カテゴリ:2009年9月の読書( 4 )

『世界女神大全Ⅱ』 『全国アホ・バカ分布考』

図説世界女神大全II

アン・ベアリング/ジュールズ・キャシュフォード / 原書房

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アン・ベアリング、ジュールズ・キャシュフォード著『世界女神大全Ⅱ』読了。
図書館の返却期限が迫ってきたので鬼のように読む。
最後の辺りなど斜め読みもいいところですよー(視線斜め上)
とりあえず、恒例の、お、と思った箇所箇条書き。

「ギリシアの女神」アプロディーテ部分から
・アプロディーテはイナンナの系統かもしれませんが、戦の女神ではない。
や、以前イナンナが戦女神だからアプロディーテもそうなんでは、と指摘を受けて、
そうかもしらんが、そういやギリシア神話では全くそんな記述無いよなあ…???
と不思議に思ってたんです。
やはり、ギリシアに入ってその辺りがすっぽり抜け落ちたみたい。
まあ、アテナがいるしな…
(『イーリアス』でも、ゼウスに、「戦のことはアテナに任せて、お前は恋愛の粋な領域に
専念していなさい」とか言われてたし。
アレスが恋人なのは、以前の職能の名残なのかもしれないけど)

(↓この辺りはデメテルとペルセポネー部分)
・デメテルは、これまで、ゲー(大地)の地方系のデーと、母であるメーテルがくっついて、
デーメーテール(=大地の母)なんだと思ってましたが、今回、新説発見!
クレタの言葉で穀物はdyaiらしいんですが、デメテルのデーはコレだというもの。
つまり名前の意味は「穀物の母」。
まあ、大地全般じゃなくて農業に限定した女神だから、職能から考えたら
こっちの方が実情に近いよなあ。どっちでもイイよー

・ザグレウスはクレタの狩人で冥界の主人らしい。後に、ディオニュソスと混同される。
…てことは、元は別物?

・クレタでディオニュソスって、ゼウスのこと??(名前も「若い神」だし。ゼウスの誕生伝説あるの、クレタだし)

・ゼウスがペルセポネーと契って云々という説話があるのもクレタ?

うーん、クレタ、ますます不思議の島よ…。惚れそうです

・ていうか、デメテルはクレタからミュケーナイ時代に本土に伝わったミノア文明の女神とか、
ペルセポネーはデメテルの一側面とか、いろいろ考えてるうちに


ひょっとして、ハデスもデメテルの魔の手にーーー!!!??


などという恐ろしい考えに行き着いてしまったので、もう考えないことにする。

・まあ、デメテルとハデスは近い感じはしてましたけどね。
ハデスがペルセポネーをチョイスしたって神話で読んだ時も
「あー、ご近所さん選んだんだな。妥当な選択じゃないの?」
ほどの感慨だったもんなあ。真面目なハデスらしいなーと。
(※見習いはあの話で一番悪いのはゼウスだと思ってます。黒幕め!でもそこが好き!)

「キュベレー」部分
・以前もどこかで聞いたけど、いつも忘れちゃうのでメモ。
キュベレーの語源はクババで英語のCUBEと同じ語根?(メッカのカーバ神殿も同じ語根)
原義は入れ物?
キュベレーは石に宿る女神だと思われていた
(→ポエニ戦争中のローマのキュベレー勧請話、
「急務!船で大石を運べ!プロジェクト(勝手に命名すな)」に続く)

・メイ・クイーンの民間行事も、この女神の行事の名残らしい。
スペインの闘牛は牛犠牲の儀式の名残らしい。
ホントか??

えー、ここで見習い、今更重大なことに気付きました。
大女神の職能分離のところで、上の水担当の鳥女神と下の水担当の蛇女神に分かれると読んだ時、
”下の水”は海とか川とか、そういうものだろうと分かるけど、ぶっちゃけ
「”上の水”ってなんじゃ???」
と思ってたんです。

雨の事か!!!

雨や雪が降るのは天井にも水が蓄えられてるからだと思ったのか!!!!
やっと分かりましたー!!!(鈍すぎます)
いや、小学校で雨の降る仕組みとか習っちゃう現代人には、
上空に水溜りがあるって考えに到らなかったんですよう(弁解)

後、今更ですが、こうして当時の人々の真面目な信仰を読んでると、
「こんな風にパロっちゃってスンマセン」
というなんとも申し訳ない気持ちになります。
でも、現代の一神教の人々ほど当時の多神教を信じてた人々は狭量じゃないという気もします。
(昔のギリシア人も真面目に信じつつも叙事詩や悲劇でパロってるし。
信仰形態の微妙に違うローマでは顕著だし)


「鉄器時代」部分
ここからは主に聖書の話
・カインとアベルのエピソードで、日本人的には百姓が牧人より下に置かれる判定に
納得いかなかったんですが、なんのことはない、当時のユダヤ人が牧畜を営んでたからか。なーんや。

「聖書に隠された女神」部分
・やはり、旧約が著される前には、父なる神の隣には女神がいたらしい。
「あ、そう」くらいにしか思いませんが、小さい頃から聖書に親しんできた人にとっては衝撃なんでしょうね…

・原罪の考察辺りで書かれていた一文に共感。
「親とぶつかった子供が自分自身を責める事で
自分の全世界である親の全能性を保持するのに似ている」

・アダムの肋骨の話は、シュメールのニンティという女神をインスパイアしたもの?

しかしまあ、読めば読むほど苛々しました、この辺り。
一神教の偏り具合に!
ヘシオドスの『神統記』のパンドーラのエピソードも大概だと思ってましたがあれはまだ良心的だった。
とはいえ、イエスの教え自体は嫌いではないんだけどなあ。
(いろいろエエこと言うたはりますよ。自分が心弱いダメ人間だという
自覚のあるワタクシ、色々身につまされるっス)
あまり歴史時代のキリスト教が好きではないんですが、それは
運営する人々やら機関やらの問題なんだろうと思ってます。

最後、今後現代社会で女神はどうあるべきか、という問題提起が語られて、締め。

はー、しかし、面白かったのですが、長かったです…


全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)

松本 修 / 新潮社

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次、松本修著『全国アホ・バカ分布考』読了。
これは、図書館じゃなくて人から借りたもんなんですが


面白かったんです…!!!!


気軽に読み始めて、面白すぎてなかなか止まらず、二日で読み終えてしまいました。
この本、装丁を見た時から、それほど硬い本ではなかろうとは予想していたのですが、
まさか、『探偵ナイトスクープ』のプロデューサーが書いた本だったとは!まさに想定外!
(※説明しよう。探偵ナイトスクープとは関西では有名な週末の深夜番組である。
視聴者からの疑問や要望を、探偵社所属の各探偵が調査する、という形式で番組が進行する。
ちなみに、調査に失敗した時もソレをネタにして放映するという商魂たくましさである。結構長寿番組です。)

その松本プロデューサーが、番組の成り立ちをざっと説明した後、
視聴者からの素朴な疑問「「バカ」を使う人と「アホ」を使う人の住んでる境界線はどこにあるの?」
を番組で取り上げたことがきっかけで、遠大なるバカ・アホへの旅へと乗り出した経緯などが
赤裸々に描かれており、日本人の古来からの罵り言葉の変遷が、素人にもわかりやすく、
読んで楽しく、読み終わった後にはそれなりの言語学の知識も付く仕上がりになってます。
あとがき読むと、学術書で出版しても良かったんだけど、それより言葉の収集を手伝ってくれた
全国の般の人々の恩に報い、方言は豊かな言葉なのだと胸を張ってもらうためには
一般書の方が適切かと思い直し、話を持ちかけてきた編集者の熱意にも負けて、
この本の形で出版することになったとのこと。

なので、一貫して一般人である著者の視点でかかれてます。
その点、アホ・バカをはじめ罵り言葉の謎がひとつひとつ解けていく瞬間の
スリルと興奮が非常に共感しやすく、読んでるこっちまで興奮しました。
いやあ、言葉って面白いよね!(←分かったような気になってる読者)

とはいえ、方言周圏論とか、柳田國男の蝸牛考なんかはもともと知ってたんですけどね。
アクセントも、近畿周辺のアクセントが日本語としては一番若いとも読んだし。
(ただし、アクセントは語彙より変化しにくいので、
このアクセントが成立したのはかなーり前だと思われますが)
それでも、いかに方言周圏論が思ってたより適応できるか、というか、

…具体例を目の当たりにすると、やはり感動が違うのですよ。

以下、特に強く思ったこと。

・方言周圏論というのは、言葉は文化の中心地から同心円を描いて次々と
伝わってゆく(そして、周辺部により古い形が残る)てな説のことなんですが、
このバカ・アホ考から、(メディアの発達した現代日本はともかく)、
都が奈良・京都におかれてから明治に入るまで、
その発信源は長らく京都でありつづけた、という事実が導き出されたことにまず吃驚しました。
奈良、平安、鎌倉、室町、戦国はともかく、
江戸時代に入ってからも、依然として流行の発信地は京都だったらしいっスよ!

恐るべし、京都(ガクブル)

今ではすっかり全国共通の罵り言葉として定着してる「バカ」も、
最初は京都で生まれ、京都で流行ってたんですって!
(江戸で生まれたと思ってた!)
その後京都では「アホ」が流行り、「アホ」の流行は大体関西全体に行き渡ってバカを駆逐し、今に到る、と。
(江戸から生まれた罵り言葉って実は思ってたより少ないらしい。
唯一「デレ(スケ)」なんかは江戸色が強そう、と著者は書いてたけどどうなんかねえ)

・そうそう、わたしの住まっておる地域近辺で、心底腹が立った時に使う「だぼ」ですが、
ワタシ、これ、ずっと「どあほう」が縮まったものだと思ってたんです。
が、どうやら違うようです!
「アホ」が流行る前に流行ったもっと古い言葉なんだって!
しかも、京都から同じくらい離れている東の信州あたりにも
「だぼ」という言葉が残ってるんですって!
へえ!そうなんだ!長野県とは同じくらいの距離の辺境仲間なのですね♪
シンパシーを感じる。

・高校生の時の英語の先生に初めて聞いて以来、
「日本語の罵り言葉は弱い、外国語の罵り言葉はもっとえげつなくて卑猥なものが多い」とは
各所で耳にしてきましたが、今回ソレを実感しました。
とはいってもこの著者はそれを肯定的に受け止めてて、
「直接相手の程度の低さをあざ笑ったり、欠点をあげつらうような卑しい罵り言葉は
日本人の気質には合わなかったのだ、少しひねったり、動物にたとえたり、「幸せな奴だなあ」と
正反対のことを言って婉曲的にからかったりしてそれを罵り言葉に代えたご先祖を
我々は誇りに思っていいのではないか」
というスタンスを貫いてて、
それを読んだわたしも日本人のご先祖様方がちょっと好きになりました。
今の日本人の国民性って諸外国人に比べると概ね穏やかなんじゃないかなと思ってたけど、
昔からこうなんだなあ、…なんかちょっといいんじゃない?(国際社会にねじ込むには不利かもしらんが)

・後、作中、徳川先生という言語学の先生が著者に指摘した、
「外国ではもっと多い、セックスや宗教に関る表現が少ない。
→これは日本人が性のタブーや宗教のしめつけのゆるい文化を生きてきたせいではないか」
という一文も、ものすごく納得しました。
いやあ、ちょうど女神の本読んで色々思った後だったから余計に(笑)。
歴史時代に入ってからはともかく、双系社会だった縄文弥生あたりは、
日本列島外から来た人と原住民、さほど軋轢も無くゆるーく混ざっていったらしいしね!
締め付けが何も無かったわけでは勿論無いだろうけど、相対的に見たら
自由な方なんだろうなあ。ありがたいこっちゃ。


で、読み終えて面白かったので家族にこんな本があったと話したら、
妹も母も読んだことは無くても本の存在は知ってました。

そんな有名な本だったのか!!

(今回一番吃驚したのはコレでした)
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by mi-narai | 2009-09-23 13:57 | 2009年9月の読書

『世界女神大全Ⅰ』

アン・ベアリング、ジュールズ・キャシュフォード著『世界女神大全Ⅰ』
ものすごく面白いんですが、上下2段に分かれてる上ハードカバーなのでなかなか読み終わりません。
毎日じりじり読み進み、本日ようやく読了。
下巻に突入する前に、青銅器時代以降の雑感をメモ。

「青銅器時代」部分
最初のあたりは、シュメールです。
男性原理も内包していた大女神から男神が分離した様子とその理由、
男神の持つ特性(全てに内在する女神に比べ、外から客観視、精神的、等々。ほんとかよ)の説明があります。
…ていうか、大女神の地位の低下を招いたのは男神の誕生そのものではなくて、
部族の神としての特徴を強く持つ天空神としての主神信仰を極端に推し進めた
好戦的なセム語族&アーリア人が政治的な優性に立って、
家父長制や自分たちの神話を征服民に押し付けた結果だ、
…ということはよく分かった。
シュメールも、北部のセム語族の影響を受けるまでは、女性の地位が男性に比べて別段低いってことも
なかったみたいです。

……おのれ………(あの憤り再び)

・死に対する認識が、女神への回帰と、その後の転生、という周期的なものから、
絶対的で暗く寂しくその先には何も無い、という直線的なものに変わってきたのもこの頃らしいっす。
ふと、ゲド戦記と空色勾玉読んだときに感じた相違を思い出しました(同時期に読んだの)。
ゲド戦記では、死は暗く冷たく絶望的なものだが、それがあるからこそ生が輝く、という主張だったのに対し、
空色勾玉の方は、死は地下の女神の元で休むことで魂はその後また生まれ変わる
(だからそんなに恐ろしいものではない)という設定だったので。
はっはっは、荻原規子、買うだけ買って他の本読んでないよなあ。

・ソレと関連して、冥府の存在が意識されだしたらしい。

・色んなところで言及されて有名な、儀礼的王殺しが始まったのもこの時代あたり
っぽいようなこと書いてあったぞー


「イナンナ=イシュタル」部分
シュメール語の語感って面白いですね。
某I様のHPのおかげで神々の名前や色んな名称に聞き覚えがあって、ものすごく楽しかったです。ウス!

・聖書におけるシュメール神話との類似は、バビロン捕囚ン時のユダヤ人に
由来してんじゃないか、とのこと。おお~、バビロン捕囚!

・所々ヒンズー教への言及があったりして…そうなん?シュメールとヒンズー教になにか共通点が?


「エジプトのイシス」部分
あまりなじみの無い部分なので、へー、ほー、ふーんと感心してるうちに読み終わる。

・殺されたオシリスを探す時のイシスはペルセポネーを探すデメテルに激似。
なんで似たのかは知らんが、イシスがデメテルと同一視されてる理由は分かった。

・イシスとオシリスの神話、どうもエジプトでは誰もが知ってる神話らしくて、
個々のエピソードしか残ってないらしいです。
(あらすじすっとばして本編からはじまる「イーリアス」と同じ感性です(笑)。)
最初から最後までを一環して残してるのがギリシア人のプルタルコスだけだってあたりが面白い。

・月と将棋を指して勝ち、閏年を取り上げたトト、って記述にときめきました。
(ヘルメスと同一視されたのもこのあたりか??)

・アヌビスってオシリスとネフティスの息子だったの!?そらセト(ネフティスの旦那)も怒るって。

「バビロンのティアマト」部分
・もともとシュメールやエジプトはセム語族や印欧語族ではないので、まだその神話も、
男神が台頭してきたとはいえそこまで酷くない感じだったのですが、
ここで語られる「エヌマ・エリシュ」では、とうとう女神バラバラ殺害事件勃発。

おおお…おいたわしい…

とはいえ、日本神話にもちらっとそんなのあったし、どこまでバラバラ事件が
この作者の言うように男神の権力掌握を表してるかは疑問なんだけど。
どうなんだろう、女神の娘たる穀物や芋の化身が、バラバラにされて埋められるのは豊穣儀礼かも
知れんが、その大元たる大女神自身がバラバラにされてるというところが大事件なんか?
アホゆえにこの程度の理解しか出来ない自分が歯がゆいぜ!
ただ、確かに、シュメールからの権力移行をバビロン人が神話の中で表明したってのは、
そうなんだろうなあ、と思います。
(女神=シュメール、マルドゥーク=バビロニアとみて)
もっと穏やかなマルドゥーク神話もあるらしいですし。

・二元論の深化がすすみ、良いものは男性的なもの、悪いものと女性的なものが結び付けられる
傾向が顕著になる。やな時代だなあ。

・物語における戦争・武力賛美、二元論化も言及されてましたが、
それでも「旧約」に比べたらホメロスは公平だとこの本の作者も仰ってました。
そうだろうそうだろう。

全体的に血腥せえよ、アッシリア&バビロニアー!


「ギリシアの女神」部分
バビロン部分を読みながら、つくづくギリシアはここまで酷くないよな、良かった良かったと思っていたら、
このギリシア部分ではまさしくそんなような事が書いてました。

「父神の神話の2大勢力はヤーウェとゼウスだが、両者には驚くほど共通点が少ない」

あってたまるかーー!

・ギリシアはアーリア人が席捲したにしては前代の大女神の信仰と、新しい父権的信仰が
いい感じに融合した例らしい(さもありなん)。
しかし、混ざりすぎて、もとの形が見分けづらいのは難儀なことです。

・ギリシア部分は、既にどこか別のほんで読んだことなんかが多く、たいへん読みやすかったです、
やはり自分に分かる分野は落ち着くなあ。
でも、知ってることが多いと、あえて書き残す事柄も減るわけで……
(というわけで、ギリシア部分は以下略。ヘラ様とアテナ様が素敵でした、とだけメモっておきます)

下巻は「ギリシアの女神」のつづき、アプロディーテからっス。
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by mi-narai | 2009-09-15 21:17 | 2009年9月の読書

『世界女神大全Ⅰ』

図説世界女神大全

アン・バリン、ジュールズ・キャシュフォード / 原書房

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アン・ベアリング、ジュールズ・キャシュフォード著『世界女神大全Ⅰ』
これまた図書館で借りた本。
女神についての神話を集めて羅列してあるだけの本かと思いきや、
旧石器時代の人々の信仰心から始まって、
太古の女神がいかにして人々の心に生まれ崇拝されるようになったか、
そして、その後父権社会の到来とともにいかにその表現を変えていったか
という、女神像の変遷を丹念に追っとります。


おおむね楽しく読んでますが、大筋は、色んなところで断片的に読んだ知識をすっきりまとめてある感じです。
以下、お?と思ったこと&雑感

「はじまり 旧石器時代の母神」部分
・ワタシの太古の大女神に対する印象の根本って、高校生の時に読んだ
『大地の子エイラ』というシリーズにあるんですが、
今この本を読んで、『エイラ』シリーズの信仰形態との類似にびっくり!
『エイラ』シリーズ、下調べを入念にしてある、とはあとがきに書いてあったけど
なによりエンターテイメントとして面白い本で、当然ながら空想の部分もたくさんあり、
なので神話体系に関しても話半分に聞いてましたが、

…意外と正解率高かった…!!

みんなもあの本を読むといいよ!第2部以降若干アダルトだけどな!

・作中に、キリスト教徒の常識に生きてる作者たちが大女神を信仰してた人々の気持ちになって
考えることは難しい、てな記述が出てきたんですが、
…キリスト教徒は大変だナ~(人事)
(多分、一般日本人なら、欧米人ほどの苦労はいらんのでは)

「新石器時代」部分
・女性の地位が低下したのは筋力を必要とする戦争や農作業の社会における重要度の増加の
ためかと思っていたら(大雑把にはそうかもしれないんですが)
初期の農業においては、農業を発見したのは女性だっため、女性が農作業における指導者的役割を
担っていた、みたいなことが書いてあったのでちょっとびっくりしました。
「女性は子育て中遠出出来なかったため、居住地にいて出来る仕事をすることになり
また、居住地の周辺の植物の長いスパンでの生育も発見しやすかった
→農業や機織を発見したのは実は女性である。」
あ、そうなんやー(単純)。

・この章では、旧石器時代は全てを内包していた大女神が、分化した様が説明されてて、
鳥女神(地上より上方の水担当)とか蛇女神(地上より下方の水担当)とか、
女神関連の動物とかについても書かれてるんですが
そこで言われて初めて気が付いきました。
グリフォンって、鳥+ライオン+蛇、という見事に女神の顕現ばかり
組み合わせた動物なんスね。そりゃ神聖なはずですヨ。

・ところで、当然ながら穀物の女神というのは農業が始まってから生まれたものなんだから、
ひょっとして、デメテルってアルテミスなんかより若干新しい女神なんでしょうか。
や、その前身の全ての母たる大女神の存在を考えるならやっぱり古い大女神なんだけど。
大地の女神って字面だけでデメテルを考えていた浅はかな自分をちょっと反省…

・先進地域のエジプト&メソポタミアから後進地域のヨーロッパへ文化が伝播、
というのが一般的な見解なのかと思ってたら、
東地中海(イタリアからトルコ南部あたりを含む)の古ヨーロッパ一体にも
高い文化があったらしい、てな事が書いてありました。
ほんとか?作者が欧米人なので、文化の源がアジア・アフリカにあることに
対する拒絶反応からくる捏造じゃあるまいな?などと穿ってしまった。

でも、ほんとうなら面白いですね。
(確かにヴィンチャ文明とか最近どっかで耳にしたぞー)
印欧語族の侵入以前に大女神崇拝を中心とする比較的平和的で
高い技術を持つ人々が栄えてたと想像するのはなかなか楽しい。
当然エトルリア文明はその流れを汲んでる筈だしね!

・しかし、この平和的で大女神中心の文化を、侵入してきた遊牧民の
クルガン人(印欧語族)が蹴散らしてしまったというのだから、
なんというか、

クルガン人め~~~!!

なにやらデジャヴを感じると思ったら、毎回インカ滅亡のことを考えるたびに
スペインに対して感じるソレでした(笑)。

・トルコのチャタル・ヒュユクの遺跡についてもたくさん書いてありました。
トルコという字面だけで幸せになれる自分はたいそうお手軽だと思います。
それだけでなく、女神の男性原理の表出などの部分は面白かったっスよ。


「クレタ」部分
クレタのミノア文明、時代的には青銅器にくるんですが、文化的には新石器時代の直径だ、
ということで、クレタ部分は新石器と青銅器の間においてあります。
・クレタの有名な明るい色彩の芸術について書かれている文を読むと、
つくづくクレタって豊かで、開放的だったんだなあと。
作者曰く「陽気で優雅で上品」
ホメロスの影響でクレタ=豊かな島というイメージが染み付いてたんですが
これまたあながち嘘ではなかったのね。
ところで、好戦的で、雷、風、嵐といったものを司る男神を信仰するセム語族&アーリア人ですが、
大女神の信仰が旧石器時代に共通するものだとしたら、なんでそれらの人々ののもとでは、
男神崇拝への移行がそんな早く起こったんだ?
遊牧?遊牧がキーワードなの?
あまり地味が豊かでない土地では大女神のありがたみが実感しにくい、ということなのでしょうか。
それとも豊かな土地よりよりいっそう男性の筋力が必要となってそのことが
社会のあり方を男性中心へと変え、それが神話にも影響したの??
戦争を正当化する必要に迫られるとこうなるのかしらん。

・ミノア文明(そして、その影響を受けつつ発展した印欧語族のミュケーナイ文明)
といえば、線文字A&Bですが、ようやく線文字Aだけ解読まだなの分かった。
印欧語族じゃないからかー(気付くの遅ッ!)

・女神を象った容器についても書いてありました。
つまり、中に入っている水なり食物なりは、女神の賜物なわけです、
女神が分けてくださった有り難い食物なんだから感謝していただこう、という真摯な気持ちがよく伝わる博物です。
ところで、日本の縄文土器の中にも女神を象ったものがあって、やはり
同じような意味合いを持つ、と吉田先生が仰ってたなあ。

・二人の女神と一人の男神の表現。
ペルセポネ―とデメテルの関係が分かりそうで分からないモヤモヤ感です。

・モヤモヤといえば、テセウス周辺もよく分からないままになってしまった…
クレタと言えば女神と牛なので、テセウス伝説に牛がしつこいほど何度も何度も出てくるのは分かる。
アリアドネが女神、もしくは人間だったら女神官だったというのも分かる
(ミノア文明、神官職は女性の職だもん)。
この伝説におけるアテナイ人のクレタへの敵意の裏に、
なんらかのクレタの優性という歴史的事実があったんじゃないか?
という推測も分かる。
テセウスという英雄が冒険する伝説と、クレタの別の伝説がややこしく絡まってるのも分かる。
なら当然、テセウスにアリアドネは得られないよね!
(ディオニュソス(=植物の化身?女神の息子)の方が大女神の系譜たる
アリアドネに近く、大女神と息子(=愛人)という形にも近い)
でも、具体的にどこがどうなんじゃい!と思うと途端に分からなく。モヤモヤ。

・ところで、ミノスという名前も、個人名だというこれまでの解釈の他に
「王朝名?」「エジプトのミンという神、もしくは初代王メネスと関係が?」
「ファラオ、的な王の代名詞?」などと色々言われてますが、それはさておき
イドメネウスの名前の中間部にも、この「ミノス」と同じ語幹が使用されてるそうです。
ほんとだー!気付かなかった―!
そうか、「イドメネウス」って由緒正しいクレタの名前だったんですね~

(長くなってしまった…「青銅器時代」以降は次)
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by mi-narai | 2009-09-10 19:32 | 2009年9月の読書

『テセウス伝説の謎』

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(画像が横向きなのは気にするな!)
近所の店で見つけたアレなチューハイたち。

相変わらずの勇者っぷり!やってくれるぜ3ガリア―!


テセウス伝説の謎―ポリス国家の形成をめぐって (1982年)

太田 秀通 / 岩波書店

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フレイザーの『金枝篇』は時間が掛かりそうなので、その前に図書館で借りた本を読破!
…ということで、次、太田英通著『テセウス伝説の謎』を読み始める。
タイトルだけ見ると、なんだか一般向けのギリシア神話布教本みたいですが、
これ、岩波から出てる、真面目な本なんよ(笑)。

テセウス伝説と銘打ってありますが、神話・伝承のみを論じた本ではなく、
テセウス伝説を中心にアテナイの国家形成を問い直そう、というコンセプトの元
歴史・国家形成史寄りの考察がなされた本です。

今、大まかな古代地中海史、テセウス伝説に対するこれまでの学会意見の変遷、
などをざっと見渡した後、ようやく太田先生のテセウス論検証に入ったところ。

大まかな雑感は全部読み終わってから述べるとして、今日は一つだけ。

ホメロスによるテセウスの記述(3箇所しかない)を検証する段での話。
書いてあったのを見ても、うすぼんやりとしか思い出せないんですが、
ホメロスによれば、アリアドネって、テセウスと一緒にクレタを出奔した後、
ディオニュソスの証言によってアルテミスに射殺されたことになってるそうな。

ええ~~~~!!!??殺されてんの!?
ディオニュソスの証言によってってどういうことさ!?
一体ホメロスはどんな伝承に依拠してたの!?

不勉強がたたってさっぱり分かりませんorz


数日後、読了。
テセウス伝説というのは、太田先生によれば3部に分かれてて
1部は、生まれ故郷からアテナイに来るまでの冒険の数々。
おそらくこれはアテナイがそれなりに発展し始めてから、ご当地の英雄テセウスを
ヘラクレスと並ぶくらいビッグな男にしたてあげよう、という機運の元付け足された
郷土愛と誇りに満ち溢れたエピソードの数々らしい。当然、成立は割と遅い。
2部は、クレタ関連のアレコレ。これが一番古く、その根っこはミュケーナイ時代に遡るんじゃないかと。
3部は、テセウスがアテナイの国政を整えたという、概ね政治に属するエピソードアレコレ。

一番ワタシが気になるのはもちろん第2部のクレタとミノタウロスとアリアドネ周辺なんですが、
先にも書いたとおりこの本はアテナイの国政の変遷を中心に考察する本なので
当然ながら大きく取り上げられているのは3部の国政関連の伝承の数々でした。
や、歴史も好きだし、当時の国政ってどうなってんの?と気にもなってたので
これはこれで楽しかったです。
神話が全て歴史の反映だと考えるのはナンセンスだと思いますが
確かにテセウス伝説って他のギリシア神話のエピソードとは異質な感じがしますよね。
おそらく、反映具合が大きいからだと思う。
(アテナイ人の郷土愛には脱帽です。)
伝承によればテセウスは民主制の創始者だと言われてたりするらしく、
伝承の書き手による差異や考古学から判明したミュケーナイ時代の国のあり方などを手がかりに、
全てのテセウス伝説のどの部分がどのように実際のアテナイ国政の変化を反映しており、
ソコから類推して、アテナイの国政の変遷とはいかなる道筋を辿ったものか、
というところを明らかにするのがこの本の最終目標。

付随してイーリアスの世界、実際のミュケーナイ世界、暗黒時代の状況などについて
書いてあったのも嬉しかったです。

しかし、アテナイか。ドーリア人進入で各地の自治体が解体する中
唯一独立を堅守した町、アテナイ人の誇りも分かる気がするなあ。
アテナイ人、自分たちがトロイア戦争に参戦したってことがものすごく自慢だったらしいですよ。
当時はトロイア戦争が史実だと思われてたから、アテナイ人、本気で『イーリアス』を根拠に
小アジアの町の所有権を主張したりしてたらしい。面白いなあ。
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by mi-narai | 2009-09-05 20:22 | 2009年9月の読書