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『ケルトの白馬』 『異星人の郷』 『ケルト神話ファンタジー』

ケルト歴史ファンタジー ケルトの白馬/ケルトとローマの息子 (ちくま文庫)

ローズマリー サトクリフ / 筑摩書房

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ローズマリ・サトクリフ著『ケルトの白馬/ケルトとローマの息子』読了。
最近、ちくま文庫さんがサトクリフを出版する気になったようで、
しかもどうやらケルトくくりらしい。
とりあえず当該文庫と、もう一冊『クーフーリン/フィン・マックール』を買い求めてみた。
とはいえ、『ケルトの白馬』だけはハードカバーで読んだことがあるんですが。
(面白かった記憶がある)
わたくし、サトクリフのオリジナルの小説は好きですが、再話の方にはあんまり期待してないので
(『イーリアス』『オデュッセイア』がいまいちだったから。まあ、これは原作が面白すぎるから仕方ない)
とりあえず面白さが分かってる『ケルトの白馬/ケルトとローマの息子』の方から読むことにしました。

新幹線の中で一気に読破してしまいました。

骨太で、ぐいぐい引き込まれ、年甲斐もなく夢中になってしまった…
「ケルトの白馬」など、以前読んだ時も電車の中で、友情の熱さにうっかり涙ぐんで
しまったのですが、今回も鼻をすすりあげてしまいました。
この作者は友達同士の固い誓いとか、そういうの書かせたら絶品です。
でもって、わたくし、そもそもが友情モノに極端に弱いのです。
以下、ざっくりあらすじと雑感。

ケルトの白馬
・時は紀元前だか紀元後ちょっと過ぎだか、ローマ全盛期。
そんな時代にイギリスの左下(今で言うウェールズ)のあたりに住んでた、イケニ族の若者の話です。
イケニ族は、馬を扱うのがうまく、お話にも馬がたくさん出てきます。
主人公は、幼い頃から絵画への独特の感性を持っていて、動いているものを曲線で
表すことに無限の情熱を感じる芸術家気質の少年です。だけど、族長の息子なんで
立場上の責任感も、イケニ族の若者としての誇りも持ってるちょっと変わった立ち位置の子。
その彼を中心に、
彼と無二の親友との遠くの地に新たな故郷を探しに旅立とうという約束や、
南からの襲撃と彼に課せられた犠牲、
敵の首領との立場は違うけど深い部分で理解し合える微妙な関係など、
いろいろな要素が絡み合って怒涛のクライマックスへ。
流石サトクリフ、そんなに長い話じゃないのに、読み終わるとずっしりきます。

しかし、この頃は先住のブリトン人をけちらしてこんな全盛なケルト族だけど、
すぐ後にローマ人に大体征服され、さらにその後はアングロ・サクソンに蹂躙され、
さらにその後にはノルマン・コンクエストで北欧人(ていうかフランス人)の
支配下に置かれてしまうのだと思うと諸行無常を感じます。
イギリスの歴史はダイナミックで面白いよな~
(エリザベスの時代も大英帝国時代もいいけど、この頃の辺境っぽい時代も面白いですよね)


ケルトとローマの息子
今度はもうちょっと後、たぶん2世紀ごろのあの辺りの話。
なんちゅうか、同じようにケルトの一部族の男の子の話なのに、

超ジェットコースター展開です…!

なんかもう、ものすごい勢いで主人公が運命に翻弄されまくるので、
息つく暇もなく次のページをめくらされますよ。いやー、すごかった。
奴隷がいっぱい出てくるので、あの時代の奴隷の気分が知りたい方も必見。

しかし、主人公の性格設定がものすごくリアルで、唸ってしまった。
どん底に落ちて、普通の話なら"それでも良心や正義の心を失わない"的な展開になるところですが、
この主人公、あっさりやさぐれちゃいます。
でも、悪くなりきったわけではなく良心の残骸はまだ生きてて、
それはかろうじて「友達を思いやる」という細い一本の糸で支えられてんの。
それが断ち切られて、誇りも何も砕かれ、卑屈になり果てるところもとても納得させられた。
きれいごとじゃねえよな。その辺りは。
(その後、葛藤しつつもちゃんと人間としての尊厳を取り戻す、というか思い出すので安心して下さい)
この人の本を読むと、お恥かしながら毎回感動してしまうのですが(きゃっ)
今回もやっぱり感動しました。
ふーって腹の底から息吐いて、満足感に浸りつつ読み終えましたとも。
サトクリフはもっと全人類に広く読まれるべきだ!


異星人の郷 上 (創元SF文庫)

マイクル・フリン / 東京創元社

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異星人の郷 下 (創元SF文庫)

マイクル・フリン / 東京創元社

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『異星人の郷』(上)(下)読了。
現代編の、歴史学と物理学の理論をからめつつ、
大筋は中世のヨーロッパ・ドイツの片田舎、上ホッホヴァルトの荘園に、
不時着(というのかな。どうも従来のような方法で宇宙を渡ってきたのではないらしいけど)した
異星人たちと、中世ドイツ人たちとのファースト・コンタクトの話。
最初、異星人たちと出合うまでの中世ドイツの荘園の描写がかったるいのと、
出会ってからの両者のやりとりの描写がやっぱりじれったいので
じりじりするかもしれませんが、
下巻に入ると怒涛の展開が。
大体、SFで中世とくれば、ペストですもんね。うん、わたし、分かってた。
(コニー・ウィリスの『ドゥームズデイ・ブック』もそうだったもん)
ペスト描写にもすっかり慣れきったわい。腋の下にでっかいできものが出来て、
中から黒い汁が出てくるんやろ…
いやまあ、最終的にはペスト落ちというのは分かってたけど、
白眉は、異星人と神父の間にじっくりじっくり育まれる友情だと思うのです。
ファーストコンタクトものにありがちな、異星人に対する、もしくは異星人からの
迫害とか、対立とか、そういうのはなんとほとんど出てこないので
それが心配な方は安心して読み進んでください。
領主さまは最後まで世俗主義的な男前だったし。
SFなのにSF設定と関係ない部分で感動させられるという、ね…

ところで、ここに想定されてる異星人、地球で言うならアリとかハチといった組織を構成する
昆虫が進化したという設定なのですね。
哺乳類である人類と似て非なる倫理観とかが面白かったです。
で、ここまで進化する生物には良心の部分で共通するものがあるはずだという
ポジティヴな作者の主張なのかしら、両者の交流には救いがある気がします。

それにしても、わたくし、自分がまさか、バッタの死にこんなに悲しむことになるとは
思いませなんだ。ハンス~~!!!
(この本は通勤時間が待ちきれなくて最後は家で読み終えたので、
誰はばかることなくティッシュで鼻かみました。ずびばー)
エピローグで語られる現代人のジュディという女性の慨嘆にはめちゃめちゃ共感しました。


王権 (岩波文庫)

A.M.ホカート / 岩波書店

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ホカート著『王権』
王権はすべからく太陽信仰から発展したんじゃー!
と、どうして著者が主張したくなったのかは知りませんが、まあ、そういう内容の本です。
著者が強硬に掲げる根幹がそもそもわたし、疑わしいなと思っちゃうので
(百歩譲って、天空神に代表される男神を主神として信仰しはじめたことと
王権とはつながりがなくはないなとは思う)
その部分に関してはなんともよう言いませんが、
引き合いに出される数々の諸例がけっこう面白いので、なかなか楽しんで読んでます。
途中、やはし古代において王位継承権は男性ではなく女性が持っていた、ということが書かれてて、
なんとその文脈で「オデュッセイア」におけるぺネロぺイアの立場が引き合いに出されてたので
おばちゃんちょっぴり驚いてしまいました。
継承権持ってるのはその地生まれの、土地付き娘だけだと思ってたけど、
よそから嫁いできた女性も結婚した時点でその家の継承権を獲得するのか!?
それともオデュッセウス伝説において実はぺネロぺイアの方がイタケと縁が深いのか。
どっちだ。(知らんがな)
けどまあ、求婚者たちがこぞってぺネロぺイアと結婚しようとした理由づけとしては
秀逸かしらん。


後日
大体最後のあたりまで読んで、だんだんめんどくさくなってきた…。
もういいことにしようかな。


ケルト神話ファンタジー 炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール (ちくま文庫)

ローズマリー サトクリフ / 筑摩書房

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ローズマリ・サトクリフ著『ケルト神話ファンタジー炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』
えーと。
やっぱり再話よりもオリジナルの小説の方がより好きだなとしみじみ思った一冊。
いや、でも面白くないわけではなく、ケルトの伝承を知ることができ、
さらに小説風なので読みやすいという二度おいしい仕様ではあります。
で、1話目の主人公クーフリンさんですが、言っちゃっていいですか。

髪の黒いアキレウスです。

うん、君たち、よく似てるよ。クーフリンは別にマザコンじゃないけどね。
なので、アキレウスがお好きな方々にはきっとケルトのクーフリンも気に入っていただけるはず…!
名誉を至上とするところも潔さも、武力に関しての他との開きも、若さや美しさも、
アキレウスの長所を全てかねそろえているケルトの英雄ですよ。
あ、でも、パトロクロスはいませんが。
しかし、読んでて意外とケルトの伝承とギリシア神話とはかかわりが深いのかしらなどと感じました。
ギリシア叙事詩の余波が来てんのか、それとも同じ語族なので、伝承の根源が同じなのか。
これまた不勉強でどっちなのかは知りませんが。
アラビアンナイトのシンドバッドの冒険(の一部)なんかは、
明らかに『オデュッセイア』の影響だと思うんですけどね~。
いや、でも、そういうモチーフが似てる部分よりも、ケルト特有の魔法に満ちた筋がとても魅力的で、
特に、3勇者(クーフリン含む)のうち、誰がアイルランド一かを選べと言われた各地の王たちの、
選考過程がほんと、色鮮やかで読んでて面白かった。
で、選から外れた二人がクーフリンを恨むのかと思ったら、
最後に笑い合ってあっさり和解したのも、なんだか新鮮でした。

ただ、難を言えば、この一連の物語

ツッコミ不在

なのです。ものすごい悲劇とか、どシリアスな調子で起こったりしてるけど
「それ、自業自得ですからーー!!!」と誰も突っ込んでくれません。
助けて、誰か!!
脳内ツッコミし過ぎて読みながら割と息も絶え絶えになる話でもあります。
読むときは心構えして読むべし!



フィン・マックール
こっちはもうちょっと読みやすいです。たぶん、別にフィンがアキレウスに似てないからだと思う(笑)。
普通にいい男ですよ。
一連のフィン・マックールと彼の騎士団に関する伝承を、サトクリフさんが整理して、
まとめて書いてくれてる感じの作品。分かりやすいです。
オシアンとか、ディアミドとか、名前だけこれまで聞いたことあったけど
伝承はよく知らなかった人も出てきて、これまでの疑問が色々解けました。
そうか、吟遊詩人のオシアンはフィンの息子だったのか…。
(昔、学生時代に美学の授業で「オシアンの夢」という絵を見たなあ)
ところで、思ったのですが、
ケルトの名前では男性の名前もア行で終わったりするので、なんか、可愛いですね。
後、最初の奥さんサーバとフィンのエピソードがなんか好きです。

たくさんあるフィン・マックールとフィアンナ騎士団に関する伝承を、
ひとつひとつ積み重ねるように読んで、最後のあたりになるあたりには
すっかり騎士団に馴染んでるので、
フィンの最後とか、騎士団の終焉を読むのがさびしくなってしまいました。
オシアンのその後とか、そう言えば他のケルト神話の本読んだ時に読んだな。
これまた浦島オチで超切ねぇ…!!


映画
『レ・ミゼラブル』
休みの日に、せっかくだから映画でも行こうよと母を誘ったところ
上記のミュージカル以外は嫌だとぬかすので、つきあってやりました。
いや、面白かったですよ。
話のすじは、そういえば以前、ミュージカルじゃない『レミゼラブル』の映画を見たことが合って
大体知ってたけど、
今回のミュージカルの方がなんか面白かった…!
思ったより歌成分が多かったのも、個人的にはヒットでした。
下を向いて歩け!的な歌と、パリの虐げられた庶民が、こんちくしょうめわしら虐げられっぱなしジャー
みたいに歌う歌が、とても好き。
後、主演のヒュー・ジャックマンと警部役のラッセル・クロウが好きなので、画面見るのが楽しかった。
悲しい話、ものすごい泣く、みたいに聞いてましたがそうでもなく、
普通に名作に感動して見終わった映画でした。
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by mi-narai | 2013-03-20 19:57 | 2013年上半期の読書
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