カテゴリ:2013年下半期の読書( 7 )

『ポケットに外国語を』 『運命の騎士』 『人は何故集団になると怠けるのか』

目白台サイドキック 女神の手は白い (角川文庫)

太田 忠司 / KADOKAWA / 角川書店

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太田忠司著『目白台サイドキック』さらっと読了。
THE日本のミステリーって感じの、あんまりアクの強くないあっさり風味です。
コテコテの洋ものに疲れた時にはこのくらいのフラットさがちょうどいい。
変人と噂される主人公の先輩も意外といいやつだったし。
最後の、事件の趨勢とは全く関係ないオチには

なんやそれ!!

と盛大にツッコみましたが。
この人、オカルト色入れんと気がすまん人なんかしら…


ポケットに外国語を (ちくま文庫)

黒田 龍之助 / 筑摩書房

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黒田龍之介著『ポケットに外国語を』
読了。

面白い!!

若干内田本と共通する軽さというか、鵜呑みに出来んなと思う感じは
ありますけども(当たり前です、エッセイ本ですもの)、
ものすごく読みやすく、かつ、なんかもう、やたらと語学がやりたくなる本です。
勿論、語学を生業としている著者なので、むやみと語学を勧めたり、
習得を気軽に考えるような学習過程を舐めたところなどはひとつもなくて
反対に、世間では「すぐ身につく英語」みたいなテキストばかりもてはやされてるけど、
そんなもんやない、語学の習得というのは時間もつぎ込む労力もかかるものであると
再三口を酸っぱくして仰っておられるのですが、
でも、なんだか、読んでると、かつて自分が知らない言葉に対して感じていたときめきとか
好奇心なんかを思い出して、ワクワクしてしまうのですよ。
テレビのテロップを見て「アラビア語って現在も使われているんだ!!」と改めてびっくりする感じや、
(アラビア語との初対面が物語の中だったので、実際の使用例を見て感動する)
タイ語やヒンディー語など自分の知らない文字が模様に見えるのに、
知っている文字(まったく不得手な英語でさえ)はちゃんと意味をもって読める、という不思議に
ある日ふと気づいた時の驚き、
また、このただの模様だったものが言語を習得するにつけある時点から「文字」に変わった瞬間の感動、
そんなものに共感できる人ならきっと面白いと思うと思う。
それにわたし、著者の語学に対する姿勢にも共感します。
就職に得だからとか、役に立つからとか、
それも大事な理由だけど、語学の魅力はそれだけじゃないのよ!ってことよね?
勉強するなら、楽しいからという理由でやりたい。

以下、特に心に残ったことをメモ書きしておきます。

・リトアニア語。
語学を勉強するものは、古い時代の印欧語族の人々が
どういった言葉を話していたか体感したければリトアニアの田舎に行けと
言われるくらい古い形を残した言語らしい。
有名なのか。

・英語は孤立後に近付いている。
ずっと、そうじゃないかとは思ってたけど(屈折が簡素化してるもん)、
やはり専門家に言われると、そうなんか~と納得する。

・遡りたくなる、という気持ちや、歴史に興味がある辺りも、不肖わたくしなどがどうこう言うのも
おこがましいとは知りつつも、分かる!分かるよ!面白いよね知りたいよねその辺!と握りこぶしで
同意してしまった。


運命の騎士 (岩波少年文庫)

ローズマリ サトクリフ / 岩波書店

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ローズマリ・サトクリフ『運命の騎士』読了。
高校時代に一度読んだきりだった本書。
ローマン・ブリテン三部作が有名な著者ですが、これは
中世(ノルマン・コンクエスト辺り)イギリスが舞台の物語です。
ローマン・ブリテンの方では侵略者だったサクソン人たちは、
今度はノルマン人たちに侵略される側に回ってて、
なんちゅうか、因果は巡るよなあなどとしみじみ。
舞台は目新しいけど、主人公が少年で、
歴史の動きと連動して本人自身にも大事件が起こり、成長する、という
いつもの骨子は健在です。
今回の主人公はみなしごの犬飼い、ランダル。
彼が楽師に拾われ、騎士に預けられ、自分の居場所を獲得するまでの物語です。

最初のあたりは「あれ?こんな本読んだっけ??」と首をかしげそうになるほど
覚えていなかったのですが、読み進むにつれ、思い出してきた。
そうそう、無二の親友べービスとか、
先住民のふしぎな女性アンクレットとか、出てきてた!
これまた安定の面白さです。
この作者は、本当に、自分が見もしていないことを
そこに実際に人がいて実際に暮らしていると
読者が錯覚してしまうようなリアリティをもって描くのだよなあ。
オルハン・パムクの時も思ったけど、すごいなあ。
だから読んだ後、本当に自分がその場にいて体感してたみたいに
余韻が重くて、ちょっと戻ってこれなかったりするんですよね。
後、この作者はちょっとした感情の動きを描くのもうまい。
主人公と、二つ年上の城主の跡取り息子べービスが友達になる段での
主人公のうっ屈した心理や、
青年になった主人公とヒロインが初めて心通じ…そうになって、
直前でそこまでいかなかった時の、なんか物足りない感じなんかが
手に取るように分かります。
初読時の今よりもっと未熟だったわたしはちゃんと分かって読んでいたのかしら…。

しかし、今回も友情が熱かった。
通勤途中だったから鼻すするくらいに抑えましたが、
家で読んでたらおいおい泣いてましたよ、くそう、今回もやられたぜサトクリフ!
これで文庫化した岩波本は全部読み終わっちゃったので、
他の出版社から出てる本に手を出そうと思います。
アルキビアデースの話とかもあったはずだから、楽しみだな~。
でもハードカバー持ち歩くの大変だから、
「ケルトとローマの息子」みたいに、ちくまさん文庫化してくれないかな…(他力本願)。


人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)

釘原 直樹 / 中央公論新社

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『人は何故集団になると怠けるのか』読了。
とりあえず、自分への戒めとして買ってみた。読んでみた。

いや~、なかなか面白い。
一見軽いハウツー本みたいなタイトルですが、
一応社会学の見地から、色々な原因と結果を検証してる本だからね!
新書なのでさらっとさらえてある感じですが。

さぼる原因も手を抜く要因も各種存在して、
勿論もともとの主体の特質なんかも関係してて、
ある状況下で要因が一つないし複数組み合わさって、
手抜きとかタダ乗りなんかが発生してるんだけども、
いちいち、あー、そうだよな~、などと納得することしきりでした。
この世は人を怠惰な手抜きへと導くファクターが多すぎるな!
誘惑に満ちておる…!!
まあ、別に管理職でも経営者でもないから、いまんところ
そこまで危機感はないんだけども、
手抜きの蔓延した社会はちょっと嫌だなあと思うので
(特に政府や行政機関を信頼できないのはつらい。
なんやろう、規模の大きさと情報の透明さなんかしら)
本当は真面目に考えた方がいい問題なんかもしれん。

とりあえず、罰は手抜き対策にはあんまり効果がない事はよく分かった。
してはいけないことをした時に叱るのはいいけど、
たとえば子供の伸ばしてやりたい性質に対して、
それができていないからと言って叱るのは逆効果であるのだなあ…。


小鳥を愛した容疑者 (講談社文庫)

大倉 崇裕 / 講談社

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大倉崇裕著『小鳥を愛した容疑者』読了。

これまたさらっと読み終わりました。
洋もののしつこいくらいの状況描写とかに毎日漬かってると、
たまに読む日本人推理作家の本は

さらっさら読めるな!!

いやー、清涼剤みたいで読むのが楽しいです。
お話は、怪我で閑職にまわされてリハビリ中の元刑事と、
動植物対策のために外部から雇われた専門家の若い女性が
2人三脚で動物(ペット)がらみの事件を解決する、という短編集。
出てくるペットは、十姉妹、蛇(種類忘れた)、ケヅメリクガメ、ワニガメ、シマフクロウ。
主人公の一人、薄さん(若い女の子の方)が本当に動物愛に溢れまくってて
ブレがなくって良かったですよ。
該当ペットの飼い方なんかも事細かに説明されてて、
それもまた楽しかった。しかし、肉食動物を飼うということは、
餌の小動物の処理もしなければならんということなのだな…。過酷。


アルフハイムのゲーム (ハヤカワ文庫SF)

ジャスティナ ロブソン / 早川書房

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ジャスティナ・ロブソン著『アルフハイムのゲーム』読了。
古本屋で100円くらいで売ってたので。
もうないだろうと思っていたのにみつけてしまいました

どうしちゃったのハヤカワさん第3弾!

SF文庫から出てるんだけど、これ、日本の出版だったら確実に
ファンタジーの本棚ですよ。
おまけに、おおまかにロマンス寄り。
SF部分は若干舞台が近未来なのと、5年前に物理学の研究所が事故を起こしたせいで
並行世界がごっちゃになったって設定だけ。

だからこういうの、SF文庫で出しちゃだめだってば!

硬派なSFファンが間違って買うでしょうが!
主人公が事故で半身を失ってめちゃめちゃサイボーグ手術を施されてて馬鹿強いので
ある種爽快感はあるし、出てくるエルフが男前なのは良いポイントなのですが、
作者のせいか訳のせいか、設定が分かりづらく、事故後5年しか経ってないのに
事故前の世界を知る者はいないとかアホなこと言い出すし、
アメリカで起こった事故なのに全世界規模だし(おいおい、アジアを巻き込むな)、
おまけに肝心の「ゲーム」がなんのことだか分からない。
ごめん、あたし、最後までなんのことか分からなかったよママン…。
主人公も、なんや次々と出てくるエルフと関係を持つし
ジェームズ・ボンドの女性版とでも思えばいいんかもしらんが、
わたしはもうちょっと一途な方が好きです。
おまけにエロシーンは2回くらいあるしな。

まあ、思えば、英米では日本よりも「小説」ジャンル内の幅が広いのかもしれませんね。
SF小説だと思うと、なんじゃこらと思うけど、漫画に置き換えたら、
こんなネタ山のようにありそう。誰かがすでに描いてそう。
このボーダーレス、ジャンルも重さも自由な辺りはまさにマンガ的。
…日本ならマンガで描くところを欧米ではSF小説ジャンルで書いてるのかもしれん。
日本密林レビューと米密林レビューの星の差はそういうことなんだろう。
欧米読者は日本SF読者より遥かに軽めで女性向けの読み物だと分かって買ってるんだろう。
ちなみに、わたしの見たところ、
ロマンス小説:ファンタジー:SFの割合は4:5:1くらいです。ご参考までに。
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by mi-narai | 2013-12-29 13:50 | 2013年下半期の読書

『古代ホメロス論集』 『シリーズ日本古代史①②』 『コーラン』

今、ようし、パパ通販しちゃうぞー!とサイトに行ったらば
既に同人誌売り切れてた…orz
わたしのバカ!バカ!!



ニュースで英国艦隊(の内の一部)が来日したてやってたけど、
関係者氏名のとこが「氏名 HMS艦名」てなってて、
このHMSにときめいた!
これ、「"His/Her Majesty's Ship"」の略で、英国海軍艦名の前につけるんですよね、
ナポレオン戦争時を舞台にした英国海軍小説でしょっちゅう見かける称号なんだけど、
実際に現在もついてるの見てなんかやたら興奮しました。
(そこまでディープな帆船フェチでないのでちょっとしたことではしゃいじゃってはしたないですね、
すみません。)


農耕社会の成立〈シリーズ 日本古代史 1〉 (岩波新書)

石川 日出志 / 岩波書店

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石川日出志著『シリーズ日本古代史①農耕社会の成立』
最初のうちは縄文時代の区分分けの変遷など、楽しく読んでいたのですが、
だんだん疲れてきたよママン…
いや、文章が下手なわけでも内容に興味がないわけでもないのですが、
各地の発掘状況などを踏まえながら、大真面目に当時の生活様式などを類推する叙述が
淡々と続くので
…ほら、報告書の類って、ずーっと読み続けると、なんかどれがどれだか
よくわかんなくなってくるじゃない。
あんな感じなの。
とりあえず、7割ほど読み進んだところで、ちょっと休憩。


コーラン―構造・教義・伝承 (文庫クセジュ)

フランソワ デロッシュ / 白水社

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フランソワ・デロッシュ著『コーラン』読み終わりました。
すみません、本の内容がどうこう言う以前に

訳がまずい!!

多分、忠実に訳そうと心掛けるあまりだと思うのですが、
もう、どこをどう見ても直訳です。
あのな。
もうちょっと、噛み砕くとか、せめて単語のチョイスを考えるとか、
頑張ってみようよ!分かりにくいよ!
一般読者に理解してもらおうという心遣いが感じられません…。
研究仲間宛てに訳したんかもしらんが。
いや、研究仲間なら自分で原書読むよな。
そもそも私は理解の遅いおばかさんなのですよ、
いちいち直訳の文章を頭の中で分かりやすい日本語に変換して
意味を理解するのが、手間なんです。馬鹿で済みません。
なのでこの訳者には、自分が読解力のないバカであることに関しては
申し訳ないとは思いつつも一言申し上げたい。この

へたくそ。

まあ、それはさておき、著者のフランス人のコーランに関する文献学的な考察は
面白かったですよ。
井筒先生のおかげで前知識があったので、大体話についていけましたし。
コーランの時代ごとのメディア展開とか、信者の間での位置づけとか、面白かったです。
読み終わって思い返すとあんまり覚えてないんですが。

…やっぱり、なにもかもわたしの頭が悪いのが最大の要因か。


ヤマト王権〈シリーズ 日本古代史 2〉 (岩波新書)

吉村 武彦 / 岩波書店

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吉村武彦著『シリーズ日本古代史②ヤマト王権』読了。
①の最後の方、しんどくなって適当に流しちゃったので、
その反省を踏まえ、今度は最初からきちんと読みこむことにしました。
前回が考古学の発掘成果から見た古代史だったのに対し、今回は、
主に文献学から見た古代史です。
一日1ミリくらいしか進まなくて、1週間余り本を持ち歩いちゃったけど、
総じて言えば面白かったですよ。
参考文献として、古事記とか日本書紀がよく出てくるんですが、
当然ながら神話ではなく
都の位置とか天皇の政治姿勢とかそんなものの参考のためでした。
人制度とか、氏姓制とか、臣連制とか、前よりちょっと分かった気がする。
後、物部氏や蘇我氏の動向が一緒に載ってたのも面白かったです。
当たり前ですが、朝鮮半島とは本当に昔から行き来があったのだなあ。


古代ホメロス論集 (西洋古典叢書)

プルタルコス / 京都大学学術出版会

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プルタルコス、ヘラクレイトス著『古代ホメロス論集』読了。
妹に誕生日プレゼントに何がいいか尋ねられて指定した一品。
ダメもとでこの本を申し出たところ、
本当に買ってくれたので、張り切って読み始めました。
(ちなみに、妹の誕生日には、ジャスミン系の香水を所望されたので、
おばあたまと連名でブルガリの香水を買ってやった。思ったより安くついたし
おばあたまが結構出して下さったので、ついでに他メーカーの
石鹸系のとグリーンティー系の人気作もおまけで付けてやりました。
メイドインアメリカの香水はいまいちわしら姉妹の好みには
合わんということがよく分かった。)


それはさておき、読み始めての一番の感想をあえて申してもよろしいでしょうか。
プルタルコスさんは

ヲタなかーま!

であると。
この論集、プルタルコスとヘラクレイトス(だったっけ。ウロ)の
ホメロス論が載せてあるんだけど、プルタルコスさんのやつが熱くってさ。
プルタルコスはホメロス論1の方は忘れたけど、2の方では、
文法や哲学や政治学など様々な分野の萌芽をホメロスに見つけたいみたいで。
諸分野を端から検証して、
「ほらな、ホメロスにすでにあるだろ?」
と言いまくってます。
以下、例によって心に残った無駄知識を箇条書きに。


・まずは、文法の話。
語の運用や、比喩表現、テクニカルな運用法などについて
ホメロスでの使用例を(だいぶ強引に)引用するという論文の流れなんですが、
そもそも、当時のギリシャ人(ていうかプルタルコス)が、
どういうところに語・文の運用の妙を見ていたのか、という方が面白かった。
比喩表現などは、日本語に当てはめて考えたら、
普段の文章で当たり前のように出てくるような、なんてことはないものなんですが、
結構それをめったに使用例のないサンプルとして不思議そうに書いてたりします。
まあ、動詞に態や時制が、名詞に性があるから、
それがずれてると違和感を感じやすいというのはあるかもしれんな。
(例文が当たり前だけどことごとく『イーリアス』&『オデュッセイア―』なので
もうそれだけで楽しいです。本当に、普段どれだけ自分がホメロスに飢えているかがよく分かりました。
ホメロスがどういった技法を駆使していたのかも分かって面白い。)
後、現代の言語学上は認められてても当時の語学的感覚だとイレギュラーな使い方だと思われた部分などは
あったかもしれん、とも思いました。

ていうか、プルタルコスの時代にすでに文法が出来上がってたってことに、地味に感動した。
そら、修辞学とかあるくらいだもんな!それにしても、すごいな!!

最初の4分の1くらいはそういった文法の話なので、
普通の読者にはまったく面白くないと思います。
それにしても、日本語訳の人は、たいへんだったろうなあ。語の用法とか、ギリシャ語の話なんだから、
元の単語まで日本語に訳したら何が何だか分かんなくなりそうなもんなのに。
(訳注が多いのは仕方ない)


しかし、古代の人(ていうか、プルタルコス)は、
ホメロスがそういった各種の語法を作り出したという視点でこの文法部分の論文を書いたわけだけど、
ホメロス以前に先人たちの色々な蓄積があったことは認知されてなかったのかな。
それに、ホメロスが純粋に文学上の効果を狙ってそういう語法を使ったってより、
詠唱中、ヘキサメトロンに当てはめるために同じ語句をリズムのいい語句に言い換えた結果、
そういった文法上のトリッキーな使用法になっちゃった
という結果論的なアレかもしらんぞ。


・次、物語の要素について。
歴史叙述的な要素がホメロスの作品の中に既に入ってることを確認する部分はいい。
ふつうに、ふーん、そう。と思って読みました。
けど、哲学的要素が含まれてることを見ていく部分はだいぶこじつけっぽかった。
ほれ、当時の、万物は水である、というタレスの意見を踏まえて
ホメロスはオケアノスを神々の祖としたんだとかさ。
ヘラは空気で、天空たるゼウスと交わったことがどうこうとか
(つまり、物理学的な事象を暗喩的にホメロスが描いているという主張)

いや、そんなつもりではなかったと思うぞ!

しかし、いろんな解釈を施せるものだな、とか、
当時の知識人としては、それが最先端の科学なんだろうし、
ホメロス擁護派のプルタルコスさんとしては、
ホメロスがそういった知識を踏まえていた、と思いたいのだな、とか
そういう感覚が垣間見えるのは面白い。


・理系・神学系の上述の学派の他に、
エピクロス派とかピタゴラス派とか、もうちょっと生き方考察っぽい哲学の学派にも
言及してあって、
この学派の説がホメロスのこの場面にすでに表れている、などとも
こじつけられています。
いや、こじつけだとは思うけど、プルタルコスさんのホメロス愛はよく伝わった!


・ことわざ、格言もしかり。


・某イタケ人は、途中ちょっと持ち上げられてた!!
そりゃホメロスではいい感じに描かれてますものね!GJプルタルコス!!
あなたとは良いお友達になれそうです。


・政治的な弁論術の観点からホメロスを見る段
叙事詩の作中でいろんな人の長ゼリフが入るけど、それの弁論法などを細かく見た段。
ディオメデスの部分が楽しかった。
彼って、最初にアガメムノンに罵られた時は黙ってて、数歌経ってから言い返すんだけど、
あれは、手柄を立てて実績を作ってから発言を通しているのだ、という指摘に納得した。
男らしい!
でもって、当時のカテゴリーわけとしては、
オデュッセウスは言葉豊かに力強い口調で、
ネストールはやわらかく、
メネラオスは短く分かりやすい技術が駆使されてんだって。へー。


プルタルコスの次の論文↓
・ヘラクレイオスのホメロス論
ホメロスに登場する神々の行動を全て(当時の)科学で説明しちゃうという力技。
プルタルコスさんの一部分のアレを、推し進めた感じです。

無粋やなあ…。

まあ、詩人に批判的なプラトンさんなどの哲学者の向こうを張って
一生懸命当時としては最先端の理論を使ってホメロスを擁護しようという心意気は買いました。
君の情熱は受け取った!


ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市 (ハヤカワ文庫SF)

シェリー・プリースト / 早川書房

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シェリー・プリース著『ボーンシェイカー』読了。
なんか、本屋で衝動買いしちゃった。
もともとハヤカワのポケミスシリーズで出てたSFで、
気になってたのが今回文庫で出直してたので。
なんか、ポケミスからの文庫化ものに弱いのですよ…。

時は19世紀、所はカリフォルニアはシアトル、
ゴールドラッシュに沸く当地で金脈を掘り当てるための掘削機械をとある科学者が発明し、
その機械が暴走してシアトルの地下に穴をあけまくってしまい、地盤が沈下し、
街は壊滅、その上地中から毒素が染み出て吸った人間は死に至ってしまう、
おまけにその中にはゾンビとなって蘇って生きた人間の生肉を貪るものまで出てくる、
という悲劇が前提にあり、
作品は、毒素が拡散しないようシアトルに高い壁がめぐらされ、
生き残った住民がその壁の外で細々と生きているところからスタートです。
主人公は子持ちの母親で、かつてハタ迷惑な機械を作り上げた科学者の妻だった女、
仕事はつらいし、今は亡き旦那のせいで村八分だし、息子は反抗期だし、
タフな主人公ですが、最近若干息切れ気味。
そんな時、息子が父の名誉を回復しようと、壁の中のかつての自宅へと潜り込んでしまうのです。
それを追いかける母親。壁の中には無数のゾンビたちの他、したたかに生きる犯罪者すれすれの
住民たち、飛行船乗り達などがいて、強烈な個性で母親に関わってきます。
果たして、母親は無事に息子を助け出すことが出来るのかー!

てな感じの話。
お分かりのように、SF文庫から出てますが、スチームパンク冒険ものです
あんまSF要素はないですが、わたしスチームパンク好きなんで全然OK。
設定とか謎とかより、主人公の冒険や出会った人間とのやり取りの方に力点が置かれてる感じ。
面白かったですよ。
でも、毒ガス避けのために常時マスクをつけてる描写と言い、
ゾンビを回避するために地下のトンネルを移動する描写と言い、
閉塞感は半端なかった…。
とりあえず、主人公は一人でも大丈夫な感じのパワフルかつ忍耐強い女性なので、
安心の安定感です。
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by mi-narai | 2013-12-04 00:49 | 2013年下半期の読書

『悪の引用句辞典』 『言霊とは何か』 『悪女入門』 「神の数式」

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M○Sの等身大超大型巨人の首を見にわざわざ大阪まで行ってまいりました。
あほです。見習いです。
毎度のことですが、大阪が無駄に都会でビビる…。
駅周辺がものすごいスマートでスタイリッシュなんですよ…。
田舎者のわたしなどビビりまくりです。
でもって

阪神百貨店のデパ地下は天国…!!

でした。楽園はここにあったんや…


伊勢神宮―東アジアのアマテラス (中公新書)

千田 稔 / 中央公論新社

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千田 稔著『伊勢神宮』
ざっくり読んだけどなんか、どうしよう、あんまり記憶に残ってません…。
一番残ってるのは、前書きにあった生姜板の下り…
(いや、著者が子供のころ、お伊勢参りに行った大人に土産によく貰ってたと。)
あ、海路東国への重要拠点が伊勢だというのは覚えてます。
最初の辺りの古代の伊勢神宮の変遷は割と面白く読んだのですが、
途中からの、伊勢神宮が国家神道につながるまでのみちすじは
ほんとうにさっくり読みとばしてしましまいた。
江戸中期の人の、中国とインドの神話を迷妄と片付けて、やたら
日本神話を持ち上げる姿勢には辟易といたしましたが。
江戸期の日本人は、いったい自分を何さまだと思っていたのか…。 
いやいや、日本神話もほかと変わらんからね。


悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)

鹿島 茂 / 中央公論新社

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鹿島茂著『悪の引用句辞典』読了。

著者はどうやら仏文学が専門の人みたい。
とりあえず、序文で、文学作品の上手な引用は教養人には欠かせないステータスだぜ!
みたいな前振りがあって、その後おもむろに
有名人の名言→それに対する著者の解説
という順序で60人ほどの偉人のお言葉を紹介するという流れになっています。
浅く広く知識をさらえた、あっさり目の本なのかな、と割と軽い気持ちで読み始めたのですが、
これまた、予想外に

面白かった。

最近、面白い本によく当たります。日ごろの行いでしょうか(ぬけぬけ)。
それにしても、なんでしょう、仏文学者って仏文学やってるうちに辛辣にでもなるんでしょうか。
他の仏文学者の本でもツケツケ物を言ってるイメージがあったのですが、
この本もご多分に漏れず、著者の語調がきっつい!
でもそのツッコんだ物言いが大層面白いのです。
普段一般人が思ってても言えないことをズバッと言ってくれちゃってる感じ。
以下、雑感

・とはいえ、著者は、若者に対してはちょっと厳しすぎると思いますよ。
確かに現代の若者の劣化は(主にお年を召した方から)叫ばれてて、その根底には
ネットなどの生活環境・教育環境の変化のせいで共感力が減じてしまったのではないか
という懸念があると思うんだけど、
お年寄りたちは忘れてるんです。

どの時代でも若者はアホだと言うことを…!

今若者を批判しているお年寄りもかつては馬鹿者だったはず。
思い出補正で美化されてんですよ。当時のお年寄りも当時の若者の事を
「ほんまあいつら…」と思ってたと思いますよ。
経験値が圧倒的に低いんやから、生きた年数の少ない人が物知らんのはしゃあないやん。
まあ、若いからな、の一言で愚かな振る舞いが許されるのは
ほんの一時期だけですけどね。
そらわたしも、若者の世間が狭いことからくる無礼さや浅薄さを見ると
イラっとしますが、自分のアホ時代を割合鮮明に覚えているので
強くは言えないという、ね…。
ていうか、年とってなお未だにあほなわしのようなもんこそ
非難を受けねばならんのでh…(Oh…。自滅ネタ)

・ユウェナリスの「お前の鼻が気にくわん」という一文に吹いた。
ゴロが良いわ~!


・教育された女性の割合が高いと社会が安定する、という意見。
なんか、妙に納得しました。
共感力の問題でしょうか。脳の構造上男性より女性の方が共感力が高いらしいし。
(子育てするのが長年女性の役割だったのならならそうなのかもしれんな。
男性は逆に多少はテストテトロンがないと困るだろうし)
そういう共感力の高い人間が社会に多いと安定するという事でしょうか。
他者への共感値が高いと確かにあんまりひどいことがしづらいですもんね。
日本は同調圧力が半端ないという弊害はありますが、
共感しやすい社会だなとは思うので、
災害時の冷静さはその辺りから来るのかしらと想像したりしました。
日本は男尊女卑社会だといわれるけど、プライベートな部分では割合ゆるいと思います。
日本人男性優しい人も多いですよね。
(いや、家庭における役割分担的な部分は別ですよ。
そこについては言いたいことは山ほどありますとも!)
でも公的な部分があからさまに男尊女卑かなとは思う。
女性の力を有効活用とか今の政権が言ってるけど、
よう知りもせんおっさんが女性が働くにはどうするのがいいんだろうって想像しながら
政策立てるよりも、実際働いてる女性がこうした方が自分はやりやすいって
スタンスで決めちゃった方が手っ取り早いんじゃねえの、と思ったり。
それができないのは政治家に女性が少なかったり企業の上の方に女性が少なかったり
するからなのかな、と短絡的に考えると、やっぱもうちょっと女性の社会進出が
しやすい方が、いいのよねえ…、などとしみじみ思った次第であります。
知らんけど。


言霊とは何か - 古代日本人の信仰を読み解く (中公新書)

佐佐木 隆 / 中央公論新社

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佐々木隆著『言霊とは何か』読了。
そのものズバリ好きなテーマだったので買ってみた。
読んでみた。
なんとなく、言葉自体に力が宿って、話したことが実現するのが言霊かと思っていたら
(書いたことによって確定する中国式と対照的)
著者の主張は、

言葉を発したことによってその言葉を実現させる力を持っているのは神のみで、
(神が発した言葉は実現する)人間が実現させようと思って言葉を発した場合(=言上げ)は、
言葉自体の力でなく、その言葉を聞いた神がそれ実現させているのである。
昔の日本人の言霊意識はそんな感じだったっぽい。
でも、江戸後期だか明治だかに右寄りの人が、
言霊信仰を新たに打ち立てちゃって、今みたいな
言葉が独立して力を持ってる、みたいなイメージが出来上がっちゃった。

というもの。
この辺りの学説にはそんなに詳しくないので、
著者の主張が正しいのかとんでもなのか良く分かりません。
でも、これまでぼんやり日本の言霊信仰って独特だなあと思っていたけど、
根底にあるのが人間の祈りを神が聞届けるスタイルなんだったら、
別に他の地域の神話とあんまり変わんないな(なーんだ)と思いました。
ギリシャ神話でも、神が一度口に出した言葉は変更不可能だったもんな。
とはいえ、古代の日本人にとって言葉にして話すことは今以上に重大で、
ちょっとした失言が神を怒らせてえらい目にあったりする話が残ってたりするのは
興味深かったです。
ていうか、昔のギリシャも日本も文字使用以前は考えを具体的に表明するには
声に出して言うしかなかったんだから、涜紳も祈りも話し言葉と結びつくよな。
そらそうだ。


悪女入門 ファム・ファタル恋愛論 (講談社現代新書)

鹿島 茂 / 講談社

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鹿島茂著『悪女入門』読了。
新幹線の中で読み終わった1冊。
先に読んだ『悪の引用句辞典』が面白かったので同じ著者の者を買い求めてみました。
話題が多岐に及んでいた先の作品に比べ、流石に本作はタイトル通り、
フランス文学、及び男女の色恋に限定されていますが、それでも面白く読めました!
そもそも紹介されているフランス文学って男性の著作じゃないですか、なので
悪女の形成もあからさまに男性目線で
「ほんまお前ら毎回こんな感じやな。女性を侮るのもええ加減にせえよ」と
その点に関しては半ば腹立ち、半ば呆れながら眺めていたのですが、…しゃあないか。
それはお互い様ですよね。男性諸兄も女性視点の男性像について色々文句もあろうから
その辺りは大人になって互いに生暖かく見守ることとしましょう。
各文学作品の作中のファム・ファタル(命取りになり得る魅力を備えた運命の女)
について吟味し、男性登場人物との相性を語り、こういった悪女になるための指南という
形をとりながら、読んでいる内にその作品のあらすじを知り、自分も
読んだ気になるという鹿島マジック。
かる~い読み口でありながら文学世界に浸れ、なかなか面白かったです!


NHK「神の数式」1部、2部見ました。以下雑感

Theory of Everything

・物理の世界は美しいですね…。
アインシュタインも真実は単純で美しいはず、と思ってたみたいだし、
物理学はそういう所をめざす傾向があるのかしらん。
全く理数には疎いけど、ぼんやり、その美の片鱗を感じると心が震えますね胸熱!

・朝永さん、かっけー…!!!

・対象性の崩れの概念が理解しづらいよ…。
理論では完璧でも、実際の実像はそうはならない、って
なんだか、現実とイデアの関係みたいですね。
それにしてもカンペキな美しさは破れる定めにあるのですね。

・で、重さは、みっしりその辺を埋め尽くしたヒッグス粒子に
邪魔されて電子やなんやが通りにくくなってる状態か!!
前回物理本読んで書いてあったことが、
やっともうちょっと理解できた気がする!!!
あ、でもまだ重力は標準理論に含まれてないのか。
含まれてると思い込んでました。失敗失敗。
(理解の程が狭いということがバレバレですね☆)

・物理学者はこんなことを考え続けて良く発狂しないなと思ってましたが、
発狂する人もいるらしい。
やっぱりそうか!

・映像で見ると、重力が周囲に及ぼす影響についてもものすごい分かりやすかった。
特にブラックホール!
そうか!めちゃめちゃ重たいとああなるのだな!
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by mi-narai | 2013-10-26 14:10 | 2013年下半期の読書

『アマテラスの誕生』 『日本神話入門』 『福家警部補の再訪』

ひとつ前の日記に
「めんだって初めて聞いた!」と興奮気味に書いたらば、
数人のB州出身者に「今でも使います」と口々に突っ込みをもらいました。
それは実にすまんかった!!
単にわたしの住まっておる地域がB州の端っこすぎて
方言の浸透具合が薄すぎただけじゃった!
けど、ちゃんとまだ方言が使われてると思うと、ちょっと嬉しかったりもしました。
流石に共通語にはならないだろうけど、関西弁話者も標準関西弁的な、分かりやすい関西弁を
つい使いがちですものね。
わたしだって、~とって敬語じゃなくて、~はる敬語使っちゃうし…
(でも「~はる」敬語は嫌味にも使えて色々用途が広いんだよ)
これからは意識的に~とって敬語を使おうと心に決めました。




アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る (岩波新書)

溝口 睦子 / 岩波書店

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溝口睦子著『アマテラスの誕生』読了。
いや、日帰りバスツアーで伊勢参りに行くことにしたんで(今年式年遷宮だしな)
ちょっと予習しとこうかなと思って、積読本の中からチョイスしました。
(どれだけ未読本をため込めば気が済むのか)
軽い気持ちで読み始めたんですが、

これ、面白い!!

まず、その辺のさらっと日本神話を紹介する本と違って、
ちゃんと研究していらっしゃる先生が、根拠とか、現在の説とか、示しながら、
「これはわたしの意見であってまだ決まったわけじゃないけど」とちゃんと
言い置いて、自説を展開するのが、たいへん好感度高かったのです。
こう、きっちり正攻法でアマテラスを考えてる、という感じが。
次に、タカミムスヒ関連のあれこれがこれまたものすごい面白かった!
アマテラスの方が先に日本列島に定着してて、タカミムスヒは後から来た神らしいよ。
ちなみに、北方遊牧民系の神らしい。
著者の考えでは、タカミムスヒこそが、そもそも王家の始祖神だったんじゃねえかと。
このタカミムスヒは天空紳で、立ち位置的にはローマ神話でいうところのユピテルなので、
なのでこれが天皇の祖といわれると、意外とすんなりきます。
アマテラスが王権の源といわれるよりは納得する。
(そののち、なんか色々事情があって、日本史的大事件が起こって
アマテラスが盛り返したり、タカミムスヒに徐々に取って代わったりして
現在の「天皇家のご先祖はアマテラス」、みたいなことになったみたいなんだけど)
なんか、そんな変遷聞くのがものっそい楽しかったです!
(でもほんと、この本では他の部分は棚上げして
天孫降臨部分のアマテラスとタカミムスヒの部分ことのみを語っているので、
他の部分が気になる方、全体的なことが知りたい方などには物足りないかも。)



日本神話入門―『古事記』をよむ (岩波ジュニア新書 (453))

阪下 圭八 / 岩波書店

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阪下圭八著『日本神話入門』
子供向けの岩波ジュニア新書の分です。
なので、大変読みやすい。かといって、岩波少年文庫の物語として古事記を書いてあるのとは違って
軽い解説本の態です。
流石に古事記本も巻数を重ねると、この人はこういう説なのだなあみたいな目で見てしまうもので、
この本も例に漏れずフィルターを通して見てしまいましたが、
まあ、割合面白いです。
流石にジュニア向けなのでそんなに極端な説にも偏らず、さらっと説明してある感じ。
でも表面だけじゃなくて他の神話との比較とか交えつつ、物語としてだけでない
神話というものの本質(というと大げさか)にも一部踏み込んだ内容になってて、
入門にはほんとうにうってつけの良い本だと思いました。まさにこれこそ「日本神話入門」。
古事記だけでなく、風土記とか万葉集にも言及があるのは嬉しいところ。
オオクニヌシとスクナヒコナの我慢比べの話には吹きました。
こいつら、言うに事欠いて、便意を我慢するのと、重い荷物我慢するの、どっちが大変かとか
そんなアホなこと大真面目にやってて、最終的に道端で排泄して、地名にまでなってやがりますよ。
しかもこれ播磨国風土記なんだ…(ご先祖様…)


翌日読了。

古事記って、最初の神々の話が取り上げられがちですが、
中・下巻は、天孫降臨後の初代天皇の話なんですよね。
もちろん、史実ってよりは、ローマの最初の5人の王とか、テセウスとかミノスみたいに
ほぼ伝承上の人物たちなんですけども。
神話と伝承の微妙な混ざり具合がローマの初期の歴史っぽい。
背景として、古事記が成立した飛鳥朝(だっけ?)の中大兄とか大海とか、額田王とかの名前が
でてきて、むかしおばちゃんに貸してもらった『天上の虹』を大いに思い出しましたよ。
日本という国名が使われ始めたのもこの時期だといわれてるんだけども、
確かに『日本書紀』のタイトルにそのものズバリ日本って国名が使われてるわな。なんか、納得。
後、最後の辺の出雲風土記の中の国引き神話、よそから土地を引っ張ってきて
自分ちにくっつけちゃう話、なんか、こういうの、北欧でもあったよなーなどと。
イザナギ・イザナミの国生み神話はあからさまに南方系だと思うけど、
別系統の神話も伝わってたんだなあ、と、当たり前のことですがそのことをしみじみ感じました。



福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

大倉 崇裕 / 東京創元社

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大倉 崇裕著『福家警部補の再訪』読了。
『挨拶』から引き続き正統派倒叙型ミステリー
(冒頭で、犯人視点による犯罪場面が描かれ、作中で福家警部補が捜査の過程でひとつづつ小さな
証拠を集めて、そこから犯人に到達していく、という流れ)
これも、地味ながら堅実な印象の、良質ミステリーでした。
なんか、この形式、犯人に感情移入してしまいますね~。
後、福家警部補の睡眠時間のなさと趣味範囲の広さにびっくりした。
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by mi-narai | 2013-09-23 00:01 | 2013年下半期の読書

『マホメット』 『フルーツひとつばなし』 『福家警部補の挨拶』

今週も更新がままならず大変遺憾に…すいません、各種締め切りにガクブルする毎日です。
(別にサイトを維持する熱が冷めたとか、そういうのじゃないので安心してください。別に誰も心配しとらんか。そうかそうか)
10月いっぱいくらいは追いまくられておぶおぶしてると思いますが、隙を見て更新も頑張る所存です!(ハデスさんのアレ、早くきっちり描いてしまいたいよ~。でも、G様の企画の方、もう描くのが楽しゅうて楽しゅうて。スミマセン、オノレの欲望に負けまくってます。掛けた時間と仕事量がまったく比例してませんが。描いちゃ消し描いちゃ消しして1日丸まる描いても下書き2ページほどしか出来上がらんてどういうことだーーー!!!!ああああああ間に合うのか自分~~~同じ時間くらいちまちま色も塗って、HPの更新はその合間なんじゃよ~~~!!!!)

雑談ついでに


B州弁

河内弁と並んでガラが悪い、下品などと評される方言です。
(念のため、それでもやっぱり愛着がありますし、好きですよ)
とはいえ、中途半端な田舎に住んでいるのでわたし自身は方言の浸透具合も微妙ですが。
喋っても全く迫力ありません。ふつうです。
もっとガチガチのB州弁話者だったら口げんか強かったかもしれないのに残念…。
由緒正しいB州弁を使用する人も少なくなる中、わたくし、とうとうリアルで

めんだ(基本形:めぐ 意味:壊す ちなみに自動形は「めげる」になると思われる)

を聞きましたよ、皆さん!!おおおおお、まだこれを使用する話者が残ってたのですね!
見習い、感激!!

や、なんのことはない、隣の祖母なんですけどね。
こないだ、母と畑の作物と動物の話してて、イノシシやシカは悪いことするよな、みたいな流れで

ばあさま「クマやったら南瓜めんで食べるんとちゃうの」
おかん「いや、流石に熊は出えへんて。見たことないし」
※最近居住県でツキノワグマの目撃情報が増えたという新聞記事を受けて。

という会話が。

そういやばあちゃん、しょっちゅう「~やさかい」とか、「つんだかつんだか」とか、
大層な言葉使うよなあ。貴重や…
亡くなったハニー(享年93歳)は同じ県内とはいえ全く違う方言だったのですが
(AIの母音がEに変化したり。ちょっと江戸っ子言葉みたいだった。
音調は明らかに関東風なんだけど関西弁的な語尾もあり…。
関西弁だったら、あんたもうやったんか?になるところを
おめぇ、もうしたけぇ?的な変化をする感じ。
おそらく、日本海側の鳥取の言葉に近いんじゃないかなあれはと勝手に想像する)
なんで録音しておかなかったのかな、わたしは…。



マホメット (講談社学術文庫)

井筒 俊彦 / 講談社

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井筒俊彦著『マホメット』
最初は和辻哲郎の『風土』を読もうとしてたんですよ。
でも、語り口が哲学書っぽい感じの分かりづらさでですね…。
寒さを感じる、ということについて、「寒さ」を感じるとはいえ
「寒さ」というのは概念で本当は寒気がそこだけまとまってあったりするわけではなく、
人間が寒い場所に出て「さむっ」と能動的に感じてこそ寒いと認識するわけで、
要するに、人の有りようには周囲の環境が切っても切り離せないわけ。
人間というのは個人的な面も社会的な面も含めて人間なのであって、
同じように時間的なものだけでなく空間的なものも含めてこそ
こうなんていうかな人間社会の特徴っぽいもんは捉えられないんじゃないか

とか、そう言ったような事を10ページくらいかけてもって回った言い回しで
(まあ、正確に言い表そうとするとどうしてもそうなるんだろうけど)
くどくどと説明するもんだから、
読解力のあんまりない私は、著者の意図が正確に掴めてるかどうか
自信がないうえ、噛み砕いて理解するのがつらく、……

哲郎…ごめんなさい、わたしにはあなたは高嶺の花…

なんか、そんな気持ちになって、読むのはもっと先に延期しました。
もうちょっと気力が充実してる時にな~!
ごめん、今寝不足やねん。

そんなわけで、口直しに井筒先生の薄っぺらいこの本を手に取ったわけです。
書かれたのは昭和初期(「マホメット」という呼び名からも察せられますでしょ)
前書きで、ご自身も「いや~。若い頃の本だから読み返すと懐かしいわ~」などと
仰っておられるほど昔の作品です。
これも哲郎本みたいに読みにくいんじゃねえかと一抹の不安がないでもなかったんですが、
読み始めてそんな不安は吹っ飛びました。
面白い!小説みたいですよ!
確かに荒削りで、だいぶ主観的かもしれませんが、
却って若かりし先生のアラブ世界に対する情熱の迸りが感じられて、心地よいです。
井筒先生の御本とは相性いいんかなあ。これまでまだはずれがないです。
半分ほど読んだので、続きも楽しみに読みます!


数日後、読了。
最後まで面白かった!
マホメットの伝記ではあるけれども、まず、マホメットの生きた時代背景から説明し、
その後、彼の業績の意義とか、そういったことに踏み込んでいくので、
大変読み応え有りました。
ギリシア神話にしろこういった半伝説化した有名人の伝記にしろ、
真実も伝聞もすべて同列にひとくくりにまとめて全てを網羅するような書き方が
いまいち好きでないので、伝聞をなるべく排し、客観的に見つつも
ご自身の情熱を傾けて書いておられる井筒先生の筆致が大変好ましく思われました。
いや、神話の場合は神話事態がすでに長い年月の間の伝説の集大成な感もあるから
厳密に時代背景考えるの、難しいだろうけどさ。でもなるべく考えたいのさー。
閑話休題、本書の内容は、以前に読んだ『「コーラン」を読む』&「イスラーム文化」と
若干かぶってる面はあったんだけども、なら読まなくていいかというと逆で
補完し合っていて理解が深まる感じです。
今回目新しかったのは、最初はムハンマドさんが、
けっこうユダヤ教徒やキリスト教徒に親近感かんじてらっしゃったみたいだということと(いがーい)、
イスラム以前、ジャーヒリーヤ(無道時代)のアラブは多神教の世界だったんだけど、
カーバ神殿にはアラーの他多数の神々が祭られてて、
なかでも人気の女神はマナートと、アッラートと、アル・ウッザーだったらしいということでしょうか。
一神教以前の中東の神話体系はめちゃめちゃ気になるところなのでつい神々の名前が出てきたら反応してしまう…

わたしのアホ感想はさしおいても、ぺらいし、その割に奥深いし、何より読みやすいので
おすすめです。



フルーツひとつばなし おいしい果実たちの「秘密」 (講談社現代新書)

田中 修 / 講談社

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田中修著『フルーツひとつばなし』読了。

おお、面白かったよ!
これまた職場の京都弁の超絶かわゆらしい上司にいただいた一冊。
いつももらってばかりで済みません。
まず、なんといっても美味しそうな写真につられます。
写真を侮ってはいかんよ。
わたしは、自分が作りもしないくせに写真があまりに美味しそうだったという理由で
洋菓子の本を2冊も買った前科者ですよ。
一つのフルーツにつき4ページくらいにわたって説明してあって、
ざっくりした来歴も面白いし、栄養分とか、
生物学的な掛け合わせや遺伝の小話もまた面白く、
わくわくしつつさくさく次へ次へと読み進んでしまいました。
いちご、りんご、みかん等の超メジャーどころの他
チェリモアとか、ドリアンといったマイナーなフルーツも載ってますよ。
(日本で手に入るフルーツに限定されてはいますけど)
なんか、やたらと果物を食べたくなる一冊。
それにしても、バラ科の果物って多いんですね…。
後、みかんの種類の多さにびっくりした。
原産地とか、学名もちゃんと載ってて、
学名見てけっこう笑っちゃいました。
アケビのラテン語名「アケビア」って!


福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)

大倉 崇裕 / 東京創元社

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大倉崇裕著『福家警部補の挨拶』読了。

なんとなく、本屋で見つけて買ったもの。
短編数編が入ってるものですが、意外と面白かったですよ!
刑事コロンボ方式で最初に犯人が分かっていて、探偵(この場合福家警部補)が
証拠を地道に集めて犯人の犯行を証明していく流れで一貫して書かれてます。
しかし、今時の子にはふるはたにんざぶろうって言った方が通じるのか…?
(あれだって、コロンボを踏襲したんだろうに)
探偵役の福家警部補は、小柄でメガネの女性で、落ち着いた人当たりのいい人だけど
犯罪捜査に関してはものすごいタフ。
アクはないけど、好感度は割と高いですよ。
なかなか面白かったので続きも買ってみる予定。



高田崇史著『QED諏訪の神霊』『QED出雲神伝説』読了。
貸してもらったので急いで読みました。
いつもどおりかな~。
タタルさんと奈々ちゃんが早くくっつけばいいのにとじりじりしてます。
今回は日本神話がメインでそのあたりは面白かったけども
作者の神話のとらえ方はいまいち好きではありません浅いわ!(←えらそう)
しかし長く続いたこのシリーズもあと一冊かあ…。

以下、アホなアニメ話なので畳みます。
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by mi-narai | 2013-09-01 23:11 | 2013年下半期の読書

『植物のあっぱれな生き方』『緑の瞳のアマリリス』『王のしるし』『宇宙はこう考えられている』

植物のあっぱれな生き方 生を全うする驚異のしくみ

田中修 / 幻冬舎

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田中修著『植物のあっぱれな生き方』
読了。
またもや職場の京都弁の上司にただでもらったので。
ああんもう、癒されるわぁ!ほんまかいらしなああああ!!

それはともかく本の内容。
なんだかんだいって結構田中先生の本、読んでますよね、わたし。
先生は一般の方にも分かるようそもそもものすごーく噛み砕いて分かりやすく
書いていらっしゃるのですが、それでも若干詳細に踏み込んだ本と、
一般向けに徹底していらっしゃる本があり、
これは一般向けの方の本でした。
他の御本で既に読んだことのおさらいといった感じで、ときたま新情報が入る感じ。
植物全般のふしぎとか、小ネタが満載なので、先生の本を未読の方にこそ読んでいただきたい。
(わたしはもうちょっと踏み込んだ内容の方が好きだ…)
でも踏み込んだ内容もさらっと当たり前みたいにおっしゃるから、ひょっとして
語り口に騙されてるだけかも…


緑の瞳のアマリリス (ハヤカワ文庫SF ク 12-1)

ジェイン・アン・クレンツ / 早川書房

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ジェイン・アン・クレンツ著『緑の瞳のアマリリス』読了。

どうしちゃったのハヤカワさん!?第2段。
本書は、ハヤカワSF文庫から出ているフィクションです。
『グリムスペース』は毛色の変わったロマンス小説でしたが、
これは普通にロマンス小説です。舞台がちょっと地球じゃないだけ!
でも地球に酷似した植民星だし、ものすごい日常が描かれてるし、
ロマンスSFというよりは、パラノーマルロマンスだろ、分類は。
このジェイン・アン・クレンツという方、ロマンス小説のシリーズではしょっちゅうお名前を
拝見する大御所さんで、いやもう、この名前をハヤカワでみつけてわたしゃびっくりしたよ!!
(この小説の中でも3か所ほどはベッドシーンがあるからね!これから読む人は心するように。)


あらすじとしては、頭はいいけどお固くて道を踏み外したりなんか絶対しそうにない主人公
アマリリスが、アウトローな新鋭実業家と仕事することになり、その際発見した不正と、
先日亡くなった恩師の死が関わっているのではないかという疑問が浮かび上がり、
殺人事件に巻き込まれる、というもの。
SFとミステリーとロマンス小説が2:2:6くらいの割合で混ざってるという、
考えたらお得な一冊。
一見ただのコンテンポラリー(現代が舞台のロマンス小説)みたいなので、
SF部分の説明をすると、
舞台が地球の植民星だということと、
植民星の過酷な自然環境に適応するよう人類の超能力が具現化している世界だということ。
ヒーロー役の新鋭実業家は、相手の能力を察知する能力と、幻影投射能力があって、
主人公には第三者の超能力を強化する能力があります。
こんな中二設定なくても良かったんとちゃうかなあと思わんでもないですが、
ロマンスのスパイスにはなっているので、割り切って読みましょう。ツッコんだら負けです。
途中、ヒーローの昔の知り合いでいわくありげな男性が二人出てくるのでもしやと思っていたら、
案の定本国ではその二人をヒーローに据えたスピンオフが出ているらしい。
ハヤカワさん…。グリムスペースといい、1巻目だけ訳して放り出さないで、
続きも訳して下さいよ…。
(でも、SF文庫から出すと本来のSFファンが間違って買っちゃうから、
イソラ文庫くらいにしといてください。)
イソラ文庫といえば、アシュリンとドラゴンシリーズの1巻も読みました。
あれはあからさまにロマンス小説のくくりなので、感想は省きます。
ヒーロー役のワイバーンが悪者っぽくて良かったですよ。


王のしるし(上) (岩波少年文庫)

ローズマリ・サトクリフ / 岩波書店

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ローズマリ・サトクリフ著『王のしるし』(上)
高校生の時分に一度読んだ本。
面白かったことと、傭兵稼業っぽいことをやってる主人公が
王様の代役に立つ話だっていうぼんやりしたあらすじは覚えてたけど、
さすがに細部はきれいさっぱり忘れていた一冊。
とりあえず、上巻読んでみました。
読んだ当初は自分が若かったこともあって、主人公が大人なイメージ(悪く言えばおじさん)が
あったのですが、年を経て改めて読むと、

…若いな、主人公…!!


で、この主人公、父親はローマに征服されたギリシャの商人で、
母親はその奴隷のケルト人。
父親はいずれ認知する予定だったけど、その前に急死してしまい、
主人公は数回売られ、最終的にサーカスの剣闘士に。
で、立派に務めあげて木剣もらった(つまり、自由になった)はいいけど、
羽目はずして飲み過ぎて捕まって、助けてくれたケルト人から、
自分たちの王の替え玉になってくれんかと持ちかけられるという…

いや、面白いです。
正体を偽っているというスリルと、良く分からんケルト氏族の生活に放り込まれた
主人公の目を通してみた異文化生活が、目新しくてワクワクします。

主人公が連れて行かれたのは、アイルランドからスコットランドに戻ってきたケルトの部族
(本の中ではダルリアッド族と呼ばれてます)で、太陽神ルーフを信仰してます。
要するに主神は天空神で男神です。
一方それといざこざを起こしてるスコットランドのカレドニア族は大地母神を信仰してて、
新旧の信仰形態のせめぎ合いという意味でも面白い。
更に、この地にはケルト族に被支配民の地位に追いやられた黒い人々(先住民ブリトン人)
も住んでて、話を更にややこしくさせてます。彼らも大地母神信仰者。
きっとこんなことがギリシャでもあったんだろうけど、
最終的にあそこはうまいことハイブリッドさせたよなあ!

主人公の(厳密には主人公が演じているマイダー王の)従弟である
コノリーという青年がまたいい味出してます。
これぞ脇役のあるべき姿!
主人公はどうしても無色になりがちだから、勢い、
よりクセのある脇役の方が魅力的に見えちゃうんだよなあ!
今回のワタシの一押し。
いや、でも主人公のフィドルスもいいやつですよ!

上巻の時点で、
ダルリアッドの王マイダーになり変わった主人公が
ばれそうな局面を間一髪かわしつつ、
徐々に馬族(ダルリアッド族)に馴染んでいく過程を楽しんでおります。
敵の女王リアサンの娘、マーナも出てきて、面白くなってきました!

次ィ!!


王のしるし(下) (岩波少年文庫)

ローズマリ・サトクリフ / 岩波書店

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(下)

読了。


ああ、読み終わってしまった…。

多分そうなるだろうとあらかじめ予測はしていたけれど、
やっぱり読み終わってずっしりくるこのただ事でない読後感…。
安心の良クオリティです。
やっぱりサトクリフは再話ものよりオリジナルの方がよほど良いです!
しかし、一度読んだはずなのに、わたくし、最後の場面も、間違って覚えてました。
傭兵主人公が戦いに赴くところで終わるような、戦車関連のような、
なんかそんな記憶があったのに、全く違う場面だったわたしの記憶力あてにならん!!
主人公は誇り高く生き抜き、
最後のあたりなど、惹きこまれてぐいぐい読んでしまった。
以下、この本で気に入ったところ。

・コノリーが最後までナイスガイだった。

・サトクリフの話には珍しく主人公が女の子と相思相愛になった。
(いや、大体の話でも報われるけど、これだけはたから見て分かるくらいなアレなのは
珍しいなと)

・辺境のオオカミ(地方軍団)がちらちら出てきた。
最終的に砦の司令官にまで上り詰めた
隊長の名前がヒラリオンだったりして、『辺境のオオカミ』の方の副官の血縁者かなと
想像させ、ちょっと楽しかった。

・ブリガンテス氏族の女王の反乱についても少し言及があって、
(これも有名な事件のはずだけど、不勉強でまだ詳細を知らない)
確か、『第九軍団のワシ』の主人公の相棒エスカの氏族がブリガンテスだったなとか
過去作とのつながりがほの見えて嬉しかった。


幸せなことに、未読のサトクリフ本がまだ数冊のこっているので、
楽しみに読もうと思います。
未読本に入る前に、これまた高校生の時に読んだきりの『運命の騎士』を再読する予定ですが。
岩波さん、少年文庫にしてくれて、ありがとう!


宇宙はこう考えられている: ビッグバンからヒッグス粒子まで (ちくまプリマー新書)

青野 由利 / 筑摩書房

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青野由利著『宇宙はこう考えられている』読了。

新聞の書評読んで面白そうだったので。


マジで面白かったよ!!!!


散々言いましたが、わたし、ほんとに文系人間で理系の素養が全くないのですが、
その私でもわかるくらい噛み砕いて物理の話が書いてありました流石科学記者!
今流行りのヒッグス粒子のことから、物理学の中の宇宙論の歴史とか、
興味深い辺りが数珠つなぎに書いてあった。もう、読んでる間わくわくしっぱなしで
全てのページがきらきらしてるみたいに感じてましたよ!
宇宙の話って、なんだかファンタジーだよねえ!
今この一瞬も自分がまだまだ分かってない不確定な世界で生きてると思うと、
なんだか不思議な気持ちですよ。
なんたって、世界の7割はよく分かってない暗黒エネルギーで占められてて、3割は暗黒物質(ダークマター)で、解明されてるのは3~4%にすぎなくって、生き物や地球やその他もろもろ日常生活で目にしている全てはこの数%でしかないなんて、あらかじめそのくらいの知識はあったけど、改めて言われると
なんか、すごいなあ。
素粒子も、よく分かってなかったけど、この本のおかげで輪郭だけぼんやり分かったような気になりました。
原子を形作るもっと小さな何かなんですね!物質のもととなる素粒子があるのは当然として、
力のもととなる素粒子や、質量のもととなる素粒子があると考えられていることにはビックリした。
確かに、理科の時間に地球には重力があって、とか習ったけど、
その重力ってそもそもどこから来てんのとか、
いろいろ謎なままだったので。まさか素粒子がくっついてそんなことになってたとは!
一番初めビッグバン前後のあたりは、まだ質量を付加する素粒子がくっついてなかったから
すべては光速で飛び回ってたんだってね!なんか、これもすごい。イメージだけで幻惑されます。
当時は物質と反物質が同量あって、これはぶつかるとプラマイゼロになって
そのままじゃ結局何もなくなるところを、なんかしらんが対称性が崩れて反物質の方が少なくなって、
今みたいないろんな物質が出来たとか、神話聞いてるみたいですよねえ。
その時代の説明出来る限りの方法で世界の成り立ちを語るのが神話なら、
物理学は立派に創生神話だよねえ。
そうすると、理論物理学者は現代の予言者ですよね!!


後、このワクワクする感じが、本来の哲学だと思うんですよねえ…。
(わたしの哲学定義はソクラテスで止まってるんで、おかしなこと言ってる自覚はあります。
でも、要するに、世界に対する知的好奇心みたいなもんじゃないの、ピロソピアって。)
他にも、アインシュタインの相対性理論とか、ひも理論とか、多重宇宙とか、面白そうな話が
いっぱい詰まってて、もう、語りだすと長くなって仕方がないので(理数音痴のわたしではうまく語れないし)
気になる人は本読んでください。
似たようなの、いっぱい出てますし。めっちゃ面白いから!
しかし、こういう話、身近な悩みがちっぽけに思えて割と吹っ切れるのは助かりますが、
考え込みすぎると、自分の存在のおぼつかなさに発狂しそうになりますね。ほどほどにしましょう。
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by mi-narai | 2013-08-03 17:22 | 2013年下半期の読書

『卵をめぐる祖父の戦争』 『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』 『世界史の叡智』

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)

デイヴィッド ベニオフ / 早川書房

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デイヴィッド・ベニオフ著『卵をめぐる祖父の戦争』読了。
とりあえず、『TROY』の脚本の人の小説なので、それだけの理由で購入し、今になって読み始めました。
一気に読み終えました。
面白かった。読み終わったときも、まだその世界から抜けてこれず、ぼんやりしてしまった。
だから、友情モノはやめてほしいんだってば!!むやみと涙もろくなるからね!!!


とりあえず、あらすじの説明をば。
時は、第二次世界大戦時、舞台は包囲されているレニングラード市内とその周辺です。
ドイツ軍に包囲されて飢餓状態で市民全員飢えまくってる時に、
主人公の17歳の男の子は敵の死骸からナイフ一本取ったという理由で
味方の兵隊に銃殺されそうになり、
それを免れるかわりに、脱走兵の若者と一緒に、
偉い人の娘さんの結婚式に花を添えるウェディングケーキの材料の
卵を1ダース探してくるよう命じられる、という


なんでやねん!!!


というはなし。なんでやねん、というツッコミは、設定がおかしいとかじゃなく、
なんでこんなばかばかしい事に命をかけさせられて、いろんな人が殺されて、
もっと多くの人がひどい目に遭わないといけないんだ!という憤りの叫びであります。
でも、実際こんなもんだろうな。世の中いい人ばっかりじゃないだろうし。
なんで、なんでこんないい人がこんなアホな死に方せんといかんのだろう、というような局面が
きっと戦時中数え切れないほどあったに違いない。いや、今でもたぶん、山のようにある。
そのあたりが、リアルでもあり、一見その設定が荒唐無稽でおとぎ話のように見えるという理由で、
お話の中の残虐性をそんなに生々しく感じなくて済む安全弁にもなっていうという…

以下、雑感・

・レニングラードって、ぼんやり東独のどっかだと勘違いしてました。アホです。
どう考えても、ロシアです。以前のサンクトペテルスブルグですよ!!!
(地元民の愛称はピーテルらしい)

・語り手は著者で、著者が祖父から聞いた話をもとに書いたものが本作である、という、
枠物語の中の物語として、レニングラード包囲戦時の祖父の若い頃の冒険が語られていきます。
なんか、爺ちゃんから戦争の話を聞くというシチュエーションが、自分の祖父を思い出させて、
懐かしいやら切ないやら。
おじいたん…。
父方も母方もどっちのじいさんも、聞いたら戦時中の話をしてくれたもんですよ…。
特に父方のじいさんはねだれば快く話してくれたもんじゃった…
(もともと気のいい話好きなじいさんだった)
(でもって、ど田舎の貧乏農家の何番目かの息子に生まれたじいさんは、
三食と寝る場所が提供されるから、というだけの理由で一兵卒として軍隊に入った)
まだ激化する前に負傷して退役したからかもしれないけど、
(流石に女の孫にそこまで残虐な話はそもそもしないだろうし、)
祖父が話してくれるのは悲惨な負け戦になる前の戦線の話で、
船の上からイルカを見たとか、イギリス人に車に乗せてもらったとか、
一日中行軍でしんどかったとか、
結構、本作と同じように、若い男の子の青春物語の態を醸していて、
その記憶があったもんだから、より一層、この小説をリアルに読んでしまいました。
もちろんじいさんの思い出話よりもこの物語の状況はもっと切羽詰まってて
危機的な時期が長いんだけども、
そんなときでも、友達同士ならアホ話するし、性的なことに興味はあるし、
美味しいもの食べたら嬉しいし。こんなもんだよなあ、と。
ずーっと深刻なわけでも、ずーっとお気楽なわけでもなく、一時的に危機に陥るけど他の大部分の時間は
くだらない日常業務に費やされてたり、大したこと考えてなかったりするもんだよな。

・とはいえ、戦争中の物語ですから、通常の秩序は当たり前のように崩壊しています。
凄惨なエピソードがこれでもかというくらいおてんこもり!
でもそれがそれほど血なまぐさい印象を与えないのは、
先にも書いた、おとぎ話っぽい話の枠組みのせいか、はたまた極寒の地だからなのか。
死体も何もかもすぐに凍っちゃって、あんまり液体が流れてる印象がない。
(後、事件の凄惨さより、主人公の空腹の方がつらそう)
でも、一か所だけ、流石のわたしも「ぎゃーーーー!!!!やめてーーーー!!!!!!」
リアルムンクの叫びを実演しそうになった箇所がありました。思わず3行とばしに飛ばし読んだ。
暇な人はどこか当ててみてください。

・あらすじを読んで、主人公とコンビを組む、コーリャという青年、
頭はいいけどもっとこすからい皮肉っぽい人物を想像してましたが、
蓋を開けてみると金髪のイケメンで、
天真爛漫で伸びやかであけっぴろげな兄ちゃんだった。
アポロン:ヘルメス=7:3くらい。
いい人ですよ。
大胆で明るいだけじゃなく、意外と繊細なところもあったりするので、
その辺りのバランスがたまらん!

・で、主人公のレフにはものすごい共感率高かった。
自分のことを臆病者だと自覚してるあたりが特に。
だから、年上のコーリャに対しては、憧れや友情もあるけど、その大胆さに対しては
妬みの感情があり(自分にはけっしてあんな風になれないという確信と諦めがある)、
そのあたりの入り混じり方が、ああ、めっちゃ分かる…と。
なので、コーリャに対しては、ものすごいレフ視点で見てました。
いつもならいい男だなあと素直に思うところを、
今回は、ダメなところもあるし、馬鹿だと思う部分もあるけど、最終的に
根本的なところで信頼していて、あいつは友達!と思って見てた。
でもって、祖母になる女の子には、一緒に恋に落ちました。

・そもそも、著者が祖父の話を書きとめる、という体裁なので
(もちろん、これもフィクションですよ。実際には著者の祖父母はアメリカ出身らしい)
主人公のレフは生き残ることが確定しており、その辺りは安心して読めました。
なので余計に、祖母になる人は誰だろう、コーリャの運命はどうなるんだろう、
というところがハラハラした。


早川ミステリ文庫の棚に置かれてますが、ミステリじゃないからね!
純文学でも悲惨なだけの戦争ものでもなく、青春もので主人公の成長物語の
一大エンタテイメント作品だと思う。

(※大体アホのわたしがそんな難しい本を読むはずがない。)

あまり大層に考えずに素直に楽しんでください。
数えればきりがないくらいグリム童話みたいな残酷シーンが目白押しなのに、
最後まで読むとほんわか幸せな気持になるというか、しみじみするというか、
読後感は悪くないですよ!


文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)

ジャレド ダイアモンド / 草思社

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ジャレド・ダイヤモンド著
『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』読了。
このダイヤモンドさん、『銃・病原菌・鉄』とか『文明崩壊』とかが有名な方なので
勝手に歴史学者かと思いこんでましたが、
本業は進化生物学者だったのですね…。そうか、理系の人だったのか。
俄然買ったまま読んでいない上記の2作品を読む気が湧いてきました!

それはさておきこの本。
セックスとか性交渉とか乱婚とか破廉恥な単語が頻出するので、
電車で読むには肝を据えて読まねばならん一冊です。
ちょっと気にしちゃうピュアなお嬢さんは気を付けて!
でも、書いてある内容はものすごい真面目に性について考察してあるだけなので
別にエロくないですよ、そっちを期待しちゃった方も間違って買わないように気を付けて!
その証拠に、目次は
1、人間の奇妙な性生活
2、男と女の利害対立
3、なぜ男は授乳しないのか
4、セックスはなぜ楽しいか
5、男はなんの役に立つか?
6、少なく産めば、たくさん育つ
7、セックスアピールの真実
となってて、一見目を引く見出しですが、内容は動物の最大の目的である遺伝子を後世に残すという
課題について、各々の特徴がどう働いているのか、うまく適合するためにどう進化したのか、
的な考察になっています。で、結局どうなのかといわれると、今のところこういう説が出てて
作者はこうじゃないかなと思ってるんだけど、実際に真実がどうなのかは研究途中だったりして、
「まだまだ世界は分からんことだらけだな!」という感慨に落ち着きます。
いや、面白かったよ!
以下、特に思ったこと。

・男性は狩に行って、女性は子育てして家の周辺で小動物や植物を採集して
これは双方の利益が合致するからこの形なんだとずっと思ってたけど、
実はもっと複雑なのかもしれんな、と今回しみじみ思いました。
男性側の利益と女性側の利益と、社会的な枠組みと、色々な要素が複雑に
絡み合って、その上でバランスがとれたところに夫婦間の互いの仕事の割り振りが
行われてんじゃないかと。
しかも一本道じゃないかもしれないんですよ。
ある生物の特徴について、一旦別の目的でそう進化した後、さらに良い方法が見つかって、
本来の目的と違う方向に進化の結果を転用する、という2段進化の過程が説明されてて
人間の男女間の社会的関係もそう言った複雑な変遷を経ているのではないかと
類推されてて、ものすごい面白かった。
やっぱ、単純には説明しきれないもんなんだな。

・子育てにおける男女の役割には、男女が子作りにおいて支払った投資の大きさ、
子供が自分の子であると実感できる割合がこれまた関わってて、割と納得しちゃいました。
排卵が隠されている理由についての考察も面白かった。

・後、男性が授乳するのって医学の助けを借りれば無理ってこともないらしい。
育メンが流行ってんねんから、親父も子供にちちやればええねん。

・じじばばの役割についても納得した。自分ちの家族に当てはめてみると、
じじばばがいなけりゃそもそも立ちいかなかっただろうしな。
もっと日本人は(わたし含め)人生の大先輩に対する敬意を新たにせねばらなんな、と思いました。
体力がないのは確実なので、流石に政界の第一線からは退いた方がいいとは思いますが。
誰とは言わんがあいつとかあいつとか。



野心のすすめ (講談社現代新書)

林 真理子 / 講談社

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林真理子著『野心のすすめ』読了。
職場の同僚にお借りしたので、読みました。

びみょう……。

すまん、わたしは読むのがしんどかったので飛ばし読んだよ…。
(アマゾ○レビューの星の少ない意見に一番共感した)
遠くで眺める分には極端で面白い人だよなあと思うし、たぶん、
真理子さんは頑張り屋さんなんだなとも思います。
でも、視野が狭い感じがどうしてもぬぐえず…。

…いや、年上の女性に対してこのような無礼なことを言ってはいかんよな…。
むむむ…。



世界史の叡智 - 勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ (中公新書)

本村 凌二 / 中央公論新社

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本村凌二著『世界史の叡智』読了。
世界史の有名人51人について4ページづつさらっと書いたエッセイ風の読み物。
ものすごいさくさくすすんであっという間に読み終えました。
どっかの雑誌か新聞のコラムに連載したものをまとめたのかな?と思わせる軽い読み物です。
一人に4ページしか割いてないので物足りないですが、その分広く古代から現代まで
有名人をさらってあるので、普段考えもしない人のことも読めてその点は楽しかった。
後、人物のチョイスがマニアックだったので(笑
流石に西洋古典文学分野の方なので、古代ローマ辺りまでの
ペイシストラトスとか、デモステネスとか、ハンニバル、大カトー、カエサル、クラウディウス、
セネカ、ハドリアヌスなんかは、妥当だと思う、でも
三国志からは曹操(孔明や関羽じゃないんだ)、ビザンツ帝国はテオドラ、
インドのハルシャ・ヴァルダナ(おい、懐かしすぎで詳細を思い出せねぇ名前だぜ)、
11世紀イスラムからはヌール・アッディーン(サラディンじゃなく)、
十字軍からはフリードリヒ二世(フィリップでもリチャードでもなく)、
こんな感じで有名とはいえ一番有名なところをちょっと外した感じが面白かった。
後、エッセイ風なので最後に著者の感想ちゅうか説教みたいなのが加えられてるのも面白かった。
この本村先生、勝手に論文発表し始めたばかりの若手だと思い込んでましたが、
もうすぐ定年の結構なお年の方らしく、
そう思うと苦言もなんだかほほえましく、楽しく読めました。
チュラロンコーン(ラーマ五世)に言及してあるのは嬉しかったけど、イスラム系の人があまりにも
少ないのはちょっと残念でした。
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by mi-narai | 2013-07-15 21:05 | 2013年下半期の読書