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『世界女神大全Ⅰ』

アン・ベアリング、ジュールズ・キャシュフォード著『世界女神大全Ⅰ』
ものすごく面白いんですが、上下2段に分かれてる上ハードカバーなのでなかなか読み終わりません。
毎日じりじり読み進み、本日ようやく読了。
下巻に突入する前に、青銅器時代以降の雑感をメモ。

「青銅器時代」部分
最初のあたりは、シュメールです。
男性原理も内包していた大女神から男神が分離した様子とその理由、
男神の持つ特性(全てに内在する女神に比べ、外から客観視、精神的、等々。ほんとかよ)の説明があります。
…ていうか、大女神の地位の低下を招いたのは男神の誕生そのものではなくて、
部族の神としての特徴を強く持つ天空神としての主神信仰を極端に推し進めた
好戦的なセム語族&アーリア人が政治的な優性に立って、
家父長制や自分たちの神話を征服民に押し付けた結果だ、
…ということはよく分かった。
シュメールも、北部のセム語族の影響を受けるまでは、女性の地位が男性に比べて別段低いってことも
なかったみたいです。

……おのれ………(あの憤り再び)

・死に対する認識が、女神への回帰と、その後の転生、という周期的なものから、
絶対的で暗く寂しくその先には何も無い、という直線的なものに変わってきたのもこの頃らしいっす。
ふと、ゲド戦記と空色勾玉読んだときに感じた相違を思い出しました(同時期に読んだの)。
ゲド戦記では、死は暗く冷たく絶望的なものだが、それがあるからこそ生が輝く、という主張だったのに対し、
空色勾玉の方は、死は地下の女神の元で休むことで魂はその後また生まれ変わる
(だからそんなに恐ろしいものではない)という設定だったので。
はっはっは、荻原規子、買うだけ買って他の本読んでないよなあ。

・ソレと関連して、冥府の存在が意識されだしたらしい。

・色んなところで言及されて有名な、儀礼的王殺しが始まったのもこの時代あたり
っぽいようなこと書いてあったぞー


「イナンナ=イシュタル」部分
シュメール語の語感って面白いですね。
某I様のHPのおかげで神々の名前や色んな名称に聞き覚えがあって、ものすごく楽しかったです。ウス!

・聖書におけるシュメール神話との類似は、バビロン捕囚ン時のユダヤ人に
由来してんじゃないか、とのこと。おお~、バビロン捕囚!

・所々ヒンズー教への言及があったりして…そうなん?シュメールとヒンズー教になにか共通点が?


「エジプトのイシス」部分
あまりなじみの無い部分なので、へー、ほー、ふーんと感心してるうちに読み終わる。

・殺されたオシリスを探す時のイシスはペルセポネーを探すデメテルに激似。
なんで似たのかは知らんが、イシスがデメテルと同一視されてる理由は分かった。

・イシスとオシリスの神話、どうもエジプトでは誰もが知ってる神話らしくて、
個々のエピソードしか残ってないらしいです。
(あらすじすっとばして本編からはじまる「イーリアス」と同じ感性です(笑)。)
最初から最後までを一環して残してるのがギリシア人のプルタルコスだけだってあたりが面白い。

・月と将棋を指して勝ち、閏年を取り上げたトト、って記述にときめきました。
(ヘルメスと同一視されたのもこのあたりか??)

・アヌビスってオシリスとネフティスの息子だったの!?そらセト(ネフティスの旦那)も怒るって。

「バビロンのティアマト」部分
・もともとシュメールやエジプトはセム語族や印欧語族ではないので、まだその神話も、
男神が台頭してきたとはいえそこまで酷くない感じだったのですが、
ここで語られる「エヌマ・エリシュ」では、とうとう女神バラバラ殺害事件勃発。

おおお…おいたわしい…

とはいえ、日本神話にもちらっとそんなのあったし、どこまでバラバラ事件が
この作者の言うように男神の権力掌握を表してるかは疑問なんだけど。
どうなんだろう、女神の娘たる穀物や芋の化身が、バラバラにされて埋められるのは豊穣儀礼かも
知れんが、その大元たる大女神自身がバラバラにされてるというところが大事件なんか?
アホゆえにこの程度の理解しか出来ない自分が歯がゆいぜ!
ただ、確かに、シュメールからの権力移行をバビロン人が神話の中で表明したってのは、
そうなんだろうなあ、と思います。
(女神=シュメール、マルドゥーク=バビロニアとみて)
もっと穏やかなマルドゥーク神話もあるらしいですし。

・二元論の深化がすすみ、良いものは男性的なもの、悪いものと女性的なものが結び付けられる
傾向が顕著になる。やな時代だなあ。

・物語における戦争・武力賛美、二元論化も言及されてましたが、
それでも「旧約」に比べたらホメロスは公平だとこの本の作者も仰ってました。
そうだろうそうだろう。

全体的に血腥せえよ、アッシリア&バビロニアー!


「ギリシアの女神」部分
バビロン部分を読みながら、つくづくギリシアはここまで酷くないよな、良かった良かったと思っていたら、
このギリシア部分ではまさしくそんなような事が書いてました。

「父神の神話の2大勢力はヤーウェとゼウスだが、両者には驚くほど共通点が少ない」

あってたまるかーー!

・ギリシアはアーリア人が席捲したにしては前代の大女神の信仰と、新しい父権的信仰が
いい感じに融合した例らしい(さもありなん)。
しかし、混ざりすぎて、もとの形が見分けづらいのは難儀なことです。

・ギリシア部分は、既にどこか別のほんで読んだことなんかが多く、たいへん読みやすかったです、
やはり自分に分かる分野は落ち着くなあ。
でも、知ってることが多いと、あえて書き残す事柄も減るわけで……
(というわけで、ギリシア部分は以下略。ヘラ様とアテナ様が素敵でした、とだけメモっておきます)

下巻は「ギリシアの女神」のつづき、アプロディーテからっス。
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by mi-narai | 2009-09-15 21:17 | 2009年9月の読書
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