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『本の町の殺人』 『古代エジプト』 『エトルリア学』

エクソダス。
わたしのアイドル、ラムセス2世に失礼な映画作んな~~!!!!
そもそもモーゼの映画作る言うなら当時のエジプト語とヘブライ語喋るくらいの根性見せてみんかいゴルァ!(無茶ブリ)



萩尾望都著『マージナル』『バルバラ異界』
いや、手持ちの萩尾望都本を読み返したら、持ってないのも読みたくなって
思わず買い求めてしまったのです。

マージナル (1) (小学館文庫)

萩尾 望都 / 小学館

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『マージナル』は一度貸してもらって読んだことがあったんだけど、
今回改めて買ってみた。マルグレーヴ(メイヤードさん)がなんか好き。
(毎回アシジンと彼のシーンだけ何回も読みなおしてしまう)
昔読んだ時も今回も読み終わった後も、サトクリフ読んだあとみたいに世界から戻ってこれずに
ぼんやりしちゃいましたが、今回は特に最後の辺りのナースタースの嘆きが心に響いたっちゅうか。
後、解説のおかげで「あー、なるほど!」とようやく話が分かりました。アホですまん。


バルバラ異界 1 (小学館文庫 はA 41)

萩尾 望都 / 小学館

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『バルバラ異界』
いや、これも、面白かった…!
最初はよう分からんまま読み進めてましたが、ストーリーテリングの巧みさや場面の切り替わりのうまさ、
単純に画面の美しさに引っ張られて結局一気読みしてしまいました…。
(で、読み終わった後は世界から戻ってこれずry)
すごすぎて正しく語る言葉を持たないので、感動の合間にちらっと思ったよしなしごとをメモ書きします。
・ヨハネが意外といいやつだった…。
・確かに、移植した場合は他人の肉は拒絶反応起こすのに、食べた場合は大丈夫なのは、言われてみれば不思議だなあ…
(消化器官と酵素さんのおかげか?)
・妹に、最後のタカとキリヤの顛末がどういうことなのか分からんと言われて、わしもよう説明できなんだ。
「えーと、なんか、そういうもんやねん」(幼稚園児レベル)


猫mix幻奇譚とらじ(8) (フラワーCアルファ)

田村 由美 / 小学館

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田村由美著『猫mixとらじ』8巻
※こんなタイトルですが、よくある飼い猫との日常本ではなく、ファンタジーです。
ネズミに子供を誘拐されたお父さん(職業:英雄)と、ネズミに人型にされちゃった仔猫とらじの旅の話。
前から宣言してるとおりマンガとロマンス小説はよほどのことがない限りレビュー書かないんですが
(消耗品だから。キリがないもの)
この1年に1回しか出ない本が、去年よりちょっと早めに出版してたのが嬉しかったので。
相変わらずのとらじのかわゆらしさですよ!!!!
猫好きさんは必読の書ですよ!!!!!
中盤の銀ちゃんに追いすがるとらじのシーンであまりのかわゆらしさにキュン死するかと思いました燃え滾った!

この『とらじ』の他に、2冊ほど長いこと続きを待ってるマンガがあって
『やぎさん郵便』と『10ダンス』(いずれもホモ)なんですが、
『やぎさん』の方はつい最近ようやく続きがでましたが(完結は次巻にもちこされたけどな!とほほ…)
『10ダンス』の方はいつ出るんでしょうか。続きが気になって気になって気になって仕方無いよ~~


本の町の殺人 (創元推理文庫)

ローナ・バレット / 東京創元社

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サイン会の死 (本の町の殺人2) (創元推理文庫)

ローナ・バレット / 東京創元社

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ローナ・バレット著『本の町の殺人』、『サイン会の死』読了。
表紙からも分かるように、かるーい口当たりのコージーミステリー。
本格ミステリがお好きな方からは眉を顰められるかもしれませんが、
わたしはジル・チャーチルの主婦探偵シリーズとか、
アメリカ産のこういう、女性主人公で地域密着型で日常満載の
明るいミステリーが結構好きなのです。
なので、割と楽しんで読み終わりました。
いや、最初のあたりはいまいち乗れないというか、『ゴッサム』に引き続き
「失敗したかな、これ」と思ってましたが、
姉のアンジェリカと和解したあたりから面白くなってきた。
外国産ミステリーってその国の日常が垣間見えるのが楽しいですよね。
女性作家だとそれが顕著な気がします。主人公に共感もしやすいですし。

『本の町』は、まず、本屋を営んでる主人公の元に、最近離婚した姉が転がり込んでくるところから始まります。
この姉とは小さい頃から折り合いが悪くって主人公は最初辟易としてるんだけど、
同時期に主人公が意地の悪い保安官に殺人容疑(濡れ衣)を掛けられて、
一緒に無実を晴らすために捜査するうちに
結局仲直り出来て良かった良かった、みたいなドタバタコメディタッチの筋。
『サイン会の死』は、その半年後、店でサイン会やったらその作家が店のトイレで死んじゃって、
捜査のために店をまたもや天敵の意地の悪い保安官に封鎖されちゃって、
なんとか店を再開するために犯人探しに乗り出す主人公、みたいな筋。
1巻目は若干グダグダするけど、2巻目は最初から大半の登場人物に馴染んでるし
より楽しく読み終えた気がします。けっこう姉のアンジェリカが好きかも。

でも、言っておきますが、この本に大層な人生の意味とか、文学的な面白みとかを
求めてはいけませんよ。純然たる娯楽作品だからね!
後、1巻目でいけすかない事件記者として出てきた男と2巻目冒頭でいきなり
良い仲になってて、びっくりした。あれ?あたし、何か見逃した??


古代エジプト 失われた世界の解読 (講談社学術文庫)

笈川 博一 / 講談社

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笈川 博一著『古代エジプト』
エジプト展に行ったし、昔読んだエジプト本の知識も薄れかけていたので
知識の補強もかねて、本屋で新発売されてたものを買い求めてみた。

そもそもわたしの歴史への嗜好って、小学校の時分のマヤ・アステカ・インカそれとエジプトへの
興味が元になってるんです。もともと好きなのよ、あの辺り。
(いや、子供って一回はその辺りに憧れるもんじゃない?後恐竜と。
謎とか古代とか滅亡とか、そういうワードに無闇に目を輝かせるというか。
自分がそうだったからみんなそうなんだと思い込んでるだけなんかしら…)
しかし、長じて、知識というのは一度知りたいと思いはじめると際限ないと痛感してから、
なるべく喫緊に知りたい範囲以外に手を広げるのはセーブするようになって
(ただでさえ、広く浅くの傾向があるのに!)
マヤ・アステカ・インカ・エジプトに
関しては、すごい好きなんだけど、
「あかん、そこにまで密に手を出し始めたらマジでキリないで」
と我慢してたんですよね。(それでも時々我慢しきれなくてポロポロ読んじゃうんですが)
なので今回のこの本もよっぽど買わないでおこうかと思ったんですが、
ぱらぱらめくった時の「この本良さそう」という直感とか、
某方がお好きだからもうちょっと知っておくと次回話のネタになるかしら、という下心とか、
最近いろんなエジプト展に行ったせいで妙な親近感があったりとか、
色々相まって買っちゃったんですよ。

結論としては、買って良かった。

面白かったです!

出版されてるエジプト本って、発掘とからめてごくピンポイントなことを中心に掘り下げて書いてあったり
後はエジプト王の事績を拾った歴史本だったりするけど(勿論そういう本も大好物!)
この本は、「これ一冊読めば古代エジプトの地理、歴史、宗教、言語などが総括的に概観できるように」
という目論見の元書かれただけあって、総合的に分かりやすくまとめてあります。すんごい親切!!
いや、エジプトの歴史って鬼のように長いから、詳細は書ききれなくって、
ホントに大事なところだけざっくり、なんですが、
特にわしのようなあんまり知識のないアホには、まずは大まかな把握が大事なので有難いことこの上ない。
では、以下、特に思ったこと



地理の話
・エジプトって地図で見たら範囲が広そうに見えるけど、
人が住んでたのは本当にナイル流域だけで、
それも上流に行き過ぎると滝が連なっててそれ以上進めないし、
川の両側は砂漠でやっぱり住めないし、
正味の居住地だけ集めたら、四国分ほどしかないんだって。
意外と狭い!
相手の方も人口密度が低かったのだろうとは思うけど、それでも大帝国のヒッタイトと
互角に戦ったりしてたのかと思うとちょっと凄いですね!

宗教の話
・日本などは当時の政権によって雑多な神話が一つにまとめられたし、
ギリシャ神話だって、ばらばらだった各地の神話が歴史時代には大まかには系統だてられ済みだったと思うけど
エジプト神話の場合はそれに比べると統一性が薄いというか、地域によって信じられてる神話が
わりと地方色を残したまま同じ価値で並行して信じられてたそうです。
(そういえば以前そうお聞きしたな!このことか!)
現代日本でエジプト神話を読むときはそれらをあたかも一つの神話系統のように並べて書いてありますが
実はアレ、この神々はオンで伝えられてきたもの、このエピソードはテーベ系、とか
系統がバラバラで、思いのほか繋がりが薄いみたいです。
あんまり統一しようという機運もしくは必要性がなかったのだろうな。
時代によってテーベ勢力が強くなったりしてたみたいだけど。
例外的にアテンに統一しようとしたアメンホテプ4世(イクナートン)がいるけど、失敗したしなあ。

イクナートンと言えば、今ウォークマン入れにつかってる袋の模様、イクナートンだわ~。
(出っ張ったおなかとお尻が特徴☆アテンの手もバックに描いてあるし)

・ウセルが太陽神と聞いてニヤニヤしました。
確か、エトルリアにも、カタの他にウセルっていう太陽神がいた気がするんですよ。
偶然かもしらんが、ギリシャからもアポロンを直輸入してたエトルリア人なので
エジプトから直輸入、という可能性も捨てきれないぞ!
(あれ?でもそれならラァを輸入する方が自然か??やっぱ偶然かしらん)

・言語の話。
セム語と同じで子音しか記してないから
意味は分かれど正しい読み方がさっぱり分からない古代エジプト語※。
(アラビア語で痛感したが、この系統の言語ってホントに意味は子音が担ってるらしいんですよ、
日本語みたいに母音が変われば語の持つ意味が大幅に変わるってことがほぼないらしい。
なので、子音表記のみで当時の人は全然事足りてたんだなあ。
ひょっとすると、アラビア語みたいに、母音は名詞から動詞への変化とか、そういうのを担ってたかも知らんが。
言われてみれば日本語は上記のような事情から、自然、子音と母音がワンセットになった仮名が発達したのだろうし。
昔の人はそれぞれよう考えて仕様文字を決定してるなあ)
(※エトルリア語と逆バージョンですね。エトルリア語は読みは完璧にわかるのに正確な内容が分からない。
言語系統も不明)
古代エジプト語の直系の子孫としてコプト語があるし、ロゼッタ文書もあるから文章の意味はほぼ分かるのに、
コプト語は、現在日常では使わないし、それ以外にあんまり発音を類推できる資料もないようだし
発音の復元は難しいのですって。
とりあえず、読み下す時には「E」の母音を形式的に足してるらしいんだけど、

だから、本とかで説明されてる王名とか名詞とか、あれ、便宜上ああ読んでるだけなんだって!

なんとなくその辺りの事情は知ってたけど、改めて説明されるとそれなりに衝撃でした。
当時のエジプトにタイムマシンなんかで行けたとしても、会話どころか王名さえ通じないんですよ!
ホントはどう発音されてたのかなあ!気になる!
ホレムヘブとか、ホントはホラムヒーボ、みたいな発音だったかもしれないんですよ。オモロすぎる。

・エジプト文学の話。
まだホメロスも生まれてない頃に文字で文学を記してたってのがすごいですね。
流石エジプト!!
古代の中国もすごいと思うけど、エジプトも突き抜けてんなあ!
なんかもうこの辺りの古代文明って桁違い!
日本が余裕で縄文ってた頃なんで、それを考えるとちょっとときめきます。かっこいい!
(いや、辺境好きなので日本の立ち位置も大好物ですが)
紹介されてる文学は「二人兄弟の話」と「シヌヘ」と「書記の話」、「ホルスとセトの争い」
「アヌビスとバタ」など。
この「アヌビスとバタ」はタイトルロールのアヌビスとバタ兄弟の話で、
アヌビスの方はあの有名なジャッカルの頭部をもつアヌビスなんですが、
バタの方をこれまで聞いたことなかったのでびっくりした。
ちなみに、これまたヒッポリュトスタイプの話ですよ。
弟が兄嫁に陥れられる話。

「ホルスとセトの争い」は、タイトルから、有名なプルタルコスが伝える、
セトがオシリスを殺してホルスに仇を討たれるあの筋かと思ってたら、同じ主題を扱ってるものの

法廷ものだった…!!

オシリスの死後、ホルスとセトが神々の法廷でそれぞれの弁護人を従えて自分の王権を主張する話だった…!
なんか、ちょっとこれ、面白かったです。
それ以前に、イシスがまんま息子命のおかん過ぎて読んでてドン引きしましたが。
(娘に対するのと息子に対するのではどうしてこれほどあからさまに態度が違うのか!
…という娘側からの訴えをあまりに多く耳にするもので。)
後、セトにもちゃんと味方がいるのだな、と思ってほっとしました。
プルタルコスの伝えるオシリスとイシスの神話に関しては、わたしはセトの味方ですよ。
(これには、上下エジプトが統合される前、上下で争ってた時に、セトの守護する側の勢力がホルスの守護する側に
負けたからだという説があるそう)

・ファラオ=ペル+アア(大きな家)

・ラアメス2世の話
一番最後の章を丸々使って、ファラオのテンプレートとしてラムセス2世の半生について書いてありました。
ひゃっふう!
ラムセスというのは、ギリシャ語読みらしく、エジプト語では
ラア(太陽神ラア)+メス(産む、生まれる)でラアメスらしい(もちろんこれも便宜上の読みですが)。
あれ?じゃあ、トトメスは、トト+メスか!!!
ラムセス2世の半生や嫁、子供についてはあまりに有名なのでここでは割愛するとして
一つビックリしたことをば。

名前がめっちゃ長かった…!!

聞くところによると、ファラオの名前って5つに分かれてるそうで!
(だから、ラムセスだけじゃなく、全てのファラオの名前がたいそう長い)
時期によってまた変化したりして大変そうです!!


『エトルリア学』
日常生活の項は、どうだったか、というだけではなく、どこの遺跡や遺物から
どのように割り出されたかまで事細かに説明してあって相変わらず楽しいです。
武器から始まって日常の衣服についても記述があるんだけど、衣服の変遷のところで

「全裸はギリシアにおけるよりはるかに少ない」

って書いてあって笑った。


エトルリア語の方は、まずエトルリア語がどういった資料から判じられているか、
それを元にどういった説を唱えた人がいたか、今現在(勿論著者にとっての)の判明度合などが
詳しく説明してあって、その後おもむろに分かってる範囲での文法とか語の説明に入ります。
以下、思ったこと箇条書き

・著者はじめエトルリア学者はほぼ印欧語族の言語話者だからしゃーないけど、
印欧語の文法に則して考え過ぎじゃね?
流石に最近は「膠着語っぽいな」って思われてるみたいだけど、性とか語の屈折とか、格変化とか、
いちいち印欧語の変化モデルに対応して説明するのがうざい。

・訳者の方が膠着語の説明として、日本語、韓国語、フィンランド語を例に出して説明していらっしゃるんですが、
今んとこ、ものすごいトルコ語に似てる感じがするんですけど…。
(勿論、文法的にですよ。語彙は似てない)
しかし、ウラル語族のフィンランド語も膠着語だというのは知らなんだ。へー。
じゃあ、エストニア語とハンガリー語もそうなのか???

・母音調和が起こりがちというか同じ語の中で母音がそろいがちなのもトルコ語と似てますよね。
言われてみればフフルンス、って全部母音Uやんけ。すっげー。

・フフルンスといえば、フフルンスの町だからフフルナなのかと思ってましたが、ひょっとして逆なのでしょうか。
Sが属格(ていうか所属を示す接続語尾)らしいんだけど、フフルナの神だから、フフルンスなのかな。

・薄ぼんやり、「印欧語族侵入前は、方言はあろうけどうっすら膠着語を話す人々があの辺一体に広がってたとしたら
面白いな」ほどに思ってましたが、エトルリア語に特有の発音(もともとのラテン語ではないエトルリア起源の語として)
nθ
についての言及があり
「あれ?これギリシャにおけるインド・ヨーロッパ語以前の言葉にもこの発音なかった?
コリントスとかラビリントスとかってギリシャ語以前の言葉の残滓なのよね?」
などと夢が膨らみました。まあ、実際は関係ないでしょうが、線文字A時代の言語とエトルリア語に類縁関係があったら
ホント面白いのにな~。
by mi-narai | 2015-02-03 18:05 | 2015年上半期の読書
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