人気ブログランキング | 話題のタグを見る
<< 『終わりよければすべてよし』 ... 実にどうでもいい話 >>

『トリックスター』 『ダライ・ラマ自伝』 『フェニキア人』

『トルコ語のしくみ』
大体読了。
あかん、文法事項が増えてくると最初に読んだ辺りの事忘れる!!

…でもまあ、その辺りは日本語にちょっと近いってのと、愛で賄えるかな…


トリックスター (晶文全書)

ポール・ラディン / 晶文社

スコア:


ポール・ラディン著、カール・ケレーニイなどが解説を書いた『トリックスター』読了。
以前から気になってはいたのですが、以前の気になるポイントはズヴァリ!ヘルメス関連でした。
しかし今回借りたのはワタリガラスの神話が読みたかったから。
そんなわけで、北米のトリックスター神話をがっつり読みはぐりました。
著者は神話に近い文化英雄じゃなくて、純然たる道化であるトリックスターを主眼として扱っているので、
どちらかというと文化英雄に近いワタリガラスについてはさらっとさらえる程度にしか書いてなかったデスが

うふふ、それでも素敵でしたわ…。

カール・ケレーニイの解説は、…

奴が何を言いたいのかよく分からん(アホ丸出し)

解説といいながら、のっけにラディンの意見を一蹴してるように読めるんですが、
それはわたしの頭が悪いからでしょうか、先生。
もうちょっとこの辺りの研究に造詣が深ければおいおい分かって来るんだろうけど
返却期限の迫ってる本ということもあり、あまり深く考えずに読み飛ばしてしまいました。


ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

ダライラマ / 文藝春秋

スコア:


ダライラマ著『ダライ・ラマ自伝』読了。
職場の友人に借りたもの。
ダライラマの幼少期から、ダライラマに選出され、中国との衝突があり、インドへ亡命して今に到るまでの自伝。


なんというか、読めば読むほど中国政府が嫌になる一冊…
(久しぶりに大学時代のあの感覚を思い出しました)

書いたのはチベット人のダライ・ラマだし、立場上、幾分か誇張して書いてあるのかもしれないので
丸呑みにするのは危険だとは分かっていても、
それでも募るなんともいいようのない危機感のことよ。
こわい。もし中国が膨張して将来これが日本人に対して行われたらと思うと冗談抜きでものすごい怖いです。

このままではチベット民族が地球上から消えてしまう!!

(歴史上、いろんな国が栄えては滅び、後からソレを勉強して、
『なんで滅ぼしたー!』と憤慨することが良くありますが、
まさかそれをリアルタイムで見る事になんてならんだろうな!)
(⇒反面、ひょっとしたら一般日本人は知らないだけで、日本人も色々各方面に悪い事を
してるんかもしらん、その辺りはちゃんと知って、反省すべきなのかも、とは思いましたが)
あんまりにも怖い事例を読みすぎて、中国が嫌いになりそうになりましたが、
でも、ダライ・ラマも言うように、おそらく、一般の普通の中国人は大体がいい人だろうし
中国政府のやり口を知らないだけの人が大半だろうから(情報統制があるから)、
漢民族をおおざっぱにくくってソレを十把一からげに嫌うのはお門違いですよね。
やはり、中国にネットがもっと蔓延して、政府からの一方的な情報だけでなく、
色んなところからの色んな角度からの情報がもっと入るようになれば良いのに、と思いました。

ああ、怖かった。


かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)

万城目 学 / 筑摩書房

スコア:


万城目学著『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』読了。
上のダライ・ラマ自伝を貸してくれたのと同じ人が貸してくれたので。
帰りの電車でさらっと読了。
新書で出てるんですが、子供向けの児童書みたいな読み口でした。
若干こっぱずかしい箇所もあるけど、犬とネコの夫婦愛は意外と良かった。以上。


フェニキア人 (世界の古代民族シリーズ)

グレン・E. マーコウ / 創元社

スコア:


グレン・E. マーコウ著『フェニキア人』読了。

面白かった!!

流石に寝不足の時や帰宅時の電車では読みながら何度か居眠りこきましたが、
それでも久しぶりに真面目な本をワクワクしながら読みました!
まあ、ギリシアやエトルリア、ローマなど好きな辺りと時代がかぶるので、
耳慣れた固有名詞が多いし、なにより
私の大好きな商人の国だというのが、面白いと感じた理由の大半だと思います。

でも、周囲の人にフェニキアと言ってもあまり分かってもらえず…
(意外とマイナーなのかしらん)
なので、とりあえず、地理的なあたりだけ説明しておくと、
地中海の東の突き当たりの(今のヨルダンやレバノン、イスラエルのある辺り)
海岸線あたりに都市を作って商売にせいを出したセム語を話す人々、もしくは地域の呼び名っスよ。
この『フェニキア』ってのも、ギリシアのポイニクスがもとなんだろうから、
本人たちは自分たちのことをなんて呼んでたんだろうなあ…
(民族、という概念がなさそうだから、テュロス人、とか、シドン人、とか、出身地でくくってたのかしらん)

以下、いつものように、読みながら打った携帯メモ箇条書き。

・キュプロスというのは、そのものズバリ、『銅』という意味で、あの島、有名な銅の産地だったらしい。
キュプロスといえば、アプロディーテなんですが、そうなんだ、銅の島だったのですね!

・フェニキアといえば、シドンとテュロスですが、北のビュブロスも割と有名です。
この、ビュブロス、この都市のみ、昔から一貫して人が住んでいたのですって!
他のシドンやテュロスなどは、青銅器時代一度人が住んで、その後放棄され、鉄器時代に入って
再び入植した形跡があるんだそうな。そんななか、ビュブロスのみは昔から連続して人が住んでいた
形跡が残っているらしい。へー。
その話を聞いて、アテナイを連想したのはわたしだけではないはず。

・このフェニキア本、最初は歴史について書いてあって、その後は都市構造、経済、神話、などと
項目別に分かれてるんですが、最初の歴史部分、古代の前15世紀のあたりは正直ちょっと眠かったんです。
でも、前11世紀辺りから面白くなってきたー!
あの時代のオリエント、覇権をとる大国がころっころ代わるんですが、
フェニキアの都市たちは、最初ッからものっそい商売本位なので、権力には興味なく
(上が誰でも、滞りなく商売できればそれでいい。
群雄割拠だと通商路が危険で貿易がしづらいので、
むしろ大国がその辺り一体を平定して安定してくれた方がいい)
どの国がその地方を勢力化に治めようともその下で、うまく立ち回るんです!
(ちなみに、アケネメス朝ペルシャ時代がフェニキアの最盛期。この部分ではヘロドトスの『歴史』
の引用がたくさん出てきたちょっと楽しかった。フェニキアの海軍が一番強かったんですよ!)
その歴史の中で、都市間はそれぞれライバル関係にあってしのぎを削るんですが、
中でもシドンとテュロスは好敵手同士で!
この2都市が、時代によって上になったり遅れをとったりする軌跡がものすごい面白かった!
なんとなく、わたしはテュロスの方が好きです。海上都市だし。カルタゴの母市だし。

・そのテュロスがアレクサンドロスのせいで取り返しのつかないことに…!!
報復怖すぎ。
もともと嫌いでしたが、アレクサンドロスがますます嫌いになりました

・ところで、西方フェニキア勢力の歴史を語る部分(主にカルタゴ)の段で
ローマ、さらっとエトルリア勢力に入れられてるんですが、
(まあ、あながち間違いではない。初期のローマはエトルリアの勢力圏内の町だったもん)
これって、西洋じゃ一般的にそういう認識が広まってると考えていいのね?(決め付け)

・フェニキアの都市の条件の項
常に『良港』が選ばれてたらしい。
(もちろん、植民地には、給油ポイントとなるところや、背後に鉱山を抱えるところが
選ばれたらしいのでこの範囲内ではないけれども)

商売する気満々やな!


・あの辺の地名で『テル』と付くのが多いのは、テル、というのが丘、という意味だかららしい。
桃が丘とか、住吉台、などとつけるのと似たような感覚なのでしょうか。

・フェニキアでは貨幣の発行が、周辺の他地域より遅いと聞いて、最初は意外な気がしたのですが、
その理由が「あらかじめ商品の交換レートが決まっていたので通貨の必要性が感じられず、
そのために発行が遅れた」と分かって、えらい納得しました。なるほど。

・神話体系があまり残ってないのは勿体無いなあ。

・神話といえば、ところどころ『オデュッセイア』への言及があったのはちょっと嬉しかったです。
うん、確かに、フェニキアの紫の布とか、フェニキア海賊とかに関して、ホメロスにもちょこちょこ出てきてた。

・フェニキアのエーゲ海貿易の相手はコリントス、エレウシス、アルゴスだったらしい。
(当時のアテナイはまだ弱小だったらしい)
そうかそうか。ならコリントスへは中東の文物が色々行っておったのだな。
ますます憧れの地よ…

でもって、イタリアへの中継地がイタカだったらしいともありました。なに!?
だから、『オデュッセイア』は航海譚だし、『アエネイス』ではアイネイアスが
イタケを横目に見ながら西に航海するの!?
色んなところでリンクしてるなあ、古代地中海…

・エトルリアに急速に中東化が進んだのはフェニキアの影響、ともさらっと書いてありました。
(おっと、リディアからの移民説をまるっとスルーしとりますな)
や、移民はあったのかも知れないけれど、全体ではなかったと、そういうことかもしれん。
日本もそうだし。半島から人が移り住んだのかもしれないけど、それが全体ではないと。


いや~、この他にも、政治形態や経済活動の段も、美術の段も、神話の段も
すべからく楽しかった!



『トリノ・エジプト展』を見に市立博物館へ行きました。
…ほんと、この博物館、エジプト展多いな…(大喜び)。
今回は展示の方法もなかなか凝っていて、見ごたえもあってよかったっスよ!
特に彫像の展示が面白かったな~!
トリノ博物館に行ってみたくなりました!
(えらい短い感想ですが、カルタゴ展と同じくらい満喫いたしました~!)
by mi-narai | 2010-04-21 21:58 | 2010年4月の読書
<< 『終わりよければすべてよし』 ... 実にどうでもいい話 >>