カテゴリ:2011年8月の読書( 2 )

『哲学者とオオカミ』 『オオカミと神話・伝承』 『オオカミと神話・伝承』

マーク・ローランズ 著『哲学者とオオカミ』
読み終えてしまいました。
昔の京大の哲学の先生方も破天荒な方が多かったと訊きますが
この作者も大概やな。
ものすごい引越し&転職ですよ。
大学教授ってこんなもんなの?それとも海外スタンダード?
後、同じ英語圏なら国を越えて引越し出来るのがちょっと羨ましいなとは思いました。

別に英語が母国語やのうて残念やとは思わへんけどな(日本語を愛してますから)。

長年住んでたアメリカからアイルランドに移った直後の、
まだアメリカ気質が抜けきってない作者とご近所さんとの常識の齟齬のエピソードが面白かった。
(自宅の庭に入り込んだ不審者を、オオカミと一緒になってボッコボコにタコ殴って
「よっしゃ!ふんじばってやった!」と得意になったものの、直後
「しまった、ここはアイルランドだった、やりすぎた…。ご近所トラブルになってしまう」と
青ざめたというエピソード。もしアメリカでこれをやったら、周囲から拍手喝采で一躍ヒーロー)

いやいや、この本の本質はそこではなく、作者が彼のオオカミと暮らすうちに色々考えた事
(主に哲学的…というよりは、ちょっと踏み込んだ人生についてのアレコレ)です。
最初読み始めた時は、随分この作者、人間に対して否定的だなあ、と思ったものですが、
読み進むうちに、そうではなく、人に対する嫌い、という気もちよりも、
オオカミとイヌが好き過ぎるんだな、と感じ始めました。
この人、イヌが好きすぎて、そことの対比でサル(人間に対するメタファー…らしい)を
汚らしい、醜い、と感じてしまうのだなあ。
そう考えると、著者の極端な物言いもちょっと愛おしくなってきました。
(北欧のフェンリル神話に対する、フェンリル側に立っての強力な弁護とか面白かった。
いや、わたしも常々神々には共感力が欠けてるよな、とは思ってましたとも!

後、イヌ好きが講じて、この人、ベジタリアンにまでなってますよ!!
食肉用に育てられてる動物が、食べられるために育てられて殺されるなんて、
あまりに酷い、と思う気持ちはものすごい分かるけど、植物だって生きてるから、な…?
でも、普通に生きてるのを食べるために殺して食べるのと、殺して食べるために育てるのは
こう、相手に対する尊敬度合いが違うねん!!…という主張は分かる。
普段何も考えないで美味しく御飯を頂いちゃってますが、命を頂いている事をもうちょっと
自覚して、ありがたいと思わないとなあ…)

著者が生まれたのは、家族でイヌ(それも大型犬)を何匹も買ってた筋金入りのイヌ好き一族なので
そのイヌ科の動物に対する視点は信頼できるし、作者がブレニン(オオカミ)の視点で
思考しようとする試みも、ものすごいそれっぽくて、
オオカミがどう考えてるか、世界を見てるかなんて、本当は人間には一生わからないんだけども、
著者が描いたオオカミの世界を見ると、多分こんな感じなんだろうなと
読者に思わせるリアリティがあるんですよね。
オオカミ界を垣間見れた気分になって面白かった。
最後のあたりの、ブレニンがとうとう年老いて死んでしまう箇所では、
作者の痛みが垣間見えて(分かる、などとおこがましい事は言いませんけども)
不覚にも泣いてしまいました。

作者の問いかけの根底には「結局、幸せってなんなんだろう」という普遍的なものが
あるように思うのですが、そういったおそらく哲学的な部類に入るのであろう問いかけも、
ものすごく噛み砕いて分かりやすく書いてあって
(作者曰く、この本は学術書じゃなくてエンタメの部類)、たいそう分かりやすかったです。
この理解力の乏しいわたしの頭で分かったのだから、多分誰でも分かる。

作者の個性が強いので、鼻についてダメな人はダメかもしれないけども、
個人的には面白かったです。
後、イヌ好きさんにもオススメ。


オオカミと神話・伝承

ジル ラガッシュ / 大修館書店

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『オオカミと神話・伝承』
オオカミ関連第2段。
読み終わりました。
最初にさらっと世界各地のオオカミ神話など並べてありますが、
(中央アジアのオオカミ神話とかは興味深かった)
作者がフランス人なので大体ヨーロッパのオオカミ事情についての話です。
おおざっぱには知ってましたが、あらためてヨーロッパの農村の、
農業に比べた牧畜の割合の高さとか、人里とオオカミの生息地の近さとか、
そういったものからオオカミが西欧であれほど憎まれるに至った過程などが分かりやすく
説明され、良かったです。
宗教や童話が人々に与えたイメージなんかも絡めて書いてあったしな!
ヨーロッパで大きな戦争が起こったり、ペストが流行ったりしたときには、
オオカミが死体を食べるので個体数が増えたとか、そういうのも生々しいけど納得の事実。
この本の出版年は20年ほど前なんですが、本出版の時点ではまだイタリアにもオオカミが
いたみたいで、その事にもビックリした。
イギリスでは大分早くにオオカミが絶滅したのは知ってたけど、イタリアはいたのか…!!


千の顔をもつ英雄〈上〉

ジョゼフ キャンベル / 人文書院

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ジョゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄〈上〉』読み中。
とりあえず、有名な本なので押さえておくか、と。
世界各地の英雄物語の要素を主に心理学的側面から説明したような本、だと思います。
(アホゆえに理解が浅くてスマン)。
あんまり神話を心理学的な要素のみで説明してしまうのは好きではないので
(だって、読んでて「いやいや、昔の人そんなこと絶対考えてなかったって!」と思いません!?)
へー、ほー、ふーん、と面白がりつつあまりコテコテの部分は流し読みしてるんですが、
この著者、具体的な神話を引いてきて、事例を説明するんですよね。
その具体的な神話部分がとても面白い!
知らなかったような神話がうんとこさ出てきて、目新しいですヨ!
それにこの著者、キリスト教圏の人なのに、ものすごく他の宗教にも公平で、
(というか、キリスト教にも仏教にもその他宗教にも全て客観的)
キリスト教徒の陥りやすい弊害などもちゃんと自覚していらっしゃって、
そのあたりは大変好感が持てました。
早く読んで下巻に進まねば、返却期間が来てしまう。




多読

『A tale of two cities』(レベル4)を読み中。
まだ読み終わらんヨー!(もうちょっと!)
ページの半分ほど知らない単語でも、適当に話をつなげられる自分の妄想力には感謝したい。
革命期のパリが超怖いっス!
正確に文章が分からない故に、ものすごい怖い想像をしてしまって、
多分、本当の話の筋を読むよりビビリながら読書してます。
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by mi-narai | 2011-09-06 22:55 | 2011年8月の読書

『時の娘』 『地中海の記憶』 『哲学者とオオカミ』他


『QED』シリーズ更に2冊読了。
岡山に行って桃太郎伝説が絡むやつと、鎌倉の闇がどうたらいうやつの2冊です。
相変わらず、民俗的なアレコレは胡散臭いけど(主人公の女の子はあっさり納得しすぎ)
殺人事件はオーソドックスなゴシックサスペンス調でとても楽しかった。


時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)

ジョセフィン・テイ / 早川書房

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ジョセフィン・テイの『時の娘』読了。
歴史ミステリーの白眉。
この話、大好きなんですが、また読んでしまいました。
推理もの、というか、考古学や歴史学の、断片的な文物から、分かった事実を繋ぎ合わせて
史実を探り当てていくという、学問的な醍醐味が面白い1冊。
その歴史の謎に刑事の視点で挑む主人公がまた素敵。
毎回これを読んで、リチャード三世に惚れ直してしまうのですよね!
後、リチャード三世の肖像画がロレンツォ・ディ・メディチに似てるというのは
私も思ってました!!


地中海の記憶―先史時代と古代

フェルナン・ブローデル / 藤原書店

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フェルナン・ブローデル著『地中海の記憶』
この人、名前の感じから、ラテンっぽいなあ、イタリア人かスペイン人か?などと思っていたら
フランス人でした。

『地中海』という著書が有名らしく、いろんなところで名前はよく聞くので気にはなってました。
でも、大著『地中海』は古代史の記述がそんなになさそうだし(もともとこの人中世あたりが
専門らしいし)読むのを躊躇してたのです。
しかーし!このたび図書館で『地中海の記憶』という、そのものずばり古代地中海について書いた本を
みつけてしまったのでした、ドンドンパフパフ―。もうこれは読むしか。
目標はほんの3分の2ほどのところに有る、フェニキアとエトルリアについての記述です。

では、以下、読みながら思った事メモ。

・冒頭に、ご本人が「わし、古代史専門じゃないけど、専門家じゃない方が分かりやすくかけるかもしんないし。
いいよね?」みたいに言ってる序文があって、ちょっとカワユイ。

・訳者曰く、ブローデルさんは歴史の学者であるけども、その文体と筆致は文学作品のように
薫り高く、このように楽しみながら歴史を読めて読者は大変幸運である。らしい。
確かに、なんか、読みやすいです。でもって、楽しい。
薄い紙に端から端までぎっしり字が書いてあるから、読んでも読んでも終わらないけどな…。

・先史時代、てか、類人猿の時代あたりから書いてありますよ。
一体どこからスタートする気なんだい、フェルナン…?
(でも、それもまためっちゃ面白かった!
あんまりこの時代の地中海なんて学校じゃ勉強しないもんなあ)

・まず、クレタの記述にときめく。
最近ほんと印欧語族以外の方が楽しくって。
エトルリアも、他の文化の借用が多くって、わりと節操ない辺りが日本人として
共感するなあと思ってましたが、クレタの記述にも
『発見されるものはすべて外からの借用でありながら、同時に全てが独創的だからである。
これは島に特有の文化とはいえないだろうか?』
などとあって、やはりちょっぴり共感する。

・その後、メソポタミアとエジプトと、シリアと、青銅器時代のギリシアの記述なんかがありました。
うろ覚え。

・フェニキアの記述でちょう興奮しました。

フェニキア人かっけーー!!!

奴ら、最強の商人ですヨ!!!商人国家、ってのがかっこイイ!しかも海洋国家だし!!
カルタゴには商業用の長方形の港に、円形の軍港があったのは、前にカルタゴ展に行ったときに
模型で見ましたが、
テュロスにもやはり南の港と北の港と二つ合ったんですね。
うああああ、フェニキアー!!
いや、でも若い子供を生贄にしてたらしいと訊くとちょっぴりビビるんです、ですが、…そんなん、
ギリシャ・ローマ人ましてやキリスト教徒に非難される謂れはないよなあ。

あと、読みながらふと思ったけど、イーノーとパライモン(だっけか?)が海に飛び込んで
レウコテア―とメリケルテースになったという伝説、あれのメリケルテースって、
メルカルト(町の主という意味の名をもつカナン人の神)からきてんのかしらん。
あれ?でも、メルカルトってヘラクレスの事だと思われてたっけ???

・つづくエトルリア記述も面白かったけど、こっちはほとんど知ってることばっかりでした。
ブローデルさんは、最近のエトルリア人形成説を知ってはいたけど、リディアから移民したという説を
推し気味で、それがどうも鼻につく、というか。
後、並行しておさらいに以前読んだエトルリア本を読み返したので記述がどれのものかごっちゃになって
しまった、というのもあります。

この後に、ギリシャ部分とローマ部分が続くんですが、とりあえず、興味のある部分は読み終えたので
いったん、読了と言う事にします。
他にもたくさん本を借りてしまったので、早く読まねば…


哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン

マーク ローランズ / 白水社

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借りたその2
マーク ローランズ 著『哲学者とオオカミ』
オオカミ好きなので、借りてみました。
著者は西欧人なので、ところどころ西欧人的なものの見方を脱却できていないなと
感じるところがあるのですが(上から目線で語ってみた)
(無意識のうちに善悪に分けてものを見ていたり、人を騙す事は悪であるという基点に立ってたり。
それが悪だということになってるのは全くもって人間の勝手じゃないの。
もっと大きなところから見たら、単にそういう特徴なだけであって、悪ではないっスよ、多分。
悪であるのはあくまで騙された人間が蒙る被害が問題になってくる場合であって、
人間同士の枠組みの中でこそ最も顕著なんじゃないのかなあ。
まあ、この場合、作者は、『人間が動物の中で最上の者で、他の動物に比べて特に精神活動において
優れている』と思っている周囲の人々の意見を反駁するために、
あえてそういうきつい言い方をチョイスしているんでしょうけども。
ていうか、そもそも人間が動物のうちで一番えらい、などと強烈に思えるのも
西欧人ならではだよなあ…。そんなことない?)
そういうところを差っ引いても面白いよ!
ブレニン(作者の飼っていたオオカミの名前)との出会いから、彼との生活を通じていろいろと
深められた思想などが、読んでてとってもワクワクします。
なにより、作者の、ブレニンへの愛、もういない彼への哀悼の気持ちが滲み出てて、それがいとおしいです。
この人、めっちゃ犬好きやで。
今のところ、目から鱗が落ちたのは、
人間の知能は、集団生活を送るようになって、
自然と自分の関係だけでなく集団内の個々人の行動や順位を読まなければならなくなり、
そうすると、そのうちのいくらかの固体を利用する事を覚え、
自分が利用されないために利口になるようになり、
騙し騙されのスキルアップによって、向上した、のではないか?
みたいな意見。つまり、知能が高いから群れて暮らすようになったんじゃなく、
群れて暮らしてるうちに知能が高くなったと。面白いでしょう!
でも、サルの残忍性(仲間に対する悪意)にはちょっとぞっとする。
このぞっとする、という道徳観念も、そもそもその残忍性があるからこそそれを抑制するために
発達したのではないか、みたいな考察も ちょうおもしろい!

まだ半分くらいまでしか読んでないので、とりあえず後半を読んでしまおうと思います。


多読
『ギリシャ神話』
講談社かどこかから出てる、巻末に単語一覧が付いてる文庫サイズのヤツ。
好きなカテゴリーのものなら楽しんで読めるかと思ったけど、

…なんか、そうでもなかった……

当たり前だけど、知ってるエピソードばっかりだし、
そんな超定番なところをもってこられても…(※そういうものです)
神々の話を読んでもたいして楽しくなかった自分に一番ショックを受けました。
あ、ヘパイストス部分はちょっと楽しかった。


『The Adventures of Ulysses』(レベル4)
これまた、レベル4の棚に並んでたもの。
「ウリッセス?ちゃんとオデュッセウスって綴れよ」と思いましたが、
よく考えたら、これの発音はユリシーズ、か。スミマセン。英語でしたね。
こっちは、期待してなかったけど、面白かったですヨ!
上手に物語として面白く読めるように描いてありましたもの!
後、話の筋を知ってると言うのは強いなと。単語がほとんど分からなくても
情景は分かるからな…!(ダメジャン!)

所々ツッコミどころもありましたが。
・オデュッセウスがテレマコスに自分が父だと信用させるシーンで、ミドルネームを囁く
というのがあったんですが、

ミドルネームなんてねえよ!!

…え?ないよね…?

・アイアイエーかオーギュギエーかパイアケスのシーンで、オデュッセウスが絹の服を着てるという
叙述があったんですが、
絹も、この時代まだないですよね…?

まあ、なんていうか、ミドルネームはあるもんだと思ってるらしい、とか、絹といったら豪華なんだなとか、
欧米人のイメージを垣間見れるのは面白かったですが。


今は
『A tale of two cities』(レベル4)を読み中。
こっちは、話の筋を全く知らないので、ただいま絶賛ストーリーを脳内捏造中です。
今、5年前の親子の感動の再会を果たし終わって、5年後のロンドンでの裁判のシーン。
…ほんとにこの筋であってんのかしら…(読み終わったら答え合わせせねば)


映画
ハリーポッターの最後のヤツ、見に行きました。
これで恒例行事がなくなってしまうと思うとちょっと寂しい。
ええと、見てる間は楽しく没頭してたのですが、
見終わるとあんまり覚えてないという不思議。何故…!?
とりあえず、強烈に思った事をメモ。

・途中のマギー・スミスの、スリザリン生に対する処罰は酷すぎると思います。
・全てがハリーに集約しすぎじゃい!
・よく考えたらえっらいピンポイントにローカルな舞台の話だったよね…
・最後のあたりの夜明けのホグワーツ、どこかで見たことが、と思ったら、『ICO』でした。

あくまで強烈に思った事、だからね!ちゃんと見てる間は楽しみましたからね!!

今回も、あのお方を演じていらっしゃったレイフ・ファインズさんは名演技でした☆
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by mi-narai | 2011-08-19 00:17 | 2011年8月の読書