カテゴリ:2013年上半期の読書( 7 )

『ブラウン神父の無心』『果てしなく美しい日本』『妖精の女王』『闇の妖精王』『永遠の女王』

ネサフしてて今話題の『進撃の巨/人』の二次創作というか、パロディで


進撃の阪神


というタイトルを見つけて、吹いた。



ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

G.K. チェスタトン / 筑摩書房

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G・K・チェスタトン著『ブラウン神父の無心』読了。
カトリックの司祭である見た目がものすごい地味なブラウン神父が
その冴えわたる推理を披露する短編をまとめた一冊。
とりあえず、古典なので読んでみました。
無茶なトリックとか、幾つかある可能性のうちの一つでしかないのに
それが当然の帰結、みたいな顔で推理を話したりとか、
若干ツッコミどころもあるのですが、
古き良き時代の推理小説、という感じで、面白かったですよ。
あんまり犯罪が今ほど無機質で残虐じゃなかったんだな、みたいに思わせるノスタルジーが。
(まあ、実際はそうでもなかったんだろうけど)
最初の数編で、ブラウン神父の最大の宿敵、フランス人怪盗フランボーが登場するんですが、
彼、途中で神父に魂の救済を説かれ、改心するんですよ。
(犯罪者を法の裁きにゆだねなくても、キリスト者的に救われたらそれでいいや、という
態度は大変神父っぽい。わたしはアリだと思うんだけど、日本のミステリーを読み慣れてる人は、
「ええんかい、ソレ!?」と思うかもしれん。)

で、このフランボー、のち、神父の親友として再登場とかしちゃったりするという…!
この設定が、なんか妙にツボって、ブラウン神父単体をというよりもフランボーとセットで
愛でてたんですが、
そのことを、既にこのシリーズを読んだらしい妹に言ったところ
(※わたしの妹もミステリー好きである)

「読んだとき、わたしも全く同じこと思った」

との答えが。
姉妹の血を色濃く感じた瞬間でした。
あたしたち、メディア媒体での、好みのタイプとかシチュがものすごくかぶるよねー!


果てしなく美しい日本 (講談社学術文庫)

ドナルド・キーン / 講談社

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ドナルド・キーン著『果てしなく美しい日本』読了。
ちょうど、震災後、キーンさんが日本国籍を取って永住してくれるという話を有り難いと思い、
印税の足しにしてくれとお布施のつもりで本屋で購入した一冊。
タイトルはえらいキラキラしいですが、本の内容は、今から40年ほども前に
キーンさんがアメリカ人向けに書いた日本ガイドの翻訳です。
日本版が出たのが確か1975年くらいなんだけど、後書きに「15年ほども前にこの本を書いた時には」
とか書いてあるので、英語で書かれた当時はおそらく1950年代だったと思われます。
キーンさんもまだ日本歴が浅い頃。
なので、日本に対する視線は「まあ、日本に数年滞在した外国人ならこんなもんかな」ほどのもんです。
あれから60年も経ち、ご本人の日本観も色々変わっただろうし、
「なんだ、大したことないじゃないか」などと思わずに、
若いアメリカ人の当時としては格段に日本に好意的な意見をほほえましく読んでください。
それよりも、当時の日本の雰囲気や風俗が色々と読めることの方が楽しいです!
ほんとに、ものすごい時代の流れを感じますよ!
50年しか経ってないのに!!
でも、すでにそのころ結構工業化してたという記述もあり、逆にびっくりもしました。
この本を読んでて気づいたのですが、日本は文化を強制された事って、あんまりないのだなあ…。
自国がさほど進んでないのを自覚しつつ、大国のいいところを都合のいい部分だけ輸入してるというか…。
日本文化のミックス具合とか、新しいものを取り入れつつもそれ一色にならずに
古いものも駆逐せず放置したりだとか
そういう特色って、文化を取り入れる際の日本の昔からの方法によるところも大きいのかなと
(幸運にも、先方の文化を好きに取捨選択できる自由度の高さがあること)そんな風に思いました。



妖精の女王 (創元推理文庫)

メリッサ・マール / 東京創元社

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闇の妖精王 (創元推理文庫)

メリッサ・マール / 東京創元社

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永遠の女王 (フェアリー・コート・シリーズ3) (創元推理文庫)

メリッサ・マール / 東京創元社

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メリッサ・マール著『妖精の女王』
『闇の妖精王』
『永遠の女王』
一気に読了。
ものすごい娯楽目的で読みました。以下、雑感。

文学だと思って読んではいけません。小学館か白泉社の少女マンガだと思って読むべし…!
これまた前回読んだ『ラメント』『バラッド』と同じく妖精界と人間界のあれこれの話で
主人公の女の子が妖精と人間から求婚され(もちろんどちらも男前)二人の間で揺れるとか、
特別な立場に選ばれ、当初恐怖を感じていたあれこれが、特権的なものに変わるとか、
まあ少女マンガの王道をいくような話なんですが、
まず言いたい。

世の中にはケルト系の神話体系しかないと思っているのか、と!

大体前の「ラメント」もそうだったけど、
どっちも舞台はアメリカなんですよ!?
ケルトの妖精たちがいるというなら、ネイティブの神話とか(雷の精とか兎男とかは?)
キリスト教関連のあれこれとか(天使とか聖人とか)、
中華街由来の道教とか、その他の色々な神話はどうなっとるんじゃい!
ていうか、ケルト系の妖精のごたごたごときで地球全体がどないかなったりするか!
(事件はハンツデイルというどっかの町周辺でしか起こらず、
物語の舞台は終始その周辺のみに限定されてるんです。
それなのにその局地的出来事が全世界的に影響を与えるなどと
ところどころ言及しようとするから片腹痛いというか。
むりに風呂敷広げなくていいから!
影響があるのはハンツデイル周辺だけにしとけ!)

…まあ、そう言った瑣末なアレコレにはさんざ脳内ツッコミを入れましたけども、
わたくし、おおむねは楽しく読めました…!
というのも、2巻目『闇の妖精王』で出てきたダークキングのイリアル(タイトルロール!)と、
3巻目『永遠の女王』でその後を継いだニールがたいへん好みだったからです…!
もちろん、どちらも脇役です。
イリアルは、名前が某叙事詩の語感と似てるので当初から気にはなっていたのですが、
登場場面が増えるにつれ、
暴力と欲望に支配されるダークコート(まあ、妖精の勢力の一派だと思ってください)を治めるのに
うんざりしてたりとか、その諦観とか、でも、それでもコートのために頑張っちゃうとことか、
あんまり他の人には理解してもらえないけど彼なりにヒロインやニールのことを愛してたりとか
そういった人物設定が分かってきて、
それがまたたいそう魅力的だったのですよ!
最初敵対する立場にいるとか、過去色々あって現在いろいろ諦めてるとか、
どこかでこのタイプ見たと思ったら、「ベルガリアード」のザカーズでした!
ものうげな態度とか、たぶん眠たそうな二重なんだろうなと想像させるとことか。
最近直情直球のおばかさんとか、明るくて前向きな男前にばかり目を向けてましたが、
そうそう、わたし、こういうタイプも大好物よ!と思い出した次第。

次の『永遠の女王』では、イリアルは念願の引退をはたし、ニールがコートを継いでるんですが、
最初、他のコートの相談役、程度の端役で出てきたニールがここへ来て大変身!
これまたセクシーアピール満点のダークキングとして登場します。
イリアルと立場は同じだけど、前任者が割と物静かで冷静だったのに対し、
ニールはもっと気性が激しい感じ。感情表現も豊かな感じ。
もしもヘルメスが裏社会の親分を引き受けたら、こんな風になるんじゃないかな?みたいな
老練で、狡猾で、鮮やかなダークサイドヒーローです。素敵です。

あー、久しぶりにときめいた♪
とりあえず、ヒロイン役は今のところ3人、
ヒーロー役は上述の悪役ボジの二人以外に更に二人、
女の子はどの子も可愛いです。
ヒーロー役の方は、セス(ヒロインの一人アッシュリンの恋人で人間)は、
ものすごい出来た人で、年は若いのに大人です。好感度高いです。
もひとりのキーナン(サマーキング。あて馬)は、いろんな人からボロクソ言われてますが、
妖精なんだからこんなもんだと思う。むしろ、中途半端に感情がありすぎる、もっと酷薄でいい。



とんでもなく個人的な理由で楽しかったので、
他の人が読んで楽しいかどうかは責任持ちません(毎回言ってるな、コレ)。
とりあえず、本国では5巻で完結してるっぽいので、早く訳してほしいところ。
でもアマゾンレビュー読んだら残りの二巻にはイリアルとニールはあんまり出てこなさそうなので
ここで終わりでもいいや、という気もします。

ベニオフの『卵をめぐる祖父の戦争』も読み終えましたが、
感想が長くなってしまったので今度に回します。
以下、落書き(恥ずかしいのでたたむ)

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by mi-narai | 2013-06-27 23:35 | 2013年上半期の読書

『イスラーム文化』『アラビアの医術』『バラッド』『雪の女』『古事記のコスモス』『グリムスペース』

インカ展
去年だか一昨年だか、マチュ・ピチュに行ってきた旅行好きの母を宥めすかして
はるばる行ってきましたとも、京都の博物館まで!
超観光気分♪
もともとあの時代のあの地域好きなので、楽しかったですよ。
これまで、アンデス文明とりまぜた展示とか、マヤ・アステカ混ぜての展示とかは
あったのですが、インカ限定のものはなかったと記憶してるので
そういう意味では目新しかったです。
インカ帝国が帝国になってから滅びるまでの経緯は本などで読んで
あらかじめざっくりは知ってるので、驚いたりびっくりしたというよりは、
「へー、これかー」と納得しながら見る感じでしたけど。
でも、帝国が滅びてからも、インカ貴族は重用されたりしてたらしいのは
ちょっと驚いた。よく考えたら旧支配層を傀儡として配置するのは
植民地支配としてはごく初歩的な手なんだけどなんだか、思いつかなかったのです。
それにつけても、インカ・アステカ関連の事物は見終わった後必ず

スペイン人の馬鹿ーーーーー!!!!!

って思いますね。今回も思いました。
後、大スクリーンの3D映像で往時のマチュ・ピチュの再現映像なんかを
見せてくれるんですけど、それがたいそう楽しかったです。
これよ!こういうのをもっと作ってほしいのよ!
とりあえず、エジプト(新王国時代のテーベと、イスラム時代のカイロ)と
ギリシャ(コリントスを!!!)とエトルリア(フフルナかな。ウェイイでもいいな)と
フェニキア(ティルス!ティルス!)希望!
後、オスマン帝国時代のイスタンブル。
別に物語にしなくていいねん、当時の建物とか生活の再現でええねん!!頼みますよ!!!


イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

井筒 俊彦 / 岩波書店

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井筒俊彦著『イスラーム文化』読了。
いや、先日読み終わった『「コーラン」を読む』の中で先生が何べんも
「このことは「イスラーム文化」の中で語ったから今回は省きます」って
仰るから、気になっちゃってさ。
心の赴くまま読んでみました。
『コーランを(略)』の方を読んだ直後だから世界観がかぶってて
ものすごい読みやすかったですよ。
これまた講義録で、
先生が経済界関係の人々に向けて3回に分けて授業をしたその時の記録を
ちょっと加筆修正したものらしい。分かりやすいです。
で、本の構成も3パートに分かれてるんだけど、
1つ目のパートは、「ああ、前の本でもそんなことおっしゃってたな」
みたいな感じ。
2つ目、3つ目で、イスラム共同体についてとか、
シーア派とスンニー派についてとか、スーフィズムとかについて書いてあって、
そっちがこれまたものすごい面白かった!
シーア派とスンニー派の違いがよく分かりました…!
イラン人とアラブ人の差とか。
大分前の本だけどもおススメ!


アラビアの医術 (平凡社ライブラリー)

前嶋 信次 / 平凡社

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前嶋信次著『アラビアの医術』読了。
今更。
個人的に今更アラビアの医術を学んだところで後の祭りなんだけども、
マイ・ブームが去らないうちに読んでおくことにしました。
これはこれで面白いですよ!
アラビアの医術の進展とか、医者列伝とか書かれてます。
最初はやっぱギリシアの医術を基本にしてたから、
ネストリウス派キリスト教徒とかユダヤ人とかが医者になることが多かったみたいです。
初期のウマイヤ朝とか、アッバース朝のカリフもちょいちょい出てきて面白いな。
しかし、カリフの侍医ともなると、心付けが半端なくてものすごい金持ちになれる反面、
ちょっとしたカリフの不機嫌で殺されちゃったりするのですよ。危険な世界です。
後、書物のギリシア語からアラビア語やシリア語への翻訳が盛んにおこなわれてたみたいなんですが、
ひょっとして、原本が残ってないギリシア古典でも、アラビア語で残ってて、
アラビア語だからまだ学会とか一般に発表されてない断片なんかがあるかもしれんなと。
ふと想像してしまいました。
そんなんあったらウハウハなんですけどね~!
ギリシア古典に堪能な方、だれかアラビア語勉強して、漁ってみてくれないかしらん。

ところで。
後ろの解説読んで、作者の前嶋信次先生が実はだいぶ古い人だと知りました。
戦時中南満州鉄道東亜経済調査局とかに勤めてるよ…!!
結構この方の書いたアラビアンナイト関連の本読んだりしたんですが、
まったく文体が古臭くなく、存命の現役の先生だと思い込んでた…!
『「コーラン」を読む』の井筒先生の教え子的な。

井筒先生の10歳あまり年上やん…!!!

これが一番の衝撃でした。


ラメント (妖精の騎士に捧げる哀歌) (創元推理文庫)

マギー・スティーフベーター / 東京創元社

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マギー・スティーフベーター著『ラメント』読了。
音楽的才能はあるけどあんまりぱっとしない主人公が
才能ゆえに妖精に狙われ、
ある日突然異界の存在に気付かされ、
敵の男前と恋に落ちたり殺されかけたり色々する話。
あらすじを読んで、ロマンス小説っぽいかなと思っていたのですが、
実際に読んでみたらもうちょっと若い子向けでした。
主人公も16歳だし。
ヤングアダルト恋愛小説ファンタジー風味。
若い子同士の一途な恋愛とか、三角関係とか、
うん、少女マンガっぽいです。
講談社じゃなくて小学館あたりの。
いや、だからといって、つまらないわけではなく、楽しく読み終えましたよ。
次巻では、今回主人公に振られた男の子が主役になってるらしいので、超気になります。
この、『脇役が次の巻で主役に抜擢されるスピンオフ戦略』に、
脇役好きの私がどれほど散財させられたか!!
(『オデュッセイア』始めな。)


雪の女 (創元推理文庫)

レーナ・レヘトライネン / 東京創元社

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レーナ・レヘトライネン著『雪の女』

あらすじに、小柄な女刑事マリア・カッリオがパワフルに活躍する話、
みたいに書いてあったから、まあ普通に小柄な人を想像してたら、


主人公、160センチちょい、だと…?



フィンランドの小柄、パネェーー!


とりあえず、それが一番びっくりしました。
男の人でも、170センチで小柄て言われてるしな。
どんだけ皆背が高いのか。
(北欧の中ではフィンランドは平均身長は低めとか聞いたけど…(ゴクリ))

どうも、シリーズ3作目をいきなり日本語訳したみたいで、
ところどころに「あれ?この話どっから出てきた?」みたいな箇所はあるものの
面白かったです。
推理とかトリックを重視する様式美ミステリーというよりは、
読者が捜査する主人公と同じ目線で謎を追い、日常を追体験する、みたいな
ミステリーでした。起こった事件がそもそも謎だらけで、
捜査する過程がけっこうワクワクしましたよ。
主人公は、ガッツがあるものの、大人で、同僚のいやがらせも、
(内心むかっとしつつも)さらっと受け流せる度量のある女性です。安心して読めます。
それに、今回の嫌な同僚は、『ミレニアム』の女性蔑視クソ刑事ファスキほど
ダメ男でもないです。
読んでて感じたのですが、この人、単に不器用なだけじゃないかな。
わたしは今回のペルツァに関しては許容範囲内。

外国の娯楽本を読んでいて楽しい点には、話の筋以外に暮らしっぷりが覗き見れて楽しい、
というのもありますが、とりあえず、今回読んで思った事を書きます。
・フィンランドは働き方が自由でうらやましい。
働きたいという意欲がある人は、働けて、正当に賃金をもらえているっぽいことや、
学んだり、資格を取ったりすることに年齢制限が設けられていないことが。
いいなあ。
いいなあ、というだけではなんもならんので、
やっぱりちゃんと考えて、選挙も行かねばならんな!(いや、投票は毎回行ってるけども)

・けど、フィンランドの社会でも、女性は家に入ってパン作って子供育ててろ、みたいな圧力が
あるんだなあ、と知ってちょっとびっくりしました。どこも大変だよな…。


バラッド (妖精のミューズに捧げる物語詩) (創元推理文庫)

マギー・スティーフベーター / 東京創元社

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マギー・スティーフベーター著『バラッド』
「ラメント」のスピンオフ。なんと、自分、既に購入済みでした☆
大体振られる人に過剰に感情移入してしまうわたしのこと、
今回のスピンオフ、ものすごく楽しく読めました。
前回は、女の子と妖精の狩人の夢(ちうか、悪夢)みたいな恋の話だったので、
そう主人公の女の子に抵抗もなく何も考えずに読んでたんですが、
今回その女の子に振られた側の男の子の話なんですよね。
振られた側に同情しながら読むと、

振った女が超いけすかねぇ…!!

いい加減あの女を吹っ切れよ、ジェームズ(今回の主人公の名)!!と思いながら
読んでしまいました。
しかしまあ、この人間二人はいいのです。
出てくるリャナン・シーのヌアラ(仮名)がものすごく良かった!
好みだったの!
ジェームズに出来た新たな友達ポールがいい味出してたり、
担任のサリヴァン先生が絵にかいたようないい大人だったり、
『ラメント』より楽しく読み終えちゃったかも。
読後感も良かったですよ!


古事記の宇宙(コスモス)―神と自然 (中公新書)

千田 稔 / 中央公論新社

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千田 稔著『古事記のコスモス』
読了。
タイトルの通り、古事記に出てくる自然環境について文脈から読み解いている話。
これまでの古事記研究を踏まえつつつい最近書かれたっぽいので
割と楽しく読めました。
自然環境に特に注目して書いてあるのも読みやすい。
この著者の目新しい点は、古事記は大海皇子系の勢力が書き上げたもので、
中国の道教思想が各所にちりばめられている、としているところでしょうか。
以下、雑感を箇条書きにメモっておきます。

・太陽とカラス、月とカエルはセットなのね。
そういや、アスクレピオス誕生譚あたりのコロニスのエピソードにもカラスが
絡んでたな。まあ、古事記とは関係ないでしょうけども。

・彦と姫はそれぞれ日子、日女、で、太陽の子ってことらしい。
へー!

・そういや、古事記の中の海洋民系の神話についても割と熱く語る作者だったな。
いろんな他の研究者の説を紹介してくれるので、それを辿るのも結構楽しかったですよ。


グリムスペース (ハヤカワ文庫SF)

アン・アギアレイ / 早川書房

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アン・アギアレイ著『グリムスペース』読了。
SFです。
宇宙の遠距離間を航行するときに、時間短縮のためにワープする、
それはSFのお約束です。
そのワープの仕方は、作品によって千差万別です。
前回読んだ『異星人の郷』は航行なんて不要で、ピンポイントに狙いの場所に出現する
なんかどこでもドアみたいな感じの移動方法でしたし、
シーフォート・シリーズは(主人公にも理解できない)N波に乗ってワープしてました。
で、この作品の場合は、グリムスペース、というところを通り抜けてワープするの。
主人公は、特殊な遺伝子を持っているためグリムスペースの内部を
案内することができるナビゲーター。

大筋を言うと毛色の変わったロマンス小説です。

や、まあ、わたしはそのつもりで読んだということで。
もんのすごい楽しかったよ!!
ナビゲーターはグリムスペースに潜ってる間身動き取れないので、
ナビに従って艦を操縦するパイロットが必要なんだけど、
このナビゲーターとパイロットは二人でひと組なんですよ。
で、グリムスペースにジャックインしてる間は
精神を共有してしまうというか、相手の思考が駄々漏れになってしまうというか、
どうです、もうこてこてのロマンス設定でしょうがッ!
で、物語は、主人公が相棒を事故で失った直後からスタートなのです。
成り行きで、パイロットとしての腕は確かだけど無愛想な兄ちゃんと
仕方なく組んで艦を運行するはめになってしまい、そこから
壮大なごたごたに巻き込まれ、死にそうな目にあったり、一旦リタイアしたり、
爬虫類の赤ん坊拾っちゃったり色々するわけです。
ヒロインが世慣れてタフで短気で、でも繊細なところもある大人の女の人なので、
少女マンガのいかにも女の子っぽい主人公に対するようなイラっと感もなく、
大層楽しく読めました。
いや、だいぶ大雑把な感じの主人公なので好き嫌いは分かれるとは思うのですが
わたしは好きかな。
ヒーロー役の新パイロットもむっつりしてるけど別に嫌いなタイプではないし、
最初の辺りの徐々に二人が近づいていく場面などにはきゅんきゅんしました。
恋愛一本道よりも、こういう別の話が中心にあるものに恋愛が織り込まれてる方が
なんか燃えるよなあ。
本国では5冊までシリーズが出ているので続きを早く翻訳してほしいところです。
ハヤカワさん、がんばって!!
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by mi-narai | 2013-06-11 23:34 | 2013年上半期の読書

『「コーラン」を読む』 『死ねばいいのに』 『クリスマスのフロスト』

『コーラン』を読む (岩波現代文庫)

井筒 俊彦 / 岩波書店

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井筒俊彦著『「コーラン」を読む』読了。
ギリシャ神話とか、世界の神話を読みあさり、こないだ一神教の本も読み、
新約、旧約の内容もざっくりとはしってるのに、
コーランだけ知らんのも片手落ちかと思って。

この井筒先生、ものすごくよく名前を聞くお方ですが、
帯の部分の著者来歴を見たら、もう随分前にお亡くなりになってますね。
そうかあ…。

で、この本ですが。井筒先生が「コーランを読む」というタイトルで
10回の講義をなさった時の講義内容の記録本です。
一般向けにお話しなさっているため無知蒙昧なワタクシのような輩にも分かりやすい!
ええ!とっかかりは分かりやすい本でないとね!
まず、最初は、井筒先生がこれから講義で行おうと思っている
コーラン読解の方法の説明から始まっています。
それが文献学的というか、
大きなお話の流れを追う、コーランを物語と捉える読み方じゃなく、
語を一字とって、その語が当時のアラブ社会の中で、どういう意味をもっていたのか、
預言者ムハンマドはどういうつもりで言ったのか、
当時のアラブ人はどういうイマジネーションを働かせたのか、
コーランの世界観、みたいなことを、いちいち考えつつ深く掘り下げていく読み方です。
たとえば、イリアスだったら、「王」(バシレウスだっけ)の一言を考えてみるとしましょう、
日本人が普通王って聞いたら、頭に王冠かぶって白いひげでおなか出てて赤いマントかなんか羽織ってる
暢気な顔したおじさん思い浮かべない?
他、ルイ14世みたいな絶対君主とか、ローマ法王とかさ。
でもイリアスにおける「王」って言ったら、どっちかというと、都市を中心とした狭い範囲を領有する
領主の強力バージョン、みたいなもんじゃない、幾人もの王が並び立ってるしさ。
イタケ人なんかは他の領民に結構突き上げ食らってるし。
あんまり絶対的な権威がないというか。
だから、イリアスで「王」という語を見る時には、厳密には日本人の普通思い浮かべる王さまでなく、
当時のギリシャ人が想像してたところのイリアスの世界観における王を考えないといけないと。
死ぬということが当時のギリシャ人にとってはどういう感覚であったとか、
奴隷より低い根無し草の日雇い労働者になるのがどれほど心細いかとか。
そういった部分部分をイリアスの世界観に則して叙事詩の文脈を汲みながら読むように、
いちいち当時のアラブを考えながらコーランを読み解いていくわけ。

こんな感じでコーラン全部読み解いてたらきりがないので、
講義で読むのは開扉の章 わずか7行かそこらなんですが、
それでも本1冊分という凝縮ップリ。

これがね!
思ったより面白いんですよ!!

読むと決めたものの、きっと退屈なんだろうなと半分諦めながら本を開いたのに
嬉しい意味で予想を裏切られました!
上述のアプローチの仕方が好みなのと、
読んでいくうちにパーっと周りに当時のアラブ社会が色鮮やかに広がるような感じがして楽しいのと、
単純にアラビア語の語感が面白いのとで
毎日2ミリほどではあるものの、途中で眠ったりせずに確実に読み進めることが出来ました。

以下、心に思ったよしなしごとを箇条書きに
・アラビア語で良く聞く
「ビスミッラー」
これって、アラーの名においてって意味なのね。
「ビスミッラーアッラフマーニアッラヒーム」で
「慈悲深く慈愛あまねきアッラーの御名において」て意味なんですが、
この、慈悲深く(略)って言葉、全くこのままのフレーズで
アラビアンナイトはじめアラブの本読んでたらしょっちゅう事あるごとに出てくるけど、
なんと最初にこう訳したのは井筒先生その人らしいですよ。

この人だったのか!!!

・神の本質の美しさ
イスラムにおける神の本質というのは、美しさ、光、優しさ、などだそうで。
もちろん、神には恐ろしい局面(ジャラール)もあるけど、本義は明るい面(ジャマール)なんだって。
なんとポジティブな希望にあふれた神象であることよと驚きました。いいんじゃない。

・コーランが書かれた文体を考えるにあたって、
当時のアラビアのシャーマニズムとかさらっと述べてあって
それがまた面白い!!
コーランの文体はサジュウ調という調子で書かれてるらしいんだけど、
これが一定の間隔で鳴らされるドラムの低い音を連想させる調子というか、
脚韻がものすごい踏んである文体らしいのですよ。
ホメロス大先生の六脚韻(ヘキサメトロンだっけ。うろ)って
なんか、詩人が美声で朗々と神に捧げる態で(まあ実際は聴衆に向かって)
叙事詩を歌い上げてるイメージなんですが、
このサジュウは全くそれと違う感じ。
当時のシャーマンは現地の言葉でカーヒンというらしいんですが 
いずれも一人ジンを持ってたんですって。で、そのジンに憑かれて予言をする。
どっちかというとピュティアとか、日本の狐憑きとかそっちに近い感じだったらしい。
そのジンに憑かれたカーヒンが、低い声で囁くように予言するその調子がサジュウ調なんだそうな。

今のトルコの歌とか、確かに韻踏んでるもんな、
伝統的にそういう傾向があるのかしら…

・現在イスラム社会における女性の地位の低さが方々で問題視されてますが、
ムハンマド自身は、意外にも女性に対して普通っぽい。
最初の奥さんハディージャさんってのが、だいぶ年上だけど、美人で気が強くて
肝っ玉の座った女傑で、ムハンマドはなんかあるとすぐこのハディージャさんのところに
駆けこんで泣きついてたみたい。
なんか、思ったより、コミカル、だな…。
(井筒先生の語り口のせいかもしれませんが)
ちょっとムハンマドに対する好感度が上がりました。
じゃあ、現代社会の問題は宗教ってより政治とか現地の慣習の方が比重が高いのかな…

・ムハンマドは商人で、クライシュという名門部族の出身というのは
世界史の教科書にも載ってたし知識としては知ってましたが、
今回この本読んで、ベドウィンとのメンタリティーの違いを痛感させられた気がします。
どちらかというと、慣習を重んじるそういった遊牧アラブの常識に
まっこうから対立し、イスラムのもとでの平等を推し進めようとしたっぽいです。
その根底には、砂漠を遊牧するのでなく、オアシスに定住して
神殿を中心に宗教生活を送っていた人々のメンタリティーがあるのだそうな。
それって要するに、メソポタミア系の神殿文学の世界だそうですよ。

「コーラン」の真ん中あたりには
アラビアの民間伝承っぽい話だって混じってるらしい。
洞窟で300百年眠ってしまった男たちの話とか
(浦島太朗とかオシアン系のアレ)、
モーセの滑稽話とか、二本ヅノのアレキサンダーの話とか。

ぼんやり分かってたけど、言われてみれば、確かに、
アッシリアもバビロニアもセム系だもんな。
あの神話体系の流れとか、民間伝承を引き継いでいると思うと
一気に興味がわいてきませんか?


文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

京極 夏彦 / 講談社

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京極夏彦著『死ねばいいのに』読了。
借りた本です。
先だって、日本作家の本はすぐに読み終えちゃうけど、京極はそうでもないやろ、と
思ってたのですが、京極本もすぐに読み終えちゃった…。
同じ日本人が文章を書いているから読みやすいのでしょうかねえ…
(後、外国人はあまり改行しないイメージがある)
で、本の内容。
最初は、話を聞いて回るケンヤという若者が何回も「自分、馬鹿っすから」
みたいに言うのがウザく、また、聞かれてる人が悉くこのケンヤを
煩わしいと思ってるのが伝わってきて、イライラさせられるのですが、
最後の最後でやられました。

お前、そうやったんか…!

分かった!と思った瞬間、印象が逆転した。


クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

R.D ウィングフィールド / 東京創元社

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R・D・ウィングフィールド著『クリスマスのフロスト』読了。
これまた一度読んだ本なんだけどまた読み返したくなってさ。
イギリスの地方都市が舞台なのは一緒だけど、
ダイヤモンドの方と違って、小さな事件が畳みかけるように
次々と起き、読んでるうちに

ああ~……やってもやっても仕事が終わらない…

という、社会人なら誰しも一度は(もしくは毎日)感じている
あの感じを味わえます。
ほら、前の仕事が終わらないうちに次の仕事、その次の仕事と
仕事が増え、どんどん手を出して、
ふと「あれ、なんか前の仕事終わってなかったような気がするけど
自分が何を忘れているのか思い出せないッ!」と我に返る、みたいな。
主人公も、全く推理力があるわけでない、くたびれた中年のおっさんで、
しかも、これが全然かっこよくない。
しかし、かっこつけが嫌いな私、このおじさん、割と好感触です。
自分がダメなことを自覚していらっさるので。
上司とか部下にこのタイプがいたら、ものすごく困るだろうなあとは思うんだけど、
それでもダメさ加減に深く、ふかあ~~~~く共感してしまうあたり、
自分も大概ダメ人間だなと読んでて半笑いになってしまいました。
いや、このくらい自分のダメップリを直視できる勇者にわたしもいつかなりたいものです。
頑張ります、フロスト先輩!
主人公フロスト警部の人となりは置いておいて、次々事件が起こり、ぐいぐい読ませる部分、
多彩な登場人物のキャラの立ち具合など、
流石ベテラン脚本家の書いた本だと唸らせられます。
なにより、そんなに深刻にならないし。深刻なシーンでもやりすぎるとわざとらしいじゃない。
デントン警察署のいかにも地方って感じの、ガチャガチャした雰囲気も結構好きで、
なかなか楽しく読み終わりました
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by mi-narai | 2013-05-06 20:43 | 2013年上半期の読書

『月魚』 『藤原道長の日常生活』

コーエ○さんから出てた下天/の/華かなんかいうゲームが気になって、
つい買っちゃったんですよ。
で、手元に届いたそれのキャラクターデザイン見たら、
結構好きなBLマンガ家さんだった☆
コ○エーさんたら、思わぬところから人材を…


中国の至宝展
タダ券もらっちゃったんで行ってきたぜ…。
何年か前だったら楽しんで行ってきただろうけど、
今年はタダ券もらわなけりゃ行かないところでした。
いや、でも、カバだか豚だか分かんないような架空の動物とか、
どう見ても宇宙服にしか見えない謎の焼きものとか、
意外と面白かったですよ。
夏・殷あたりのものすごい前の中国の文物って、
中南米のデザインと似てますよね~


月魚 (角川文庫)

三浦 しをん / 角川書店

スコア:


三浦しおん『月魚』
友達に借りたので読みました。
両思いなのにすれ違いっぱなしのホモカップル(肉体関係あり)が、
過去のトラウマを乗り越えたり、お互いへの思いを確かめ合ったりする話。
どう転んでもホモ。嘘ではありません。
一般書でこれ、ええんか?とは思いましたが、
ワタクシ腐女子ですから!BL本のノリで楽しく読みました。
古本に関するあれこれは、この本においては付け足しです。恋のスパイスです。
主眼はあくまでも二人の依存すれすれのバカップルっぷり。
貸してくれた友人の
「『最初から決めてました!』みたいな二人だったっスよ」
という感想が忘れられません。


藤原道長の日常生活 (講談社現代新書)

倉本 一宏 / 講談社

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倉本一宏著『藤原道長の日常生活』読了。
超有名人ですね。
いや、道長さんは割と気になってた人なんで。
道長さんの日記、直属の部下の日記、批判的な文化人の日記、
この三つの日記を比べつつ道長さんがどんな日々を送っていたのかを考察した
タイトルからうけるイメージよりもだいぶ真面目な本です。

なんか、道長さん、ちょっと、かわいいな。などと。

あくの強い人だけども、極端すぎもせず、意外と小心なとことか
忘れっぽいとことかあったりして、
アガメムノンに対して思うのと同じ種類のかわゆらしさを感じます。
多分、ディオメデスさんのどストライク(※何気なくホモネタを振るのはやめましょう)。
道長さんににやにや出来るのと同時に、平安時代の貴族の生活とか、
宗教儀式とか、同時に味わえて、二度美味しい仕様でした。
意外と血なまぐさいぞ、平安時代。
(道端を死体が転がってるとして、現代なら殺人事件として犯人捜査とか、
被害者の弔いとか、そういう方向に進むところを
死体によって汚れが移っちゃったとか、眉をひそめて誰も被害者に同情しないっつうか、
モノ扱いな辺りが貴族社会だなあというか、殺伐感満載だったのです)


摩天楼の悪夢―新宿少年探偵団 (講談社ノベルス)

太田 忠司 / 講談社

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太田忠司著『新宿少年探偵団』
二日で読み終える。
日本人の推理物って(以下略)。
ホラーと銘打ってあったので身構えましたが、
スプラッタ系だったので、そんなに怖くありませんでした。
小さい子向けの読み物みたいなノリ。


『『コーラン』を読む』と『死ねばいいのに』も読み終わりましたが、
前者の感想がものすごい長くなっちゃったので次回に回します
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by mi-narai | 2013-04-21 23:53 | 2013年上半期の読書

『ケルトの白馬』 『異星人の郷』 『ケルト神話ファンタジー』

ケルト歴史ファンタジー ケルトの白馬/ケルトとローマの息子 (ちくま文庫)

ローズマリー サトクリフ / 筑摩書房

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ローズマリ・サトクリフ著『ケルトの白馬/ケルトとローマの息子』読了。
最近、ちくま文庫さんがサトクリフを出版する気になったようで、
しかもどうやらケルトくくりらしい。
とりあえず当該文庫と、もう一冊『クーフーリン/フィン・マックール』を買い求めてみた。
とはいえ、『ケルトの白馬』だけはハードカバーで読んだことがあるんですが。
(面白かった記憶がある)
わたくし、サトクリフのオリジナルの小説は好きですが、再話の方にはあんまり期待してないので
(『イーリアス』『オデュッセイア』がいまいちだったから。まあ、これは原作が面白すぎるから仕方ない)
とりあえず面白さが分かってる『ケルトの白馬/ケルトとローマの息子』の方から読むことにしました。

新幹線の中で一気に読破してしまいました。

骨太で、ぐいぐい引き込まれ、年甲斐もなく夢中になってしまった…
「ケルトの白馬」など、以前読んだ時も電車の中で、友情の熱さにうっかり涙ぐんで
しまったのですが、今回も鼻をすすりあげてしまいました。
この作者は友達同士の固い誓いとか、そういうの書かせたら絶品です。
でもって、わたくし、そもそもが友情モノに極端に弱いのです。
以下、ざっくりあらすじと雑感。

ケルトの白馬
・時は紀元前だか紀元後ちょっと過ぎだか、ローマ全盛期。
そんな時代にイギリスの左下(今で言うウェールズ)のあたりに住んでた、イケニ族の若者の話です。
イケニ族は、馬を扱うのがうまく、お話にも馬がたくさん出てきます。
主人公は、幼い頃から絵画への独特の感性を持っていて、動いているものを曲線で
表すことに無限の情熱を感じる芸術家気質の少年です。だけど、族長の息子なんで
立場上の責任感も、イケニ族の若者としての誇りも持ってるちょっと変わった立ち位置の子。
その彼を中心に、
彼と無二の親友との遠くの地に新たな故郷を探しに旅立とうという約束や、
南からの襲撃と彼に課せられた犠牲、
敵の首領との立場は違うけど深い部分で理解し合える微妙な関係など、
いろいろな要素が絡み合って怒涛のクライマックスへ。
流石サトクリフ、そんなに長い話じゃないのに、読み終わるとずっしりきます。

しかし、この頃は先住のブリトン人をけちらしてこんな全盛なケルト族だけど、
すぐ後にローマ人に大体征服され、さらにその後はアングロ・サクソンに蹂躙され、
さらにその後にはノルマン・コンクエストで北欧人(ていうかフランス人)の
支配下に置かれてしまうのだと思うと諸行無常を感じます。
イギリスの歴史はダイナミックで面白いよな~
(エリザベスの時代も大英帝国時代もいいけど、この頃の辺境っぽい時代も面白いですよね)


ケルトとローマの息子
今度はもうちょっと後、たぶん2世紀ごろのあの辺りの話。
なんちゅうか、同じようにケルトの一部族の男の子の話なのに、

超ジェットコースター展開です…!

なんかもう、ものすごい勢いで主人公が運命に翻弄されまくるので、
息つく暇もなく次のページをめくらされますよ。いやー、すごかった。
奴隷がいっぱい出てくるので、あの時代の奴隷の気分が知りたい方も必見。

しかし、主人公の性格設定がものすごくリアルで、唸ってしまった。
どん底に落ちて、普通の話なら"それでも良心や正義の心を失わない"的な展開になるところですが、
この主人公、あっさりやさぐれちゃいます。
でも、悪くなりきったわけではなく良心の残骸はまだ生きてて、
それはかろうじて「友達を思いやる」という細い一本の糸で支えられてんの。
それが断ち切られて、誇りも何も砕かれ、卑屈になり果てるところもとても納得させられた。
きれいごとじゃねえよな。その辺りは。
(その後、葛藤しつつもちゃんと人間としての尊厳を取り戻す、というか思い出すので安心して下さい)
この人の本を読むと、お恥かしながら毎回感動してしまうのですが(きゃっ)
今回もやっぱり感動しました。
ふーって腹の底から息吐いて、満足感に浸りつつ読み終えましたとも。
サトクリフはもっと全人類に広く読まれるべきだ!


異星人の郷 上 (創元SF文庫)

マイクル・フリン / 東京創元社

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異星人の郷 下 (創元SF文庫)

マイクル・フリン / 東京創元社

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『異星人の郷』(上)(下)読了。
現代編の、歴史学と物理学の理論をからめつつ、
大筋は中世のヨーロッパ・ドイツの片田舎、上ホッホヴァルトの荘園に、
不時着(というのかな。どうも従来のような方法で宇宙を渡ってきたのではないらしいけど)した
異星人たちと、中世ドイツ人たちとのファースト・コンタクトの話。
最初、異星人たちと出合うまでの中世ドイツの荘園の描写がかったるいのと、
出会ってからの両者のやりとりの描写がやっぱりじれったいので
じりじりするかもしれませんが、
下巻に入ると怒涛の展開が。
大体、SFで中世とくれば、ペストですもんね。うん、わたし、分かってた。
(コニー・ウィリスの『ドゥームズデイ・ブック』もそうだったもん)
ペスト描写にもすっかり慣れきったわい。腋の下にでっかいできものが出来て、
中から黒い汁が出てくるんやろ…
いやまあ、最終的にはペスト落ちというのは分かってたけど、
白眉は、異星人と神父の間にじっくりじっくり育まれる友情だと思うのです。
ファーストコンタクトものにありがちな、異星人に対する、もしくは異星人からの
迫害とか、対立とか、そういうのはなんとほとんど出てこないので
それが心配な方は安心して読み進んでください。
領主さまは最後まで世俗主義的な男前だったし。
SFなのにSF設定と関係ない部分で感動させられるという、ね…

ところで、ここに想定されてる異星人、地球で言うならアリとかハチといった組織を構成する
昆虫が進化したという設定なのですね。
哺乳類である人類と似て非なる倫理観とかが面白かったです。
で、ここまで進化する生物には良心の部分で共通するものがあるはずだという
ポジティヴな作者の主張なのかしら、両者の交流には救いがある気がします。

それにしても、わたくし、自分がまさか、バッタの死にこんなに悲しむことになるとは
思いませなんだ。ハンス~~!!!
(この本は通勤時間が待ちきれなくて最後は家で読み終えたので、
誰はばかることなくティッシュで鼻かみました。ずびばー)
エピローグで語られる現代人のジュディという女性の慨嘆にはめちゃめちゃ共感しました。


王権 (岩波文庫)

A.M.ホカート / 岩波書店

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ホカート著『王権』
王権はすべからく太陽信仰から発展したんじゃー!
と、どうして著者が主張したくなったのかは知りませんが、まあ、そういう内容の本です。
著者が強硬に掲げる根幹がそもそもわたし、疑わしいなと思っちゃうので
(百歩譲って、天空神に代表される男神を主神として信仰しはじめたことと
王権とはつながりがなくはないなとは思う)
その部分に関してはなんともよう言いませんが、
引き合いに出される数々の諸例がけっこう面白いので、なかなか楽しんで読んでます。
途中、やはし古代において王位継承権は男性ではなく女性が持っていた、ということが書かれてて、
なんとその文脈で「オデュッセイア」におけるぺネロぺイアの立場が引き合いに出されてたので
おばちゃんちょっぴり驚いてしまいました。
継承権持ってるのはその地生まれの、土地付き娘だけだと思ってたけど、
よそから嫁いできた女性も結婚した時点でその家の継承権を獲得するのか!?
それともオデュッセウス伝説において実はぺネロぺイアの方がイタケと縁が深いのか。
どっちだ。(知らんがな)
けどまあ、求婚者たちがこぞってぺネロぺイアと結婚しようとした理由づけとしては
秀逸かしらん。


後日
大体最後のあたりまで読んで、だんだんめんどくさくなってきた…。
もういいことにしようかな。


ケルト神話ファンタジー 炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール (ちくま文庫)

ローズマリー サトクリフ / 筑摩書房

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ローズマリ・サトクリフ著『ケルト神話ファンタジー炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』
えーと。
やっぱり再話よりもオリジナルの小説の方がより好きだなとしみじみ思った一冊。
いや、でも面白くないわけではなく、ケルトの伝承を知ることができ、
さらに小説風なので読みやすいという二度おいしい仕様ではあります。
で、1話目の主人公クーフリンさんですが、言っちゃっていいですか。

髪の黒いアキレウスです。

うん、君たち、よく似てるよ。クーフリンは別にマザコンじゃないけどね。
なので、アキレウスがお好きな方々にはきっとケルトのクーフリンも気に入っていただけるはず…!
名誉を至上とするところも潔さも、武力に関しての他との開きも、若さや美しさも、
アキレウスの長所を全てかねそろえているケルトの英雄ですよ。
あ、でも、パトロクロスはいませんが。
しかし、読んでて意外とケルトの伝承とギリシア神話とはかかわりが深いのかしらなどと感じました。
ギリシア叙事詩の余波が来てんのか、それとも同じ語族なので、伝承の根源が同じなのか。
これまた不勉強でどっちなのかは知りませんが。
アラビアンナイトのシンドバッドの冒険(の一部)なんかは、
明らかに『オデュッセイア』の影響だと思うんですけどね~。
いや、でも、そういうモチーフが似てる部分よりも、ケルト特有の魔法に満ちた筋がとても魅力的で、
特に、3勇者(クーフリン含む)のうち、誰がアイルランド一かを選べと言われた各地の王たちの、
選考過程がほんと、色鮮やかで読んでて面白かった。
で、選から外れた二人がクーフリンを恨むのかと思ったら、
最後に笑い合ってあっさり和解したのも、なんだか新鮮でした。

ただ、難を言えば、この一連の物語

ツッコミ不在

なのです。ものすごい悲劇とか、どシリアスな調子で起こったりしてるけど
「それ、自業自得ですからーー!!!」と誰も突っ込んでくれません。
助けて、誰か!!
脳内ツッコミし過ぎて読みながら割と息も絶え絶えになる話でもあります。
読むときは心構えして読むべし!



フィン・マックール
こっちはもうちょっと読みやすいです。たぶん、別にフィンがアキレウスに似てないからだと思う(笑)。
普通にいい男ですよ。
一連のフィン・マックールと彼の騎士団に関する伝承を、サトクリフさんが整理して、
まとめて書いてくれてる感じの作品。分かりやすいです。
オシアンとか、ディアミドとか、名前だけこれまで聞いたことあったけど
伝承はよく知らなかった人も出てきて、これまでの疑問が色々解けました。
そうか、吟遊詩人のオシアンはフィンの息子だったのか…。
(昔、学生時代に美学の授業で「オシアンの夢」という絵を見たなあ)
ところで、思ったのですが、
ケルトの名前では男性の名前もア行で終わったりするので、なんか、可愛いですね。
後、最初の奥さんサーバとフィンのエピソードがなんか好きです。

たくさんあるフィン・マックールとフィアンナ騎士団に関する伝承を、
ひとつひとつ積み重ねるように読んで、最後のあたりになるあたりには
すっかり騎士団に馴染んでるので、
フィンの最後とか、騎士団の終焉を読むのがさびしくなってしまいました。
オシアンのその後とか、そう言えば他のケルト神話の本読んだ時に読んだな。
これまた浦島オチで超切ねぇ…!!


映画
『レ・ミゼラブル』
休みの日に、せっかくだから映画でも行こうよと母を誘ったところ
上記のミュージカル以外は嫌だとぬかすので、つきあってやりました。
いや、面白かったですよ。
話のすじは、そういえば以前、ミュージカルじゃない『レミゼラブル』の映画を見たことが合って
大体知ってたけど、
今回のミュージカルの方がなんか面白かった…!
思ったより歌成分が多かったのも、個人的にはヒットでした。
下を向いて歩け!的な歌と、パリの虐げられた庶民が、こんちくしょうめわしら虐げられっぱなしジャー
みたいに歌う歌が、とても好き。
後、主演のヒュー・ジャックマンと警部役のラッセル・クロウが好きなので、画面見るのが楽しかった。
悲しい話、ものすごい泣く、みたいに聞いてましたがそうでもなく、
普通に名作に感動して見終わった映画でした。
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by mi-narai | 2013-03-20 19:57 | 2013年上半期の読書

『ユダヤ教の誕生』 『歴史人口学の世界』 『暗い迷宮』

4大陸選手権の前のヨーロッパ選手権で、わたしの一押しのフェルナンデス君、
優勝したらしいじゃないですか!
おめでとう~!


ユダヤ教の誕生――「一神教」成立の謎 (講談社学術文庫)

荒井 章三 / 講談社

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『一神教の誕生』じゃなくて、『ユダヤ教の誕生』でした。
あまり聖書関連に興味があるわけではないのですが、
常々「なんで一神教になってしもたん…?」とは思っていたので、
なんとなく買い求めてみた。
わたしがちょうど知りたかった辺り、もともとローカルな神だったはずのヤハウェが
どのようにして「主神」でなく「唯一神」になったかが、歴史をひも解きつつ描かれてます。
そうか、もともと遊牧民の神だったから、決まった位置に祭られてるんじゃなく、
遊牧する部族民と一緒に移動する神だったのだな…。なんだか納得しました。
その後変転するユダヤ人の歴史とともに、他宗教の影響を受けたり、
逆に影響を受けすぎないように他宗教の神を否定してみたり、
自分たちが権力者から逃れた民だった経緯から神の前での平等を説く傾向が強かったり、
王国が出来て中央集権が進むと神の権力も強まったり、

いろいろ面白かったです。
その宗教を行っている人々の、周囲の状況や地形や社会習慣が結構宗教の方にも反映する、
ということですよね。
レヴィ=ストロースの『アスディワル武勲詩』を思い出した。
後、別段、アニミズム→多神教→一神教という流れが普遍なわけじゃないよな
(一神教が高度な最終形態というわけではない)
と分かって、すっきりしました。
毎回言ってるような気がしますが、
わたし、ムハンマドの教えは知らないからスルーするとして、
イエスの言ってる事ってけして嫌いじゃないんですよ。
でも、作者があとがきに書いている「一神教の非寛容さ」に関しては
大いに肯かざるを得ないのであります。
他宗教に非寛容である事って、自分の宗教への熱心さの裏返しであって、
そうすることのメリットもなんとなくわかるんですけどね~。



歴史人口学の世界 (岩波現代文庫)

速水 融 / 岩波書店

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速水融著『歴史人口学の世界』
歴史人口学がどういうものであるか、という第1章。
その方法、それを使ってどういうことが分かるのか、という風に
歴史人口学について書いてある、入門書のような本です。
なんとなくその場の気分で買ってみたけど、なかなか興味深いですよコレ。
日本の宗教改帳とか、西欧の教会の台帳から、庶民の家族を復元して、
そこから統計を出したり、当時の下々の生活を推し量ったりしてます。
面白い!
それにしても、昔の日本人て多産だったのだなあ…
その分、乳幼児死亡率も出産時の女性の死亡率も高かったんだけども…。

ああ、後、都市生活者が増えると人口が停滞する、というのは、なんか
目からうろこでした。
書いてある理由に納得したのは覚えてるけど、理由がなんだったか
いまおもいだせない…(ダメじゃん!)

数日後、読了。
日本て、連続した人口統計資料が残ってる世界的にも珍しい地域らしい。
日本で歴史人口学を勉強する方は幸せです!
でも、ものすごく手間がかかるのですよ。
そういった悲喜こもごもが語られていて、読むのは大変だけどなかなか楽しかったです。



高田崇『カンナ』シリーズ2冊目読了。
ほんと、日本人作家の推理物はあっという間に読み終えちゃうな~(※京極以外)!
あんまり早く読み終えるので、なんだか自分の読書スピードがものすごく上がったように錯覚してしまいます。
まあ、叙述があっさりしてるということかもしれんが。
天草四郎関連の謎と、神父と殺人事件と殺人じゃない事件の話。
主人公と友達の友情が素朴でなんだかかわゆらしかった。



暗い迷宮 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ピーター ラヴゼイ / 早川書房

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ピーター・ラヴゼイ著『暗い迷宮』読了。
今度は、記憶喪失もの。
ほんと、毎回毎回目先を変えてくるなあ、ラヴゼイ。
この辺りになると、登場人物にも慣れ、各々の性格もつかめ、安心して読み進むことができます。
でもって、毎度のことながら、今回も犯人が分かりませんでした…!
大体、犯人よりも、脇役として出てきたエイダという女性が強烈過ぎて、すべてがふっとんだ。
なんか、誰かに似てる似てると思ったら、マツ●・デラックスさんでした。
最後の落ちがひそかにお気に入り☆


『ケルトの白馬/ケルトとローマの息子』も読み終わりましたが、これの感想は次回に回す。






私信:先日は旅先でお世話になりまして、皆様ありがとうございました。
楽しかったー!当分わたし、がんばれます!

面白くも無いパンの話なので
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by mi-narai | 2013-02-18 11:16 | 2013年上半期の読書

『ギリシャ・フェニキア』 『バースへの帰還』 『イスラームの「英雄」サラディン』

どうも、更新をサボっちゃっていけません。
これからは3件くらい溜まったら小まめにアップしようかしら…

アマイタマシイ 1 (ヤングジャンプコミックス)

杉本 亜未 / 集英社

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アマイタマシイ 2 (ヤングジャンプコミックス)

杉本 亜未 / 集英社



この作者の『アニマルX』とか、シリアスさにはついて行けないけど好きだったんだよなあ、などと思いながら
本屋で衝動買いした一品。

なんか、面白かった!!

頑固なお侍さんみたいな性格の変人シェフが、めちゃめちゃうまそうな洋菓子を作るんですが、
これがまあアンタ!生きてるうちにいっぺん食べてみたい!!と洋菓子好きの見習いをうならせるほど
おいしそうなのです!
シェフと周りの人の頓珍漢なやり取りもおかしく、コメディタッチなので、私と同じくシリアス苦手なあなたでも
大丈夫!(いったい誰に薦めているんだお前は)
続きが超楽しみです!


『PEN ギリシア・ローマ特集』
散髪屋でいつも、なぜか私の前には『PEN』が置かれるのですが、
今回上記のような特集だったので、すぐさまその足で本屋に寄って買い求めてみた。
観賞用です。
雑誌って、素敵な写真使ってますよね~!



古代美術とトロイア戦争物語

スーザン ウッドフォード / ミュージアム図書

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『古代美術とトロイア戦争物語』
古本屋で安くなってたので、ノリで買ってみた。
あれ?2011年出版?意外と最近だな。結構買いだったのかもしれません。
トロイア戦争関連の絵が描かれた壺とか、壺とか、壺の写真が載っている
薄めの図録みたいな本。
ざらっと写真だけ眺めてとりあえず満足する。


ナショナル ジオグラフィック [DVDブック] ビジュアル保存版 古代ギリシャ フェニキア 地中海に生まれた文明の興亡 (ナショナルジオグラフィック DVD BOOK)

ナショナル ジオグラフィック / 日経ナショナルジオグラフィック社

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『ギリシャ・フェニキア』
DVD付のやつを正月気分で買い求めてしまいました。
どっちかといえばDVDの方がメインで、本の方には大したことは載ってなかった…。
でも、近年の研究で、トロイアの城壁の全体像が書き換えられ、
狭いと思われてたけど、やっぱりけっこう広かったみたい、ということが
判明したらしい、と分かったのは収穫でした。
そうよね。トロイアは広くなくっちゃ!
スカイア門は城壁の近くなのね。

とはいえ、ギリシャ部分は、まあ、いいのです。
わたしのメイン目的はフェニキアですよ。
DVDがフェニキアについてだったので、付属本の方の叙述が少ないのは大目に見ます。
で、肝心のDVDですが、

判明したん、そんだけかよ!!

第一の感想がこれでした。
(まあ、映像とか、フェニキア(レバノン)の風景には、ものすごい浸れて楽しかったですが。)
でも、レバノンて、内戦があって発掘が遅れてたから、
シドンの遺跡とか手つかずなんですってね(2004年当時)。
まだまだこれからだと思うとワクワクします!
後、レバノンという国名が、地中海東沿岸をさすレバントから来てるって
初めて知った…!レバントという呼称は知ってたけど、国名とくっつけて考えなかったよ!!
ちなみに、レパントの海戦のレパントはまた別の地名ですよ。
パレスチナも、「ペリシテ人」から来てんのね…。わーお…。



バースへの帰還 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ピーター ラヴゼイ / 早川書房

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ピーター・ラヴゼイ著『バースへの帰還』読了。
前作でバース警察を(正しくはエイヴォン アンド サマセット署)辞職したダイヤモンドが復職する話。
殺人の罪で2年前に収監された男が脱獄し、警察署の偉い人の娘を人質に取って
自分の無実を証明するよう警察に迫るのだけど、
彼が交渉役に指名したのがダイヤモンドだったの。
(↑2年もずっとムショ暮らしだから、ダイヤモンドが辞職した件を知らなかった)
で、数年前の殺人事件を再捜査することになるダイヤモンドの活躍が今回の見どころなのでした。
わたし、毎回このシリーズは最後まで犯人が分からない(ていうか、推理力がないので大体分からない)
のですが、今回もやっぱり分かりませんでした。
おかしいなあ、以前一度読んでるはずなんだけどな…
面白かったですよ!



猟犬クラブ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ピーター ラヴゼイ / 早川書房

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ピーター・ラヴゼイ著『猟犬クラブ』読了。
続けて読んでます。
ラブゼイはダイヤモンドシリーズは一作ごとに作風を変えて書いてるんですが、
1冊目は警察小説、2冊目は追跡劇、3冊目はミステリ・サスペンス要素が増えた推理もの、
で、とうとう、この4冊目で

密室の謎。

ですよ。
殺された男が所属していたのが「猟犬クラブ」というミステリーサークルで、
そのメンバーがまたそれぞれのミステリーに詳しくて、
ミステリファンなら二度美味しい仕様。
これまた推理が二転三転し、最後まで犯人が分かりませんでした。
まさか、あの人が…
(しかし、作中で出てくる作家、読んだことあるの、クリスティと、セイヤーズとイヴァノビッチ、クィーン、
カーも読んだかな、そのくらいですよ。エルロイは映画見た程度。フレミングとか、ブラウン神父とか
(作者名忘れた)、その辺は名前しか知りません。
あ、でも『薔薇の名前』と修道士カドフェルシリーズは読んだ、
もちろんシャーロック・ホームズもね!)



イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男 (講談社学術文庫)

佐藤 次高 / 講談社

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佐藤次高著『イスラームの「英雄」サラディン』読了。
ホントはサラーハ・アル・ディーンとか、サラーフ・アッディーンとか言うんだけど、
一般に良く知られてる「サラディン」で統一します。
この人、イブン・ジュバイルの旅日記にやたらと絶賛されていたので、読みたくなって買ってみました。
知らなかったサラディンの生い立ちなど載ってて大変楽しい。
彼、クルド人なんですってね。
後、イスラムは中国と並ぶ記録大国で、色々文献が残ってるんですって。
日本で知られてないのは翻訳が進んでいないせいか(もったいない)、
まあ、根本に需要がない、というのもあるでしょうけども、
東南アジアとか中東辺りの歴史も面白そうなのになあ…。
(原文ではよう読まんので知識人にはガンガン翻訳したり本書いたりしてほしいです)

それはさておき、十字軍です。
ほんまこの頃の十字軍は超迷惑!
最初、順礼が通るのはいつものことだから西欧人たちを快く通してあげてたイスラム諸国も、
彼らがエルサレムをいきなり攻撃して占領したのにはビックリですよ。
なので、エルサレムを解放したサラディンが、アラブで英雄扱いされてるのもなんとなく納得です。
そらもう胸がすく出来事だったのだろう。
側近も、切れ者が揃ってたみたいだし、かっちょいいなあ。
でも、後世まで続くような体制を作らずに死んじゃったので、
アイユーブ朝はそんなに続かなかったらしい。すぐ後にモンゴルとかティムールとかがやってくるしな。
サラディン一人のカリスマとか人望とかで持ってた国だったのですね。
本人は自分では王だと名乗ったことないし、謙虚で、慎重で、思慮深い人だったみたい。素敵です。
ちなみに、彼が可愛がってもらってたシリアの王ヌール・アッディーンの配下としてエジプトへ赴き、
そこで宰相の地位についたのは30そこそこの時だったらしい。
割と夫婦生活も円満だったらしいし(若干アホな弟たちへの面倒見が良すぎる気はするが)
なんか、こういう、おおっぴらに「かっこいい」と明言してもこっちが恥ずかしくない人って、いいよなあ…
(某イタケの人とかテミ公とかは、きらりと光る部分もあるけど、ダメ要素が半端ないからな)
まあ、とにかく読んでる間中楽しかったッス!時代も人物も地域も好きなので!
そうそう、アサッシンの語源となったイスマーイール派の暗殺集団も出てきましたよ。
サラディンは間一髪助かったけど、狙われたどっかの王様が暗殺されてた…!
後、トルコが思いっきり田舎者扱いされてて時代を感じました(笑)。



奇談蒐集家 (創元推理文庫)

太田 忠司 / 東京創元社

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太田忠司著『奇談蒐集家』読了。
借りた本。この著者の推理物ばかり読んでいたので今度も推理物かと思ったら
幻想小説の類でした。
不思議だけどちょっと不気味、みたいな。
考えたら、この人「月読」とかオカルトチックな推理物も書いてるし、こういうのが好きなのかしら。
でも、目先が変わってちょっと面白かったかな。
読みやすかったので、朝の通勤時間だけで二日で読めました。



死が最後にやってくる (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アガサ・クリスティー / 早川書房

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アガサ・クリスティ著『死が最後にやってくる』
古代エジプトが舞台の異色ミステリー。
墓守イムホテプと、墓に付随する農園などの経営で暮らすその裕福な家族たち、
長男夫婦、二男夫婦、生意気な三男、出戻った娘、年老いた女中、祖母、孫たち、経理人。
そこへ、イムホテプが若く美しい愛人を出張先から連れ戻ったことから悲劇が始まる―
…みたいな筋。
以前一回読んだことがあるんだけど、改めて読んでみたくなったのです。
なかなか面白いですよ…!!
クリスティの3番目くらいの旦那が確か考古学者なんだっけ。
ものすごい量の資料を回してもらったんだろな(身内に学者がいると得だな)と思わせるアレっぷり。
なんか、さらっと古代エジプトのとある一家の生活を描き出してるのがすごい。
話の筋が、どこの時代に持ってきても通用するような人間ドラマなのもある意味すごい。
事件が起こるまでが若干長くて前半はもじもじしますが、
一度起こってしまえば畳み掛けるような連続悲劇で、
しかもわたし、また、最後の最後まで犯人わからなかったーー!!!

動機などについては若干疑問が残りましたが、主人公が今後幸せになりそうな終わり方だったので
読後感は爽やかでした。
ミステリ好きの人も、エジプト好きの人も一度読んでみて!



今、『一神教の誕生』と『暗い迷宮』を読み進み中。



多読
春からずーっと、ロマンス小説のスピンオフを二日にいっぺん2ページずつほど読み進んでます。
6割くらい分からない単語なんですが、なんか、ロマンス小説を読み慣れてるからか、
分かる単語だけで勝手に話を予測して脳内変換している私がいます…。
全く英語理解が深まってる感じがしないッ!!
とりあえず、3分の1くらいまで読み進んだ。
ヒーローは早くヒロインのかわゆらしさに気づくべき。
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by mi-narai | 2013-02-03 20:16 | 2013年上半期の読書