カテゴリ:2010年4月の読書( 2 )

『終わりよければすべてよし』 『ラウィーニア』

終わりよければすべてよし シェイクスピア全集 〔25〕 白水Uブックス

ウィリアム・シェイクスピア / 白水社

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シェイクスピア著『終わりよければすべてよし』あらすじを読んで興味が出たのでさらっと読んで見ました。
さらっと読み終えました。
医者の娘が、貴族の息子に恋をして、その恋を成就させるために頑張る話。
しかし、なんでこの貴族息子はこんなに頑ななの?


ラウィーニア

アーシュラ・K・ル=グウィン / 河出書房新社

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アーシュラ・ル=グィン著『ラウィーニア』読了。
前にちらっと日記で書いたように、本屋に並んだその日からずっと気になっていた一冊。
図書館で新刊本の棚に並んでいたので、「今じゃ!」と思って借りてみました。
意外と内容がぎっしり詰まってて流石に一日では読みとおせませんでしたが、
読んでる間中続きが気になって気になって、一気に最後まで読み通した一冊でした。

最初に結論から言います。


アイネイアスがめちゃめちゃかっこよかった!!!




(…またそういう頭の悪い感想を…)
や、でもほんと!読み終わってからも1日くらいはときめきの余韻に浸ってましたもの!
ワタクシ、この年になると割と許容範囲が広がって、読書における殿方に対する
トキメキの傾向もいくつか分化しておるのですけども、
このアイネイアスに対してのときめきは、
頑固一徹なおじさまに対するかわゆいなあ、というときめきでも、
腹黒くて頭のいいナイスガイに対するワクワクでもなく、

…あえて言えば『TROY』のヘクトールに対してや、
国連事務総長のハマーショルドさんの事跡について読むときの
「この人はなんて立派な人なんだろう…!」という感動?(疑問系にすな)

と似たようなものかと。
ものすごいよう物を考えてる人に描かれたはる。
自分の弱さを自覚して、常に自問してるような、知性的で理性的な人ですよ。
大人だし。背が高くて男前だし。
この作者の登場人物で言うなら、「2巻のゲド」を髣髴とさせました。
でも、作者のまったくの創造かというとそうではなく、
なんか、『アエネーイス』を読んで感じたアイネイアス像を具体化するとこんな感じか?
という印象で、違和感はなかったです。
さすが大御所だぜ…

もう、このアイネイアスのためだけにこの本買ってもいいかなと思ったくらいです。


もしこの本を読んでときめいた人は見習いまで!語らいましょう!!

:::::::::::::::::::::::
閑話休題。
アイネイアス話はおいておいて、お話の筋や背景について感じたところをば。
ベースはあくまでもウェルギリウス先生の『アエネーイス』です。

とはいえ、時代背景は、史実にもかなり忠実なのではないかとも感じました。
色々初期の王政から共和政のローマ本や、ローマの神話本を読みかじって
「最初の頃のローマってこんなだったろうな~」とわたしが想像していたような
社会形態や、神話形態が、ちょうど描かれていて、ちょっと感動した。
(ル=グィンも似たような資料を読んだのかちら!!
わたしの想像にお墨付きを頂いたような勝利感でございますよ)
特に、境界の上で踊るマルスとか、ウェヌスの位置付けとか、
ギリシアから神々が入ってくる以前のローマ人の素朴な信仰形態とかが、
「そうやんな!こんな感じやんな~」と膝を打つ感じに描かれてて大満足。
大雑把に言えば、『アエネーイス』の筋を、実際の当時のローマ世界の中で展開してる感じです。
本当は、トロイア戦争からローマの夜明けまでは数百年の時差があるので
ローマの初代王ロムルスとレムスのご先祖たるラウィーニアと
トロイア人のアイネイアスは時代が違うし、まあ会うはずないんだけど
(アイネイアスのローマ建国伝説はラティーヌスのそれをなぞっているという説が一般的?)
その辺りは、作者が上手にまとめてます。
色んな伝説の要素を一旦分解してもう一度ぴたりとピースがはまるように組みなおすと
こうなるのだなあ、という…


お話は、『アエネーイス』をラウィーニアの視点で語りなおした感じです。
ラウィーニアの知らない前半部分は、詩人のウェルギリウスが語ってます。

このお話、不思議な構造になっていて、
ラウィーニアは血肉を持った人間であるとともに、ウェルギリウスの創作した作品内の人物で、
彼が確固とした役割や人格を与えなかったせいで永遠を生きている、といったような設定がなされてます。
作中で、叙事詩の作者であるウェルギリウスと登場人物であるラウィーニアが
会って話すシーンなどもあります(このシーン、静かでとても好き。
ウェルギリウスの登場シーンだけ、ほのかにアウグストゥスの時代のローマの香りが
感じられて、もう、作者の才能にくらくらしました)。
そのラウィーニアが、思い出してはその時の事を語るため、時系列が時々入り乱れていて、
最初はちょっと戸惑うかもしれません。

筋は、何が起こるわけでもなく、大冒険活劇があるわけでもないし地味かなと思ったのですが
それはわたしがもともと『アエネーイス』を読んでいて、次に何が起こるかを知っているからかも。
後、一貫して女性のラウィーニア主観で描かれるので、戦闘シーンが出てこないから
そんな感じを受けるのかも。淡々と王女の日常が続くからそう感じるけど
よく考えたら、戦争がおこって終わってるなあ。
一応、ラウィーニアをめぐってトゥルヌス&アマータ率いるラテン軍VS
アイネイアス率いるトロイア勢の戦いが起こって、トゥルヌスの死で収束するまで続きます。
(物語はその戦争の後さらに続きますが)

なんというか、不思議な読後感だったなあ…。
個人的にプラス評価ばかり感じたわけでもなく、
毎回なんでこの人の話女性が男性に押さえつけられて
息苦しくなってるシーンが一度は入るんだろうとか(まさか、それが肝なんか?)
アスカニウスとトゥルヌスはちょっと気の毒な描かれ方してたよなとか、
あまり好ましくないところだってあったのですが、
ソレを差っ引いて色々総合的に見たら、面白かった、のかなあ…
今考えたら、アイネイアスをラウィーニアが心底愛していたので、
読者にもあんなに彼が素敵に見えたのかなあ…
(作中、ラブラブでしたぜ、この二人!あーもう、あっついあっつい)

手放しで「あー、面白かったー!」とストレートに言うにはもっと
複雑な何かが残るというか、

だから、まさに、なんというか不思議な読後感、だったのでした。


あ、あと、エトルリアも素敵な感じで出てきてましたよ!
向こうに押し切られた感満載のディードーと違って、
クレウーサのことは、アイネイアスが本気で愛してたっぽいのも好感度大。
ヘクトールやディオメデスも、名前だけ出演してました!うわーい。
アキレウスとオデュッセウスは一箇所だけおんなじとこにやはり名前だけ出てきてましたよ!
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by mi-narai | 2010-05-02 19:53 | 2010年4月の読書

『トリックスター』 『ダライ・ラマ自伝』 『フェニキア人』

『トルコ語のしくみ』
大体読了。
あかん、文法事項が増えてくると最初に読んだ辺りの事忘れる!!

…でもまあ、その辺りは日本語にちょっと近いってのと、愛で賄えるかな…


トリックスター (晶文全書)

ポール・ラディン / 晶文社

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ポール・ラディン著、カール・ケレーニイなどが解説を書いた『トリックスター』読了。
以前から気になってはいたのですが、以前の気になるポイントはズヴァリ!ヘルメス関連でした。
しかし今回借りたのはワタリガラスの神話が読みたかったから。
そんなわけで、北米のトリックスター神話をがっつり読みはぐりました。
著者は神話に近い文化英雄じゃなくて、純然たる道化であるトリックスターを主眼として扱っているので、
どちらかというと文化英雄に近いワタリガラスについてはさらっとさらえる程度にしか書いてなかったデスが

うふふ、それでも素敵でしたわ…。

カール・ケレーニイの解説は、…

奴が何を言いたいのかよく分からん(アホ丸出し)

解説といいながら、のっけにラディンの意見を一蹴してるように読めるんですが、
それはわたしの頭が悪いからでしょうか、先生。
もうちょっとこの辺りの研究に造詣が深ければおいおい分かって来るんだろうけど
返却期限の迫ってる本ということもあり、あまり深く考えずに読み飛ばしてしまいました。


ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

ダライラマ / 文藝春秋

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ダライラマ著『ダライ・ラマ自伝』読了。
職場の友人に借りたもの。
ダライラマの幼少期から、ダライラマに選出され、中国との衝突があり、インドへ亡命して今に到るまでの自伝。


なんというか、読めば読むほど中国政府が嫌になる一冊…
(久しぶりに大学時代のあの感覚を思い出しました)

書いたのはチベット人のダライ・ラマだし、立場上、幾分か誇張して書いてあるのかもしれないので
丸呑みにするのは危険だとは分かっていても、
それでも募るなんともいいようのない危機感のことよ。
こわい。もし中国が膨張して将来これが日本人に対して行われたらと思うと冗談抜きでものすごい怖いです。

このままではチベット民族が地球上から消えてしまう!!

(歴史上、いろんな国が栄えては滅び、後からソレを勉強して、
『なんで滅ぼしたー!』と憤慨することが良くありますが、
まさかそれをリアルタイムで見る事になんてならんだろうな!)
(⇒反面、ひょっとしたら一般日本人は知らないだけで、日本人も色々各方面に悪い事を
してるんかもしらん、その辺りはちゃんと知って、反省すべきなのかも、とは思いましたが)
あんまりにも怖い事例を読みすぎて、中国が嫌いになりそうになりましたが、
でも、ダライ・ラマも言うように、おそらく、一般の普通の中国人は大体がいい人だろうし
中国政府のやり口を知らないだけの人が大半だろうから(情報統制があるから)、
漢民族をおおざっぱにくくってソレを十把一からげに嫌うのはお門違いですよね。
やはり、中国にネットがもっと蔓延して、政府からの一方的な情報だけでなく、
色んなところからの色んな角度からの情報がもっと入るようになれば良いのに、と思いました。

ああ、怖かった。


かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)

万城目 学 / 筑摩書房

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万城目学著『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』読了。
上のダライ・ラマ自伝を貸してくれたのと同じ人が貸してくれたので。
帰りの電車でさらっと読了。
新書で出てるんですが、子供向けの児童書みたいな読み口でした。
若干こっぱずかしい箇所もあるけど、犬とネコの夫婦愛は意外と良かった。以上。


フェニキア人 (世界の古代民族シリーズ)

グレン・E. マーコウ / 創元社

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グレン・E. マーコウ著『フェニキア人』読了。

面白かった!!

流石に寝不足の時や帰宅時の電車では読みながら何度か居眠りこきましたが、
それでも久しぶりに真面目な本をワクワクしながら読みました!
まあ、ギリシアやエトルリア、ローマなど好きな辺りと時代がかぶるので、
耳慣れた固有名詞が多いし、なにより
私の大好きな商人の国だというのが、面白いと感じた理由の大半だと思います。

でも、周囲の人にフェニキアと言ってもあまり分かってもらえず…
(意外とマイナーなのかしらん)
なので、とりあえず、地理的なあたりだけ説明しておくと、
地中海の東の突き当たりの(今のヨルダンやレバノン、イスラエルのある辺り)
海岸線あたりに都市を作って商売にせいを出したセム語を話す人々、もしくは地域の呼び名っスよ。
この『フェニキア』ってのも、ギリシアのポイニクスがもとなんだろうから、
本人たちは自分たちのことをなんて呼んでたんだろうなあ…
(民族、という概念がなさそうだから、テュロス人、とか、シドン人、とか、出身地でくくってたのかしらん)

以下、いつものように、読みながら打った携帯メモ箇条書き。

・キュプロスというのは、そのものズバリ、『銅』という意味で、あの島、有名な銅の産地だったらしい。
キュプロスといえば、アプロディーテなんですが、そうなんだ、銅の島だったのですね!

・フェニキアといえば、シドンとテュロスですが、北のビュブロスも割と有名です。
この、ビュブロス、この都市のみ、昔から一貫して人が住んでいたのですって!
他のシドンやテュロスなどは、青銅器時代一度人が住んで、その後放棄され、鉄器時代に入って
再び入植した形跡があるんだそうな。そんななか、ビュブロスのみは昔から連続して人が住んでいた
形跡が残っているらしい。へー。
その話を聞いて、アテナイを連想したのはわたしだけではないはず。

・このフェニキア本、最初は歴史について書いてあって、その後は都市構造、経済、神話、などと
項目別に分かれてるんですが、最初の歴史部分、古代の前15世紀のあたりは正直ちょっと眠かったんです。
でも、前11世紀辺りから面白くなってきたー!
あの時代のオリエント、覇権をとる大国がころっころ代わるんですが、
フェニキアの都市たちは、最初ッからものっそい商売本位なので、権力には興味なく
(上が誰でも、滞りなく商売できればそれでいい。
群雄割拠だと通商路が危険で貿易がしづらいので、
むしろ大国がその辺り一体を平定して安定してくれた方がいい)
どの国がその地方を勢力化に治めようともその下で、うまく立ち回るんです!
(ちなみに、アケネメス朝ペルシャ時代がフェニキアの最盛期。この部分ではヘロドトスの『歴史』
の引用がたくさん出てきたちょっと楽しかった。フェニキアの海軍が一番強かったんですよ!)
その歴史の中で、都市間はそれぞれライバル関係にあってしのぎを削るんですが、
中でもシドンとテュロスは好敵手同士で!
この2都市が、時代によって上になったり遅れをとったりする軌跡がものすごい面白かった!
なんとなく、わたしはテュロスの方が好きです。海上都市だし。カルタゴの母市だし。

・そのテュロスがアレクサンドロスのせいで取り返しのつかないことに…!!
報復怖すぎ。
もともと嫌いでしたが、アレクサンドロスがますます嫌いになりました

・ところで、西方フェニキア勢力の歴史を語る部分(主にカルタゴ)の段で
ローマ、さらっとエトルリア勢力に入れられてるんですが、
(まあ、あながち間違いではない。初期のローマはエトルリアの勢力圏内の町だったもん)
これって、西洋じゃ一般的にそういう認識が広まってると考えていいのね?(決め付け)

・フェニキアの都市の条件の項
常に『良港』が選ばれてたらしい。
(もちろん、植民地には、給油ポイントとなるところや、背後に鉱山を抱えるところが
選ばれたらしいのでこの範囲内ではないけれども)

商売する気満々やな!


・あの辺の地名で『テル』と付くのが多いのは、テル、というのが丘、という意味だかららしい。
桃が丘とか、住吉台、などとつけるのと似たような感覚なのでしょうか。

・フェニキアでは貨幣の発行が、周辺の他地域より遅いと聞いて、最初は意外な気がしたのですが、
その理由が「あらかじめ商品の交換レートが決まっていたので通貨の必要性が感じられず、
そのために発行が遅れた」と分かって、えらい納得しました。なるほど。

・神話体系があまり残ってないのは勿体無いなあ。

・神話といえば、ところどころ『オデュッセイア』への言及があったのはちょっと嬉しかったです。
うん、確かに、フェニキアの紫の布とか、フェニキア海賊とかに関して、ホメロスにもちょこちょこ出てきてた。

・フェニキアのエーゲ海貿易の相手はコリントス、エレウシス、アルゴスだったらしい。
(当時のアテナイはまだ弱小だったらしい)
そうかそうか。ならコリントスへは中東の文物が色々行っておったのだな。
ますます憧れの地よ…

でもって、イタリアへの中継地がイタカだったらしいともありました。なに!?
だから、『オデュッセイア』は航海譚だし、『アエネイス』ではアイネイアスが
イタケを横目に見ながら西に航海するの!?
色んなところでリンクしてるなあ、古代地中海…

・エトルリアに急速に中東化が進んだのはフェニキアの影響、ともさらっと書いてありました。
(おっと、リディアからの移民説をまるっとスルーしとりますな)
や、移民はあったのかも知れないけれど、全体ではなかったと、そういうことかもしれん。
日本もそうだし。半島から人が移り住んだのかもしれないけど、それが全体ではないと。


いや~、この他にも、政治形態や経済活動の段も、美術の段も、神話の段も
すべからく楽しかった!



『トリノ・エジプト展』を見に市立博物館へ行きました。
…ほんと、この博物館、エジプト展多いな…(大喜び)。
今回は展示の方法もなかなか凝っていて、見ごたえもあってよかったっスよ!
特に彫像の展示が面白かったな~!
トリノ博物館に行ってみたくなりました!
(えらい短い感想ですが、カルタゴ展と同じくらい満喫いたしました~!)
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by mi-narai | 2010-04-21 21:58 | 2010年4月の読書