カテゴリ:2009年7月の読書( 2 )

『母権論解読』 『勅任艦長への航海』、他

『母権論解読』読了。
母権論を読んだので補強で。
最初のあたりの“母権論が女権運動にどう使われたか”の部分はすんません、
どうでもいいです。
一番最後の論文『梟の女神アテーナー』は文句なしに面白かった。

最近似たような女系継承の本ばっか読んで、ほんとにこの本だったか忘れたけど
一連の『オレステス』関連伝承における、ネメシス側の古い社会制度にてらして見た
クリュタイムネストラーの行動が説明してあるのを読んだんです。
それでいくと、クリュタイムネストラー、全く悪くないんですよ…。
なんか、初めて、新旧対立の深刻さを実感できた気がする…。
(アポロンもネメシスもどちらも自分の正しさを主張するわけだよ…)
とはいえ、オレステス自身は新体制側のコマとして利用されただけじゃない?
あまり彼に罪を帰すのは気の毒だなあという気がします。
どうもオレステスに同情的な見習いですが、ベースがホメロスだから仕方ないんですよ。
そもそも『オデュッセイア』では姉のことは一切出てこず、母殺しは言及されず、
ただ父の敵を取ったあっぱれな息子としてしか出てこないんじゃなかったかしら
まあアレはテレマコスを激励する文面で出てくるのでホメロスが
あえて母殺しの一面を無視した可能性もあるんですが、それはそうとしても、
オレステスの母殺しってどのあたりで発生したエピソードなのかなあ…


閑話休題
前からいろんなとこでチョコチョコ色んな説を読んで
アテナはもともと古い女神だったんかもしらんが、社会が変化した結果父権的な世相に迎合するように
その性格を変化さえていったんだろうなあとは思ってたんですが、
再びなんか、自分のアテナ解釈を反省したくなりました。
いや、
「原型は古代の大女神の系譜なのかもしれんし、女神の皮をかぶってはいるけどその実中味ほぼ男神」
ってのはあながち外れてはいないと思う。
ただ、それって、要するに男性が権力を持つ社会に都合良い性格付けなわけだから、
そのアテナ様をかっちょ良く描くことが女性への裏切りのように思えて…


    や、まあ、いいか。


どうせそっからさらに脚色してて中味男でもその上ガチで総攻めだしな!
(マジで腐っとる。スンマセン)


次、古典つながりでフレイザーの『金枝篇』(上)を読み始める。
原価じゃとても手が出ませんが(文庫のクセに…)、古本屋で出てたので
買い求めたもの。グッジョブ、古本屋!
まだまだ序盤なのでゆっくり読みます。


『人狼伝説』も並行して読み始めました。
これまた図書館で新書の棚に並んでたので焦燥感に駆られて。
詳細はもうちょっと読み進んでから。


勅任艦長への航海〈上〉―英国海軍の雄ジャック・オーブリー (ハヤカワ文庫NV)

パトリック オブライアン / 早川書房

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パトリック・オブライエン著『勅任艦長への航海(上)』読了。
職場の知人Yさんが、オブライエンが読みたいから貸してくれ、と
若い女の子には珍しいことを言ってきたので、
おばちゃん嬉しくて1も2もなく貸し出す約束をしたのですが、
貸し出す前に、まず自分で読まなきゃね!
(※3作目以降は未読で積読本の山に埋もれてます)

…ってことで、既読部分から再読中。
しばらくは海軍月間になりそうです。

読み直すと、意外と西洋古典に対する言及がチョコチョコはいります。
西洋古典が当時(ナポレオン時代のイギリス)の一般教養だったのだなあ、と
さりげなく察せられ、嬉しくなったり、作者自身の教養の深さにビックリしたり。

最初のほうに出てくる記述にも、
「父親の若い後妻に悩まされるギリシア神話の登場人物ってなんだっけ??」
と主人公のジャックがぐるぐるするシーンがあるんだけど、
それが、その時代の雰囲気と、主人公の大雑把な性格のどちらもを
読者に分からせる上手い道具立てになってて!

ちなみに、そこでジャックが思い浮かべた名前は

アクタイオン、アイアス、アリステイデス


全部違うよ?

最後の名前はギリシア神話でもないよ?

(ナイスボケ、ジャック!)

しかものっけから落馬するジャック。
飛ばしてるなあ…。


勅任艦長への航海〈下〉―英国海軍の雄ジャック・オーブリー (ハヤカワ文庫NV)

パトリック オブライアン / 早川書房

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『勅任艦長への航海(下)』
日記をアップしないでいるうち、下巻も読了。

面白かったー!

同じ面白くてもサトクリフはもっとずっしりと感動するような面白さなのですが
このオーブリー&マチュリンシリーズは、爽快感と高揚感がウリ、
ワクワクするような面白さなんですよ!
とはいえ、最後に盛り上がってフィナーレを飾るため、途中には
主人公と読者の忍耐期間も盛り込まれてます。
(でもこれがないと最後の大団円が輝かないので、これはこれで仕方ない)

海軍冒険ものの定石として、このシリーズも時代はナポレオン戦争真っ只中、
しかも、この回では一時英国とフランスが停戦し
→職にあぶれたジャック、親友のスティーブンと半給で陸暮らし、
→二人のお嬢さん方との出会い、展開される四角関係
(まるでジェーン・オースティンの世界)
→自分のせいじゃない多額の借金が発生し、逃亡生活開始
→戦争の再開と敵国横断逃避行
→やっと英国に帰り着いたと思ったら変な船を押し付けられ、
しかも上司は無能な上嫌なやつ

この辺りまでは、女を取り合って親友とギクシャクするし、仕事もなかなかうまくいかず、
艦上でも、昔馴染みのプリングスが有能で意欲があるのはプラス点としても
副長や乗組員には問題があるし、
いくら能天気でからっと明るいジャックとはいえ落ち込んだりもするんです。
が、ご安心を!上に書いたとおり下巻中盤でどんでん返しが!

あー、スッキリしたー!

訳が微妙なんで若干読みづらいんだけど、
(自分は気にしなくても人には薦めづらい)
やっぱりこのシリーズ大好きです!


『じゃじゃ馬グルーミンUP』全巻読破!
主人公カップルはわりとどうでもいい。
セイジさんがイーグルを勝たせてくれたのが嬉しかったのと、
悟さんとあぶみさんがうまくいったのでそれで満足です。
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by mi-narai | 2009-07-18 10:27 | 2009年7月の読書

『魔法昔話の研究』 『母権論』

読みづらかったんでちょっと書き直したぜ!

ウラジミール・プロップ『魔法昔話の研究』
異常誕生の昔話に対する考察の次は
笑わない王女の昔話に対する考察、
口承文芸におけるオイディプスについての考察、
と来て、その後は口承文芸全体に対する意見が述べられてます。

いや、どの章も面白いんだこれが!

では、以下、特に心に残ったことを。

・「笑わない王女の昔話」部分では、笑う、という動作に含まれる民間伝承における意味なんかが
面白かった!
例えば、死者の国に行ったら笑ってはいけないんです、
反対に、死から生き返るときは笑わないといけない。
そのことについて各地の風習や伝承を例に出して説明してあります。
また、男女の性交(聖婚)とともに「笑い」の力は大地の力を活性化させると
考えられていたという説も興味深い。

この作者、ひと世代前の人なんで、やっぱりその説には今では古くなった部分とか、
打ち消されている説なんかもあるんじゃないかと推測するのですが、
それでもその言葉や考え方にはいちいちについてそうだなあ、と納得してしまいます。
(わたし、騙され易すぎ!)

・「オイディプス」
オイディプス型の伝承について。
ギリシャ古典の悲劇ジャンル(つまり文学)のすじではまず予言があるところに悲劇の予感があるんだけど、
昔話群の方では予言はおそらく後付けだろう。→つまり、余所からやってきた男が娘と結婚し、その父を
殺して王になる、というプロットがあり、予言は、その主人公が旅立つための理由付けだと。

これだけ読むと、ああそう、と思いはすれ、どうという感慨も沸かないと思うのですが、
各地の伝承を比較した上でその根拠を説明されると、納得させられてしまうんですよね、これが。
この「オイディプス」型と考えられる伝承の諸要素を、残っている伝承間で比較しつつ、
父殺し、王女との結婚、などの諸要素を中心に考えていくのが面白かった。
その過程で、この王を殺して王女と結婚する、というすじの裏には、
王女によって王権が委譲される原初の権力移行形態が透けて見えることが指摘されるのですが、

…もともとギリシャ神話を読むうちに、娘婿に王国を譲り渡す話があんまり多いので
「ギリシャ神話の世界って割と母系継承なのかナ?」
ほどには思ってたんです。
このプロップさんの著作にズバリそうかいてあったのを見て、
鬼の首を取ったような気持ちになりました。
(やっぱそうやんなー!みんなそう思うやんナ!)

そうそう、ロシアのネズナイカ(知らない男の意)、
どっかで聞いた事があると思ってたら、
この人ってロシアのオイディプス型昔話におけるオイディプスにあたる人!?
パルナース!モスクワの味ー!(関西近辺の人にしか分からないネタです)

日記をアップできないうちに読み終わってしまいました。
面白かった!


母権論

J.J. バッハオーフェン / 三元社

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バハオーフェン著『母権論』読了。
母権論、と書いてはあるけど、厳密には「母権論序説」と自叙伝です。
有名な古典。
よく名前を聞く書名&著者なので、「とりあえず拾っとくか」ほどの軽い気持ちで読み始めました。
なので、最初は「父系社会の前には母方の血筋で財産や権力がが継承されていく母系社会があった。
それは結婚形態とも関係があり、父系への変化にはそれなりの社会の変化を伴った」と聞いても、
今更なあ、そんなこと知っとる知っとると思ってましたが
読み進むにつれ、その説を唱えた最初期の人の一人だと分かってきて、
著者の偉大さが徐々に分かってきましたですよ。
確かに、それまでヨーロッパって、キリスト教の父系説にどっぷり浸かってたんですよね。
その社会風潮の中でこのひと、一番最初にその説を唱えたんですよ!
しかも、このバッハオーフェンさん、法学者で、裁判官で、ものすごい真面目な
キリスト教徒だったらしいじゃないですか!
そう考えると、やはりすごい人だったのだなあと。
ただ、この「母権論序説」、
母権(=古代の社会体制)に対する憧憬があるようにも
父系社会が進化の最終形態であり、より素晴らしい形態と位置付けているようにも
なんとでも読めるんです、そのせいで色んな団体に担ぎ出されたりしてきたらしい。

それはさておき、
『母権論』の観点からみた『イーリアス』のリュキア勢に対する言及は面白かった。
もともとリュキアって国、ヘロドトスの『歴史』でも、女権的な国だと紹介されているのですが、
そのことと、『イーリアス』でも父方のグラウコスでなく母方の血筋をたどってサルペドンが
リュキア王に即位していることなどから
バッハオーフェンは“リュキアは母系社会だったんじゃないか”と位置付けていて、
だから、グラウコスとディオメデスのあの場面も
グラウコスがディオメデスの名乗りに対して

「そらまあ聞かれたから答えるけど、そんなことどうでもいいことじゃないの?
なんでそっちが父親の名前なんてそこまで聞きたがるのか分からないね」

的な返答を返したのも、グラウコスにとっては父系なんてマジでどうでもよかったからだ
と解釈してるんです。
全面的にそれを信じ込んだわけではないのですが、
なんかそんな解釈初めてだったので、やたら印象に残りました。
面白かったー!裏にそんな意味付けがあると思えば、あのシーンを見る目が変わっちゃうなあ!

後、このバッハオーフェンさん、海を越えたアメリカかの民族学者
モルガンと仲良くお手紙交換などして、親交&知識を深めてたらしく、それがなかなか微笑ましい。
ちらっとみた書簡内容で、バッハオーフェンさんたらモルガンの著書をべた褒めしてんの!
しかも、このモルガンさんの影響を受けて、晩年のバッハオーフェンさん、かなり民族学のほうへ
踏み込んでらっしゃったらしいし

…モルガンやキャンベルも読むべきかしら…
(どこへ向かっている、見習い)

長くなったので続きは明日!
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by mi-narai | 2009-07-17 06:49 | 2009年7月の読書