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『終わりよければすべてよし』 『ラウィーニア』

終わりよければすべてよし シェイクスピア全集 〔25〕 白水Uブックス

ウィリアム・シェイクスピア / 白水社

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シェイクスピア著『終わりよければすべてよし』あらすじを読んで興味が出たのでさらっと読んで見ました。
さらっと読み終えました。
医者の娘が、貴族の息子に恋をして、その恋を成就させるために頑張る話。
しかし、なんでこの貴族息子はこんなに頑ななの?


ラウィーニア

アーシュラ・K・ル=グウィン / 河出書房新社

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アーシュラ・ル=グィン著『ラウィーニア』読了。
前にちらっと日記で書いたように、本屋に並んだその日からずっと気になっていた一冊。
図書館で新刊本の棚に並んでいたので、「今じゃ!」と思って借りてみました。
意外と内容がぎっしり詰まってて流石に一日では読みとおせませんでしたが、
読んでる間中続きが気になって気になって、一気に最後まで読み通した一冊でした。

最初に結論から言います。


アイネイアスがめちゃめちゃかっこよかった!!!




(…またそういう頭の悪い感想を…)
や、でもほんと!読み終わってからも1日くらいはときめきの余韻に浸ってましたもの!
ワタクシ、この年になると割と許容範囲が広がって、読書における殿方に対する
トキメキの傾向もいくつか分化しておるのですけども、
このアイネイアスに対してのときめきは、
頑固一徹なおじさまに対するかわゆいなあ、というときめきでも、
腹黒くて頭のいいナイスガイに対するワクワクでもなく、

…あえて言えば『TROY』のヘクトールに対してや、
国連事務総長のハマーショルドさんの事跡について読むときの
「この人はなんて立派な人なんだろう…!」という感動?(疑問系にすな)

と似たようなものかと。
ものすごいよう物を考えてる人に描かれたはる。
自分の弱さを自覚して、常に自問してるような、知性的で理性的な人ですよ。
大人だし。背が高くて男前だし。
この作者の登場人物で言うなら、「2巻のゲド」を髣髴とさせました。
でも、作者のまったくの創造かというとそうではなく、
なんか、『アエネーイス』を読んで感じたアイネイアス像を具体化するとこんな感じか?
という印象で、違和感はなかったです。
さすが大御所だぜ…

もう、このアイネイアスのためだけにこの本買ってもいいかなと思ったくらいです。


もしこの本を読んでときめいた人は見習いまで!語らいましょう!!

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閑話休題。
アイネイアス話はおいておいて、お話の筋や背景について感じたところをば。
ベースはあくまでもウェルギリウス先生の『アエネーイス』です。

とはいえ、時代背景は、史実にもかなり忠実なのではないかとも感じました。
色々初期の王政から共和政のローマ本や、ローマの神話本を読みかじって
「最初の頃のローマってこんなだったろうな~」とわたしが想像していたような
社会形態や、神話形態が、ちょうど描かれていて、ちょっと感動した。
(ル=グィンも似たような資料を読んだのかちら!!
わたしの想像にお墨付きを頂いたような勝利感でございますよ)
特に、境界の上で踊るマルスとか、ウェヌスの位置付けとか、
ギリシアから神々が入ってくる以前のローマ人の素朴な信仰形態とかが、
「そうやんな!こんな感じやんな~」と膝を打つ感じに描かれてて大満足。
大雑把に言えば、『アエネーイス』の筋を、実際の当時のローマ世界の中で展開してる感じです。
本当は、トロイア戦争からローマの夜明けまでは数百年の時差があるので
ローマの初代王ロムルスとレムスのご先祖たるラウィーニアと
トロイア人のアイネイアスは時代が違うし、まあ会うはずないんだけど
(アイネイアスのローマ建国伝説はラティーヌスのそれをなぞっているという説が一般的?)
その辺りは、作者が上手にまとめてます。
色んな伝説の要素を一旦分解してもう一度ぴたりとピースがはまるように組みなおすと
こうなるのだなあ、という…


お話は、『アエネーイス』をラウィーニアの視点で語りなおした感じです。
ラウィーニアの知らない前半部分は、詩人のウェルギリウスが語ってます。

このお話、不思議な構造になっていて、
ラウィーニアは血肉を持った人間であるとともに、ウェルギリウスの創作した作品内の人物で、
彼が確固とした役割や人格を与えなかったせいで永遠を生きている、といったような設定がなされてます。
作中で、叙事詩の作者であるウェルギリウスと登場人物であるラウィーニアが
会って話すシーンなどもあります(このシーン、静かでとても好き。
ウェルギリウスの登場シーンだけ、ほのかにアウグストゥスの時代のローマの香りが
感じられて、もう、作者の才能にくらくらしました)。
そのラウィーニアが、思い出してはその時の事を語るため、時系列が時々入り乱れていて、
最初はちょっと戸惑うかもしれません。

筋は、何が起こるわけでもなく、大冒険活劇があるわけでもないし地味かなと思ったのですが
それはわたしがもともと『アエネーイス』を読んでいて、次に何が起こるかを知っているからかも。
後、一貫して女性のラウィーニア主観で描かれるので、戦闘シーンが出てこないから
そんな感じを受けるのかも。淡々と王女の日常が続くからそう感じるけど
よく考えたら、戦争がおこって終わってるなあ。
一応、ラウィーニアをめぐってトゥルヌス&アマータ率いるラテン軍VS
アイネイアス率いるトロイア勢の戦いが起こって、トゥルヌスの死で収束するまで続きます。
(物語はその戦争の後さらに続きますが)

なんというか、不思議な読後感だったなあ…。
個人的にプラス評価ばかり感じたわけでもなく、
毎回なんでこの人の話女性が男性に押さえつけられて
息苦しくなってるシーンが一度は入るんだろうとか(まさか、それが肝なんか?)
アスカニウスとトゥルヌスはちょっと気の毒な描かれ方してたよなとか、
あまり好ましくないところだってあったのですが、
ソレを差っ引いて色々総合的に見たら、面白かった、のかなあ…
今考えたら、アイネイアスをラウィーニアが心底愛していたので、
読者にもあんなに彼が素敵に見えたのかなあ…
(作中、ラブラブでしたぜ、この二人!あーもう、あっついあっつい)

手放しで「あー、面白かったー!」とストレートに言うにはもっと
複雑な何かが残るというか、

だから、まさに、なんというか不思議な読後感、だったのでした。


あ、あと、エトルリアも素敵な感じで出てきてましたよ!
向こうに押し切られた感満載のディードーと違って、
クレウーサのことは、アイネイアスが本気で愛してたっぽいのも好感度大。
ヘクトールやディオメデスも、名前だけ出演してました!うわーい。
アキレウスとオデュッセウスは一箇所だけおんなじとこにやはり名前だけ出てきてましたよ!
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by mi-narai | 2010-05-02 19:53 | 2010年4月の読書
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