カテゴリ:2010年3月の読書( 5 )

『カルタゴの歴史』

カルタゴの歴史―地中海の覇権をめぐる戦い (文庫クセジュ)

マリア=ジュリア アマダジ=グッゾ / 白水社

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マリア=ジュリア・アマダジ=グッゾ著『カルタゴの歴史』読了。
京都の文化博物館でやってる古代カルタゴ・ローマ展を見に行ったのですが、
その予習として見に行く前に滑り込みで読んだ一冊。
新書なのでざっと知りたい人向け。
(ところどころ厳しい日本語訳もあったような気が…ごにょごにょ。
行為の主体が分かりづらい部分が時々あって、それはちょっと辛かった)

で、読み終わって一番分かった事はといえば


カルタゴに関してはほとんど資料がなく、分からない事ばかりである


ということだったという…。
ローマは第3次ポエニ戦争に勝利した後、カルタゴ市を徹底的に破壊したらしく、
カルタゴ人自身が書いた史書も、図書館もみーんな消滅してしまったんだって。
なので、資料といえば、考古学資料と、ローマを含む周辺諸国の記録に頼るしかなく…


おのれローマ…!!!
(アタシ、今月に入って何回ローマに腹立ててるんだろう…)

こんな腹立たしさはインカ、アステカとエトルリアだけかと思っていたのにやれやれですよ。

以下、読んでいて「おっ!」と思っていた事。

・カルタゴがセム系の商人の町だというのは元々知っていたのですが、
宗教や固有名詞の語感がやはり聖書(ヘブライ人)と似てるなと改めて思いました。

・その流れで。
カルタゴの聖所には、幼児の骨がたくさん埋葬されていたことから、
カルタゴ人は幼児を生贄に捧げてたんじゃないかという疑惑があって、
それに関しては、それを史実と認定する意見やら、それに対する反論やら色々あるようですが、
聖書でも息子を神に捧げる話が出てくるので、案外ホントかなという気がしました。
といっても、生贄儀式がそんな頻繁にあったわけではないだろうし、
もちろん捧げる方だってものすごい覚悟でやってたろうから
カルタゴ人が特に子供を粗雑に扱ってたとか、無慈悲だなどとは思いませんが。
でも、同じくらいこの人身御供疑惑が純然たるカルタゴの敵対勢力のでっち上げだという気もちょっとするなあ…

・カルタゴの語源
セム語で クアルト(町) ハダシュト(新しい) で縮まって カルタゴ! なるほど!

・メルカルトの語源
フェニキア語でMlkは王を意味する語を形作る
⇒このミルクと、先に出た町を意味するクアルトでミルククアルト⇒ミルカルト!

・エトルリア人の話がちょっと出てきました。嬉しい。
そうそう、そういえばエトルリアの本を読んでいたときにも、
地中海を西へ西へと進出するギリシア勢に対抗するために
カルタゴと同盟を結んだ、という段がありました。

・ヘロドトスに依拠するペルシア戦争初期の頃のポカイア人の海賊行為の話もちゃんと載ってました。

・カエレの外港で発見されたエトルリア語とフェニキア語の黄金板についての言及もあったよー。
エトルリア語を語る上では避けて通れないこの文字板が、フェニキア本で出てくるとなんか不思議な感じです。

・後、カルタゴの建設神話の段で、ディードーやエリッサの話が出てきて、
これはアエネイス関連の本で読んだエピソードなので、
…この時代、色々リンクしてるなあと感慨も一入でした。

・フェニキア諸都市では男女一対の神を祀るのがスタンダードだったらしい。
なら、やっぱりイスラエルでも男女一対の神を祀ってたと考える方が自然ですよね。
(『ダ・ヴィンチ・コード』のネタってそんな大騒ぎするほどのアレか?)
それとは関係ないけど、エシュムーンっていう神の名前の語感が好きです。

・この本のあとがきにもコリントスの滅亡について書かれてました。
「同じようにローマに徹底的に破壊された町でも、コリントスの方はさほど話題に上がらないのに
カルタゴの方は日本人の興味をそそるのは、判官びいきのせいか?」という趣旨で
書かれてる一文に出てくるんですが、

わたしはコリントスにも興味がありますよ(※皆知ってる)。



で、この本を読んだのち、
先日、古代カルタゴ・ローマ展を見に京都に行ってきました。
芸術は不勉強なので、絵などを見ても真価をなかなか見極められないのですが、博物は普通に面白いな~。

前述のとおり、カルタゴは一度ローマに滅ぼされてのち、
ローマの属州の都として再び同じ場所に新たに町が建築されるのですが、
ローマ以前と以後ではカラーががらっと変わってしまうのね…
(さすがにローマ以後の文物にはいろいろ馴染み深かった。
見覚えのあるあれやこれやがいっぱいですよ)

一番印象に残ったのは、さすが海洋帝国の異名を欲しいままにしたカルタゴ、
その港の立派さでした
復元予想図や復元予想ミニチュアが飾ってあったんだけどさ!
港の入り口には長方形の商船用船着場があって、その奥にドッグを備えた軍船用の円形の港が隣接してるんですよ!
船とか港とか、ああもう、素敵ワードがおてんこ盛り!
(それだけでこんなにハアハアできる自分もたいがいキモいですが)
商人と最強海軍と青い海と空だなんて、どうしてわたしはこれほど自分の好みに合致した民族をスルーしていたのか!
これまでの自分を猛省しました。

そんなこんなで、港、船、商人、海軍、など、ときめくキーワードを満喫した後、
そのへんで飯食って、市場好きの同行の友人の希望で錦市場などうろうろして帰ってきました。
あー、楽しかった!
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by mi-narai | 2010-03-31 23:56 | 2010年3月の読書

『ちょんまげぷりん』

ちょんまげぷりん (小学館文庫)

荒木 源 / 小学館

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荒木源著『ちょんまげぷりん』読了
新聞の書評を見てちょっと面白そうだなと思ったのでさくっと読んでみた。
さくっと読み終えました。
江戸時代のお侍が何の因果か現代にタイムスリップして、
シングルマザーのおうちに居候、
何もしないのは申し訳ないから家事を受け持ったら
生来の食いしん坊も手伝ってメキメキ腕前を上げ…
というようなアップテンポの話。
読みやすかったです。
そんな難しいひねりも深遠な哲学もないエンタメです。
御伽噺みたいでした。以上。
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by mi-narai | 2010-03-17 23:14 | 2010年3月の読書

『ギリシア案内記』コリントス部分のみ

ギリシア案内記〈下〉 (岩波文庫)

パウサニアス / 岩波書店

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パウサニアス『ギリシア案内記』コリントス部分のみ

ええ、シシュポスさんのためだけに読みました(断言)

大体知ってた事ばかりではあったのですが、
逆に


「えー!!このエピソードってパウサニアスかー!」


という驚きの連続でもありました。
メーデイアの子供を殺したのはコリント人たちであった、という本来の古伝が載ってるのもこの本ですヨ!

後、ローマ人の征服で元のコリント人が全て滅亡した…てマジか!
なんてことしやがる、ローマ人め…。エトルリア人の時にも感じたこの憤りのデジャヴっぷりよ…)

それにしても、武装のアプロディーテに1000人の神殿付き娼婦を抱えるコリントスは
すごいと思いました。
ああ、こうして憧れの地が増えていくのですね…。
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by mi-narai | 2010-03-17 00:45 | 2010年3月の読書

『新編・普通を誰も教えてくれない』

新編 普通をだれも教えてくれない (ちくま学芸文庫)

鷲田 清一 / 筑摩書房

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鷲田清一著『新編・普通をだれも教えてくれない』読了。
わしだせんせいによる哲学的エッセイ集。
なんか、最近鷲田先生お気に入り。

先生、のっけから飛ばしてくれます。
どうやら先生は携帯電話(メール)がお嫌いらしいのですが、
その理由が

「返事が来なかったら寂しいから」

なんだもん!
可愛すぎます!!
(いや、実際はもうちょっと深くて、人とつながろうとする意図で作られたはずの
そういった電子機器が却って人の孤独を深めているのではないだろうか、というご意見なのですが)

身体論などを物しておられる先生、女性のファッションやファッション誌についても
詳しくてらして、アンアンやノンノをひも解く先生を想像して内心「ぷぷ」と
噴出してしまいました。


後、個人的な今回の先生の名言は

「あほになれないひとがほんとのあほである」

常々感じていたワタクシの中のかっこつけに対する忌避感を見事に集約した一言です。
ていうか、関西て、かっこつけに対して厳しくない…ですか?
どちらかというと、夢見る乙女だったワタクシ、ほんとうは色々かっこつけてみたかったのですが
そういう試みは小さい頃から何度も何度も周囲に踏みつけられ冷たい目でスルーされ、
今ではすっかりわたしもアンチかっこつけ派に。
…こうして鍛えられていくのよね…。
今から考えると昔のわしは本当にバカオロカじゃった…。(今は多少ましになったと信じたい)
周囲の皆様には多大な迷惑をおかけしてホント申し訳なく…

それと若干かぶっているのですが、
本当に卓越した技術というのはその社会がその技術において一定レベル水準に達しているという
豊穣な土台があってこそ育まれるものだ、という趣旨のお言葉が、
大阪の芸人さんや噺家さんに関連して書いてあって
それにも感覚的に大きく頷きました。
数少ない知人を通してのイメージなんで個人的な雑感でしかないのですが、
おおさかのひとってほんとおもしろいですよね…。
普段の会話から、常に言葉やタイミング、抑揚などをチョイスして、
いかに上手に話すかを無意識に心掛けているような。
(なので、おもろない芸人と無神経な人間にはものすごい厳しい気が)
…わたしの周囲の人だけなのか??
自分がどこをどう転んでも口下手話下手でつくづく面白くない人間なので
ワタシは心底上手に喋れる人が羨ましいですよ!!

閑話休題。
鷲田先生は、メルロ・ポンティに代表される身体論と臨床哲学を専門としておられる方らしいのですが、
最初臨床哲学と聞いて「???医療現場の哲学??」などと頓珍漢な勘違いをしていた私
今回の本でようやく先生の目指しておられるところが
「現場に出て、人との会話の中で考える哲学」だと分かり、目から鱗が落ちました。

…ていうか、ソクラテス大先生といい、つくづくワタシはこのタイプの哲学者が好きだよなあ…。
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by mi-narai | 2010-03-16 02:31 | 2010年3月の読書

『青い城』、他

この冬から春にかけて暖かくなっていく季節、
特にその宵の、薄ぼんやり明るい空と生暖かい風を感じると


何故か「赤毛のアン」を思い出します。


…いや、なぜかも何も、ワタシが赤毛のアンを読んだのは一般より大分遅くて大学生の時分なのですが、
その時期がちょうどこのくらいの早春の時期だったからなんですが。

そんなことを思い出しつつ、ちょっと前に読んだモンゴメリの『青い城』感想。


青い城 (角川文庫)

モンゴメリ / 角川グループパブリッシング



面白かったー!
エロのないロマンス小説ですヨ~♪
主人公はそれまでずーっと一族の心無い噂話や、対面ばかり気にして自分を愛してくれない母親に
大人しく我慢して、ストレス溜め込んでる、適齢期をちょっと過ぎたくらいの年齢の女性。
それが、ある日、些細な胸の痛みを見てもらおうと軽い気持ちで出かけた医者で、
まさかの「余命後1年」宣告を受けて、ぶちっと何かが切れちゃうわけです。
最初の、全てのものにびくびくして抑圧されてる部分は、読んでてほんと辛かったのですが、
この、吹っ切れてからのページは、その反動でものすごい爽快でした!

もう、やりたいこと片っ端からやってくし!
その上、前から気になってた男性にこの主人公、自分から

「ワタシはあなたが好きだ、後余命1年だから、可哀想に思って結婚してくれ」

と堂々と告白+プロポーズっスよ!男らしい!

後半は、この主人公がずーっと幸福を感じてる状態で、それが読者にもありありとわかるので
ものすごいこっちも幸せになりながら読めました。
ごち!




いただいた卒論

※個人的にいただいたものなのでメールにしようかどうか散々迷ったのですが
それだと相手が返事を出さないといけないと気になさるかしらと思ったりもし、
(貰った上にそれじゃ申し訳ないじゃない)
なにより、普通の出版されてる解説読むのと同じ感覚で読んでしまったので
(あ、下にも同じこと書いてる)やはりこちらの読書日記の方にメモしておきます。




こちらに帰って来た次の日辺りから読み始めて読み終えたので、やはり記憶がおぼろげなのですが、
なんか、他の名だたる学者先生方の解説を読むみたいにすんなり普通に楽しく読んでしまった
…ということを考えるに、筆者の力量が知れようというものです。

面白かったー!

もちろん、「いやいや、それはちょっとこじつけなんじゃないかしら」と思う部分も
あったような気がするのですが、それは、どの先生の解説を読んでいても
少なからずあるものなので!そういうものなのです。
大体解説なんて、「自分はこう解釈する」という宣言のようなもんじゃないですか。
だからよっぽどでない限りとっぴでもかまわないし、それにプラスして、説得力があれば尚面白い、
という位置付けが自分の中であるのですが、
その点今回読ませて頂いたこの論文は力作で、なるほどなあ、と感心したり
わあ、ワタシこれまでもの知らんクセに好き勝手にいろいろ言うて、いやん、恥ずかちい、と
恥じ入ったり致しました。
気合入れてものすごいじっくり読んだのですが、
アホゆえに、ちゃんと作者の意図どおりに理解できたかどうかは
自分でもちょっと自信がない…


とりあえず、エウリピデスのオレステスが他2作に比べて異色で、
その構成やら登場人物の性格づけなどが、工夫されてて
エウリピデス屈指の意欲作だという事は分かった。
その背景に当時の社会的な雰囲気があることも分かった(おおいばり)!

(お前、それは読んだら誰でもわかるって…)

古い時代の叙事詩(神話)からの乖離の度合いや、
その理由などが、時代背景から登場人物やアポロンと絡めて丁寧に説明してあって
このワタクシでも一瞬理解できたような気になったのですが
…書いててまたも理解できてないんじゃないかという気になってきた…。
や、いいか。手元にあるからわかんなくなったらまた読みます。


そんなこんなで早くエウリピデスの「エーレクトラー」本編を
読みたいのですが、諸事情があって、他の本が間に挟まれ
まだ読めてない状態なのです。
忘れないうちに読みたい…

PS:結び目になれますとも!


読書メモ自分のために読書済み+読書中の本を記しておく。

読了
鷲田清一著『新編・普通を誰も教えてくれない』
パウサニアス『ギリシア周遊記』コリントス部分のみ
『ちょんまげぷりん』

読書中
『カルタゴの歴史』
『ギリシア悲劇全集7』
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by mi-narai | 2010-03-14 21:33 | 2010年3月の読書