲れた時にはこのくらいのフラットさがちょうどいい。
変人と噂される主人公の先輩も意外といいやつだったし。
最後の、事件の趨勢とは全く関係ないオチには

なんやそれ!!

と盛大にツッコみましたが。
この人、オカルト色入れんと気がすまん人なんかしら…


ポケットに外国語を (ちくま文庫)

黒田 龍之助 / 筑摩書房

スコア:


黒田龍之介著『ポケットに外国語を』
読了。

面白い!!

若干内田本と共通する軽さというか、鵜呑みに出来んなと思う感じは
ありますけども(当たり前です、エッセイ本ですもの)、
ものすごく読みやすく、かつ、なんかもう、やたらと語学がやりたくなる本です。
勿論、語学を生業としている著者なので、むやみと語学を勧めたり、
習得を気軽に考えるような学習過程を舐めたところなどはひとつもなくて
反対に、世間では「すぐ身につく英語」みたいなテキストばかりもてはやされてるけど、
そんなもんやない、語学の習得というのは時間もつぎ込む労力もかかるものであると
再三口を酸っぱくして仰っておられるのですが、
でも、なんだか、読んでると、かつて自分が知らない言葉に対して感じていたときめきとか
好奇心なんかを思い出して、ワクワクしてしまうのですよ。
テレビのテロップを見て「アラビア語って現在も使われているんだ!!」と改めてびっくりする感じや、
(アラビア語との初対面が物語の中だったので、実際の使用例を見て感動する)
タイ語やヒンディー語など自分の知らない文字が模様に見えるのに、
知っている文字(まったく不得手な英語でさえ)はちゃんと意味をもって読める、という不思議に
ある日ふと気づいた時の驚き、
また、このただの模様だったものが言語を習得するにつけある時点から「文字」に変わった瞬間の感動、
そんなものに共感できる人ならきっと面白いと思うと思う。
それにわたし、著者の語学に対する姿勢にも共感します。
就職に得だからとか、役に立つからとか、
それも大事な理由だけど、語学の魅力はそれだけじゃないのよ!ってことよね?
勉強するなら、楽しいからという理由でやりたい。

以下、特に心に残ったことをメモ書きしておきます。

・リトアニア語。
語学を勉強するものは、古い時代の印欧語族の人々が
どういった言葉を話していたか体感したければリトアニアの田舎に行けと
言われるくらい古い形を残した言語らしい。
有名なのか。

・英語は孤立後に近付いている。
ずっと、そうじゃないかとは思ってたけど(屈折が簡素化してるもん)、
やはり専門家に言われると、そうなんか~と納得する。

・遡りたくなる、という気持ちや、歴史に興味がある辺りも、不肖わたくしなどがどうこう言うのも
おこがましいとは知りつつも、分かる!分かるよ!面白いよね知りたいよねその辺!と握りこぶしで
同意してしまった。


運命の騎士 (岩波少年文庫)

ローズマリ サトクリフ / 岩波書店

スコア:


ローズマリ・サトクリフ『運命の騎士』読了。
高校時代に一度読んだきりだった本書。
ローマン・ブリテン三部作が有名な著者ですが、これは
中世(ノルマン・コンクエスト辺り)イギリスが舞台の物語です。
ローマン・ブリテンの方では侵略者だったサクソン人たちは、
今度はノルマン人たちに侵略される側に回ってて、
なんちゅうか、因果は巡るよなあなどとしみじみ。
舞台は目新しいけど、主人公が少年で、
歴史の動きと連動して本人自身にも大事件が起こり、成長する、という
いつもの骨子は健在です。
今回の主人公はみなしごの犬飼い、ランダル。
彼が楽師に拾われ、騎士に預けられ、自分の居場所を獲得するまでの物語です。

最初のあたりは「あれ?こんな本読んだっけ??」と首をかしげそうになるほど
覚えていなかったのですが、読み進むにつれ、思い出してきた。
そうそう、無二の親友べービスとか、
先住民のふしぎな女性アンクレットとか、出てきてた!
これまた安定の面白さです。
この作者は、本当に、自分が見もしていないことを
そこに実際に人がいて実際に暮らしていると
読者が錯覚してしまうようなリアリティをもって描くのだよなあ。
オルハン・パムクの時も思ったけど、すごいなあ。
だから読んだ後、本当に自分がその場にいて体感してたみたいに
余韻が重くて、ちょっと戻ってこれなかったりするんですよね。
後、この作者はちょっとした感情の動きを描くのもうまい。
主人公と、二つ年上の城主の跡取り息子べービスが友達になる段での
主人公のうっ屈した心理や、
青年になった主人公とヒロインが初めて心通じ…そうになって、
直前でそこまでいかなかった時の、なんか物足りない感じなんかが
手に取るように分かります。
初読時の今よりもっと未熟だったわたしはちゃんと分かって読んでいたのかしら…。

しかし、今回も友情が熱かった。
通勤途中だったから鼻すするくらいに抑えましたが、
家で読んでたらおいおい泣いてましたよ、くそう、今回もやられたぜサトクリフ!
これで文庫化した岩波本は全部読み終わっちゃったので、
他の出版社から出てる本に手を出そうと思います。
アルキビアデースの話とかもあったはずだから、楽しみだな~。
でもハードカバー持ち歩くの大変だから、
「ケルトとローマの息子」みたいに、ちくまさん文庫化してくれないかな…(他力本願)。


人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)

釘原 直樹 / 中央公論新社

スコア:


『人は何故集団になると怠けるのか』読了。
とりあえず、自分への戒めとして買ってみた。読んでみた。

いや~、なかなか面白い。
一見軽いハウツー本みたいなタイトルですが、
一応社会学の見地から、色々な原因と結果を検証してる本だからね!
新書なのでさらっとさらえてある感じですが。

さぼる原因も手を抜く要因も各種存在して、
勿論もともとの主体の特質なんかも関係してて、
ある状況下で要因が一つないし複数組み合わさって、
手抜きとかタダ乗りなんかが発生してるんだけども、
いちいち、あー、そうだよな~、などと納得することしきりでした。
この世は人を怠惰な手抜きへと導くファクターが多すぎるな!
誘惑に満ちておる…!!
まあ、別に管理職でも経営者でもないから、いまんところ
そこまで危機感はないんだけども、
手抜きの蔓延した社会はちょっと嫌だなあと思うので
(特に政府や行政機関を信頼できないのはつらい。
なんやろう、規模の大きさと情報の透明さなんかしら)
本当は真面目に考えた方がいい問題なんかもしれん。

とりあえず、罰は手抜き対策にはあんまり効果がない事はよく分かった。
してはいけないことをした時に叱るのはいいけど、
たとえば子供の伸ばしてやりたい性質に対して、
それができていないからと言って叱るのは逆効果であるのだなあ…。


小鳥を愛した容疑者 (講談社文庫)

大倉 崇裕 / 講談社

スコア:


大倉崇裕著『小鳥を愛した容疑者』読了。

これまたさらっと読み終わりました。
洋もののしつこいくらいの状況描写とかに毎日漬かってると、
たまに読む日本人推理作家の本は

さらっさら読めるな!!

いやー、清涼剤みたいで読むのが楽しいです。
お話は、怪我で閑職にまわされてリハビリ中の元刑事と、
動植物対策のために外部から雇われた専門家の若い女性が
2人三脚で動物(ペット)がらみの事件を解決する、という短編集。
出てくるペットは、十姉妹、蛇(種類忘れた)、ケヅメリクガメ、ワニガメ、シマフクロウ。
主人公の一人、薄さん(若い女の子の方)が本当に動物愛に溢れまくってて
ブレがなくって良かったですよ。
該当ペットの飼い方なんかも事細かに説明されてて、
それもまた楽しかった。しかし、肉食動物を飼うということは、
餌の小動物の処理もしなければならんということなのだな…。過酷。


アルフハイムのゲーム (ハヤカワ文庫SF)

ジャスティナ ロブソン / 早川書房

スコア:


ジャスティナ・ロブソン著『アルフハイムのゲーム』読了。
古本屋で100円くらいで売ってたので。
もうないだろうと思っていたのにみつけてしまいました

どうしちゃったのハヤカワさん第3弾!

SF文庫から出てるんだけど、これ、日本の出版だったら確実に
ファンタジーの本棚ですよ。
おまけに、おおまかにロマンス寄り。
SF部分は若干舞台が近未来なのと、5年前に物理学の研究所が事故を起こしたせいで
並行世界がごっちゃになったって設定だけ。

だからこういうの、SF文庫で出しちゃだめだってば!

硬派なSFファンが間違って買うでしょうが!
主人公が事故で半身を失ってめちゃめちゃサイボーグ手術を施されてて馬鹿強いので
ある種爽快感はあるし、出てくるエルフが男前なのは良いポイントなのですが、
作者のせいか訳のせいか、設定が分かりづらく、事故後5年しか経ってないのに
事故前の世界を知る者はいないとかアホなこと言い出すし、
アメリカで起こった事故なのに全世界規模だし(おいおい、アジアを巻き込むな)、
おまけに肝心の「ゲーム」がなんのことだか分からない。
ごめん、あたし、最後までなんのことか分からなかったよママン…。
主人公も、なんや次々と出てくるエルフと関係を持つし
ジェームズ・ボンドの女性版とでも思えばいいんかもしらんが、
わたしはもうちょっと一途な方が好きです。
おまけにエロシーンは2回くらいあるしな。

まあ、思えば、英米では日本よりも「小説」ジャンル内の幅が広いのかもしれませんね。
SF小説だと思うと、なんじゃこらと思うけど、漫画に置き換えたら、
こんなネタ山のようにありそう。誰かがすでに描いてそう。
このボーダーレス、ジャンルも重さも自由な辺りはまさにマンガ的。
…日本ならマンガで描くところを欧米ではSF小説ジャンルで書いてるのかもしれん。
日本密林レビューと米密林レビューの星の差はそういうことなんだろう。
欧米読者は日本SF読者より遥かに軽めで女性向けの読み物だと分かって買ってるんだろう。
ちなみに、わたしの見たところ、
ロマンス小説:ファンタジー:SFの割合は4:5:1くらいです。ご参考までに。
[PR]
by mi-narai | 2013-12-29 13:50 | 2013年下半期の読書

『古代ホメロス論集』 『シリーズ日本古代史①②』 『コーラン』

今、ようし、パパ通販しちゃうぞー!とサイトに行ったらば
既に同人誌売り切れてた…orz
わたしのバカ!バカ!!



ニュースで英国艦隊(の内の一部)が来日したてやってたけど、
関係者氏名のとこが「氏名 HMS艦名」てなってて、
このHMSにときめいた!
これ、「"His/Her Majesty's Ship"」の略で、英国海軍艦名の前につけるんですよね、
ナポレオン戦争時を舞台にした英国海軍小説でしょっちゅう見かける称号なんだけど、
実際に現在もついてるの見てなんかやたら興奮しました。
(そこまでディープな帆船フェチでないのでちょっとしたことではしゃいじゃってはしたないですね、
すみません。)


農耕社会の成立〈シリーズ 日本古代史 1〉 (岩波新書)

石川 日出志 / 岩波書店

スコア:


石川日出志著『シリーズ日本古代史①農耕社会の成立』
最初のうちは縄文時代の区分分けの変遷など、楽しく読んでいたのですが、
だんだん疲れてきたよママン…
いや、文章が下手なわけでも内容に興味がないわけでもないのですが、
各地の発掘状況などを踏まえながら、大真面目に当時の生活様式などを類推する叙述が
淡々と続くので
…ほら、報告書の類って、ずーっと読み続けると、なんかどれがどれだか
よくわかんなくなってくるじゃない。
あんな感じなの。
とりあえず、7割ほど読み進んだところで、ちょっと休憩。


コーラン―構造・教義・伝承 (文庫クセジュ)

フランソワ デロッシュ / 白水社

スコア:


フランソワ・デロッシュ著『コーラン』読み終わりました。
すみません、本の内容がどうこう言う以前に

訳がまずい!!

多分、忠実に訳そうと心掛けるあまりだと思うのですが、
もう、どこをどう見ても直訳です。
あのな。
もうちょっと、噛み砕くとか、せめて単語のチョイスを考えるとか、
頑張ってみようよ!分かりにくいよ!
一般読者に理解してもらおうという心遣いが感じられません…。
研究仲間宛てに訳したんかもしらんが。
いや、研究仲間なら自分で原書読むよな。
そもそも私は理解の遅いおばかさんなのですよ、
いちいち直訳の文章を頭の中で分かりやすい日本語に変換して
意味を理解するのが、手間なんです。馬鹿で済みません。
なのでこの訳者には、自分が読解力のないバカであることに関しては
申し訳ないとは思いつつも一言申し上げたい。この

へたくそ。

まあ、それはさておき、著者のフランス人のコーランに関する文献学的な考察は
面白かったですよ。
井筒先生のおかげで前知識があったので、大体話についていけましたし。
コーランの時代ごとのメディア展開とか、信者の間での位置づけとか、面白かったです。
読み終わって思い返すとあんまり覚えてないんですが。

…やっぱり、なにもかもわたしの頭が悪いのが最大の要因か。


ヤマト王権〈シリーズ 日本古代史 2〉 (岩波新書)

吉村 武彦 / 岩波書店

スコア:


吉村武彦著『シリーズ日本古代史②ヤマト王権』読了。
①の最後の方、しんどくなって適当に流しちゃったので、
その反省を踏まえ、今度は最初からきちんと読みこむことにしました。
前回が考古学の発掘成果から見た古代史だったのに対し、今回は、
主に文献学から見た古代史です。
一日1ミリくらいしか進まなくて、1週間余り本を持ち歩いちゃったけど、
総じて言えば面白かったですよ。
参考文献として、古事記とか日本書紀がよく出てくるんですが、
当然ながら神話ではなく
都の位置とか天皇の政治姿勢とかそんなものの参考のためでした。
人制度とか、氏姓制とか、臣連制とか、前よりちょっと分かった気がする。
後、物部氏や蘇我氏の動向が一緒に載ってたのも面白かったです。
当たり前ですが、朝鮮半島とは本当に昔から行き来があったのだなあ。


古代ホメロス論集 (西洋古典叢書)

プルタルコス / 京都大学学術出版会

スコア:


プルタルコス、ヘラクレイトス著『古代ホメロス論集』読了。
妹に誕生日プレゼントに何がいいか尋ねられて指定した一品。
ダメもとでこの本を申し出たところ、
本当に買ってくれたので、張り切って読み始めました。
(ちなみに、妹の誕生日には、ジャスミン系の香水を所望されたので、
おばあたまと連名でブルガリの香水を買ってやった。思ったより安くついたし
おばあたまが結構出して下さったので、ついでに他メーカーの
石鹸系のとグリーンティー系の人気作もおまけで付けてやりました。
メイドインアメリカの香水はいまいちわしら姉妹の好みには
合わんということがよく分かった。)


それはさておき、読み始めての一番の感想をあえて申してもよろしいでしょうか。
プルタルコスさんは

ヲタなかーま!

であると。
この論集、プルタルコスとヘラクレイトス(だったっけ。ウロ)の
ホメロス論が載せてあるんだけど、プルタルコスさんのやつが熱くってさ。
プルタルコスはホメロス論1の方は忘れたけど、2の方では、
文法や哲学や政治学など様々な分野の萌芽をホメロスに見つけたいみたいで。
諸分野を端から検証して、
「ほらな、ホメロスにすでにあるだろ?」
と言いまくってます。
以下、例によって心に残った無駄知識を箇条書きに。


・まずは、文法の話。
語の運用や、比喩表現、テクニカルな運用法などについて
ホメロスでの使用例を(だいぶ強引に)引用するという論文の流れなんですが、
そもそも、当時のギリシャ人(ていうかプルタルコス)が、
どういうところに語・文の運用の妙を見ていたのか、という方が面白かった。
比喩表現などは、日本語に当てはめて考えたら、
普段の文章で当たり前のように出てくるような、なんてことはないものなんですが、
結構それをめったに使用例のないサンプルとして不思議そうに書いてたりします。
まあ、動詞に態や時制が、名詞に性があるから、
それがずれてると違和感を感じやすいというのはあるかもしれんな。
(例文が当たり前だけどことごとく『イーリアス』&『オデュッセイア―』なので
もうそれだけで楽しいです。本当に、普段どれだけ自分がホメロスに飢えているかがよく分かりました。
ホメロスがどういった技法を駆使していたのかも分かって面白い。)
後、現代の言語学上は認められてても当時の語学的感覚だとイレギュラーな使い方だと思われた部分などは
あったかもしれん、とも思いました。

ていうか、プルタルコスの時代にすでに文法が出来上がってたってことに、地味に感動した。
そら、修辞学とかあるくらいだもんな!それにしても、すごいな!!

最初の4分の1くらいはそういった文法の話なので、
普通の読者にはまったく面白くないと思います。
それにしても、日本語訳の人は、たいへんだったろうなあ。語の用法とか、ギリシャ語の話なんだから、
元の単語まで日本語に訳したら何が何だか分かんなくなりそうなもんなのに。
(訳注が多いのは仕方ない)


しかし、古代の人(ていうか、プルタルコス)は、
ホメロスがそういった各種の語法を作り出したという視点でこの文法部分の論文を書いたわけだけど、
ホメロス以前に先人たちの色々な蓄積があったことは認知されてなかったのかな。
それに、ホメロスが純粋に文学上の効果を狙ってそういう語法を使ったってより、
詠唱中、ヘキサメトロンに当てはめるために同じ語句をリズムのいい語句に言い換えた結果、
そういった文法上のトリッキーな使用法になっちゃった
という結果論的なアレかもしらんぞ。


・次、物語の要素について。
歴史叙述的な要素がホメロスの作品の中に既に入ってることを確認する部分はいい。
ふつうに、ふーん、そう。と思って読みました。
けど、哲学的要素が含まれてることを見ていく部分はだいぶこじつけっぽかった。
ほれ、当時の、万物は水である、というタレスの意見を踏まえて
ホメロスはオケアノスを神々の祖としたんだとかさ。
ヘラは空気で、天空たるゼウスと交わったことがどうこうとか
(つまり、物理学的な事象を暗喩的にホメロスが描いているという主張)

いや、そんなつもりではなかったと思うぞ!

しかし、いろんな解釈を施せるものだな、とか、
当時の知識人としては、それが最先端の科学なんだろうし、
ホメロス擁護派のプルタルコスさんとしては、
ホメロスがそういった知識を踏まえていた、と思いたいのだな、とか
そういう感覚が垣間見えるのは面白い。


・理系・神学系の上述の学派の他に、
エピクロス派とかピタゴラス派とか、もうちょっと生き方考察っぽい哲学の学派にも
言及してあって、
この学派の説がホメロスのこの場面にすでに表れている、などとも
こじつけられています。
いや、こじつけだとは思うけど、プルタルコスさんのホメロス愛はよく伝わった!


・ことわざ、格言もしかり。


・某イタケ人は、途中ちょっと持ち上げられてた!!
そりゃホメロスではいい感じに描かれてますものね!GJプルタルコス!!
あなたとは良いお友達になれそうです。


・政治的な弁論術の観点からホメロスを見る段
叙事詩の作中でいろんな人の長ゼリフが入るけど、それの弁論法などを細かく見た段。
ディオメデスの部分が楽しかった。
彼って、最初にアガメムノンに罵られた時は黙ってて、数歌経ってから言い返すんだけど、
あれは、手柄を立てて実績を作ってから発言を通しているのだ、という指摘に納得した。
男らしい!
でもって、当時のカテゴリーわけとしては、
オデュッセウスは言葉豊かに力強い口調で、
ネストールはやわらかく、
メネラオスは短く分かりやすい技術が駆使されてんだって。へー。


プルタルコスの次の論文↓
・ヘラクレイオスのホメロス論
ホメロスに登場する神々の行動を全て(当時の)科学で説明しちゃうという力技。
プルタルコスさんの一部分のアレを、推し進めた感じです。

無粋やなあ…。

まあ、詩人に批判的なプラトンさんなどの哲学者の向こうを張って
一生懸命当時としては最先端の理論を使ってホメロスを擁護しようという心意気は買いました。
君の情熱は受け取った!


ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市 (ハヤカワ文庫SF)

シェリー・プリースト / 早川書房

スコア:


シェリー・プリース著『ボーンシェイカー』読了。
なんか、本屋で衝動買いしちゃった。
もともとハヤカワのポケミスシリーズで出てたSFで、
気になってたのが今回文庫で出直してたので。
なんか、ポケミスからの文庫化ものに弱いのですよ…。

時は19世紀、所はカリフォルニアはシアトル、
ゴールドラッシュに沸く当地で金脈を掘り当てるための掘削機械をとある科学者が発明し、
その機械が暴走してシアトルの地下に穴をあけまくってしまい、地盤が沈下し、
街は壊滅、その上地中から毒素が染み出て吸った人間は死に至ってしまう、
おまけにその中にはゾンビとなって蘇って生きた人間の生肉を貪るものまで出てくる、
という悲劇が前提にあり、
作品は、毒素が拡散しないようシアトルに高い壁がめぐらされ、
生き残った住民がその壁の外で細々と生きているところからスタートです。
主人公は子持ちの母親で、かつてハタ迷惑な機械を作り上げた科学者の妻だった女、
仕事はつらいし、今は亡き旦那のせいで村八分だし、息子は反抗期だし、
タフな主人公ですが、最近若干息切れ気味。
そんな時、息子が父の名誉を回復しようと、壁の中のかつての自宅へと潜り込んでしまうのです。
それを追いかける母親。壁の中には無数のゾンビたちの他、したたかに生きる犯罪者すれすれの
住民たち、飛行船乗り達などがいて、強烈な個性で母親に関わってきます。
果たして、母親は無事に息子を助け出すことが出来るのかー!

てな感じの話。
お分かりのように、SF文庫から出てますが、スチームパンク冒険ものです
あんまSF要素はないですが、わたしスチームパンク好きなんで全然OK。
設定とか謎とかより、主人公の冒険や出会った人間とのやり取りの方に力点が置かれてる感じ。
面白かったですよ。
でも、毒ガス避けのために常時マスクをつけてる描写と言い、
ゾンビを回避するために地下のトンネルを移動する描写と言い、
閉塞感は半端なかった…。
とりあえず、主人公は一人でも大丈夫な感じのパワフルかつ忍耐強い女性なので、
安心の安定感です。
[PR]
by mi-narai | 2013-12-04 00:49 | 2013年下半期の読書